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INTERVIEW

2021.10.27

【インタビュー】みんなと直接会いたいし触れ合いたい――。 水樹奈々、“愛”をテーマにしたTVアニメ『SHAMAN KING』の第2弾OPテーマ「Get up! Shout!」に込めた想いを語る。

【インタビュー】みんなと直接会いたいし触れ合いたい――。 水樹奈々、“愛”をテーマにしたTVアニメ『SHAMAN KING』の第2弾OPテーマ「Get up! Shout!」に込めた想いを語る。

通算41枚目、約1年ぶりのリリースとなる水樹奈々のニューシングル「Get up! Shout!」は、自身も思い入れの深いTVアニメ『SHAMAN KING』の第2弾OPテーマ。2000年版から続く伝統を継承しつつ、閉塞感漂う今の時代を照らす“愛”に満ち溢れたストレートなロックチューンだ。同アニメで水樹が演じる玉村たまおの名キャラソンのセルフカバーを含め、歌手活動21年目に突入した彼女のニューフェーズが堪能できる本作について、たっぷり語ってもらった。

『SHAMAN KING』と麻倉 葉が教えてくれたこと、理想のライフスタイル

――新曲「Get up! Shout!」は、TVアニメ『SHAMAN KING』第2弾OPテーマです。最初にタイアップのお話をいただいたときの気持ちはいかがでしたか?

水樹奈々 プロデューサーからお話を聞いたときは本当にびっくりして、思わず「え!?私でいいんですか?」と何度も聞き返してしまいました。『SHAMAN KING』のOP・EDテーマと言えば林原めぐみさんなので、それを引き継ぐ形で私が第2弾のOPテーマをやらせていただくという、ものすごい大役を仰せつかって、最初はプレッシャーで震えました。原作やアニメファンの皆さんに愛してもらえる作品、そして林原さんが作られてきた名曲に肩を並べても恥ずかしくないものを作らなくては!と思い、ものすごく気合いが入りましたし、とにかく必死でした。

――それだけ『SHAMAN KING』は、水樹さんにとって大切な作品なんですね。

水樹 2000年版のTVアニメにもキャストとして参加させていただいたのですが、その頃の私はまだ駆け出しで、周りには錚々たるメンバーが揃っていたので、アフレコのときは毎回、大緊張でした。何度もリテイクを出してしまって「私はここにいていいんだろうか……」と思ったときに、林原さんから「オーディションに合格して、台本があなたの前にあるということは、この役はあなたが演じるもの。誰に遠慮することなくやればいい」と背中を押していただいて。ほかにも、私がスタジオの近くのファミレスで一人でご飯を食べていたら、阿弥陀丸役の小西(克幸)さんに「何一人で食べてんの、こっちに来なよ!」と誘っていただいて、先輩方と毎週のようにご飯を食べたり。本当にたくさんの思い出が詰まった作品なんです。それから20年を経て、今度は役者としてだけではなくシンガーとしても関われることが本当に幸せです。

――今回のTVアニメ、自分も観させていただいていますが、改めて良い作品だと感じました。

水樹 素敵ですよね。今観ると当時とは違った感じ方があるなと思います。『SHAMAN KING』の登場人物たちは考え方が十人十色で、それぞれの正義のために動いているなか、主人公の葉は、自分に刃を向ける相手であっても否定したりせず、尊重できる道を探し、それぞれがハッピーになる選択を考えている。そのメッセージはコロナ禍で閉塞感のある今のご時世にもすごく響きますし、きっと蘇るべくして蘇った作品なんだと思います。

――主人公の麻倉 葉のライフスタイルはまさにですね。ユルいけれど、すべてを受け入れる懐の深さがあって。

水樹 葉って独特のスタイルですよね。いわゆる少年アニメのヒーローとは違った視点でみんなをまとめていく。20年前も彼はすごく不思議な魅力の持ち主だと思っていましたけど、自分が色んな経験を積んだうえで改めて葉と再び向き合ってみたら、その時々でフレキシブルに動けて、様々なことを受け入れる寛容さがあるので、人として一番理想的な形に感じたんです。彼が理想としている「楽に生きられる世界」って、表面上で捉えると怠け者に思えますけど、みんなが楽に生きられるというのは究極な状態ですし、それを求めてシャーマンキングを目指すなんて、愛の塊のような人だなと思って、ますます好きになりました。

――水樹さんは己の鍛錬を欠かさない努力の人のイメージがあるので、葉の楽に生きるスタンスとは割と対極の位置にいる気もしますが。

水樹 真逆ですよね(笑)。だから葉みたいな人には憧れます。ブルース・リーの截拳道(ジークンドー)も、力を入れず脱力することが大事じゃないですか。常にリラックスしているけれど、いい緊張感ももっている。それって究極の精神状態で、自分の最高のパフォーマンスが出せる状態だと思うんです。私はかなり力が入ってしまう人間なんですけど、最近ライブステージでそういう精神状態を経験することがでてきて。すごく緊張しているのに楽しくて、楽屋にいるときみたいなリラックス感がある瞬間を何度か体験できました。その状態をアフレコや日常生活でも保てたら、常に楽に生きられると思うんですけど、自分の性格がそうはさせなくて(苦笑)。でも、年齢とともに、頭でっかちな生真面目気質から少しずつ遊びを持たせられるようになってきているような気もしていて。還暦を迎えるまでには葉のような生き方ができる人になりたいです(笑)。

キャラクターたちの魂と作品の伝統を継承した「Get up! Shout!」

――今回のOPテーマ「Get up! Shout!」は、まずどのようなイメージで作り始めたのですか?

水樹 私が担当するのは物語の後半戦、クライマックスに向かって熱量の高いシーンが続くので、それにフィットするOPテーマを目指しました。そして水樹奈々にお声がけいただいたということは、これまで水樹奈々が紡いできた熱いサウンドは外せないと思ったので、ストレートなロックサウンドでいくことは早い段階で決まりました。『SHAMAN KING』は魂と魂がぶつかり合う、自分の意志の強さで戦う作品なので、ドラマチックな展開はありつつも、シンプルな構成のほうが作品にフィットするような気がして。そして、作品の中に流れる古き良き日本のテイストを織り交ぜたかったので、歌謡曲を感じさせるメロディラインをサビなどに取り入れています。歴代のOPテーマと構成を揃えたかったので、絶対に歌始まりにしたいという思いもありました。

――そこは伝統の継承ということですね。

水樹 今回はその内容で色んな作家さんに楽曲を作っていただいて、コンペ形式で決めさせていただきました。全部で100曲くらい書いていただいて、どれも熱量の高いものばかりだったのですが、この「Get up! Shout!」を聴いた瞬間に『SHAMAN KING』の映像が見えたんです。心を鷲掴みにされて。「これしかない!」と直感的に選んだ曲です。

――歌詞は水樹さんが自ら作詞しています。

水樹 普段なら原作を読んですぐに勢いで書くんですけど、今回は自分の中で練り上げる時間を作りたかったので、原作を改めて読み込んだあとに1ヵ月寝かすという初めての試みをしました。というのも、シンプルに構成されたメロディの中に、色々な想いを詰め込みたかったので。先ほどお話ししたように『SHAMAN KING』の登場人物たちにはそれぞれの使命や生き方があるので、もちろん主人公の葉の目線が主軸にありつつも、そこだけだとこの作品は語れないと思ったんです。敵対するハオの目線も入れたいし、彼らを取り巻くキャラクターたちの想いも入れたくて。

――それは難しいですね。

水樹 でも、そこで難解な言葉遣いや比喩表現が多いと、せっかくメロディがストレートなのに入り組んで感じてしまうので、なるべくシンプルな言葉を使いつつも多面的に捉えていただける遊びのある表現にするという難しさがありました。なのでまずは一人称と二人称、“私”や“あなた”といった言葉は使わないことに決めて、心象描写から風景が見えるような書き方を心がけました。テーマは“愛”。葉自身を表しているのが愛ですし、敵対するハオは愛に飢えた存在なので、そこにどう向き合っていくかを基軸に置きながら書いていきました。

――1番のサビ頭の“天地を返すほど珠玉の愛で”というフレーズは、特に耳に残りました。

水樹 ハオの生き方を見ていると、正義というのは矛先を間違ってしまうと凶器になるというメッセージも『SHAMAN KING』には込められていると思いますし、多種多様、本当に色々な考え方があっていいけれど、そこに愛はあるのか、どういう愛の置き方なのか、“愛”に対するそれぞれの向き合い方を歌詞に落とし込めたらいいなと思いました。独りよがりな愛ではダメだし、葉のように愛の矛先を自由自在に変えたり、受け止めてあげられたら、歪んだ愛もきっとその人の理想の形に昇華させられるんじゃないか。そんなことを思いながら書いた歌詞です。

――歌始まりの部分の歌詞“恐れることなく 今こそ叫べ”は、この曲のタイトル「Get up! Shout!」ともリンクする象徴的な言葉に感じました。

水樹 ここは一番最後に書いた部分です。歴代の主題歌は冒頭の歌でギュっと引き込まれるような構成だったので、私もシンプルでグッと世界に入り込める言葉にしたいと思って。歌詞の最後の“Get up! Shout! Over soul!!”までを書き終えたときに、これしかない!と思って“今こそ叫べ”を置きました。それぞれ目的は違えどシャーマンキングになることを目指して同じところに向かっている彼らを象徴する言葉になると思いましたし、今はコロナ禍で思うようにいかない状態が続いているなか、「今できることから、少しずつでいいから前に進んでいこう!」という気持ちも込めています!

――最後の“Get up! Shout! Over soul!!”というフレーズもド直球ですよね。「Over Soul」と言えば、林原さんが担当した2000年版『シャーマンキング』の最初のOPテーマのタイトルでもありますし。

水樹 ここの最後の3音を聴いたとき、“Over soul!!”以外の言葉は考えられなかったんです。林原さんの「Over Soul」からこの作品が始まったので、リスペクトの思いも込めて書かせていただきました。そしてライブで早くみんなと叫びたい、みんなで歌いたい!など色々な想いを込めています。

――歌声としては、全体的にパワフルさを感じさせつつ、Aメロの部分はやや抜け感があったりと、かなり緩急の付いた構成に感じました。

水樹 本当に表情をころころと変えていく曲で、Aメロは逸る気持ちを押さえつけながら夢や目標に向かって疾走していく感じがありますし、Bメロではこれまで歩んできた道や今の自分と向き合うような、メロディに身をゆだねて漂うようなところがあって、そこからサビで爆発するという。柳のように風に身を任せたり、でもそれを目的をもってしなやかに動いているように見せたりと、葉の心情を表しているような構成がすごく気に入っています。冒頭とサビは直球なので、頭であれこれ考えずに自分の気持ちを爆発させる感じですが、A、Bメロでは逆に内面の部分、ふつふつ湧き上がる気持ちを表現していて、ゾーンによって歌との向き合い方も違って面白かったです。

次ページ:デビュー21年目の水樹奈々が届ける、希望と無限大の愛が詰まった歌

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