――堀江さんは『先輩がうざい後輩の話』に桜井優人役の声優としても参加されているわけですが、改めてこの作品の印象や魅力についてお聞かせいただけますか?
堀江 原作のマンガは以前少し読んだことがあったのですが、出演が決まって改めてしっかりと読ませていただいたら、武田(晴海)先輩と(五十嵐)双葉ちゃん、風間(蒼太)くんと(桜井)桃子、主に二組の会社の同僚による淡い人間関係が描かれていて。私が演じる優人くんと憧れの人の(黒部)夏美さんの関係も含めて、キャラクターの一人一人が魅力的で、みんなすごくピュアなんですよね。武田先輩と風間くんは全然違うタイプですけど、どっちもかっこいいなと思うし、女の子たちもみんなかわいいところがあって。身近な友だちのような“いい人感”があるというか、いわゆる“女神様”的ないい人ではなく、人間らしい感情を抱えたいい人の集まりなので、見ていて純粋に応援したくなるし、優しい気持ちになれる作品だと思いました。
――たしかに会社の同僚という設定を含め、現実の世界との距離を感じさせない作風ですね。
堀江 でも、実際にあるかと言うとちょっとわからないですよね。私は会社勤めをしたことがないので余計に「会社って本当にこんな感じなんですか!?」と思ってしまいました(笑)。双葉ちゃんみたいな子も、現実にはいそうでいないんですけど、でも、彼女みたいに自分にコンプレックスを抱えていたり、相手に対して「いや、好きじゃないし!」って強がってしまう人はいると思うんですよね。だから、この作品に触れて自分に重ねる人もいるだろうし、友達や知り合いに重ねる人もいるだろうなと思って。
――そこは各キャラクターの心情や関係性が丁寧に描かれているからこそなのかなと。
堀江 私が演じさせていただいている優人くんであれば、部活や友だちとの関係性で悩みがあって、夏美さんという年上の女性に相談するんですけど、そういう悩みって自分が学生時代に抱えていたものに通じる部分がありますし、さらに言うと、今でも種類は違えど同じような悩みがあったりもして。人間が抱えている根本的な部分は、学生から大人になってもそれほど変わらないと思いますし、この作品はその部分を上手く描いている印象があるんです。だから誰にでも共感できる作品だと思います。
――堀江さんが演じる優人は高校生の少年ですが、少年役を担当するのは珍しいですよね。過去にも『リトルバスターズ!』の直枝理樹役などはありましたけど。
堀江 そうですね。女の子のふりをしている男の子とかはたまにありますけど(笑)。理樹くんも女の子っぽい顔立ちをいじられたり、あの作品に登場する男の子のなかでは一番かわいらしい子ではあったんですが、当時は毎回、結構ドキドキしながら男の子として演じていました。なので今回も「頑張らなくちゃ!」という気持ちでアフレコに行ったんですけど、実際にやってみたら「いや、もっと可愛くしてください」という指示をいただいたんです。私は「これ以上やると本当に女の子みたいになっちゃいますけど……」と思ったんですけど、「優人くんは気弱で、自分に自信がないところがあるキャラクターなので、女の子みたいに聞こえても大丈夫です。優人くんはこの作品のマドンナなんです」と言われまして。
――マドンナですか(笑)。
堀江 この作品に登場するキャラクターは基本みんな大人ですし、女性キャラも、自立していたり、気が強かったり、変わり者だったりするので(笑)。そのなかで優人くんはみんなよりも年下で、気弱で優しい子なので、“見守ってあげたい”だとか“からかいたい・いじりたい”存在であってほしいという意味で、優人くんはマドンナ的なポジションなんだそうです(笑)。原作の中でも、風間くんに最初は女の子と勘違いされたりもするので、なるほどと思いましたね。
――優人はまだ大人ではない、未成熟な存在だからこそ、夏美に対して強い憧れを抱くんでしょうね。
堀江 そうですね。音響監督さんにも「優人くんくらいの年頃の少年というのは、年上のお姉さんに対して絶対憧れがあって、すぐ好きになっちゃうから」って熱く語られました(笑)。たしかに十代の男の子にとっては、クラスメイトよりも年上のかっこいいお姉さんは魅力的に映るんだろうなと思いましたし、しかも夏美さんは優人くんが悩んでいるときにアドバイスしてくれたり、背中を押してくれる人でもあるので。それに身近なお姉ちゃんの桃子とはタイプが全然違う、“かっこいい”と“綺麗”を足したような人じゃないですか。きっと「うちのお姉ちゃんとは全然違う綺麗なお姉さんがいる」という印象なのかなと思いながら演じました。
――作中では、武田先輩と後輩の双葉、桃子と風間の関係性も描かれています。堀江さん的には、どのペアの関係性にキュンとなりますか?
堀江 うーん……どのペアもいいですけど、私は“年齢差”が好きなので、うちのチーム(優人と夏美)がいいかな(笑)。自分が学生の頃にそういうマンガを読んでいても、年上の人に憧れた記憶がありますし、今回は優人くんをやらせていただいているので、余計にそう感じるんだと思います。
――「虹が架かるまでの話」の歌詞には“ふたり”のもどかしい関係性が投影されていますが、レコーディングの際は作品の誰かをイメージして歌われたのでしょうか?
堀江 どちらかと言うと武田先輩と双葉ちゃんのイメージが強かったんですが、この作品には色んな“ふたり”が登場しますし、作品の楽曲としてだけでなく、この曲だけを聴いた人の中でも完結するものにしたかったので、色々当てはまるといいなと思いながら歌いました。
――たしかに歌に優しさが溢れていて、“ふたり”の存在に没入するというよりも、見守っているような雰囲気を感じました。
堀江 ありがとうございます。完成した音源を聴いたら、アレンジやミックスもあって、元々録った歌よりもキラッとしている感じに聴こえて、美しい仕上がりになったと思います。
――サウンド的にも、全体的に柔らかさを感じさせつつ、透明感のあるシンセや打ち込みのビートがキラキラした雰囲気を加味していますよね。
堀江 基本的には前向きな楽曲に聴こえるし、かといってガチャガチャしているわけでもなくて。それとサビのキーがいつもよりちょっと高めなところも、キラッと聴こえる理由だと思います。
――この楽曲を作曲・編曲した中野領太さんは、堀江さんのアルバム『文学少女の歌集』(2019年)にも「光の海へ」という楽曲を提供されていましたが、そのテイストにも通じる煌びやかさと言いますか。
堀江 実は中野さんが作られた楽曲だとは知らなくて、レコーディング現場でお会いして「ご無沙汰しています」と言われたときに初めて気づきました(笑)。デモを選ぶ段階では、先入観をもたないように、どなたが作ったのかを見ないようにしているので。でも、きっと私はこういう雰囲気が好きなんだと思います。
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