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INTERVIEW

2021.10.09

【インタビュー】ORESAMA、3年半ぶりニューアルバム『CONTINEW WORLD』が照らし出す“新しい世界”と“続いていくこと”への覚悟

【インタビュー】ORESAMA、3年半ぶりニューアルバム『CONTINEW WORLD』が照らし出す“新しい世界”と“続いていくこと”への覚悟

ポップなファンクからゴスペルまで!バラエティ豊かに進化した新曲たち

――4曲目の「Chewy Candy」は、エレクトロスウィング調の雰囲気あるナンバー。

小島 前作(『Hi-Fi POPS』)に収録した「cute cute」がライブでも盛り上がれる楽曲になったので、その流れで今回もエレクトロスウィングを1曲入れたくて作りました。この曲に関しては、僕は『ざしきわらしのタタミちゃん』(2020年放送のミニアニメ)で初めて劇伴を作らせていただいたのですが、そのときの「音で雰囲気を作る」という経験が活きていて。ちょっと不気味な効果音を追加することで、音としても独特な雰囲気を表現した曲です。

ぽん 私は以前からずっと「歌で、音で遊んでいるような楽曲がほしい」と言っていたんですけど、この曲はポイントとなる箇所以外は歌詞がなくて、スキャットでダバダバ歌っている曲にしました。私たちのつくったものが、噛んだあとに吐き捨てられるチューイングガムではなく、噛み砕いたあとに聴き手のなかに溶けていくようなものでありたい、というテーマで歌詞を書いて。

小島 仮メロを送ったときは、ここまで歌詞がないものになるとは思わなくて(笑)。でも、こういう遊び方は今までしていなかったので面白かったですね。

――6曲目の「ロマネスク」はライブを意識して作られたとのことですが、個人的には80sファンク、とりわけプリンス周辺のミネアポリスサウンドのようなノリを感じました。

小島 かなり影響を受けていると思います。プリンスのバンドでも活動していた、イーダ・ニールセンというベーシストが大好きで、この曲を制作していた頃はその方の音源をよく聴いていました。“Dressup cover”シリーズ(2020年よりスタートした、ORESAMAが自身の楽曲をリアレンジするシリーズ)で色んなジャンルを取り入れたことで、楽曲制作の幅も広がってきたので、その意味でもこういうサウンドになったんだと思います。

――間奏のシンセソロがブニョブニョうねっているところからは、特にファンク魂を感じました。

小島 ありがとうございます(笑)。僕はJUNO(ローランド製のアナログシンセサイザー)が大好きで、その部分もJUNOで作りましたね。今回のアルバムは、シンセを効果的に入れてエッセンスになるような作り方をしています。

――ぽんさんはどんな想いを込めて歌詞を書きましたか?

ぽん 先ほどもお話しした“時間の移り変わり”というテーマで、どんな瞬間も永遠になることはなくて、さらさらと流れていく時間のなかで、今日も自分は自分なりに凛として生きていきたい、という強い気持ちを込めました。「ロマネスク」という言葉には“小説のように奇異なあれこれ”という意味があるのですが、音のハマり的にもこの言葉しかないと思ってタイトルにしました。

――“酸いも甘いも 嘘も期待も 交差する今日も 凛々しくいきましょうか”という歌詞がすごく良くて。ぽんさんはORESAMAの歌詞を通じて、自分の弱い部分も表現してきましたけど、今回もそういう要素はありつつ、よりたくましくなっている印象を受けました。

ぽん 人間というのは、強い自分も、弱い自分も内包しているものだし、ORESAMAはそういうものをどちらも音楽に昇華して、最後は笑い合えるようなユニットだと思うんです。今回のアルバムでもそういう部分を見せたくて。

――その「ロマネスク」とは逆に、人間の弱い部分を表現したのが、次の新曲「Baby Baby Blue」と言えそうですね。

ぽん この曲も“時間の移り変わり”をテーマに歌詞を書いたんですけど、「ロマネスク」の強い気持ちとは裏腹に、やわらかい部分を歌いたかったんです。時間が進んで自分が変わっていくなか、後ろ髪を引かれる、過去への執着をそっと手放すような、そんな気持ちに寄り添うはなむけの曲だと思います。

――特に“遠ざかるすべてがプラチナみたいだ”というフレーズからは、大切な時間が過ぎ去っていくことの切なさを感じてグッときました。

ぽん 過去ってどうしても美しくなっていくじゃないですか。「Baby Baby Blue」は大きな青春というよりも、一区切りごとにあった自分の愛しい青春というイメージがあって。「ロマネスク」と合わせて、これが私なのかなって思います。

――表裏一体な部分もあるわけですね。楽曲としてはクールかつメロウな曲調ですが、小島さんはどんなイメージでこの曲を作ったのですか?

小島 これはまさにブルーのイメージで、実は最初のデモはかなりR&Bっぽい、もっとメロウで青い雰囲気の楽曲だったんです。そこから仮歌を入れたりするうちに、歪んだギターや強めのシンセを加えたくなって。なので初期のメロウな部分も残しつつ、僕の中のロックを詰め込んだ曲になります。ただ、出来上がったものはまったくロックではないですけど(笑)。

――とはいえギターリフのかっこよさがこの曲の肝になっているのかなと。

小島 ありがとうございます。この曲はアレンジに時間がかかって、ギターソロも実は終盤で追加したんです。歌をレコーディングしたあとも、それを聴きながらギターやベースを全部録り直して。ギターのリフがハマったときに、楽曲の方向性が固まった気がします。

――ちなみに8曲目の「Waiting for…」は今回新しいミックスで収録されていますが、元々はシングル「流星ダンスフロア」(2017年)のカップリング曲ですよね。4年ほど前の楽曲を今作に改めて収録したのは?

小島 僕的には比較的最近の活動だけでなく、もっと過去からの流れもアルバムで感じてほしかったのと、「Waiting for…」はシンセサイザーと生楽器のバランスが良くて挑戦的な楽曲だったので、このタイミングで再ミックスして、今の自分たちの音で収録することで、僕らの音の流れがよりわかるようにしたい意図がありました。

――なるほど。11曲目の新曲「Moonlight」はゴスペルの要素を取り入れたナンバー。小島さんは以前の取材で、ゴスペルが好きでいつかORESAMAでもそういう楽曲を作ってみたいとおっしゃっていましたね。

小島 そうですね。今はコロナ禍の影響で音楽の状況が変わってしまって、非常につらくて過酷な部分もあるじゃないですか。そういうものに対して、そしてこれからの自分たちの未来に対して、祈りを捧げるニュアンスの楽曲をアルバムに入れたくて。それをぽんちゃんの歌詞だけに任せるのではなく、音の面でもしっかりと表現したくて、ゴスペル調の曲にしました。

ぽん この曲が一番今の小島くんの趣味嗜好が詰まっている気がする。

小島 そうだね。この曲はクワイア的なコーラスをかなり大きくして、ぽんちゃんがコーラスに包まれて歌っているイメージで作ったんです。早くみんなで合唱しながらライブができる日が来てくれるように、そういう願いを込めたので、“祈り”が大きなキーワードになっています。

――ぽんさんも歌詞を書くにあたり、そういった“祈り”や“願い”を意識しましたか?

ぽん 私はいつも応援してくれるみんなの存在を書きたいなと思って。私がつらかったり、しんどかったときに、みんなの温かさが糧になったように、今度はみんなが後ろ向きになってしまうことがあったときに、この曲がみんなを照らせたらという願いを込めました。

――歌詞には“あの状景想い 刻む わたしの在り処”というフレーズもありますが、やはりお二人はライブの景色が思い浮かんだりするのでしょうか?

ぽん まさにそれを思いながら書きました。(ライブの)幕が開いた瞬間のみんなの顔は忘れられないですし、それを思い出して踏ん張れたところもあるので。私たちはいつもみんなからもらうばかりだなって思っていて。「みんなのことを肯定したい」とは言っていますけど、みんなが私たちの力になっていることを、この曲で伝えられたらと思います。

――サウンド面の話に戻りますが、この曲は2番以降に足踏みの音が入っていたり、今までとは一味違った工夫を感じました。

小島 足踏みや手拍子は全員で空間を共有しているイメージ、ライブでみんなと一緒にできる要素の1つとして入れました。音楽的にも人間のアナログ感や生感が出ますし、実際に僕が足踏みや手拍子した音を混ぜて使っています。

――クワイアコーラスも実際に録音したのですか?

小島 録りました。あれは何十本もの声が重なっているんですけど、その9割はぽんちゃんが歌っています(笑)。ただ、全部ぽんちゃんだと、メインの歌とコーラスが同じ質感になってしまうので、残りの1割は僕も歌っていますし、僕やぽんちゃんの声を加工したデジタルな要素も加えて厚みを出しました。ぽんちゃんにも「ゴスペルっぽく」とか「もっとパワフルに」とか、色々リクエストして声質を変えて歌ってもらって。

ぽん 信じられないほど高い音とか、今まで出したことのない声でも歌いました(笑)。

――そしてアルバムを締め括るのが表題曲の「CONTINEW WORLD」。サウンド的には、視界が一気に広がるようなスケール感の開放的なディスコナンバーです。

小島 この曲は僕の中では、前作(『Hi-Fi POPS』)のリード曲「Hi-Fi TRAIN」から繋がる系譜の楽曲で、例えばイントロのストリングスは「Hi-Fi TRAIN」のセルフオマージュ的なフレーズを入れたりすることで、過去も全部引き連れて、このアルバムに入っていることを表現しました。あと、僕はこの曲が1曲目になると思って制作を始めたので、派手です(笑)。

――それがぽんさんの意向で……。

ぽん 強い訴えによってアルバムの最後の曲になりました(笑)。「Moonlight」で終わる案もあったんですけど、今回のアルバムのテーマは“続いていく”なので、それは違うかなと思って。私の中では、この曲でエンドロールが流れるイメージがあったので、どうしても最後がいいって言い続けたんです。

小島 でも、また1曲目に戻っていくようなニュアンスもあるので、結果的に良かったですね。

――この曲の歌詞は本当にキラーフレーズだらけで、“刹那的いのち抱え 痛いほどゾクゾク感じたい”など、世界が変わり続けるなかで生きることを力強く肯定する言葉に溢れています。

ぽん 生きている限り、自分がこの人生の主人公ということは変わらないですけど、それって自分も含め結構忘れがちだと思うんですよね。そういうことを今一度思い出すきっかけになったり、誰かの背中を押せる曲、私にとっても自分の背中を押すような気持ちで書きました。今のこの状況って、いたしかたなく変わることもあると思うんですけど、それをポジティブに昇華したかったので。

――最後は“振り返らず進むよ 僕らのNEW WORLD”で終わるところも、ORESAMAの世界がこれからも続いていくことが感じられて素敵です。

ぽん 目まぐるしく変化していく世の中でこれからも生きていくみんなを少しでも応援できたら嬉しいです。

次ページ:CD2枚組の豪華ボックス仕様でさらに広がるORESAMAのニューワールド!

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