【ライブレポート】生涯に一度だけの特別な初ワンマンライブ――。佐藤ミキ、“first live 「名もない花」”で改めて見せたシンガーの始まり。

儚くも芯の強さを感じさせるシルキーボイスが魅力のシンガー・佐藤ミキが、初のワンマンライブ“first live 「名もない花」”を、9月29日に東京・渋谷7th FLOORで開催した。2020年、SACRA MUSIC所属の新人としてシーンに登場し、同年12月にTVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のEDテーマ「名もない花」でメジャーデビュー。その大切なデビュー曲の名を冠したこのライブで、彼女は“佐藤ミキ”というシンガーの始まりを、改めて示してみせたのではないだろうか。生涯に一度だけ、特別な初ワンマンのレポートをお届けする。

ビルの7F、バーカウンターとゆったりくつろげる空間が広がる渋谷7th FLOORは、ちょっとした隠れ家のような雰囲気のお洒落なスペース。店内に入ると古いレゲエの楽曲が迎えてくれる。彼女の晴れ舞台を観に来たオーディエンスたちは、思い思いのドリンクを手に、リラックスしながら開演を心待ちにしている様子だ。

やがて店内BGMがフェードアウトし、佐藤ミキがステージに登壇。ややウェービーなヘアスタイル、秋らしいシックな色合いのロングワンピース姿の佐藤は、ハンドマイクを手に取ると、まずは「Play the real」を歌う。2020年7月、シンガーとして本格始動したタイミングに合わせてYouTubeの公式チャンネルなどを通じて発表された、彼女にとって最初のオリジナル曲だ。イントロ部分の一節“確かなものは何もない旅 この声だけを頼りに”と歌った直後、「佐藤ミキです、よろしくお願いします」とにこやかに挨拶すると、スペーシーなシンセサウンドと力強いリズムに身をあずけながら、しなやかな歌声を会場いっぱいに届ける。

続いて披露されたのは「You & Me」。TVアニメ『裏世界ピクニック』のEDテーマとしても知られるミディアムナンバーだ。紙越空魚と仁科鳥子、性格やタイプはまったく違うが“裏世界”の探検を通じて心を通わせていく『裏世界ピクニック』の主人公二人の関係性をモチーフにしつつ、“あなた”によって変わっていく“わたし”、対人関係の中で気づく自分自身の新しい一面といった、誰もが共感できる題材を表現した歌詞が、佐藤の繊細なボーカルによって一層胸に響いてくる。

歌い終わり、客席に向かって深々とお辞儀した彼女は、「すごく緊張しているんですけど、今回は皆さまにお会いできることを楽しみにしていました」と喜びを伝える。この日、東京は未だ新型コロナウイルスのまん延に伴う緊急事態宣言の最中。佐藤自身もライブを行うことに対して、不安も少なからずあったそうだが、自粛期間を経て改めて「私を含めて、音楽を必要としている人がたくさんいる」ことを実感し、初のワンマンライブのステージを迎えたとのことだ。

MCで想いを伝えた後は、朗読コーナーへ。自身がパーソナリティを務めるbayfmのラジオ番組「名もないラジオ」で、小説投稿サイト“monogatary.com”に掲載された物語を朗読する企画「名もないラジオの物語」を展開している彼女。今回はそれを生で行うという試みだ。この日はちょうど佐藤の25歳のバースデーということで、彼女が朗読したのは「僕の朝は誕生日 第1章」(作者:芽暗蝶月)という、誕生日をテーマにした物語。落ち込んで暗くなった心にポッと明るい灯を灯すようなストーリーで、オーディエンスは佐藤の朗読に聞き入っていた。なお、「名もないラジオの物語」の過去作は佐藤ミキ公式Instagramに順次公開されているので、気になった方はぜひチェックしてほしい。

朗読を経て緊張もほぐれた様子の佐藤が、次に歌ったのは安田レイ「Mirror」のカバー。アニメファンにはTVアニメ『魔法科高校の劣等生』(以下、『魔法科』)のEDテーマとしてお馴染みのこの楽曲、佐藤は同じく『魔法科』シリーズのテーマ曲を担当した縁もあって、デビューシングル「名もない花」のカップリングで同曲をカバーしていた経緯がある。ドラマチックな曲調に合わせて、陰影のある声で情熱的に歌い上げる佐藤。終盤のマイクを両手で握りしめる仕草からは、“キミがいるだけでいい”という歌詞と合わさって、感情の高ぶりが伝わってきた。

「Mirror」で初めてカバーに取り組んだことがきっかけとなり、カバー曲に対する意欲が増したという佐藤は、現在、公式YouTubeチャンネルにて、時代を彩った名曲たちをカバーする企画“BARミキ”を展開。ここからは、そこで公開している2曲のカバーを立て続けに披露する。1曲目はサスケ「青いベンチ」。オルガンやエレピ系の音色とレイドバックしたビートが温かな景色を描くなか、佐藤は“もう二度と戻らない恋”の切ない想いを情感たっぷりに表現する。続くチューリップ「サボテンの花」のカバーでは、軽快なバックトラックに合わせて観客に手拍子を誘い、一体感を演出。トロピカル~チル風味の新鮮なアレンジと、あくまでも歌心を大切にした佐藤の歌唱との対比が絶妙な効果を生み出していた。

ここまで一人でステージに立っていた佐藤だったが、ここでスペシャルゲストの渡辺シュンスケを迎え入れる。佐藤が今年3月にBillboard Live TOKYOより届けた配信プログラム“You & Me & YouTube”でも伴奏を務めた渡辺。今回もグランドピアノの生演奏で佐藤のライブに花を添える。佐藤の「まずは夏の終わりにぴったりなこの曲を」という前置きに続いて披露されたのは、甘酸っぱい恋愛模様と花火の情景を描いた「A KA SA TA NA」。原曲のローファイヒップホップに通じるメロウなサウンドから一転、ピアノ1本で紡がれたこの日の「A KA SA TA NA」は、生演奏ならではの空気感が凝縮されたものに。佐藤は時おりピアノのほうを振り向き、渡辺と息を合わせながらセッション。夏の終わりを思わせるセンチメンタルな雰囲気から、徐々にスイングしていくピアノのタッチに合わせ、佐藤の歌声も熱を帯びていく、実に聴き応えのあるステージングだった。

佐藤が一人で作詞を手がけた「Last minutes」は、ピアノのしっとりとした伴奏が、別れをテーマにした歌詞の内容にぴったりと寄り添い、佐藤も切々とした歌を紡いでいく。そして「時間が過ぎるのは早いことをすごく実感しています」と語った彼女は、「誕生日に皆さんと同じ時間を共有できて、私がすごく素敵なプレゼントをもらった気持ちでいます」と感謝の気持ちを述べ、ライブ本編の最後の曲「名もない花」へ。伴奏がピアノのみだからこそ、佐藤の細やかな表現、歌詞の内容に合わせた抑揚の付け方の変化がよりはっきりと伝わってくる。秘めた想い、情熱、願い――司波深雪が“お兄さま”に抱く気持ちを受け止めて生まれたこの楽曲は、佐藤ミキにとって特別な楽曲になっていることを、心から実感することができた。

笑顔で退場したあと、アンコールの拍手を受けて再びステージに戻ってきた佐藤は、「1時間のライブを一人で行うのも初めてですし、アンコールをいただくのも人生で初めてなので、とても新鮮な気持ちです。本当にありがとうございます」と、初々しく挨拶。そしてライブに来てくれたファンへの特別なプレゼントとして、新曲「東雲の空」を初披露する。11月5日公開の実写映画「シノノメ色の週末」の主題歌となる本楽曲、作詞は高橋久美子、作曲は金澤ダイスケ(フジファブリック)、編曲は河野 圭が担当。バンドサウンドとストリングスが柔らかに絡み合うミディアムナンバーで、自分自身を優しく肯定するような歌詞を含め、全体の印象を一言で表すなら“希望の歌”だ。“好きな歌を歌おう”“真っ白な朝の向こうで 私らしく歩いていこう”と心を込めて歌う佐藤の姿からは、この初ワンマンから改めて未来への一歩を踏み出そうとする意志が感じ取られた。

佐藤は新曲「東雲の空」について、「悩んだ道の先でほっと一息ついてゆっくり前を向く曲」「聴いてくれた皆さんが少しでも背中が押される気持ちになるように歌いました」と説明。そして「次の曲で本当に最後になります」と名残惜しそうに語る。彼女が初ワンマンの締め括りに選んだのは、やはりこの楽曲、「名もない花」。今度はオリジナルのアレンジに乗せて、優しくも力強い、包容力をも感じさせる美声で、感情豊かに自身のメジャーデビュー曲を表現していく。“佐藤ミキ”という名の花が、この先どのように色づいていくのか。“first live 「名もない花」”は、その可能性を示す一夜でもあったように思う。

TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

<セットリスト>
01. Play the real
02. You & Me
03. 朗読
04. Mirror
05. 青いベンチ
06. サボテンの花
07. A KA SA TA NA(アコースティックver)
08. Last minutes(アコースティックver)
09. 名もない花(アコースティックver)
―ENCORE―
EN01. 東雲の空
EN02. 名もない花


●配信情報
BAR ミキ
佐藤ミキ公式YouTubeチャンネルで、時代を彩った名曲をカバー。
佐藤ミキ 公式YouTube チャンネルにて随時公開

関連リンク

佐藤ミキ 公式サイト
https://www.satomiki-official.com/

佐藤ミキ 公式Twitter
https://twitter.com/satomiki_0929

佐藤ミキ 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCatjCAOFtrelaSPOd02cMCQ

佐藤ミキ 公式Instagram
https://www.instagram.com/satomiki_0929/

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