儚くきれいに、言葉と想いを繋ぐ――。DIALOGUE+「おもいでしりとり」リリースインタビュー

田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が音楽プロデューサーを務める、新人女性声優8人によるグループ・DIALOGUE+。彼女たちが5月19日にリリースしたニューシングル「おもいでしりとり」は、放送中のTVアニメ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。(以下:ひげひろ)』のOPテーマに起用。作詞・作曲も田淵が手がけ、睦月周平によるストリングスを前面に出したアレンジがDIALOGUE+曲随一のせつなさとポップさをもつ曲へと仕上げた。今回はリリースにあたって、DIALOGUE+へのインタビューを敢行。歌とMVからこのシングルへと込めた想いを中心に、たっぷり語ってもらった。

せつないポップナンバー「おもいでしりとり」は、“言葉”が重要な1曲

――『ひげひろ』のオンエアも始まり、リリースに先立って「おもいでしりとり」のフルサイズのMVも公開されました。

鷹村彩花 アニメがオンエアされた直後には、皆さんのおかげで「おもいでしりとり」がTwitterのトレンド入りしたんですよ! しかも、MV公開から4日で再生回数が10万回を突破したのも私たちにとっては初めてのことだったので、たくさん聴いていただけてすごくありがたいなぁ、と思いました。

緒方佑奈 それに今回は、コメントに各々の解釈とか考察を書いてくださる方も多くて。私たちも気づかなかったような視点から考察されている方もいたので、それだけたくさんこの曲を聴いてたくさん考えてくださったのだと思います。コメントの一つひとつを見て、届いたものがこんなにいっぱいあるんだ!と、すごく温かい気持ちになりました。

――では、改めて「おもいでしりとり」について、まず楽曲自体の最初の印象からお聞かせください。

飯塚麻結 私たちは普段アニソンを歌うことが多いんですけど、この曲はなんだかJ-POPに近いような印象を受けました。

宮原颯希 それに、結構私たちの曲ってライブで盛り上がれる「エネルギーいっぱい!」みたいな感じの曲が多いんですけど、今回はそういうパンチがある曲というよりも、すごくキラキラしてきれいで優しい雰囲気があるんです。なので、今まで歌ってきた曲とは全然印象が違って、またこれもこれで好きだなぁと思いました。

村上まなつ 今回ストリングスが結構強めに入っているのもあってか、王道で爽やかさもあって。衣装も白かったりと、そういう部分でも爽やかさとか女の子らしさがある曲だと思うんです。

内山悠里菜 うん。可憐さとか儚さみたいなものがある曲だよね。

稗田寧々 ただ、実はこの楽曲をレコーディングしたのは結構前で。最初にいただいたのは、「夏の花火と君と青(以下:夏花火。2020年12月配信リリース)」を歌ったのと同じ頃、1年ぐらい前なんです。

守屋亨香 自粛期間中に“宿題”としてダンスや歌に取り組んでいた中の一つに、「この曲を、フルで歌ってください」というものがあったんだよね。

稗田 そう。で、その「夏花火」は同じ恋愛要素の強い曲でも、夏の曲らしく湧き上がる情熱とか感情を感じられて。パンチが強めの熱い曲なんです。でも「おもいでしりとり」は、熱さよりも包み込むようなふんわりとした温かさを感じたので、印象が全然違うように感じました。

内山 私、この曲にはすごい「かわいいな」という印象があります。いちばん最初は宮原さんが言ったように「きれいだな」とも感じたんですけど、歌詞を見ていくと『ひげひろ』にも通じる「女の子のせつない気持ちを伝えたい」という想いが込められているように感じて。でも同時に、「強くはない子なんだろうな」という印象もありました。伝えたいけど、うまく言葉にできない不器用な子っているじゃないですか? そういう印象だったから「はぁ、かわいい……!」みたいな気持ちになりました(笑)。

緒方 たしかに、内山は中身がかっこいいからね(笑)。

――他の皆さんも、曲と『ひげひろ』との結びつきは感じられましたか?

宮原 まず私は、この曲自体が男女の物語なのかな?と思いまして。まずはそういう全体像でのリンクを感じました。それに、あと1番Aメロの“昨日よりも今日は幸せなはずなのにね”とか、Bメロの“温もりが必要だったり”みたいなポジティブだけではない歌詞も、ヒロインの(荻原)沙優ちゃんの気持ちに繋がる気がして。

稗田 わかる。しかも曲自体はかわいらしさとか優しい印象が強いのに歌詞はそのイメージとは裏腹な感じがするところが、沙優ちゃんの第一印象と、あとからわかってくる沙優ちゃんの事情とか心に抱えたものとのギャップに重なってくるような感じもするよね。

鷹村 それに「夏花火」のときにも思ったんですけど、恋愛って相手がいないとできないものじゃないですか? だから、曲の中でちゃんと相手を感じられるということにすごくぐっとくるというか、いいなって思いました。

――そういう意味でも、サビに出てくるカギカッコが使われた、掛け合いのようになっている部分は非常に大事になるような気がします。

稗田 その部分は、カギカッコごとに歌詞がしりとりになっているんですけど……。

飯塚 私、その中の“「行かないで」”とか“「できるだけそばに」”みたいな言葉が、沙優ちゃんが本当は言いたいけど言えない気持ちだと解釈していまして。それ以外の部分には作り笑いをしちゃったり本心を言えなかったりする、みんなに見せる沙優ちゃんが出ているのかな、という感じがしています。

緒方 しかも、しりとりが後半になるにつれて想いがだんだん高ぶっていっている感じが読み取れるのも、すごく素敵なんです。

飯塚 で、Dメロを経ての“「好きです」”がねぇ……。

緒方 ね! 「あー!」ってなった。

内山 ずっと言いたかったことが、やっと言えるんだもんね。だから私、1曲の中だけでも成長を感じました。

――この曲のヒロインの?

内山 はい。最初は「後悔したくないことだけはわかってるのに、どうして言えないの?」みたいな気持ちだったのが、「やっと言えるんだ 好きです」になって。最後に「届けるんだ!」という言葉で終わるところからも、すごく成長を感じます。

――そんなこの曲、レコーディングの際にはどんなことを心がけられましたか?

村上 実はこの曲が『ひげひろ』のオープニングになることは、レコーディングのときに決まってはいたらしいんですけど、私たちは知らなかったんです。なので、そのときは純粋に田淵さんからの宿題へのコメントだったり当日のディレクションに沿って、歌い方を変えていきました。ただ、私自身は曲から「男女ふたりの物語のある曲だな」と感じていたので、歌い方をちょっとずつ、場所ごとに変えようと考えながら歌っていったんです。

稗田 私、歌い方が結構圧が強くて。特に高いキーになるとどうしても「よし、出すぞ!」となりがちなんです。でも今回は曲全体に柔らかいイメージもありましたし、田淵さんからも「細かい表現の違いみたいなものをここでしっかり出せるように」みたいなことを言われたのもあって、「感情を乗せたうえで主張しすぎない」ということを心がけまして。どちらかというと、優しさや温かさみたいな感情を優先して、歌声に含ませてまとめることにすごく難しさを感じました。

――その部分は、宿題のときにも指摘された部分?

稗田 はい。しかも、かなり具体的に。だから自分でも「やっぱり、足りていないところなんだ」と思ったので、いただいたアドバイスを参考にして、家で鏡を使って表情を見ながら歌って練習しました。ほかには「もし演技として表現するなら、どういうふうに読むんだろう?」みたいなことも考えて、歌詞を音読してみたりもしましたね。

――そういう部分は、ほかの皆さんも燃えたポイントでしたか?

守屋 はい。たぶん田淵さんは個々にある課題を指摘してくださっているんだと思うので、それについても自分は個人としても伸ばしていきたい、という気持ちもありますし。色々な曲を歌うことで私たちもそれぞれの歌詞に対する考えの深さとか、その気持ちになって歌うときの入り込む度合いみたいなものも、すごく変わってきているように感じます。

――ご自身でも、この曲でその変化は感じましたか?

守屋 感じますね。まだまだだとは思うんですけど。私はかわいい歌とか元気な歌は得意なんですけど、「おもいでしりとり」みたいな歌は昔からすごく苦手で、なかなか感情移入できずにうまく歌えない部分もあったんです。でも今回は自然といつもより大人っぽい歌い方にシフトチェンジできていたし、それをファンの方から「すごくわかったよ」と言ってもらえたことも、すごく嬉しかったです。メンバーのみんなの歌も、どんどん気持ちのこもったものになっていってるように思います。

――気持ちの強さというと、この曲では2-Bメロの“言い聞かせたっていつもイメージ通りからは程遠いな”という部分から特に感じました。

稗田 宮原の、魂のとこかな?

宮原 あぁ! あそこは直前がゆりにゃ(=内山)のパートだったので、そこからサビに向けてどう盛り上げていけばいいのかな?って組み立てました。サビのカギカッコが続くところもそれぞれの歌い方を想像して、クレッシェンドになるようにできたらいいな……って考えていったんです。

――曲全体の流れを考えて、歌い方を決めた。

宮原 はい。きっとみんなも考えていたとは思うんですけど、そういうところは私もすごく気をつけました。

緒方 たしかに、みんな曲の気持ちを考えながら「ここをあの子が歌うから、私はこうしよう」みたいなプランを立てられるようになってきたよね。

宮原 うん。そういうことを考えるきっかけにもなった曲だな、と私は捉えています。

緒方 あと、DIALOGUE+の曲って“オーディション”の箇所がたくさんあるんですけど、この曲に関してはそれが特に多くて。サビ前の“知らない”とか“ごめん”みたいなセリフの部分は全部オーディションなんです。そこを、キャラではなくそれぞれの個性を出しつつ表現するとなったときに、「私はいったい、どういうアプローチをすればいいんだろう!?」とすごく悩んで。そういう意味でも、きょん(=守屋)が言った難しさみたいなものは私も感じました。

――そしてMVは、本当にいろいろな角度からタイトルに結びつくものになりましたね。

稗田 歌詞がしりとりになっている部分で、私たちが実際に文字を持って渡しに行くというところを映像で観ることで、歌詞だけの情報以上に「ここがこうやって繋がってるんだ」というのがよりわかりやすくなったのをすごく感じました。それに、渡すときの表情からもいろいろと考察できるし、「ここはこういう感情なんだ」みたいものがすごくわかるなぁって。

緒方 しかも最後さ、「届けるんだ」から「DIALOGUE」になったのびっくりしなかった?

守屋 そう!最後のほうで、内山さんが光のところに「だ」を掲げてから、最後の最後に……。

緒方 「あ、そう繋がるんだ!」と思ったよ!私たちも知らなかったので、すごい感動しました。

稗田 ここも、曲だけ聴いたらただ「“だ”で終わった」だけなんですけど、映像を観ると「あれ、“だ”を持ってる?え、“だいあろーぐ”?」ってなるんです。

村上 しかも、一番最後のカギカッコ部分の“「一緒にいよう」”を歌うゆーなさんが、MVだと一番最初に“う”を渡しに行っているんですよ。だからそこで「え!? 繋がってるじゃん!」みたいに思って!

飯塚 何ヶ月か前、ライブ後にスタッフさんだけで配信したときに、ずっとDIALOGUE+のMVを撮ってくださってる安井(塑宇)監督が、「この曲、本当にみんな好きですよ!」ってすごく興奮して喋っていたんです。だからきっと、安井さんもめちゃめちゃ気合いを入れて考えてくださったんだろうな……って。普通「恋愛ソングですよ」と聞いて、こういうMVって考えつかないでしょうし……糸もすごくない?

鷹村 糸すごかった!

緒方 MVの中で、みんなで繋がったやつね。

村上 実はあの糸も、最初のほうのシーンでは“しがらみ”みたいなイメージのものだったんです。なので、もしかしたらそこではあまりいい感じの雰囲気じゃないように感じるかもしれないんですが、。いちばん最後の「DIALOGUE」の文字を持ったときには、繋がれているのにみんなが笑っていて。「本当は、心地良いと感じる繋がりだったんだよ」っていう事だからなんですよね。

緒方 それを聞いて「なるほどな」となりましたし、最後のみんなの表情も、そういうものが伝わるものになっていると思います。

稗田 逆にラスサビまでは、今回はわりと笑顔を封印して、せつなさとかもどかしい感じを出したのも新鮮で。そういうところも、この曲の歌詞にリンクしているんですよ。

村上 あと今回はMVの中に、歌詞が字幕で出てるんですよ。

稗田 ね。あれマジで天才だよ本当に!

一同 (笑)。

村上 今回は歌詞がしりとりになっていたりとか、伝えたい言葉や文字をみんなで渡していったりと、言葉とか文字がだいぶキーになっているような気がして。だからこそMVに歌詞をあえて載せるという選択をしたのかなと思って。「そういうところでも表現できるんだ!」って、そこでも感動しました。

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