アーティストデビュー30周年を記念したベストアルバムに続きTVアニメ『SHAMAN KING』のOP/EDテーマをリリースする林原めぐみ。20年ぶりの新作アニメとなる今作に、声優そしてシンガーとしてどう向き合ったのか?

2021年3月30日、 アーティストデビュー30周年を迎え、自身の誕生日に30th Anniversary Best Album『VINTAGE DENIM』を発表した林原めぐみ。続いて4月1日には、『SHAMAN KING』の完全新作アニメがスタートした。2000年の第一作からの続投となる恐山アンナ役と、新作OP/EDテーマを担当した林原に、復活した『SHAMAN KING』への思いを聞いた。

――最初のアニメ化から20年。イタコである恐山アンナは、林原さん自身に近いキャラクターとも言われています。出会ったときの印象はいかがでしたか。

林原めぐみ 初めて『SHAMAN KING』を読んだとき、勝手にアンナの声を自分で再生しちゃってました(笑)。これはやるしかないって思いましたね。二度目のアンナを演じている今、気をつけているのは「わかってる感」を出しすぎないこと。私はすでに彼女がどういう人間で、何に救われて、なぜ(麻倉)葉くんとともにいるのかを知っているけど、新しい視聴者にはこれから明かされていく。だから、変に包容力を出しすぎないようにしています。「わかってるわよ」という態度を見せながらも、あくまで少女であること。冷めてるようで、イライラしたり、怒ったり、感情を真っ直ぐ出していくことを心がけています。

――新しいオープニング主題歌となる「Soul salvation」は、名曲「Over Soul」や「Northern lights」の意志を受け継ぐ、疾走感溢れるアップテンポナンバーです。誕生秘話を教えてください。

林原 「Over Soul」が多くの人に愛され、第2弾「Northern lights」へ。そのときすでに、大変な難産でした。救世主は、たまたま乗った飛行機の機内誌。オーロラについての記事が載っていて、その位置はシャーマンが教えてくれること、オーロラ自体も「神の手」と呼ばれていることが書いてあったんです。これはもう「いただきます!」ですよね(笑)。「Over Soul」が「みんなといくぜ!」という熱い曲だとしたら、「Northern lights」では北の空のオーロラの中に感じるような神秘的で冷たい雰囲気や、憂いを表現したかった。そうすることで(葉の双子の兄)ハオの孤独感を入れ込むことができたと思っています。

そして今回、時を経て“三男”を生むことに。なぜいま『SHAMAN KING』なんだろう、その意義はと、いろいろ考えました。プレッシャーはあるし、原作を開くとすぐ「このワードが使えるかな」と浅ましい読み方をしてしまって、まあ、言葉が出てこない。困り果てたとき、自粛中に鬼のように観ていたYouTubeの動画が甦って、気分転換にフワフワのスライムを作り始めたんです。もう作詞そっちのけで、家族に心配されるくらい熱中して(笑)。そうしたら、頼まれたわけでもないのに必死でスライムを作ってる自分が面白くなっちゃって、ふと「神様ってこうやって人間を作ったんじゃないかな」と思ったりして。「なんで苦しんでたんだろう。好きな作品の主題歌をまた作れるんだから楽しめばいいじゃん」って。おかげで「Over Soul」を越えなきゃっていうプレッシャーから一気に解放されて―だから“越えて行こう 君と”なんですよ。笑っちゃうでしょ。

曲でなくこの苦難を、葉くんや阿弥陀丸やみんなと一緒に乗り越えていけばいい。みんなで世の中の疲弊した魂を助け出すから「Soul salvation」なんです。好きな歌詞は“底力にはまだ底(さき)がある”。作曲のたかはしごうさんも、「Over Soul」に使われた音をあえて入れるなど工夫してくださって、オールドファンの心にも響くものになったと思います。オープニングの画も、すごく綺麗ですよね。

――はい。2021年の私たちへ響くアンセムに、見事生まれ変わっていますね。一方、エンディングの「#ボクノユビサキ」は、前作とはまったく別のアプローチです。

林原 自粛中のYouTube鑑賞で気になったのが、音声合成ソフトの存在でした。初音ミクなどが登場したとき、最初はまったく受け入れられなかったのですが、時を経て「なんでそんなに人を熱狂させるんだろう」という方向で興味がわいてきた。様々な考察はあるでしょうし、私なりの考えは「人間じゃないからこそ、自分にダイレクト」だからかなと。例えば、浜崎あゆみさんが失恋ソングを歌ったら「あゆ、わかるよ」って彼女とシンクロしますよね。でも音声合成ソフトは誰でもないから、直接自分事に感じられるわけです。私の子供も好きなので「どこが好きなの?」って訊くと、答えは「なんとなく」。その裏にはいろんな要素があって「言葉にできない」という要素もあるはず。思考をすっ飛ばして喜怒哀楽を直接刺激するような、そういう働きをしているのかもしれません。そのダイレクトさを楽しんでる人たちもいる一方で、ダイレクトさとアドレナリン放出に少し疲れている人もいる。だからベストアルバムの3枚目のテーマはアコースティックな「眠り」にしましたが、じゃあ、音声合成ソフト風の歌を生身の人間が歌ったらどうなるんだろうって考えたんです。それって声優である自分ならではの実験だなって。ほとんど加工はせず、息継ぎもせず。3、4回目で成功しましたが、「これ人間の声なの?」って言ってもらえたら本望です。

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