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INTERVIEW

2020.11.20

連続配信リリース記念!「熊田茜音のくまだいありー」第4回目:ネムルトビラ

連続配信リリース記念!「熊田茜音のくまだいありー」第4回目:ネムルトビラ

8月より5ヵ月連続でデジタルシングルをリリースしている声優アーティスト・熊田茜音の魅力を、あらゆる角度から紹介するリスアニ!WEBの連載「熊田茜音のくまだいありー」。第4回は、先日出演した配信ライブイベントの裏話を皮切りに、アニメソングから洋楽ロックまで幅広い音楽の話題に花を咲かせたり、心の奥底にある気持ちを吐露した新曲「ネムルトビラ」での大変なチャレンジについて語ったり……。悩みながらもすくすく成長中の、彼女からの便りをどうぞ!

初のオンラインライブで得た、表現者としての手ごたえ

――まずは近況について。10月31日に配信ライブイベント“ANIMAX MUSIX NEXTAGE ONLINE”に出演されました。久々のライブはいかがでしたか?

熊田茜音 楽しかったです! みなさんの前で歌わせていただくのは2月のバースデーライブ以来のことで、デビューしてから2回目でもあったので、前日は緊張と興奮で眠れませんでした。当日もリハのときからすごくドキドキしていたんですよ。配信ライブも初めての経験だったので、「お客さんが目の前にいないというのはどんな感じなんだろう?」と考えたり。でも、ステージに上がったら、「音楽でみんなと楽しみたい!」という気持ちの高ぶりと、観てくださっている方の熱い思いが届きまして、すごく楽しい気持ちで歌えました。

――1曲目の「Sunny Sunny Girl◎」から、熊田さんらしい元気いっぱいのステージングでした。

熊田 今回は、こんな時期だからこそ、観てくださった方が元気になってくれたらいいなという一心でステージに立ったんです。元気を与えるためには自分が一番元気でないといけないから、上手くパフォーマンスすることよりも、誰よりも自分が楽しもうと思っていたので、それがみなさんに伝わっていたら嬉しいです!

――2曲目に歌われたFLOW のTAKEさん作曲による「Summer Jump YYYY!」は、ライブ初披露でしたよね?

熊田 はい! 一部だけ振りを付けていただいたのですが、基本はフリーで動く楽曲だったので、最初はどうなるか想像できなくて。でも、今回は配信ライブということで、ちょっとでも皆さんと目が合えばいいなと思って、カメラ目線でアピールしてみました。

――画面越しにばっちり目が合いました。

熊田 良かった(笑)。アップテンポで盛り上がる楽曲だし、皆さんに歌ってほしいパートもあるので、いつかファンの皆さんの前で一緒に歌いたい気持ちがさらに高まりました!

――その次はカバー曲。ClariSの「コネクト」を歌われましたが、選曲の理由は?

熊田 “ANIMAX MUSIX NEXTAGE”は本来今年の2月に開催する予定でして、その際にファンの皆さんに募集したファンセレクションの楽曲の中から、投票が多かったもので、なおかつ私もすごく思い入れのある楽曲ということで選ばせていただきました。この連載の第1回でもお話ししましたけど、『まどマギ(魔法少女まどか☆マギカ)』は自分にとって大切な作品なので、久々のライブでカバーさせていただくのであればこの楽曲しかないと思って。しかも、今回のイベントにはsajou no hanaさんも出演されていたので、(「コネクト」の作者である)渡辺 翔さんがその場にいらっしゃって……さすがに緊張しました(笑)。

――曲を書いたご本人を前に歌うわけですからね。

熊田 本番前にご挨拶に行かせていただいて、「本当に昔から大好きな楽曲なので、今日はその大好きな気持ちを込めて歌います!」と、そのときの気持ちをそのまま正直にお伝えしたら、「楽しみにしています」と優しく声をかけてくださって。すごく優しい方でした。

――しかもその後、Twitterでもやりとりしていましたね。

熊田 そうなんですよ! 「えーっ!私のことを書いてくださってる!」となって、返信するときに手が震えました(笑)。嬉しすぎて、どう返したらいいのか考えてしまって、ずっと騒いでました。

――熊田さんらしいですね(笑)。「コネクト」のときは、それまでの元気さとはまた違った凛とした表情が素敵でしたし、後半の“空はきれいな青さで いつも待っててくれる”という歌詞のところで、笑顔になった瞬間があったのが印象的でした。

熊田 その前の歌詞のところで気持ちがすごく強く乗って、ぶつけるような思いや悔しかった思いをバーンと吐き出したら、すごく晴れやかな気持ちになったんです。「ああ、ここから進んでいくんだ、まどかと一緒に」っていう感じで(笑)。その瞬間に、無意識に笑顔になっていたみたいで、私もアーカイブで観返したときに、「私、こんなに笑ってたんだ」と思いました。パフォーマンスをしているときに、自分の心がこうやって動く瞬間があるんだと思って、新しい発見でした。

――熊田さんが好きな暁美ほむらの目線とのシンクロも感じられますね。

熊田 嬉しい! あのときは本当にそんな気持ちになったんですよね。歌いながら作品のことも思い出しましたし、それこそ初めて作品を観た当時の自分の気持ち、この作品に救われて、感化されて、声優を目指し始めた本当の初心を思い返したので、すごく気持ちが乗りました。

――ライブの最後は、夢を叶えようと前進する真っ直ぐな気持ちを描いた「YOUR FREE STAR」で締め括りでした。

熊田 この楽曲は1stシングルのカップリング曲なのですが、ファンの皆さんから好きと言っていただけることが多くて。“伝えたいなら伝わる”とか“何回でも支える”とか、私が目指している、人を元気にしたり幸せな感動を与えたいという気持ちにすごく寄り添った楽曲なので、皆さんが頑張る後押しになったらいいなと思いながら歌いました。

――フレッシュさを含めて、熊田さんの魅力が伝わってくるライブでした。ほかの出演者の方々から刺激を受けたりはしましたか?

熊田 トリを務めたMia REGINAさんに初めてご挨拶させていただいたのですが、ものすごく優しくしてくださったんです。こんなにすごい方たちがにこやかに話しかけてくださるだけで嬉しいのに、私のリハも観てくださって、「すごく元気だから、こっちまで元気になっちゃった」という感想もくださって。私もリハからMia REGINAさんのことを観させていただいたのですが、腹筋が割れてますし、ジャンプもすごく高いし、それでいて声もブレないので「すごい!」と思って、圧倒されました。イベントが終わったあとに一緒に写真も撮ってくださって。先輩としても大尊敬していますし、一人のファンとしても、人間性を含めて素敵な方たちだと改めて思いました。

様々な作品・アーティストを通じてハマった、アニメソングの魅力

――アニソンイベントに出演したということで、ここで改めて熊田さんが思うアニメソングの魅力についてお聞かせください。初めてアニソンの良さを意識したのは?

熊田 最初はASIAN KUNG-FU GENERATIONさんの「遥か彼方」でした。アジカンさんは母が昔からよく聴いていたので、私も元から大好きだったんですけど、『NARUTO -ナルト-』を観ているときに、「遥か彼方」とOP映像がすごく合っていて。アニソンとしてもこんなに素敵な楽曲なんだと感じた瞬間にアニソンの良さを意識しました。その後も『NARUTO』をずっと観ているなかで出会ったのがFLOWさん。それこそTAKEさんが作られた「GO!!!」が大好きで、私はそこからFLOWさんにハマったんです。「このバンド超かっこいい!」と思って、ほかの楽曲も聴いたら全部かっこよくて。私はアニメからFLOWさんというバンドを知ることができたので、そういう新しい出会いや発見があるのもアニソンのいいところだと思います。

――アニソンと一口に言っても、いろんなアーティストや音楽ジャンルがありますものね。

熊田 それと「コネクト」をカバーさせていただいたときに強く思ったのですが、楽曲を聴いたときや歌ったときに、改めてアニメの好きなシーンが思い浮かぶところもアニソンの良さだと感じていて。あと、アニメのすごくいいシーンでOP曲がBGMに使われたりするじゃないですか。そのときの鳥肌が立つほどゾワッとする感じ、音楽と作品がマッチする瞬間が大好きです。

――どちらかと言うとエンディングよりもオープニングのほうが好みだったりする?

熊田 でも、King Gnuさんが歌っている『BANANA FISH』のEDテーマ(「Prayer X」)を聴いたときは、オープニングとはまた違うエンディングの良さを感じました。オープニングは「これからどんなアニメが始まるんだろう?」という感じがありますけど、エンディングはアニメを一通り観終わったあとに流れるので、歌詞が「やめてくれ……!」って思うぐらい刺さるんですよね(笑)。「Prayer X」も作品を最後まで観たあとに「だからこういう歌詞だったんだ!」ということに気づかされる部分が私は結構あって。第1話の時点では「なんでここまで刺さってくる歌詞なんだろう?」と思ってましたけど、今では聴いただけで涙しますから(笑)。そういう部分にアニソンマジックを感じます。

――ほかに印象に残っているアニソンはありますか?

熊田 『ようこそ実力至上主義の教室へ』のOP主題歌だったZAQさんの「カーストルーム」も好きです。ZAQさんのことは元々、LiSAさんとSNSでやりとりされているのをきっかけに知って、「Seven Doors」などいろいろな楽曲を聴いていました。『よう実』のアニメで「カーストルーム」を聴いたときに、作品をすごく引っ張っている楽曲だと感じたんです。力強い曲調もそうですし、心に表も裏もあるような主人公のもやもやした感情を代弁しているような歌い方と歌詞だと思って。作品とともに楽しんでいました。

――熊田さんはLiSAッ子(=LiSAのファン)でもありますが、LiSAさんは作品きっかけで知ったのですか?

熊田 LiSAさんのことはアーティストとして好きで。最初のきっかけは友達に薦められて「träumerei」を初めて聴いたときに「うわっ、かっこいい!」と思って、音的にもっとゴリゴリのロックの人なのかと思ったら、その楽曲のときはふわふわのドレスみたいなかわいい衣装を着ていたので、そのギャップに魅力を感じて。そこからライブに行って、LiSAさんの人柄にドーンと衝撃を受けたので、私の中ではLiSAさんはアーティストとしての印象のほうが強いんです。

――ちなみにLiSAさんのニューアルバム『LEO-NiNE』は聴きましたか?

熊田 聴きました! 良かった~。もう、早く歌いたすぎて、今はめちゃくちゃ歌詞を覚えてるところです(笑)。

――カラオケはよく行かれるのですか?

熊田 カラオケは一人カラオケもバンバン行くぐらい大好きです。それこそオーディションをたくさん受けていた時期はそこで練習していましたし、歌うことで気持ちも晴れやかになるので。ストレス解消と言いますか。

――そんな熊田さんの十八番の曲を教えてください。

熊田 え~っ! (カラオケの)履歴がLiSAさんの楽曲しかないぐらいめちゃめちゃ歌うんですけど、う~ん、何だろう?……「God knows…」(TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の劇中歌)か、内田真礼さんの「創傷イノセンス」かもしれないです。

――そういえば、声優としての憧れの存在は内田真礼さんというお話ですね。

熊田 はい、内田さんの楽曲もアニソンから入りました。『悪魔のリドル』を観ていたときに、CMで「創傷イノセンス」のMVが流れていたのを観て「めっちゃかわいい!」と思って。私、以前に「創傷イノセンス」の作曲者のR・O・Nさんと、レーベルの新年会みたいな場所でご挨拶したことがあるのですが、そのときに「創傷イノセンス」が大好きという気持ちを熱くお伝えしたら、隣にいたスタッフさんがビックリされていたことがあって(苦笑)。本当に何も考えずに「歌うときはいつもセリフのところも全力で言ってます!」とかお伝えしまくってしまって……。R・O・Nさんもすごく優しい方でした。

――R・O・Nさんとは今やランティスのレーベルメイトでもありますし、「God knows…」もランティスの作品ですね。

熊田 だから今、自分がすごいレーベルに所属していることを、たまに思い出して「うわあっ!」ってなることがあります(笑)。

洋楽ロックから流行りの楽曲まで! 大好きな音楽トーク

――今までの連載でも、ロックや洋楽を含めていろんな音楽を普段から聴いているとお話されていたので、音楽の趣味についても改めて深堀りさせてください。ロックはどんなものを聴いてきたのですか?

熊田 一番最初は母が聴いていたアジカンさんとDOESさん。そこから主に邦ロックを聴いていたんですけど、LiSAさんを好きになってからは、LiSAさんがどんなアーティストの楽曲を聴いてきたのかをすごく知りたくなって、インタビューとかでお話されていたグリーン・デイさんとアヴリル・ラヴィーンさんを聴くようになりました。アヴリル・ラヴィーンさんは「女性がこんなにロックを歌うんだ!」という初めての気づきでしたね。そこから色々聴いているうちに、リンキン・パークさんの「Numb」がすごく好きになって、海外のロックにもハマっていきました。それまでは親の影響が大きかったんですけど、高校生のときから自分で探して聴くようになったことで趣味がすごく広がっていって。今は「音楽なしじゃ生きていけない!」と思っています。

――どちらかと言うとラウド系やヘビーなロックが好きなのでしょうか。

熊田 好きですね。今でもよく聴きますし、高校生のときはゴリゴリのロックしか聴かない時期がありました。でも、そこからロックだけじゃなく、ショーン・メンデスさんとか、カミラ・カベロさんとかも聴くようになって。私、ショーン・メンデスさんを見るために“SUMMER SONIC 2018”に行きましたもん。「日本に来るんだ!行かねば!」と思って(笑)。

――中学時代にはジャズダンスをやっていたとのことですが、そこで触れた音楽からの影響は?

熊田 ジャズダンスがきっかけで、映画音楽の良さに気づきました。それこそ「バーレスク」の曲で踊ったりしていましたし、その音楽で映画とはまた違った表現が出来ることをジャズダンススクールで知ったので。そこでジャズダンスをずっとやってきた友達に、全然違うジャンルの音楽を教えてもらったりもして。その頃にダンスの先生から「ヘアスプレー」という映画のDVDを貸してもらって、ミュージカル映画にハマったんですよ。そこから以前の連載でお話した「ラ・ラ・ランド」とかの映画に繋がっていきました。

――なるほど。熊田さんは音楽のどんなところに一番惹かれますか?

熊田 一番はやっぱりサウンドですかね。例えばショッピングのときにお店で流れている楽曲を聴いて「いいな」って思ったところから好きになることが多いんです。そこから楽曲やアーティストを調べて、聴いて、「かっこいい!」と思って、そこに自分の心にグサッと刺さる歌詞が乗っていたりすると、さらに大好きになる感じです。

――その意味では、先ほどおっしゃっていたラウドなロック調に惹かれることが多い?

熊田 たしかにロック調のものに惹かれやすいと思います。あと、私はハスキーな声の女性シンガーさんに惹かれやすくて。藤原さくらさんとか、きのこ帝国さんとか。それにテイラー・スウィフトさんのカントリーな曲調も好きですし、自分とはかけ離れたダークなサウンドにもハッとなったりします。自分で言うのもなんですけど、私は性格的にあまり病むこともないですし、自分の声質的にも爽やかで明るい曲調のほうが合うと思うので、逆に惹かれるところがあって。

――自分にないものに惹かれると。

熊田 そうですね。これは自分でもビックリしているんですけど、今まではただ好きで音楽を聴いていたのが、最近は「この表現いいなあ……!」と思いながら聴くようになって。なので自分とは全然違ったタイプの歌い方に触れると、どうすればそれを自分らしく取り入れられるか考えたり、ライブ映像を観ながら「ここの気持ちの乗り方、すごく素敵!」と思ったら、「じゃあ自分ならどう歌ったらいいかな?」ということを考えるようになりました。

――表現者としての視点や意識が備わってきたわけですね。ちなみに最近刺激を受けたアーティストや曲は?

熊田 くるりさんを最近また聴き始めて。『魂のゆくえ』(2009年)というアルバムが好きで、そこに入っている「背骨」を聴いたとき、5分以上ある長めの楽曲なんですけど、最初はサウンドがかっこいいなと思いながら聴いていたのですが、改めて歌詞を見たときにすごく短くてびっくりしたんです。こんなに短いのにグッとくる内容だし、しかも聴いてるときは歌詞が短いと思わなかったことが、作詞も趣味でやっている自分にとっては目からウロコで。短いからこそ、歌詞の意味もその時々の自分の気持ちに合わせて考えられるし、初めての出会いをした感じでした。

――歌詞のアプローチにおける新しい気づきがあったわけですね。

熊田 もう1曲、私は流行りの音楽も聴いていたいタイプなので、オリコンランキングとかもよくチェックするんですけど、SHISHAMOさんの「キスをちょうだい」という楽曲がランキングの上位に入っていたんです。SHISHAMOさんは高校生のときから好きなのですが、そのドキッとする曲名に惹かれて聴いてみたら、歌詞がすごくかわいくて、真っ直ぐで素直な気持ちをそのままストレートに表現しているんですね。今の学生さんが聴きながら「こんな恋愛してみたいなあ」って思うような歌詞なのかなと思って。この楽曲の場合はサウンドというよりも歌詞がドーンときたので、それもまた面白い体験でした。

――“共感系声優アーティスト”として活動する熊田さんとしては、そういった流行りの曲を知ることもヒントになるかもしれないですね。

熊田 今の学生さんには何が流行ってるのか気になったりするので、いまだにティーン雑誌もたくさん買います(笑)。

ネガティブな感情をさらけ出した挑戦の曲「ネムルトビラ」

――ここからは新曲のお話を。5ヵ月連続配信リリースの第4弾「ネムルトビラ」は、自分の中にある不安感や自信のなさといった、今までになくネガティブな気持ちを表現した楽曲になっています。

熊田 そうなんです。配信シングルは毎回、私のその時々の想いをスタッフさんにお伝えして制作していただいているのですが、今回は「心の奥にある気持ちを話すことはできる?」と言われて。私は今まで自分の中で悩んでいることを人に話してこなかったし、あまり見せたくないタイプなんですけど、この楽曲を作るにあたってはそれをお話して、それがそのまま入ってると思います。例えば“知らないって強いよね”という歌詞のところは、私はこの世界に入ったばかりの頃、会いたい人が周りにたくさんいらっしゃって、「わー、すごい!私もこの一員になれるんだ!」という単純な感情で物怖じせずいろんなことに取り組んでいたんです。ですがだんだん「周りの人はすごいけど、私は全然何も持ってないんじゃないかな……」と思うようになった時期があって……。ほかにも、私はおしゃべりは大好きなんですけど、誰かに「自分はこう思ってるので、こうしてほしい」ということを伝えるのが苦手でして。それを言うと傷ついちゃう人がいるかもしれないとか、こんなに周りの人が頑張ってくださってるのに、私がさらに何かを言っていいのかな?と考えてしまう時期があったんです。私のそういう気持ちを汲み取って、畑(亜貴)さんが作詞してくださりました。

――今まで表に出してこなかった感情をさらけ出すことに挑戦したわけですが、かなり勇気が必要だったのでは?

熊田 そうですね、勇気がいりました。でも、そのなかでもちゃんと前を向く光を持った楽曲にしたくて、自分とスタッフさんのなかでそういうコンセプトを持ちながら作りました。

――実際に心の中に閉まっていた感情を吐き出す作業をやってみていかがでしたか?

熊田 まず1つは、すごくスッキリしました。自分の中では本当に新しいチャレンジだったんです。私は皆さんに共感してもらいたい気持ちで活動しているので、そのためには自分のことも出していかなくちゃいけないと思っているのですが、恥ずかしかったり、怖い気持ちもあったりして。でも、その話をしたらスタッフの皆さんが優しく受け入れてくれて、畑さんからも、そういう感情があるけど前に進んでいく歌詞をいただいたので、スッキリ感がありました。

――なるほど。

熊田 それと今回、私としては珍しく、落ち込んで1週間ぐらい動けなくなったんです。さっきもお話しましたけど、私は普段は全然病むようなことがなくて、すごく辛いことがあっても、1日経てば大丈夫なんです(笑)。でも、この楽曲をレコーディングするとき、こんなに深い歌詞を書いていただいたので、歌に想いが乗っていないのは絶対に嫌だと思って、自分で記憶に蓋をした辛い経験や過去のことを思い出したりしていたら、本当に落ち込んでしまって(苦笑)。でも、こういう作業も大事だということを信じながら、深堀りしていって。だから辛い期間があったんですけど、その作業を逃げずにやったからこそ、過去の自分と向き合うことができましたし、そういう経験があったからこそ今の自分があるし、今はちゃんと自分が目指してきた未来の一歩目に立てていると思うので、「じゃあこの経験を活かしていこう!」とポジティブに変換することができて。

――それは良かったです。

熊田 この歌詞をいただいたとき、“やり方を変えてみよう”という言葉に、自分の辛かった過去がちょっと救われたところがあって。この先、自分がこの「ネムルトビラ」を聴いたときに、自分も救われるんだろうなと思います。辛い思いを抱えている方にとっても、ちゃんと今を大事に、次に進んでいけるきっかけになる楽曲になったらいいなと思っていて。辛いなかでも頑張ってきた自分を、そっと包み込んであげられるような楽曲になればと思いました。

――熊田さんは自分自身に“オールシーズンポジティブガール”というキャッチコピーを付けるぐらい、ポジティブな性格の持ち主なわけですが、実際はこの歌詞のようにネガティブな一面も持ち合わせているのですか?

熊田 今回、自分のことを深堀りして気づいたのは、私は蓋をするのが上手くなったんだと思います。辛いことがあっても、次の日に持ち越さないために、無理やり「これは今考えても仕方がないから、とりあえずしまっておこう」「自分の心が成長したら、そのときに開けてみよう」という技術を身に付けたからポジティブなだけで。だからこの歌詞は、結構そのまま私なんです。この歌詞、心にグワッとくる内容だと思うんですけど……。

――たしかにかなり重たい内容です。冒頭の歌詞からして“私の中には なにか なにか眠ってる そう思っていたけれど まさか まさかの錯覚かな”ですから。

熊田 これも私がお話させていただいた通りの内容で。気持ち的に無敵なときもあれば、「でも、自分だけがそう思ってるのかも……」とか、気づきたくないことに気づいてしまうこともあって。そういうところをそっと覗いてみた歌詞になっています。

――デビュー前にはオーディションを繰り返し受けていたし、やはり自信がなくなって落ち込むこともあったと。

熊田 すごくありました。当たり前ですけど、オーディションって受けなければ傷つかないんです。だけど、私にはやりたいことがあって、しかも努力が絶対に実るかどうかもわからない夢だったけど、でも、何もしないよりかは、どんなに心がズタズタにされても突き進んでいきたいタイプなんです。ある意味、ボロボロになったとしても、私はそのとき、何を思うんだろう?という好奇心が勝ってしまうんです(笑)。何をしても受からなくて辛い時期もありましたけど、結局は進んでいかない限り何も変わらないですし。だから、自分の中に何かが眠っているという気持ちは錯覚かもしれないけど、もうちょっと奥にいけば次の扉があるんじゃないだろうか?という。そういう不安と期待が入り混じった気持ちを、そのまま歌詞にしていただきました。

――曲調としては「夏空クロール」に近い雰囲気のしっとり聴かせるバラードになっています。歌唱面ではどんなアプローチを心がけましたか?

熊田 今回は技術のことはあまり考えませんでした。というよりも、正直技術を考えられないぐらい感情のほうが優先してしまって。「夏空クロール」は夏の終わりの切なさと爽やかさがありますけど、この楽曲は歌詞も自分の気持ちそのままなので、歌っていて気持ちが乗るし、ロックじゃないけど叫んでいるようなモチベーションで取り組んで。「カコ→イマ→ミライ→?」では「自分らしさとは何だろう?」と思いながらも、曲調も相まっていつもの元気な熊田茜音を乗せましたけど、今回は気持ちが音楽になっている感覚でした。だからレコーディングでは、ディレクターさんが「すごく気持ちが入ってるね」と言ってくださりましたし、私も歌いながら若干涙が出そうでした(笑)。でも、前を向いて進んでいけるように歌いました。

――印象的だったのが、イントロとアウトロの「ラララ~♪」というコーラスパートが、最初は儚くて不安げな感じだったけど、最後は明るい雰囲気になっていることで。

熊田 まさにその通りです。私はレコーディングのとき、楽曲の頭から順番に録るんですけど、歌詞が最初は不安でギュッと縮こまった自分だったのが、最後の“落ち込んだその後から 次の扉へ”“扉眠ってる?”に行くまでに、だんだん気持ちの解放や未来に向かっていく部分があるので、コーラスの部分もそのまま気持ちを乗せて歌いました。

熊田茜音が一人の人間として、この先開いていきたい“次の扉”

――熊田さんは今、自分のネガティブな部分もさらけ出したこの楽曲を経て、自分の中にある“次の扉”が見えていたりしますか?

熊田 これから自分でこじ開けていこうと思っているのが、先ほど少しお話しした「自分の気持ちをどう相手に伝えていくか?」ということです。いつも「これを言って大丈夫かな?」という不安が付きまとっていて。それは「嫌われちゃうかも」というのとはちょっと違っていて……相手に嫌な気持ちをさせたくないというのとはまた別に、「間違って伝わってしまったらどうしよう?」とか「私は提案のつもりなのに、文句みたいに思われちゃったらどうしよう?」と考えてしまうんです。だから自分の気持ちをちゃんと言葉にしていくことが、次の扉というか課題だと思っています。

――そのためには、まず自分の考えをちゃんとまとめなくてはいけないわけですよね。

熊田 そうなんです。今までは結構体当たりが多かったので(笑)。でも、言葉を大切に活動している以上、より良い伝え方があるんじゃないかなと考えていて。それを見つけることによって、もっと良い未来が作れると思いますし、今はまだもどかしさがあるので、その扉を開いていければと思います。

――でも、熊田さんは、あまり考えすぎることなく、自分の気持ちをそのままぶつけていったほうが上手くいくタイプのようにも感じるんですよね。

熊田 それに関しては、前にスタッフさんに笑われてしまったことがありまして。これはいつも思うことなんですけど、私は自分の伝えたいことを回り道しながら伝えることができないんです。以前に、話の前提とかをすごく考えたうえで、それを信頼しているスタッフさんやマネージャーさんに話してみたんですけど、結局言いたいことがわからなくなってしまって、「すみません、ちょっと大人っぽく伝えたかったんですけど、無理だったので、思っていることをそのまま言いますね」と言ったら、「いや、それを言ってしまったら意味ないじゃん」と言われて(笑)。あのときは「自分って……」と思いました(苦笑)。

――きっと熊田さんの性格上、直球で気持ちを伝えたほうが、変に誤解を生まなくていいんじゃないでしょうか。

熊田 そうなんですかね。最近も「これが直球の気持ちなんですけど、これをこう言うと勘違いされるのが嫌なんです」って、結局、直球を全部伝えるっていう謎の伝え方になってしまって(笑)。気持ちを伝えることって難しいなって思いました。

――ハハハ(笑)。ちなみに今作のジャケット撮影はいかがでしたか?

熊田 秋らしさを意識しつつ、ちょっと思慮深い表情ができたらと思って撮りました。撮影のときに面白かったのが、この舞っている枯葉は手動で降らせているんですけど、スタッフさんがそれをやっていたら、なぜかスタイリストの森(俊輔)さんが「僕、やります!」と言ってくださって、私の前でずっと落ち葉を降らせてくださったんです。しかも途中から森さんの散らし具合がすごく上手くなって、結局そのときの写真がジャケットに使われました(笑)。思慮深い表情をしてますけど、内心はすごく楽しい撮影でした。

――では最後に、「ネムルトビラ」を楽しみにしているファンに向けて、メッセージをお願いします。

熊田 今回、新しいチャレンジをさせていただけて、皆さんにまた新しい一面をお見せできたのかなと思っています。今まで色々あったけど、そんな自分も愛しく思ってあげたら、その経験は絶対に無駄にならないし、考え方次第で絶対に自分の力になるから、皆さんにもこの楽曲を聴きながら前を向いてもらえたら、そのお手伝いができたらいいなと思っています。私もまだまだ開けなくてはいけない扉が数億個ぐらいありますけど(笑)、まずは近場のドアから一緒に開いていけるように頑張りましょう! たくさん聴いてください!

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

●「熊田茜音のくまだいありー」連載一覧はこちらから


●リリース情報
熊田茜音 5ヵ月連続デジタルシングル第4弾
「ネムルトビラ」
作詞:畑 亜貴 作曲:矢吹香那 編曲:前口ワタル

各主要配信サイトにて現在配信中

<5ヵ月連続デジタルシングルリリーススケジュール>
第1弾:2020年8月21日「Summer Jump YYYY!」
第2弾:2020年9月18日「夏空クロール」
第3弾:2020年10月16日「カコ→イマ→ミライ→?」
第4弾:2020年11月20日「ネムルトビラ」
第5弾:2020年12月18日

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