ReoNaの願い、それは“名前のないお歌で名前のない絶望に寄り添う”こと――。待望の1stアルバム『unknown』に迫った撮りおろしロングインタビュー

神崎エルザ starring ReoNa名義でアニメ音楽のシーンに登場して約2年、絶望系アニソンシンガーとして独自の歌世界を築き上げているReoNaが、待望の1stアルバム『unknown』を完成させた。「SWEET HURT」「forget-me-not」「ANIMA」といった人気のアニメタイアップ曲をはじめ、全12トラックで構成された本作には、彼女のクリエイティブには欠かせない存在であるハヤシケイ、毛蟹の両名のほかにも、堀江晶太、rui(fade)、そして新進気鋭のボカロPである傘村トータといった面々が新曲を提供。“名前のないお歌で名前のない絶望に寄り添う”という、ReoNa自身の願いを結晶化した作品となっている。彼女が『unknown』に込めた想いについて、ロングインタビューで紐解く。

ReoNa自身の活動スタンスに重なる“unknown”という言葉

――メジャーデビューしてから2年、ついに1stアルバムが完成しました。ご自身としては、どんな作品にしたいとイメージしていましたか?

ReoNa 実は最初にアルバムの制作が決まったとき、自分から『unknown』というタイトルを提案しました。2019年の“ReoNa ZERO”プロジェクトでは、私がアニメのお歌をうたうことの原点になった神崎エルザstarring ReoNaとして「Prologue」をリリースして、3rdシングル「Null」では私自身のお歌の原点に触れて、その2作品を持って全国ツアー“Colorless”を紡ぎ、最終的には“Birth”というワンマンライブに辿り着いて。そこからの初めてのアルバムということで、自分の原点やゼロに繋がるような言葉を探していたんです。

――それで出てきた言葉が“unknown”だったと。

ReoNa SNSを退会したあとの誰もいない空間に“存在しません”という意味で“unknown”と表示されたりしますが、身近なところにある誰もいない空間、まだ誰でもない場所、かつて誰かがいたところを示す意味では、それがすごくReoNaらしい言葉だなと思って。なので、アルバムの1つのきっかけになる言葉として提案したら、それがタイトルになりました。

――その“unknown”という言葉に感じる自分らしさについて、もう少し詳しくお話を聞かせてください。それは自分自身の考えやスタイルとどのように重なるのでしょうか?

ReoNa 今回“unknown”という言葉があるうえで、私の中では“名前のないお歌で名前のない絶望に寄り添う”というのが1つのキーワードになっていて。例えば、フラれたり片思いが実らなかった辛さを代弁してくれる失恋ソングは世の中にたくさんありますけど、私みたいに家に居場所がないとか、学校に行けないとか、そういう名前のない絶望に寄り添う絶望ソングはなんでないんだろう?ということが、自分がお歌をうたいたい理由としてデビュー前から思っていたことなんです。そういうところから、ReoNaとして“unknown”はぴったりな言葉だと思いました。

――以前の取材で、ReoNaさんはデビュー前、自分自身の感情が希薄な時期があったとお話していましたが、今のお話はそういう部分とも繋がるところがあるのでは?

ReoNa 最初に“unknown”という言葉が出てきたときには、そこまでの意識はなかったのですが、今『unknown』という1枚のアルバムが出来上がったことで、改めて自分が出せなかった自分というか、隠しているうちに本当の自分がわからなくなってしまった時期を思い出したりして……でも、それは私だけではないと思うんです。それこそ昔は、誰かに「あなたは優しい人だよね」と言われたら「私は人に優しくしないといけないんだ」と思ったりとか、誰かに作られた自分みたいなものをすごく頼りにしていて。誰かに自分を委ねたり決めてもらったほうが、きっと楽だったんですよね。自分の中ではそうじゃない自分がいるつもりでも、きっと誰かから見たら空っぽだっただろうし、本当の自分を外に出さないことで、あとから思い返してみたときに自分でも自分が何を考えていたのか思い出せないところがすごくあったし。それもまた、自分自身を傷つけてきたところでもあったと思います。

――そのように、かつては自分のことさえも“unknown=わからない”状態であったReoNaさんが、アーティスト活動を行っていくなかでだんだん自分自身を表現できるようになった過程が、このアルバムには刻まれているのかもしれないですね。

ReoNa 最初は本当に右も左もわからなくて、まず音楽がどういうふうにできているのかもわからないところからの始まりだったので。そこからありがたいことに、同じLIVE LAB.の人たちだとか、一緒にReoNaのお歌を紡いでくださる方がいて、そういう方々と直接顔を見ながら会話をしたり、口で伝えられなかったらメモに書いてみたり、まだまだではありますけど、少しずつ自分の想いを伝えることができるようになったのが、この2年間でした。私自身を重ねるお歌を作ってきたこの2年間を経て、今まで以上にReoNaというものをひとさじでも多く、届ける先のあなたのことを考えながら詰め込められた作品になったと思います。ある意味、今までで一番、自分に向き合って、自分を出した制作になりました。

――そこはまさに強く感じたところです。本作のための新曲はもちろん、これまで発表してきたアニメタイアップ曲に関しても、このアルバムに収められることで、ある種、ReoNaさん自身を書いた曲という側面が強くなっているように思いました。

ReoNa 本当に1曲ごとにそれぞれの伝えたい想いや表現の仕方があって。それぞれにすごく文章を使って気持ちをお伝えしました。対面だと言いたかったことがなかなかまとまらなくて、伝えたいことの1/10も伝えられなかったりしたので、思ったことをひたすら文字にした、本当にとりとめのない文章なのですが、それをいくつもお渡しして。その中から拾ってもらう作業をたくさんしました。

“自分らしさ”がわからないあなたに寄り添う歌「unknown」

――ここからは本アルバムで初出の楽曲を中心にお話を聞いていきます。1曲目はアルバムの表題と同じ曲名の「unknown」。作詞・作曲はボカロPとしても活動する傘村トータさん、編曲はPRIMAGICさんが担当していて、全体的に柔らかで優しいタッチのナンバーです。

ReoNa 同感です。本当にすごく優しいんですけど、心に刺さるというか、残るものがあって。広くて優しいお歌だなあと思いました。この楽曲に関しては、先ほどお話した“unknown”という言葉が出てきた理由――SNSや身近にある誰もいないところとか、名前のない絶望に寄り添う話を、トータさんに共有したうえで作っていただいたのですが、実はその前に「いかり」という曲を先に作っていただいていたので、それがあったからこそ出来た楽曲だと私は思っています。実はトータさんがボカロで投稿されている楽曲は以前から聴かせていただいていて、(聴き手に)寄り添うような部分や救い、ときには痛みも感じる優しさみたいなものがあると思っていたんです。私もそんなお歌がうたいたいと思っていたので、すごく大切な出会いになりました。

――歌詞は、相手や環境によって変わってしまう“自分”と本来の“自分らしさ”がテーマになっていますが、それは先ほどのReoNaさんの過去のお話にもリンクしますね。

ReoNa 私自身、学生時代、そういう自分にすごく悩んだ時期がありました。今日こそはなにかあったら怒ったり断ったりしなくちゃと決心していても、嫌なことを言われても怒れないし、頼みごとをされたら断れない自分がすごく嫌な時期があって。誰に張ってるでもない見栄みたいなもので、なんとなく自分に壁ができているような感覚というか。私は自分がすごく弱いことを知っているから、自分の芯にあるものほど、誰かに否定されるのが耐えられなくなるんです。「お歌をうたって生きていたい」とか「アニメが好きだからアニソンを歌いたい」ということも、誰かに「無理だよ」と言われることが怖いから言えなかったし、そういうものに随分長いこと囚われていた自分がいて。でも、そういう気持ちに対して“それは優しいあなたのせいじゃない”(サビの歌詞のフレーズ)と言ってもらえることは、途方もなく優しいし、例え身近にそういう人がいたとしても、なかなか言えないことじゃないですか。言葉には責任がありますけど、そう言い切ってしまえる深い優しさみたいなものが、当時の私にもすごく寄り添ってもらえた歌詞でもありますし、やっぱりお歌だからこそ言えることだと思います。

――しかも最後は、そのフレーズが“それは愛しいあなたのせいじゃない”となっているのもポイントで。ReoNaさんはいつも、ライブではお客さんと“一対一”になることを意識しているというお話ですが、この曲ではいつも以上に“あなた”に向けて一対一で届けたいという気持ちが感じられました。レコーディングでイメージしたことは?

ReoNa この曲に関しては大きく2つあります。1つはまさにCDを聴いてくれる人から、街中で偶然耳にしてくれる人まで、今この歌で寄り添わせてもらえる“あなた”を思い浮かべながら歌いました。もう1つは小さい頃の自分自身というか、過去の自分がこのお歌を受け取ったときに、少しでも傷が癒えてくれたらいいな、きっとこの言葉があのときの私に寄り添えるはずだと思いながら歌って。それがきっと過去の自分と同じ境遇の人に届いてくれると思いますし、実際に過去の自分にも届いたと思います。

――MVはReoNaさんが歌う姿を真正面の固定アングルからアップで捉えた、シンプルかつ非常にインパクトのある映像に仕上がっています。観ていると自分に歌いかけてくれているような感覚に陥りました。

ReoNa 撮影の前に監督とお話をさせていただいて、私は元々あまり伝えるのが得意じゃないこと、今はその壁をまさに越えようとしているところだということをお伝えしたんです。そこで「じゃあ無理に誰か相手を意識するんのではなく、自分自身でいいんじゃない?」と言っていただけたので、そこで1つ寄り添いをもらって。なのでカメラをあまり意識しすぎることはなかったのですが、もちろんレンズの先で“あなた”と目が合うと思ったうえで、言葉が相手に届くことを意識しながら歌いました。撮影時には現場になるべく人がいない状況にしてもらって、今までで一番一人を感じられる状況にしてもらいました。

――“あなた”と一対一で向き合うようなシチュエーションを作られたわけですね。

ReoNa 撮影したのはすごく暑い日で、セミも鳴いているなか、炎天下の屋上で直射日光を浴びながらの撮影だったんですけど、不思議なことに歌っている間は全然汗が出なくて。フルコーラスで丸々1曲歌ったんですけど、1秒が永遠にも一瞬にも感じられるぐらい不思議な集中感がありました。そういう感覚はレコーディングやライブでもあって、今回は撮影でもそれを感じることができて。でも、終わった瞬間に「暑い!」ってなりました(笑)。

新たな意味を持った「Let it Die」、堀江晶太提供の「BIRTHDAY」

――そして「怪物の詩」などと同じく、ReoNaさんがデビュー前から歌っているオリジナル曲「Let it Die」が、今回のアルバムでようやく音源化。ライブではお馴染みのナンバーですが、激しい音像に浮かぶReoNaさんの歌声にある種の神聖さが感じられて、今までとはまた違った印象を受けました。

ReoNa まさにライブでやり続けてきた楽曲だからこそ、自分の中でも新しく何かを生み出したい意識があって。特にサビのところは、ライブだとどうしても届いてほしい思いが先にあるので、言葉が強くなったり、叫ぶような気持ちになることがあったのですが、今回は祈りのような気持ちというか、どれだけこの切実な言葉を声で柔らかく包むことができるかをすごく考えて気持ちを込めたので、届いていて良かったです。

――感情を超越したような歌声と言いますか。主線やハーモニーを含め、ReoNaさんの歌声が何声にも重なりあう箇所は、この世のものならざるような壮絶な美しさを感じました。

ReoNa 最初にこの歌を歌い始めたときから、自分の声も楽器になるということをすごく意識した楽曲だったので、改めて音源として形にしたことで、ライブで紡いでいるものとはまったく違うものができたと思っていて。今までライブでずっと聴いてくださった方々にとっても、新しい気づきがある「Let it Die」になったと思います。

――続く新曲「BIRTHDAY」は、PENGUIN RESEARCHの堀江晶太さんが書き下ろしたナンバー。堀江さんとはこれまでも「Untitled world」の編曲などでご一緒していますが、作詞・作曲を含めた楽曲提供は初になります。

ReoNa 堀江さんに楽曲提供のお願いをしたのは、去年末にPENGUIN RESEARCHさんと対バンライブでご一緒したときのことで、そのライブでPENGUIN RESEARCHさんの「それでも闘う者達へ」をコラボで歌わせていただいたんです。“死ぬなよ”というすごく力強い言葉がある楽曲なのですが、そのあとに堀江さんから「それでも死ななかった理由ってなんなの?」みたいなことを聞かれて、私も「なんだろうな?」と思いながら、理由を書き上げてみることにして。その年末年始に奄美大島の実家に帰っている間、小さい頃に過ごしていた家の中で、夜中にふと自分が死ななかった理由を考えたんです。私は昔から「死にたい」と「生きていたくない」というのは全然違うものだと思っていて、私の中では「生きていたくない世界」だったんです。それでも私を繋ぎ止めていた理由は、ご飯が美味しかったからとか、猫を拾ったからとか、明日とりあえず予定があったからとか、自分のお葬式に嫌いな人が来て悲劇ぶられたら嫌だなとか、本当に小さいことで。そういう1つ1つを書き出して羅列したメモを堀江さんにお渡ししたら、後日、堀江さんから「このメモを見て、ノイズみたいな音が思い浮かびました」という感想といただいて、そこからこの楽曲を作っていただきました。

――たしかに歌詞からは、明確な意志や目的を持って生きているわけではないけど、それでも生きる理由を見つけたい儚さのような心情が感じられますね。

ReoNa 今と自分を繋ぎとめている細い糸の希薄さを感じますし、それが「BIRTHDAY」という言葉でさらに強まっている気がしていて。きっとこのタイトルから、この楽曲はなかなか浮かばないだろうなと思うんです。だからこそ聴いてくれた人が自分を重ねる余地があると思うし、この歌を受け取ってくれた人の中で「BIRTHDAY」にどんな正解がつくのか、私自身が楽しみでもあります。「この楽曲に重なったあなたはどこで生まれるんだろう?」っていう。

――でも最後のサビは“いつか 笑うためと 理由を付けたよ”と、どこか希望のある終わり方をしていて。

ReoNa 私の中ではあそこだけ、笑っているんです。そのあとの“ラララ”と歌っているところもそうですが、いつか笑うために紡いできたお歌のなかで、あそこだけは笑顔でいいのかなと思っていて。特に最後のサビは「今のいいんじゃない?」というテイクが録れても、聴き返してみると思っていたより波がなくて、何度も歌い直させてもらいました。当時の私は「あぁ今日も生きてなきゃな」みたいな感じだったのですが、それと同時にきっと私は自分が今日を生きる理由をちゃんと探していたから、そこにあったんだろうなというのは今だから思えることで。“生きていたくなど ないよ”という言葉の切実さだとか、堀江さん自身の想いだったりとかを、堀江さんだったからできたこの歌詞このメロディに私も重ねさせてもらえるように歌いました。

傘村トータの言葉がReoNaの作品にもたらしたもの

――続く新曲「いかり」は、作詞を傘村さん、作曲・編曲を毛蟹さんが担当。ピアノとアコギがメインの優しい曲調ではありますが、歌詞に目を向けると、すごく痛々しい曲でもあります。

ReoNa この楽曲が手元に届いたとき、昔馴染みから手紙が届いたような感じがありました。私は感情のなかで「懐かしい」が一番好きなんですけど、「怒る」というのが一番苦手なんです。怒れないし、怒り方というのがわからなくて。一番最後に自分自身が怒りを爆発させたときのことを思い出したんですけど、私、そのときソファーをボロボロにしたんです。今まで怒ってこなかったので、いざ怒るとなったときに怒り方がわからなくて、物を壊したり、言いたくないことを言ってしまったり、怒りに身を任せて何かをしてしまうので、あとになってすごい反動になって返ってくるんです。気に入っていたマグカップを壊してしまったり。

――感情表現が苦手な部分があったんですね。

ReoNa 前が見えなくなる感じがすごく苦手で。この曲を受け取ったとき、その感覚を思い出したのと同時に、不思議なことに懐かしさというか、痛みと同時に優しさを感じることができたんです。なぜだかわからないけど旧友から手紙をもらった感覚になって。だから、みんなにこのお歌が届くときにも、懐かしさみたいな感情が出てくればいいなと思いながら歌いました。

――同じく傘村さんが作詞した「心音」は、「ピルグリム」や「forget-me-not」を書いたrui(fade)さんが作曲したこともあって、それらの楽曲に通じるロックチューンです。

ReoNa ruiさんにはソロデビュー前の神崎エルザ starring ReoNaとして歌った「ピルグリム」からお世話になっていますが、実は神崎エルザでもアニメに寄り添うお歌でもなく、ReoNa自身のお歌として曲を書いていただくのは今回が初めてのことで。ruiさんとのプリプロの中で育っていった楽曲です。最初にあったAメロも、実際に私が歌ってみるとしっくりこなかったり。何度も歌って確認してみて、その果てに出来上がったメロディです。

――サビの“誰でもない それでも生きてる 息をしてる”というフレーズをはじめ、この曲では「生きていたくない」けど「生きている」ことの意味、さらには自分の命は自分のものであることの大切さを歌っていて、「unknown」や「BIRTHDAY」のテーマにもリンクするように感じました。

ReoNa 本当に意図せずいろんな楽曲に“unknown”というものが散りばめられているなと感じていて。振り返ってみると、1曲1曲をすごくがむしゃらに作っていたのですが、こうして作品が出来上がったときに1つ芯が通っているというのは、やっぱり私自身に伝えたいものがあって、それを一緒に形にしてくれる仲間がいたからこそ、作ってこられたんだなとすごく思いました。

――歌声も前を向いている感じがして、すごく良かったです。

ReoNa 最初は何を歌っても明るく歌えないところから始まって。そこから温度感のことを考えながら歌を紡いできたので、本当に今までの足跡があったからこそ歌えた楽曲だと思います。

ReoNa自身の半生と願いが投影された「絶望年表」

――そして、個人的に今回のアルバムで最も心を震わされたのが「絶望年表」です。これまでReoNaさんの楽曲を多数手がけてきた、ハヤシケイさんと毛蟹さんの共作というのもさることながら、歌詞はReoNaさんの人生そのものを描いたような内容になっていて……。

ReoNa まさにこれは私の絶望年表です。でも、私自身それが事実であることが大事ではないと思っていて。誰のものであってもいいというか、お歌という領域を越えて、私を感じさせすぎたり、「ああ、そうだったんだ、ReoNaかわいそう」というものにしてはいけないと思うんです。ただ、そのうえでどんなものができるかは、私自身もすごく不安でした。まず、私が生まれたところから今に至るまでの人生年表を自分で書き起こしたんですけど、それはお歌の元になるものとして、人に見せることを前提に書き始めたので、なるべく明るくなるようにおどけてみたりしながら書いて。

――これまで経験してきた絶望を掘り返すのは、しんどい作業ですものね。

ReoNa なので「このときこんなことあった!わーい!」みたいな感じでポップに書き始めたのですが、中身としては本当に重苦しいものになって。そもそもそのメモのタイトルが「絶望年表」で、そこからこの曲名になりました。楽曲に関しても、今まで以上にたくさんお話をさせていただいて、初めてトラックの段階から関わらせていただいたんです。

――曲調としてはフォーキーでカントリーっぽいサウンドがベースになっています。

ReoNa 私自身カントリーソングが好きでずっと聴いてきたので。カントリーソングって、跳ねるようなギターのリズムなのに、実は歌詞ですごく文句を言っていたりするんです。テイラー・スウィフトさんもギターを弾きながらニコニコ歌っているけど、よく聴いたら「私が売れたらあんたの悪口なんて気にならないわよ」みたいな歌詞だったりして。そういう自分自身のルーツであるカントリーやフォークソングという部分を踏まえて、毛蟹さんが音を作ってくれて。そこから初めてケイさんが書かれたフルコーラスの歌詞が届いたときに、7分を超える長さの楽曲になっていたことに驚きました。

――この曲のテーマを表現するためには、それだけの長さが必要だったのでしょうね。

ReoNa 私はいつも楽曲をいただいたら、まず歌詞を見ながら、それをどうやってお歌にするかを考えながら聴くのですが、今回は歌詞を見ずに、ケイさんが弾き語りで歌っているデモ音源だけを聴いて。気が付いたら涙が出ていました。なんて優しいんだろうと思って。本当に私自身の今までを救ってもらっていたし、それがこういう形になることの凄さを感じたと同時に、自分自身のものなのに自分で描けていないことへの悔しさみたいなものも初めて感じて。でも、ReoNaのお歌を一緒に作ってもらえていることのありがたみも、改めて感じることができました。

――アコギとピアノを中心にしつつ、曲が進むにつれストリングスが加わっていくアレンジもドラマチックで素敵です。

ReoNa この曲では、ケイさんと毛蟹さんにも初めてギターで参加していただいて、私も冒頭のトイピアノを弾いていて。楽器のレコーディングにも参加したのは初めてでした。楽器レコーディングのときにミュージシャンの皆さんに、「自分自身を紐解いた大切な1曲で、ReoNaの半生が詰まったものです」とお伝えして。だからこそこんなに温かい音で、誰かに寄り添えるような形で、自分自身の絶望が描けたと思います。

――歌詞では、居場所がなくて何者にもなれない心の渇きのようなものが描かれていますが、そんななかにも、誰かの痛みに優しく寄り添えるお歌をうたいたいという、ささやかな願いが込められているのが、ReoNaさんらしさなのかなと。

ReoNa 傷ついていた当時の私も大それたことは思っていなくて、本当にただただ寄り添って欲しかったし、ただただ側にいてほしかったし、ただただ共感してほしかったし、別に誰かに無理やり引っ張り上げてもらいたいということは思わなくて。自分の思っている気持ちと重なる言葉やお歌があるだけで救われることもあるし、自分自身がそれを求めていたんです。やっぱり痛みを知っているから痛みに寄り添えると思いますし、そういう自分だからこそ歌える歌がこの曲なんだと思います。

誰も知らない存在から、誰かの絶望に寄り添う“ReoNa”へ

――「絶望年表」でご自身の表現したいことのルーツと、お歌を紡ぐことの意味に改めて向き合った後には、「ANIMA」「Till the End」という『ソードアート・オンライン』シリーズに寄り添った楽曲が続き、アルバムの最後となる12トラック目には、絶望系アニソンシンガー・ReoNaとしての始まりの歌「SWEET HURT」が置かれるという、アルバム全体の流れも素晴らしいなと思いました。

ReoNa アルバムの曲順の会議をしたときに、「ANIMA」は私の世界を広げてくれた大事な曲の1つなので、置きどころにすごく悩んで。そのなかで「絶望年表」というものにフォーカスしたあとに、また1つ、たくさんの“あなた”に会うきっかけをくれた楽曲がここにあって、その先に「Till the End」があって、始まりの歌があって、そして最後の最後まで聴いていただくと……ReoNaとしてはやっぱり私自身の大きな大きな夢が叶う最後、“unknown”を叶える形として、最後に始まりを置きました。チーム全体で考えて、最終的にこれしかないという曲順になったと思います。

――“unknown”、すなわち誰も知らないReoNaさんの核となるものに、この作品を通して触れることができた気がしました。それでもまだまだ誰も知らない部分がたくさんあるんでしょうけど。

ReoNa 今の私だから紡げるお歌ができたなと思っています。「絶望年表」も「いかり」も「unknown」も「BIRTHDAY」も「心音」も、これより先の未来の私が紡いでいるところを実は想像できなくて。今の私だからこそというものを、ひとさじ分でも多く入れようとしたReoNaに触れていただければ、そして、そこにあなた自身を重ねてもらえたら嬉しいなと思います。

――ちなみに、ReoNaさんは“ReoNa”というアーティストネームで活動しているわけですが、その本名とは別の名前を与えられたこと、新しい名前で活動を始めたことの意味について、どのようにお考えですか?

ReoNa “レオナ”という音自体は本名と同じなのですが、その本名はライオンからきているもので、心肺停止のような状態で生まれた私に、少しでもたくましくなってほしいという意味を込めて、百獣の王のレオからとった名前なんです。でも、私はそのままのレオナで、私は私でい続けられなかったので、L(Leona)がR(ReoNa)になって。今のReoNaは、私だけではなく、本当にいろんな人と一緒に作っているものです。お歌もそうですし、言葉もそうですし、アニソンシンガーとして作品に寄り添わせてもらっているところも含めて、私だけじゃないものでできたアーティスト・ReoNaというものを、私自身ものすごく愛おしいし、大切に思っています。それは今まで本名のレオナとして生きてきた感覚とは少し違っているなと思います。

――それこそ「SWEET HURT」の歌詞に“初めての気持ちに あなたの名前をつけよう”というフレーズがあるように、ReoNaという名前をつけたことによって、新たに生まれ変わった感覚があるのでしょうね。

ReoNa ちゃんと2つめの誕生日を迎えたと思います。

――そして12月8日には、会場に観客を入れての生配信ライブ“UNDER-WORLD”を開催予定。最後に久々のライブへの意気込みをお聞かせください。

ReoNa 今年の1月に行った“Colorless”の名古屋の振替公演以来のワンマンライブになります。LINE CUBE SHIBUYAという初めて立つステージで、しかもライブ自体が“リスアニ!LIVE”以来になるので、すごく楽しみですけど、ドキドキです。今まで生配信でライブを受け取っていただく機会もなかなかなかったなかで、会場から画面越しに、そして目の前のあなたにも届けられるという環境は、本当に願ってもないことで。ずっと待ち望んできたステージなので、画面の先や目の前で受け取ってくださるあなたに向けて、ありったけをお届けできたらと思います。

PHOTOGRAPHY BY 山本マオ
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
ReoNa 1st フルアルバム
『unknown』
発売中

【完全数量生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:VVCL1744-46
価格:¥5,500+税

【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:VCL1747-48
価格:¥4,000+税

【通常盤(CD)】

品番:VVCL1749
価格:¥3,000+税

<CD>
01. unknown
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:PRIMAGIC
02. forget-me-not
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:rui(fade) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
03. Untitled world
作詞:草野華余子 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:堀江晶太
04. 怪物の詩
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
05. Let it Die
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
06. BIRTHDAY
作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太 編曲:堀江晶太
07. いかり
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
08. 心音
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:rui(fade) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
09. 絶望年表
作詞:毛蟹(LIVE LAB.)・ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.)・ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)・ハヤシケイ(LIVE LAB.)
10. ANIMA
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
11. Till the End
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
12.  SWEET HURT -plus unknown-
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:PRIMAGIC

<Blu-ray/完全数量生産限定盤>
・Music Video
01.unknown -Music Video-
02.SWEET HURT -Music Video-
03.forget-me-not -Music Video-
04.怪物の詩 -Music Video-
05.トウシンダイ -Music Video-
06.ANIMA -Music Video –

・「ReoNa ONE-MAN Live “Birth 2019”」ライブ映像
01.怪物の詩
02.forget-me-not
03.カナリア
04.ピルグリム
05.虹の彼方に
06.トウシンダイ
07.ALONE
08.Till the End
※2019.10.20 Zepp Tokyoのライブ映像となります。

<Blu-ray/初回生産限定盤>
・Music Video
01.unknown -Music Video-
02.SWEET HURT -Music Video-
03.forget-me-not -Music Video-
04.怪物の詩 -Music Video-
05.トウシンダイ -Music Video –
06.ANIMA -Music Video –

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