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INTERVIEW

2020.09.19

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を締めくくる「WILL」と「未来のひとへ」に込めた想い―― TRUEインタビュー

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を締めくくる「WILL」と「未来のひとへ」に込めた想い―― TRUEインタビュー

ついに公開がスタートした『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。その主題歌を収めたTRUEの15thシングル「WILL」が9月16日に発売された。このシングルには劇場版主題歌となる表題曲に加え、元々はイメージソングとして作られた「未来のひとへ」や「WILL」の英語バージョンも収録される。「作家として歌い手として、誰よりもヴァイオレットのことを誰よりも理解している」と自負するTRUEが各楽曲にどんな思いを込めたのか、じっくりと語ってもらった。

――まずはこれまでTUREさんが作られた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』関連の3曲の振り返りからお願いします。最初はTV版OP主題歌の「Sincerely」でした。

TRUE 「Sincerely」の話をいただいたときは本当に驚きました。作品のことはTVCMを見て知っていたんですよ。

――話題になった原作小説のCMですね。

TRUE そうそう、すごく細かく美しい映像で。だから主題歌の話をいただいたときはびっくりしました。その一方で、私もヴァイオレットと同じく言葉を書いたり伝えたりすることを生業にしているので、巡り合うべくして巡り合ったのかなとも感じました。「Sincerely」は物語の始まり……ヴァイオレットがあまり言葉を知らない段階から流れる楽曲でしたので、今よりシンプルな言葉で表現することを心がけました。

――その後、各所で歌われていますね。

TRUE 当時は、こんなに成長する楽曲だと思っていませんでした。歌うたびにより研ぎ澄まされていくのを感じるいうか、どんどんシンプルに言葉を伝えやすくなっているんです。この曲との出会いは本当に音楽人生で大きいです。ほかのどの曲よりも自信をくれました。

――続いて「Extra Episode」の挿入歌2曲についてはいかがですか?

TRUE 劇中でオペラ歌手のイルマが歌唱する「The Songstress Aria」と、彼女の依頼でヴァイオレットが初めて歌詞を書いた「Letter」ですね。この2曲でオペラ歌手……しかも日笠陽子さんのキャラクターとして歌い、さらに代筆屋の代筆までするという貴重な体験をさせていただきました。オペラは歌ったことがなかったので、特に「The Songstress Aria」は大変でした。ひとつ申し訳なかったのが、イルマはソプラノ歌手という設定なのに少しキーを抑えて歌ったことです。本当のソプラノ歌手のキーは出せないので作品側と相談したところ、「私が歌うことに意味がある」と仰ってくださったので歌わせていただいたんですけど。

――それでもすごい迫力でした。

TRUE シンガーとして一つ上にあげてくれた経験でした。あとレコーディング時にカメラを入れてくださって、私の動きや発声の仕方を参考にアニメを作ってくださって。すごく光栄でした。

――ヴァイオレットらしい歌詞を書かなければならない「Letter」の作詞も大変だったのでは?

TRUE 私は作家として歌い手として、誰よりもヴァイオレットのことは理解しているつもりです。だから彼女が見たり聞いたりしているものを、彼女だったらどう表現するかと想像し、そのまま言葉にしたらすんなりOKをいただけました。

――さすがです。そして『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』主題歌の「WILL」が公開に合わせてリリースされました。この曲の話はいつ頃からあったのでしょうか?

TRUE 2018年のTVシリーズが終わって続編の制作が発表されたくらいのタイミングで、「劇場版も主題歌をお願いします」とオファーをいただきました。だから2年前から話はあったけど、劇場版の公開延期もあって……ようやく形になりました。

――この曲のコンセプトはどんなふうに決まりましたか?

TRUE それが紆余曲折あって……昨年の夏に石立太一監督と『響け!ユーフォニアム』などの石原立也監督に会いに京都に行ったんですよ。そこで石立監督と「ヴァイオレット」の話をたくさんするなかで、私の「未来のひとへ」をずっと聴いているという話を聞いたんです。

――『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のボーカルアルバム『Song letters』用に作られたイメージソングですね。

TRUE そうです。それを絵コンテなどの作業をしながら何百回と聴いていると。そのときは「そんなに誰かの心に寄り添うような曲に育ったんだ」と喜んでいたんですけど、劇場版の主題歌について話をするために改めてお会いしたら「『未来のひとへ』を使いたい」と仰ってくださってびっくりしました。

――それで「未来のひとへ」が劇場版でも使われ、今回のCDに収録されたと。この曲はどんな思いで作られたんですか?

TRUE ボーカルアルバム用にヴァイオレットのイメージソングを作ったときに、「あの子をあの時代だけで閉じ込めるのはもったいない。未来についての曲を描いてもいいですか?」と私から提案しました。それで出来たのが「未来のひとへ」です。

――たしかに彼女の未来に思いを馳せるよう歌詞ですね。

TRUE TVシリーズの時代って物書きできない人が多いから代筆屋がいるんですけど、劇場版は時代が進んで教育が普及し、多くの人が物書きできるようになって電話も普及しているんです。さらに今はメールやSNSもあって伝えるツールは増えている。そんな今を生きる私達にも伝えたいことを曲にしたのが「未来のひとへ」です。そのテーマが劇場版と偶然にも一致していて、だからこそ使いたいと仰ってくれるので快諾しました。

――では「WILL」を書き下ろした理由は?

TRUE 私にも今だからこそ書きたい思いがあって、それを今書かなかったら一生後悔すると思ったからです。そう伝えたら「両方作りましょう」と答えてくださって。それで『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主題歌として「WILL」、その後にアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズのフィナーレ曲として「未来のひとへ」が一緒に流れることになりました。そんな流れで制作が決まったので、新曲は「未来のひとへ」に繋がるような曲を作ろうと思って作り始めました。

――本当に紆余曲折があったんですね。「WILL」は本編の劇伴を担当されているEvan Callさんが作曲・編曲されていますが、これはどういう流れで決まったのでしょうか?

TRUE この新曲が『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の集大成になりますので、サウンド面はきちんと作品の世界観に寄り添おうと思い、スタッフ全員「それが出来るのはEvanさんしかいない」となったので、お願いしました。おかげで劇伴の延長として聴けるし、少しノスタルジックだけど未来に向かっていく暖かさも感じる、ヴァイオレットらしい曲に仕上がったと思っています。

――その曲に乗せる歌詞はすんなりイメージできましたか?

TRUE いや、最初はどんな角度から書くか悩みました。「未来のひとへ」に繋がる曲だし、テクニカルにストーリーっぽくしようかとかいろいろ考えたんですけど……でもちょうど制作を始めた頃にすごく大切な人を亡くして。この1年でたくさんの別れを経験してきたことを、作品というフィルターを通して楽曲に反映できたら、それが作品のためにもなるし、応援してくださる方の心にも届くんじゃないかなと思ったんですよね。なので、今感じていることを素直にそのまま歌詞にしようと決めてからはわりとすんなり書けました。また、この作品は届けられなかった思いや遂げられなかった希望、そして人の生き死にを扱う作品なので、そういったところも包み込める包容力のある楽曲にしようと心がけました。とは言え悲しい曲にするつもりは全然なくて、未来に向かう前向きな作品の曲なので、皆さんにも温かい気持ちで聴いていただきたいです。

――「WILL」には歌詞が2種類あるとか。

TRUE はい、劇場で流れるものとCDに収録されるフルサイズで歌詞が違うんです。二つの結末とまではいかないですけど、曲の終わりが2パターンあります。

――どんな違いなのか、劇場で聴くのが楽しみです。曲のタイトルについて伺います。テーマ的に未来はもちろんですが、ヴァイオレットが成長を通じて手に入れた意思という意味も込められていると解釈していいのでしょうか?

TRUE はい。それは彼女だけでなく、私達みんなの意思でもありますけど。

――というのは?

TRUE 歩き続けるという意思です。それまでヴァイオレットはTVシリーズで一度も止まらずに歩き続けてきて、私もそれに合わせて少しずつ成長しながら歌ってきました。なのに様々なことがありその歩みが止まるような気がして、私はそれがすごく怖かったんです。でも作品は止まることなく動いていて、劇場版で再会したヴァイオレットは想像よりもずっと素敵な女性に成長していました。

――それはこの劇場版が無事に公開されることを意味していますか?

TRUE そうです。これからもあの世界が続き、彼女と歩き続けられるとわかって嬉しかったです。

――今回のシングルCDとは少し話がずれるのですが、以前、TRUEさんが別のインタビューでタイアップ曲でも自分を出すようになったと仰っていました。「WILL」にも相当に濃い思いが込められるようですね。

TRUE デビューしたての頃は「みんなが好きなアニソンを作ろう」と考えていたんですよね。アニソンに対する憧れが強くて、その憧れのままに曲を作っていた側面もありました。でも『ユーフォ』辺りからその意識が変わって、自分が歌う意味や理由を考えながら作り始めるようになりました。するとそれ以降のほうが「アニメとの親和性が高い」「アニメのことを歌にするのが上手」と言っていただけるようになって。

――担当する作品と自分の思いとの共通点を探すのが巧みなのでは。

TRUE そうなんでしょうか。個人的には自分のことを綴ってはいるけど、でもそれは作品に向き合って誰よりも理解していることが前提です。それができるような素敵な作品とばかり巡り合っているのもあると思うんですけどね……たまたま?

――いや、TRUEさんは作品に対する理解力もすごいですし、どんな作品にもアジャストできる懐の広さも持っているからじゃないでしょうか。『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』のEDテーマ「フロム」などもすごかったですし。

TRUE ありがとうございます。「フロム」との出会いも私の中ではすごく大きかったんですよ。アニソンって89秒で完結しなきゃいけないから、華やかでテンポが早い曲が多くて、どんどん弾数もメロディも増えていく。だからバラードってそんなに多くない中、「フロム」を歌えたことで「こんなに私らしくバラードを歌っていいんだ」と気付くことができ、「これからはきちんとバラードを大事に歌えるアーティストでいよう」と意識し始めたんです。自分にとってはそれだけ大事な曲なので、今急に名前が挙がってびっくりしました(笑)。

――余談ついでに恐縮ですが……以前あるイベントで「フロム」を歌われていた際に、照明が徐々に青から赤に変わっていったのを見て涙腺を刺激されました。あれは『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』のクトリの髪色をイメージした演出ですよね?

TRUE 気付きました? 嬉しいです。ワンマンでも照明の演出には拘っているんですけど、そういうファンだけがわかる、クスッとかジワッとかウルッとするポイントがあるといいなと思っていて。だから「フロム」を歌うときは照明で髪を赤く染めてもらっています。

――そういったアニメファン泣かせの演出をされるところが、TRUEさんの卓抜したセンスだと感じます。話を新譜に戻して、「WILL」に続いて流れる「未来のひとへ」は新たにレコーディングされたんですよね?

TRUE はい、劇場版用にオーケストラバージョンにアレンジされて、歌も改めて録っています。

――歌に対して込めた思いは以前とは違いますか?

TRUE 全然違います。この曲をフィナーレに使いたいと仰ってくれた石立監督の想いを受けて、これまでヴァイオレットを愛し続けてくださった皆さんへの感謝の気持ちを込めてました。ヴァイオレットって特別な人ではなく、小さな町に住むただの女の子だけど、みんなが自然と「彼女みたいな生き方をしたい」「彼女みたいな考え方をしたい」と憧れる存在なんですよね。決して神格化しているわけではないんですけど。そんな彼女のことをずっと忘れないでほしいな、という気持ちでより丁寧に歌いました。

――もう1曲カップリングとして収録されているのが「WILL」の英語バージョンです。これはなぜ収録されたのでしょうか?

TRUE TVシリーズが始まる1年前に、ワールドツアーとしてアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど様々な国で歌わせていただいたのですが、どの国でも「Sincerely」を一緒に口ずさんでくれていたんですよ。そのときに日本語の曲なのに聴き込んでくださっていたことに感激しましたし、何かを伝えようとする思いとか、曲に乗せた愛やエネルギーは言葉の違いを超えて届くんだと感じました。「WILL」も同じような存在に育てばいいなという願いと、言葉に込められた思いをできるだけ鮮明に届けたいと思って今回は英語バージョンも作りました。

――Lynne Hobdayさんというイギリス出身の作詞家・ミュージシャンが英訳されたようですね。

TRUE はい。レコーディングにもいらしてくれて、英語詞に込めた思いを伝えてくれたり、発音指導もしてくれたりしました。

――全編英語の歌を歌ってみていかがでしたか?

TRUE 日本語の歌詞をなるべくそのままの意味合いで英訳してもらったんですけど、言葉の濃度が違うのが面白かったですね。英語はすごくストレートというか。日本語の歌詞って「私はこう思う」「あなたはこう」とか、そういう主語が英語の楽曲に比べる少なくてぼやかしがちじゃないですか。特に私は作詞するときに意図的にやっているんですけど。

――もう少し詳しくお聞かせください。

TRUE 私はアニソンにおける正解って、その曲が玉虫色に光ることだと思ってるんです。聴く人や聴くシチュエーションによって違うふうに感じられたり、楽曲を媒介して作品の様々な側面が見える。そういう曲が私にとってのアニソンの理想形なんです。なのであえてぼやかしている部分もあるのですが、それが英語になると主語が多く、真っ直ぐに伝わるので、思いの濃度が増しているような気がしました。その変化が面白かったですね。

――今後も英語詞の歌唱はやってみたいですか?

TRUE はい。特に「Sincerely」は。

――先ほど「Sincerely」が海外でも人気という話があったので、今回のCDに「Sincerely」の英語版も入っていたらいいのにと勝手に思ってしまいました。

TRUE それだとミニアルバムになっちゃう(笑)。あと私はアジアツアーもやってみたいので、そのときは中国語などでも歌ってみたいですね。

――結城アイラさんの「Violet Snow」が英語版、フランス語版、中国語版、韓国語版とあるんですよね。それぞれ現地のアーティストが歌っているという。

TRUE すごいですよね。「Sincerely」も機会があればいろんな国の言葉でお届けできたら嬉しいです。そのときは現地のアーティストではなく、私自身が歌いたいですね。

――では最後の質問です。アニメの展開が一段落ついた今、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという女性にひと言、声をかけるとしたら?

TRUE 「幸せになってよかったね」でしょうか。ヴァイオレットに対しては、本当に親心みたいな気持ちがあるんですよ。彼女は当初傷つく言葉を平気で放つし、心ない言葉も平気で受け止めちゃう、何もわからない赤ちゃんみたいな子でした。それが劇場版では自分の思いを語って、しかも相手の思いまで推し量り、身を挺して誰かを守ろうとする。そんな一人の女の子の成長を見届けられて本当に幸せです。だからこの「よかったね」という気持ちは私だけではなく、関わっているスタッフもそう思っているはず。そして最後まで見守ってくださったファン皆さんもきっと同じ気持ちだと思います。

Inteview & Text By はるのおと


●リリース情報
TRUE ニューシングル
「WILL」
9月16日発売

描き下ろしイラストスリーブケース

ジャケット写真

品番:LACM-14994
価格:¥1,200+税

<CD>
01:WILL
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:Evan Call
02:未来のひとへ 〜Orchestra ver.〜
作詞:唐沢美帆 作曲:川崎里実 編曲:Evan Call
03:WILL ~English ver.~
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:Evan Call 英訳:Lynne Hobday
04:WILL (Instrumental)
05:未来のひとへ 〜Orchestra ver.〜 (Instrumental)

●作品情報
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
2020年9月18日 全国劇場公開

©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

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