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INTERVIEW

2020.09.02

鹿乃、TVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!』OPテーマ「なだめスかし Negotiation」をリリース!【インタビュー】

鹿乃、TVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!』OPテーマ「なだめスかし Negotiation」をリリース!【インタビュー】

歌をうたって10年、ネット発のシンガー・鹿乃がまた新たな一歩を刻もうとしている。10周年を記念するアルバム『yuanfen』を発表したのちにリリースされたニューシングル「なだめスかし Negotiation」は、TVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!』のOPテーマという、彼女のキャリア史上もっともハイテンションな1曲になった。そんな新境地にどう向かっていったのか、そしてそんななか彼女が示した新たな結論とは。こんな今だからこそ伝えられる鹿乃の想いに迫った。

――まずは今年に入ってからの鹿乃さんの動向を伺います。3月には5thアルバム『yuanfen』もリリースされましたが、ここ最近はいかがお過ごしでしたか?

鹿乃 今年はデビュー10周年ということもあっていろんな企画も進行していたんですけど、それがコロナの影響もあって飛んでしまって。それでこの期間は制作に当てようと、個人でできる範囲でカバー動画をあげたり、自分で作詞作曲をして編曲を別の方にお願いしてそれを投稿できたらいいなという準備期間にしていましたね。

――イベントなども組みづらいこの時期だけに、制作に没頭していたと。

鹿乃 あとは歌を聴いてもらうためにはいろんなことをやってみようと思って、なるべく苦手なSNSとかも頑張ってみたんですけど……。

――なるほど、SNSでの活動も活発になって。

鹿乃 私、これまでSNSってあまり見ないようにしていたんですよ。呟くときと自分へのリプライ、あとはファンの感想を拾ってみるぐらいだったんですけど、それだけじゃいけないなと思って。せっかくSNS上でみんなが語っているので、前向きな気持ちでSNSに向き合おうと思っていたんですけど、やってみて「これは……病むな」と(笑)。

――たしかに、ここ最近の状況下で、少し尖った意見が飛び交うこともあって、実際距離を置きたくなる気持ちもわかります。

鹿乃 そうですよね?例えばネガティブなことがめちゃめちゃ書いてあるのを見ると病んじゃいそうだし、かといってみんな楽しそうにしているのもそれはそれでって思うと、「あ、SNS合ってないんだな」って(笑)。

――この期間でSNSが合わないという再発見ができたと(笑)。

鹿乃 なので変にSNSで自分の意見を書くんじゃなくて、歌詞にそれを込めたほうがいいんだなって再認識しました。

――それによって逆に創作に没入するようになったと。

鹿乃 そうですそうです(笑)。やっぱりSNSってやりすぎると自分のイメージが変わってしまうこともあるし、曲のイメージにも影響しちゃうこともあるのかなって思って。やっぱり私としては曲を好きになってほしいので。だからネットでいうと今は、YouTubeで何かできないかなって企画を練るほうが楽しいですね。

――さて、そんななかTVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!』のOPテーマを収録したニューシングル「なだめスかし Negotioation」がリリースされました。『宇崎ちゃん』は原作から人気の話題作ですが、鹿乃さんは原作はご覧になりましたか?

鹿乃 アニメ化される前から知っていて、結構パラパラって読んでいたんですよ。今回のお話をいただいてからしっかりと読み込みまして……イチャイチャしてるなって(笑)。アニメも人のイチャイチャを30分観ているような感じで。

――たしかに宇崎ちゃんのウザ可愛いさが前面に出たラブコメ作品ですが、今回の作詞・作曲が田代智一さん、編曲が伊藤 翼さんによるトリッキーな楽曲になりましたね。

鹿乃 そうですね。最初に仮歌が入ったデモを聴いたとき、2番からリズムが変わっていくのに笑っちゃって(笑)。

――すごすぎて笑ってしまうという(笑)。

鹿乃 2番から解き放たれちゃったの?っていう。この間、伊藤さんが「リズムで遊んでいます」っていうお話をされていまして、やっぱりなと(笑)。単純に無茶苦茶くちゃ早かったので、それを私が歌えるのかっていう不安もあったんですけど、意外にできました。私できる子だったという(笑)。

――実にリズムお化けな翼さんらしいトリッキーでキュートなサウンドですよね。リズムとメロディが一緒になるところも多くて、こういうタイプでの歌い方はどうなるのかなと。

鹿乃 普段の私の歌い方って、リズムにぴったり合わせるというよりゆったりめに歌っているんですよ。でもこの曲はそんなゆったりしていたら次のフレーズが歌えなくなっちゃう(笑)。なのでカチカチとリズムに合わせていくような歌い方になりましたね。

――またそうしたサウンドで非常にテンションの高い楽曲になりましたが、歌うにあたってのテンションの上げ方というのはいかがでしたか?

鹿乃 ご存知かとは思いますが、私……普段はすごくテンションが低いんですよ。

――存じています(笑)。

鹿乃 上がっても微増というぐらいな感じなんですけど(笑)、この曲ではそんなことは言ってられない、普段のテンションのままだとお経みたいになっちゃうんですね。なので、まずはTVサイズで一緒に歌っている宇崎ちゃん(CV. 大空直美)の音源が先にあったので、それを聴いてからレコーディングしました。すると自分のなかではテンション上げていたつもりだったのが、それだけじゃ足りない、自分の思っていたハイテンションだとダメだと、宇崎ちゃんの声を聴いて思ったんですね。

――宇崎ちゃんのテンションがひとつの指針になったんですね。

鹿乃 そうか、これがキャラソンかと。もう本当にすごいと思って、元気の押し売りが歌から伝わるという(笑)。

――まさに曲のウザ可愛いさが出ていると。

鹿乃 そうですそうです。それが歌で表現できているという役者さんって本当にすごいなって。なのでそれに負けないようにもっとテンションを上げていかなきゃって。

――TVサイズではそうした宇崎ちゃんとのハイテンションな共演もありましたが、鹿乃さんのみのフルサイズですと、そこにおしゃれなイメージが追加されているような気がしました。

鹿乃 ちょっとあのテンションのまま2番に行ったらもたないなと(笑)。

――フルコーラスに合わせたテンションの配分になったわけですね。

鹿乃 1番と2番でリズムが変わって、印象もまた変わるんですよね。それがすごくおしゃれだなって思って。それに合わせるように2番はクールめに寄せていますね。

――そうした普段とは違うテンションで歌ってみた感想はいかがでしたか?

鹿乃 楽しかったですね。普段は歌っていてどんよりしていくこともあるんですけど、ハッピーな気持ちで終われました(笑)。アニメが放送されたあともSNSパトロールをしてみたんですよ。

――慣れないSNSを駆使して(笑)。

鹿乃 いわゆるエゴサを頑張ってやってみた結果(笑)、「この曲のイメージはなかった、新しい、楽しい」っていう感想をいただけて。この時期みんなもアガりたかったんだなって思いましたね。

――今求められているものこそが”ウザ可愛いさ”なのかもしれないですね。またアニメのほかにもこの曲では3Dモデルの鹿乃さんが歌って踊るMVが公開されていますね。

鹿乃 そうですね。ステージがアニメを意識しているものにどんどん切り替わっていくのがいいですね。私がいちばん気に入ったのが、”えっ私の態度 気になるんスか? うっざカワイイでスよね!”というところでカメラが「気になりません!」って首を振っているところが細かいなあって。そういうのもテンション上がりましたし、3Dにもなって激しく踊って目で見ても楽しめるようなものになりました。ずっと活動してきて、10年前では考えられなかったですからね。自分のイメージキャラクターが分厚くなっているっていうのは。

――たしかに鹿乃さんがネットで活動を始めた10年前というと、楽曲のMVというと一枚のイラストとかが主流で、そこからアニメーションも増えて、現在はこうして3Dになっていくという歴史も感じさせますね。

鹿乃 そこはやっぱり初音ミクちゃんに引っ張っていってもらっていたシーンのような気がします。彼女もイラストから分厚くなっていきましたからね。

――そしてカップリングの「I am who I am」ですが、一転してエレクトロニックなビートのクールな1曲になりました。

鹿乃 これはですね、”SNS自分に合わない曲”というか、どんだけSNS苦手を主張しているんだっていう話なんですけど(笑)。

――SNS合わないというのがここで曲になったと(笑)。

鹿乃 さっき話した、SNSが合わないなって確信したど真ん中の時期に書いた歌詞なんです。SNSでのネガティブな言葉、例えばたくさんの「好きだよ」とか「かわいいよ」とか、「曲いいよ」っていうなかのたったひとことのネガティブなものって、めちゃくちゃ引っ張られるんですよね。いざ踏み出すぞっていうときに、一瞬チラついちゃうんですよ。それは100あるなかの、あっても5とかの意見かもしれないんですけど、その5に引っ張られちゃったら自分が自分でなくなっちゃうというか、残りの95の方々を無視するのか、じゃあどうするのが正解なんだってなったときに、「私は私だ」っていうのが正しいというか、それしかないんじゃないかと思って作詞しました。

――合わないと結論が出たSNSを通して、自分らしく生きると決意できたと。

鹿乃 自分はどんなことをしても一生自分なので、自分でしか生きていけないよっていう意味で書きましたね。まあそこは、自分をあまり出しすぎるとちょっと暗いなこいつって思われがちなので(笑)、加減しつつ書いてみて。

――またサウンドも非常にクールな仕上がりで、それに合わせた鹿乃さんの歌唱も大人びた魅力が出ていますね。

鹿乃 今回曲を書いてくれたNorくんとはこういう曲がよくてこういうのをイメージしている、と直接やり取りして「じゃあこういう曲はどうですか?」「いや、それはちょっと違う」みたいな(笑)、そういうやりとりをしながら作っていきました。

――鹿乃さんのなかでサウンドの完成形は見えていたわけですね。

鹿乃 そうですね。最近はフューチャーベースや、歌もラップとかに興味を持ち始めていて。3月にアルバム『yuanfen』を出したときに、デビューして10周年ということもあってもうちょっと、もっと広い視野でいこうかなと思ったんですよ。自分にはもっとふわふわした曲が合っていたり、みんなにも好まれているのかなって思っていたものをいったん取っ払って、もっと広い視野で自分好きな曲をやっていこうという期間にアルバムを出してから入っていて、その流れで出来たのがこの曲なんですね。

――10年というキャリアを経て、新しい自分を発見しながらもそこに「私は私」とつけられるというのは深いですね。

鹿乃 そうですね。私は自分を出しつつ、自分の歌というより楽曲としていいなって思ってもらいたいのもあります。自分の声が素材として好きにやってほしいというか、性格的なのもありますけど自分自分というより、一緒にいいものを作れたらなって。

――そうしたシングル1枚でうざいとかっこいいが同居するシングルとなりましたね。

鹿乃 「あれっ、本当に同じ人なのかな?」っていう(笑)。

――そうした鹿乃さんの現在地を示す1枚となりましたが、一方でデビューから10年という時期でもありますが、改めて鹿乃さんのこれまでを振り返ってみていかがでしたか?

鹿乃 まず、もう10年なんだって思いますよね。だからといって成長したかというと、結構悩んでいた時期も多かったなって思います。自分のなかで何をやりたいのかではなくて、どれが正しいか正しくないかって考えすぎちゃったことがあって。

――これまでもカバーも含めて本当に多くの楽曲を発表してきましたが、そこには鹿乃さんの感情の揺らぎというものが出ていたわけですね。

鹿乃 そこはモロに出ますね。『yuanfen』は10年間を振り返って何を伝えたかったのかを考えて作ったんですけど、感情の色合いも決してクリアではなく、ほろ暗いものはありつつ、でも最後には感謝を伝えるというものでした。それでこのアルバムが自信につながったというか、「これが私です」というものが出来てきて、そこからポジティブにはなれたんだと思いますし、そこからより攻撃的になった「I am who I am」を作ることができたと思うと、感情的にはやりやすくなったのかもしれないです。

――新しい一歩を踏み出す自信になった10周年というわけですね。

鹿乃 やっぱり挑戦するって怖いじゃないですか。これまでは「前のほうがよかった」とか「変わったな」って言われることをネガティブに捉えていたんですけど、変わったっていうことは進化したっていうことじゃん、「前のほうがよかった」って言われたら今もいいっていってもらえるようなものを作っていけばいいじゃんって思えるようになって。「ああ、きっとまだ慣れてないから受けつけないのかな」ってポジティブに考えるようにして(笑)。

――そうした意見にも前向きに捉えられるようになったと。

鹿乃 打たれ弱かったのもあったんですけど、いい意味で図太くなりました。ヘコんでいてもいいことあったかというと、10年間振り返ると何もいいことなかったんですよ。ヘコむならヘコんだ気持ちを作品に残したほうが、ネガティブなりにポジティブになるかなと。ヘコんでじゃあいいやってなるよりかは、ヘコみつつも「じゃあしばく!」みたいな気持ちになれましたね(笑)。

――そうしたスタイルを得た10周年ですが、今後についてはどう考えていますか?なかなか先々の予定も立ちづらい昨今ではありますが……。

鹿乃 いや、こんなときだからこそ音楽が求められてきているっていう瞬間があるんだと思います。心に余裕がないときとか、時間がないと音楽ってじっくり聴こうって思わないかもしれないですけど、そういうときに私たちにできることって変わらず歌で支えることなのかなって。もちろんライブとかはまだ難しいのはありますけど、私はもともとネット出身なので、私なりのやり方ファンの人にお返しができるのかなって思って、最近はカバー投稿も頑張るようにしています。

――今だからこそできること、そして鹿乃さんだからできることをやっていくと。

鹿乃 それでもやっぱり厳しいこともあると思うんですよね。でも、だから辞めるのかっていうのではなくて、できることをしようよと。それは私たち音楽以外の業種の人もたちもそうだと思います。テレビをつけるとすごいですよね。毎日ドラマなりバラエティなりいろんな企画が発信されているじゃないですか。アニメにしてもこの時期大変だったと思うんですよ。そんな皆さんのお仕事の後押しになるように頑張っていきたいし、ここで立ち止まらずにできることをどんどんやっていきたいと思います。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一


●リリース情報
TVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!」OPテーマ
「なだめスかし Negotiation」
9月2日発売

【初回盤(CD+DVD、版権描きおろしイラスト付)】

品番:TEI-143、145
価格:¥1,500+税

【通常盤(CDのみ)】

品番:TEI-144
価格:¥1,000+税

<CD>
M1:なだめスかし Negotiation
(作詞・作曲:田代智一 編曲:伊藤翼)
M2:I am who I am
(作詞:鹿乃 作曲・編曲:Nor)
M3:なだめスかし Negotiation(TVsize) 鹿乃と宇崎ちゃん
M4:なだめスかし Negotiation(instrumental)

<DVD>
M1:「なだめスかし Negotiation」 Music Video

「なだめスかし Negotiation」
配信リンクはこちら

「なだめスかし Negotiation(TVsize)」鹿乃と宇崎ちゃん
配信リンクはこちら

●作品情報
TVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!』

AT-X 毎週金曜日21:30(リピート放送:毎週(日)24:30/毎週(月)13:30/毎週(水)29:30)
ABCテレビ 毎週土曜日26:10~
TOKYO MX 毎週金曜日22:30~
テレビ愛知 毎週土曜日26:50~
山陰放送毎週金曜日25:55~
NCC長崎文化放送 毎週水曜日25:54~
BS11:毎週金曜日23:00~

©2020 丈/KADOKAWA/宇崎ちゃん製作委員会

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