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INTERVIEW

2020.08.19

TVアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』のOPテーマ「つらぬいて憂鬱」をリリース!ニノミヤユイ インタビュー

TVアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』のOPテーマ「つらぬいて憂鬱」をリリース!ニノミヤユイ インタビュー

今年1月にアルバム『愛とか感情』でアーティストデビューを果たしたニノミヤユイが、それに続く1stシングル「つらぬいて憂鬱」をリリースした。自身も声優「二ノ宮ゆい」としてルヴェリア・サンクトゥス役で出演するTVアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』のOPテーマとなる本楽曲は、Tom-H@ckらが手がけた異色のファンクチューン。話題のクリエイター・タナカ零が作編曲、ニノミヤ本人が作詞したカップリング曲「re:flection」を含め、彼女らしさ全開のネガティブで棘のあるシングルについて話を聞いた。

――新作のお話を伺う前に、まずデビューアルバム『愛とか感情』発表以降のことについてお聞かせください。リリ―スイベントなども開催されていましたが、ファンからの反応・反響はいかがでしたか?

ニノミヤユイ 私のファンの方には、私みたいにネガティブ気質だったり、自信を持てない方も多くいらっしゃったみたいで、「(アルバムを聴いて)勇気をもらえたよ」と温かい言葉をくださったり、「乱反射↘↑↗」や「光なくても」といった、私が作詞をした曲が良かったと言ってくださる方も多くて、自分の言葉が伝わったんだなと思えて嬉しかったです。

――ニノミヤさんのファンにはどんな方が多いですか?

ニノミヤ 若い男性の方が多いのと、若い女性の方も多いです。私と同年代とか中学生の女の子からお手紙をもらったりもしますし、同い年の子が「ユイちゃんの言ってることがすごくわかる」と書いてくださったりもして。同年代で似たようなことを考えている子がいることに感動しましたし、皆さんの応援はすごく力になりますね。

――アルバムをリリース後の今年3月には高校を卒業されて、新社会人としての生活がスタートしたわけですが、心持ちなどに変化はありますか?

ニノミヤ 卒業後の春休みの期間とコロナの自粛期間が被ってしまったこともあって、そこからズルズルといってしまったところがあって……。周りも最初は「私、大学生になったの?」という感じの子がいっぱいいたんですけど、最近は学校に通い始めた子が増えて、大学だとか学校の課題の話とかを聞くので、やっぱり私はみんなと違うんだなって思ったり。あと、自分が学生じゃないと思った瞬間に、高校生が怖くなりました(笑)。

――というのは?

ニノミヤ 緊急事態宣言が解除された後に、横浜で買い物をしたことがあったんですけど、学校が始まったばかりで放課後に遊んでいる高校生の女子グループがたくさんいたんですよ。学生の皆さんってやっぱり生命力がすごいじゃないですか。その勢いみたいなのを見て「え~、怖い!」と思ってしまって。洋服とかを見てても、隣で女子高生のグループが「これめっちゃ良くない?」とかしゃべってると、静かにお店を出るみたいな(笑)。

――自分もついこないだまで高校生だったのに(笑)。お仕事に関してはいかがでしょうか。

ニノミヤ 自分の中で「これを生業としてやっていく」という覚悟ができてきたと思います。学生のときは学校のこともあってしっかりと考えられていなかった部分――もっと演技や歌が上手くなるにはどうしたらいいのか?とか、声優もアーティストも専門職だと思うので、プロフェッショナルになるためにはどうすればいいんだろう?とか、ちゃんと一から勉強し直さなくちゃいけないなと思う反面、それが焦りにもなっていて。なので私は今、本当に社会人一年生って感じです(笑)。

――実際に何かアクションを起こしましたか?

ニノミヤ 声優さんの繋がりでワークショップに誘われていたんですけど、その直後に自粛期間になってしまったので、結局行けずじまいなんです。『アイカツ!』シリーズも一区切りになって、『ピーター・グリルと賢者の時間』のアフレコも最終話まで録り終えているので、今の私は演技指導してくださる方を失っている状態で……「お願いだから誰か私をしごいてください!」という状況です(苦笑)。

――お仕事柄、自分一人で勉強するのには限界があるでしょうしね。

ニノミヤ そうですね。発声練習とかの超基礎的なことは毎日継続してやっているんですけど。でも、演技とか歌の表現の部分を磨くのは、一人では難しい部分があるので、今は「どうしよう……」って伸び悩んでるような気持ちがありますね。

――7月に「IDOL舞SHOW」の配信イベント“ぱぴえましえ、X-UCです! 無礼講でGo! Party Night”に出演していましたが、そのレッスンや経験は糧になったのでは?

ニノミヤ 「IDOL舞SHOW」は元々アイドル活動をされていた方とか、いろんな経験をしてきた人が集まっているコンテンツで、特に私が所属しているX-UCというグループは、メンバーが10人もいて、皆さん経歴がバラバラなので、お話を聞いてるとすごく面白くて。自分の体験したことのない世界を知ることができたので、そういうことも今後の演技に活かすことができればと思います。

――この4月からは、ニノミヤさんが芸人コンビのきつねと一緒にMCを務めるラジオ番組「Listen to my dark!!」も、FMヨコハマで始まりましたし。ちなみに話が変わるのですが、最近、秘書検定の資格を取得されたらしいですね。

ニノミヤ そうなんです。私は進学校に通っていたので、就職した子は学年に一人か二人ぐらいということもあって、先生からも気にかけていただいていて、受験勉強の代わりに資格の勉強を薦めていただいたんです。秘書検定であればマナーも学べるということで、周りの子が受験勉強をしているのに合わせて、私も秘書の勉強をして資格を取りました。知ってそうで知らないギリギリのラインの常識問題みたいなものが多くて、ためになりました。

――そんななか、7月17日には1stライブ“愛とか死、或いは名もない感情からの逃避”をオンラインで実施されました。こだわりもたくさん盛り込んだライブだったと思うのですが。

ニノミヤ 私は持ち曲がまだ少ないぶん、1曲1曲を届けるというよりは、ライブ全体を通して一つの作品にする、というのが大きなテーマとしてあって。観ている方がニノミヤユイの世界観に浸れるようなライブにしようということで、MCも朗読形式にして、その文章とセットリストも全部自分で考えさせていただきました。セトリはブロックごとに何となくのテーマを決めて、「自己紹介パート」「失恋パート」「騒げ!パート」という感じでわけていて。「失恋パート」は突然闇落ちするような感じだったんですけど(笑)。そういう一つひとつの世界観を作りながら、あいだに次の曲に繋がるようなMCをつける構成だったので、物語を見てるようにスムーズに進むよう、意識して作りました。

――たしかに「失恋パート」は、アイドルソングっぽい「Lemon Gelato」を可愛らしく歌ったかと思いきや、その直後にはステージに座り込んで悲壮感たっぷりに「呪いを背負って生きたいよ。」を歌い、そこから暗転したかと思うと、今度は立ち上がって「あどけなさも私の武器にする」を歌われて。失恋を経て成長する姿を3曲の流れで表現していて、どの曲もアルバムで聴くのとはまた違った印象を受けました。

ニノミヤ それはファンの皆さんにもたくさん言っていただけたことで、配信で観たら聴き方やイメージが変わったという声も多くて。曲の新たな一面を見せられて良かったです。

――最後のMCだけは、準備した文言を朗読するのではなく、そのときの気持ちをお話されていましたが、そこで「私は絶対に歌をうたい続ける」とおっしゃっていたのが印象的でした。

ニノミヤ 嬉しいです!最後は自分の言葉で伝えようということで、スタッフさんからも「説明じみたことはいいから、感情を吐露してほしい」と言われていたので、直前まで何も考えず、そこまでの10曲を歌い終わったあとの感情のまましゃべったんです。そのときに思っていたことがそのまま口に出ていたと思うので、自分でも何を言ったのかあまり覚えてないんですけど(笑)、「歌い続けます」と言ったことは覚えています。ミスしたところもありましたけど、自分の世界観を伝えるという意味ではちゃんとできたかなと思えたので、終わった後の満足感も高かったです。「やりきった!」という感じでした。

――そのライブでも披露していたのが、今回の1stシングル「つらぬいて憂鬱」です。この曲は、ニノミヤさんが声優・二ノ宮ゆいとしてヒロインのルヴェリア・サンクトゥス役で出演しているTVアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』のOPテーマですが、どのような流れで制作を進めていったのでしょうか?

ニノミヤ まず、1stシングルをリリースすること、その曲にタイアップがつくこと、そのタイアップ作品のアニメに自分が出演することを同時に伝えられて(笑)。しかもそれが、デビューアルバムに収録されている「あどけなさも私の武器にする」のMV撮影直後だったんです。スタッフの方に「お疲れ様!」って言われたのと同時に封筒を渡されて、中を見たら、その決定が全部書かれていて。もう意味がわからくて大混乱になりました(笑)。うれしいけどビックリのほうが強すぎて。

――それは驚きますよね(笑)。しかも今回の楽曲は、Tom-H@ckさんとhotaruさんが楽曲提供されていて。

ニノミヤ アルバムをリリースしてすぐの時期に打ち合わせがあったんですけど、そのときにTom-H@ckさんと直接お話をさせていただいて、前回のアルバムと同様、まずは曲を作っていただく方に私の内面を知ってもらうところから始まりました。そこでお話した内容と『ピーター・グリル』の世界観を踏まえたうえで、Tom-H@ckさんは「じゃあ『もってけ!セーラーふく』の闇落ち版でいこう」というアイデアを出してくださって。最初は想像がつかなくて「どういうことだろう?」と思ったんですけど、実際にこの曲が届いて聴いたときに「なるほど!」と思って、やっぱりTom-H@ckさんは天才だなと思いました(笑)。

――自分も今のお話を聞くまで気づかなかったですけど、たしかに「つらぬいて憂鬱」のファンキーでカオティックな雰囲気は、「もってけ!セーラーふく」に通じるところがありますね。すごく納得です(笑)。

ニノミヤ Tom-H@ckさんらしさが全開ですけど、そのなかに私の暗い部分も入っていたりして、めちゃめちゃかっこいいと思いました。歌詞もhotaruさんが私のアルバムを全部聴いて歌詞を見たうえで、「ニノミヤさんはきっとこういう人なんだろうな」と想像しながら書いてくださったらしいんですよ。それが本当に当たっていて、うれしくなりました(笑)。

――歌詞の内容としては、何をしても変われない自分に対するもどかしさや衝動的な感情が描かれていますが、自分的に共感できた部分はありますか?

ニノミヤ 全体的に共感だらけなんですけど、特にサビはわかるなあと思います。2番のBメロの“化粧しても媚び売っても努力しても結局 心の底ではすべてを軽蔑してた”も「いやあ、そうなんだよなあ」と思って(苦笑)。やっぱり私は化粧しても媚び売っても、世の中にいっぱいいる可愛い子には勝てないなあって思っちゃうんですよ。それがウワーッてなるし、その歌詞の後の“全然全然全然全然違う こんないい子私じゃない”も歌ってて気持ちが入り過ぎちゃいますね。なので、ここは「ちがーう!」って叫びがちです(笑)。

――“こんないい子私じゃない”というのは面白いフレーズだなと思いました。要は、自分をいい子に見せたいという気持ちもあるけど、そんなのはやっぱり自分じゃないという、二律背反の複雑な感情がここには集約されていて。

ニノミヤ やっぱり見栄をはってしまう部分とか、弱いからこそ「いい自分」でいたいという気持ちがあるので。でも自分が本当はこんな人間じゃないっていうのはわかってるわけじゃないですか。私はいろんな方に「マジメだね」と言われることが多くて、ファンの方にも「ユイちゃんはマジメだからなあ」って言われることがあるんですけど、私的には全然マジメなつもりはなくて。なので「私、そんなにいい子じゃないよ」っていうのをアピールしていこうかなと思っていて(笑)。

――たしかに周囲からマジメキャラと見られてしまうと、何となく気を張ってしまうこともあるでしょうからね。

ニノミヤ お堅いイメージにもなりますし。「いやいや、そんなに期待しないで!」って思うので(笑)。だからここのフレーズは「私はそんなにいい子じゃないから!」っていう心からの叫びです。

――あと、『ピーター・グリル』でニノミヤさんが演じているルヴェリアは品行方正な騎士で、すごく「いい子」じゃないですか。ニノミヤさん自身は今、自分はそんなに「いい子」ではないとおっしゃっていますが、職業柄「いい子」を演じることもあるわけで。そういうときには自分の中の「いい子」の引き出しが必要になってくるのでは?

ニノミヤ でも、私は「いい子」に見られたいわけではないですけど、平和主義的な部分は自分の中にあるので。私が根っこから「いい子」だったらそれでいいんですけど、それになり切れないからこそ、自分とのギャップが生まれて、しんどくなるんですよ。なので「いい子」を演じるのは逆に楽しくて。自分自身が背伸びするのはしんどいですけど、キャラクターとして演じるのは「あっ、私は今、いい子をやってる」っていう喜びみたいなものがあるんです。アニメの中では本当に純粋無垢になれたりするので、そこはこのお仕事の楽しいところですね。

――それと、この曲の歌詞は“最低な自分しか見つからない”で終わることからもわかるように、ネガティブな自分をそのまま受け止める内容になっていて。そこは前作『愛とか感情』で歌っていたテーマとも重なるところですし、アーティスト・ニノミヤユイの表現の芯にあるものかと思うのですが。

ニノミヤ そうですね。ずっと「自分から変われない」ということをテーマにしているし、私も人間が変わるのはめちゃめちゃ難しいということを知っているので、すごく気持ちがわかるんですよ。どれだけチャレンジしてもやっぱり陽キャにはなれないですから(笑)。だからこそ、歌っていて気持ちも入りやすいですし、逆に心も傷みやすいです。「結局私は変われない」で終わるので。

――ニノミヤさんは、本当に自分は変わることができないと思います?

ニノミヤ う~ん、どうなんですかね?最近は時間をかけるしかないのかなって思ってるんですけど……時間をかければ、変わろうと思えば、変われるんですかね?

――元々の性格や気質の問題もあるでしょうし、必ずしも変わることが良いこととは思わないですけど、変わりたいという気持ちを持っていれば、例え少しずつだったとしても変わることはできると思います。

ニノミヤ でもやっぱり、今この現状は変われていないので。今この曲を歌うのは気持ちが入りやすいです。だから数年後、どういう気持ちで歌っているのかが楽しみですね。これをちゃんと過去にできているのか?できていたら成長だと思うので。

――こういうご自身のネガティブな感情を楽曲にして歌うことによって、心のバランスを保てる部分もあるのでは?

ニノミヤ それはあると思います。皆さん、私の感情を本当にうまく曲にしてくださる方々ばかりなので、自分でも「わかる!」と思いながら歌っていますし、人に自分の話を聞いてもらうような感覚はありますね。安心みたいなものと言いますか。

――歌に関しても、叫ぶような箇所があったり、声が左右のチャンネルに振られるパートがあったり、様々な工夫が凝らされていますが、レコーディングはいかがでしたか?

ニノミヤ レコーディングではTom-H@ckさんがディレクションをしてくださったんです。特にBメロのところは、今はラップみたいな感じになっていますけど、デモの段階ではメロディがついていて、私はそのつもりで歌っていたら、トムさんがその場で「Bメロはラップみたいにしてみようか?」って提案してくださって。それで歌ってみたら「力強さがあっていいね」ということで今の形になったので、そこがこの曲のスパイスというか棘の部分になったと思います。Tom-H@ckさんとたくさんお話しながらレコーディングできたのが良かったです。

――Tom-H@ckさんの印象は?

ニノミヤ めちゃめちゃ明るい方でした。ポジティブでエネルギーそのものっていう感じで。レコーディングのときにあだ名をつけてくださって、私はユイにゃんって呼ばれてました(笑)。すごく気さくにお話してくださって、私はグイグイいけない人間なので、逆にグイグイきてくださってありがたかったです。

――また、今回は女優の佐津川愛美さんを監督に迎えてMVを制作されたとのことで、床に直に座っているニノミヤさんと、それを取り囲むように踊る4人の女性ダンサーという、非常にインパクトのある映像に仕上がっています。

ニノミヤ 自分の中で悶々としているものを表現したいということで、ああいった形にしていただきました。私はずっとうずくまっているんですけど、ダンサーさんは「もう一人の私」みたいなポジションで、いろんなことを誘惑してきたり、そそのかしたりしてくるんです。でも私は「違うんだよ!」っていう。そういう自分の中にウワーッて渦巻くものをダンスで表現してくださいました。

――逆にニノミヤさんはずっと動かない役回りですが、それはそれで大変そうですね。

ニノミヤ 床が結構固かったので、終わり頃には腰とおしりが痛くて痛くて(笑)。でも、ダンサーさんもずっと踊り続けていたので、終盤には足が上がらないぐらいになってましたし、カメラマンさんもずっとカメラを手で持って長回しのカットを撮っていたので、みんな足腰がヤバくなりながら撮影していました(笑)。監督の佐津川さんがコンテンポラリーダンスや撮影について細かくこだわってくださって、テイクをたくさん重ねたんですよ。なので最後の方は「みんなで頑張ろう!」っていう団結感が生まれていました。

――カップリング曲の「re:flection」はニノミヤさんが作詞をされていますが、独創的なメロディと曲展開、ポストクラシカル~ポストロック的なアレンジが衝撃的な一曲です。こちらはどのようなテーマで制作されたのですか?

ニノミヤ 今回はリード曲が疾走感のある曲なので、カップリングは落ち着いた感じの曲にしようということで、歌詞のテーマ的にはラブソングを書くことになったんです。私の場合、「幸せな恋などない」ということで有無を言わさず失恋ソングになって(笑)。最初にこの曲を聴いたとき、あまりにもメロディがエキセントリックすぎたので、まずメロディを覚えるのに一苦労して、そこから単語を当てはめるのにもすごく苦労して、レコーディングの一日前まで粘って歌詞を書いたんです。本当によく完成したなあと思います(苦笑)。

――その独特の曲調に引っ張られて言葉が出た部分もありましたか?

ニノミヤ というよりも、独特なぶん、そのメロディを活かせる単語がそもそも少なくて、入れたい言葉が浮かんだとしても、それを当てはめるとこのメロディの良さがなくなるなと思う言葉も結構あったんですよ。なので最終的には、曲自体が持っている雰囲気を壊すことなく当てはまる歌詞はこれしかないんじゃないかな?と思うぐらい考えました(笑)。

――テーマはラブソングということでしたが、それに加えて「夏」という印象が強く残る歌詞だと思いました。

ニノミヤ そこは意識して書きました。学生時代の夏の思い出って、すごく鮮明に残るじゃないですか。授業はないけど部活動で行く学校とか。私が今まで体験してきた夏は全て学生時代だったので、そういう鮮明な情景や風景みたいなものを、曲を聴いたときにパッと浮かぶような歌詞として書きたいなと思って。なので今まで以上に歌詞にリアリティや物語感を持たせることを意識しました。

――この歌詞の主人公は、最初は自分の恋心に対する不安感を持っていますが、だんだんそれさえもどうでもよくなっていくようなところがありますよね。

ニノミヤ 愛とか恋愛というものが不確定だし怖いと思ってる主人公が、だんだんその不確定さとか不安定さすらも愛し始めてしまうという……まあ、闇落ちみたいな感じです(笑)。失恋がテーマなので、恋愛なんて苦しいし、嫌だっていう思いもあるんだけど、好きな気持ちは変えられないんだから、もうそうなるしかなくない?っていう。ある意味主人公のなかでは解決してるかもしれないんですけど、状態的には何も解決していないんです。ゆえにこの曲も、結局は憂鬱を貫いてると思います(笑)。

――ちょっと妄執的というか、破滅的な怖さがありますね。でもその歌詞の内容が、この曲のメロディが跳躍したり、変拍子が入ったりといった、カオティックな雰囲気とマッチしているなと思って。

ニノミヤ 曲自体が元々持っている雰囲気がすごく強かったので、その雰囲気に負けちゃいけないし、でも、この雰囲気に反するのもダメだなと思って、そのギリギリのラインを探りました。エキセントリックで目立つ曲なので、歌詞もめちゃめちゃ主張しちゃうと、ケンカしちゃうなと思ったんですよ。なので、寄り添いながらも呑まれないように、ということには気をつけました。言い回しはわりと自然なものが多いと思うんですけど、使っている言葉はちょっときつめにした部分もあって。そういうところで少しずつ狂気とか悲しみみたいなものを感じ取っていただければと思います。

――おそらくレコーディングも相当苦労されたと思うのですが……。

ニノミヤ 最初は「歌えるのかな?」っていう不安があったんですけど、そこから「歌うしかない!」という気持ちになって。この曲を歌でいかに表現するかというのは本当に難しかったんですけど、それ以前にまず歌う技術が必要だったので、練習では音程をしっかりと取れるようになることを主にやりました。レコーディングではディレクションしてもらいながら表現を作っていったんですけど、あまりにも歌いこなすことが難しすぎて、悲しくなっちゃいましたね(苦笑)。情緒不安定な感じを出そうと思って、張るところと抑えるところの差を広げるように歌ったんですけど、そもそも曲の作りに情緒不安定感があるので、曲の伴奏や雰囲気に合わせて歌いました。

――ちなみにこの曲を作編曲した、タナカ零さんにはお会いしましたか?

ニノミヤ 直接はお会いできなくて。リモートでの打ち合わせでお話させていただきました。話し方からして天才肌な方なんだろうなというのが、すごく伝わってきましたね。

――デビューアルバムにも増して尖った2曲を収録したシングルになりましたが、ニノミヤさん的にはどんな作品になったと感じていますか?

ニノミヤ 今回は、今までの曲よりさらに力強さや反抗心みたいなものが見えているかなと思っていて。「つらぬいて憂鬱」では叫んでいて、「re:flection」もちょっとやさぐれた感じなので(笑)、いい子だけで留まっていない私を見せられたかなと思います。2曲とも曲調は全然違うので、それも含めて「ニノミヤユイはこういう面もあるんだな」というのを感じていただければと思います。

――もはや次はどんな曲が飛び出すのか、まるで予測のつかない感じですが、今後の展望としてはどんな活動を行っていきたいですか?

ニノミヤ デビューアルバムや1stシングルは自己紹介的な部分が強い作品だと思うので、「ニノミヤユイってこういうアーティストです」というのを見せた次は、もっと違う一面を出したくて。さっきも言いましたけど、私は皆さんから「いい子」と言われたり、そう見られがちなので、個人的に今やりたいこととしては、その雰囲気を壊していきたいなと。だから、すごく、不良になりたいです(笑)。

――その発言自体が、いい子っぽいですけどね(笑)。自分の中に不良な一面ってあるんですか?

ニノミヤ え~!? なんですかね?でも、法律違反はしてないと思うので……。

――そりゃそうですよ(笑)。例えば、手を洗った後に水を出しっぱなしにするとか、ちょっと羽目を外して遊んでみたいとか。

ニノミヤ ああ、そういう(笑)。私は神経質なところがあるので、水出しっぱなしとか、電気つけっぱなしとか、エアコンの温度を下げすぎとか気になっちゃって、そういう部分はきちんとしてるんですけど……え~、不良な部分!? そう言われると、思いつかないかも。あっ、そうだ!今度、オールナイトで友達と遊んでみたいです。まだやったことないので。でも、この間初めて友達と一緒に深夜の公園で遊んだんですよ。

――何をして遊んだんですか?

ニノミヤ ブランコに乗ったり、友達が連れてきた犬と追いかけっこしたり……。

――話を聞けば聞くほどいい子の印象が強くなるのですが(笑)。秘書検定も取るぐらいだし、やっぱり性格的にきっちりされてるんでしょうね。

ニノミヤ そうなんですよ、そこからなんですよね……。じゃあ今度、冷房の温度を下げてみます(笑)。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
ニノミヤユイ 1stシングル
「つらぬいて憂鬱」
8月19日発売

品番:LACM-24011
価格:¥1,200+税

<CD>
1.つらぬいて憂鬱
作詞:hotaru(TaWaRa) 作曲:Tom-H@ck(TaWaRa) 編曲:Tom-H@ck(TaWaRa),KanadeYUK(TaWaRa)
2.re:flection
作詞:ニノミヤユイ 作曲・編曲:タナカ零
3.つらぬいて憂鬱(Instrumental)
4.re:flection(Instrumental)

●作品情報
TVアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』
TOKYO MXほかにて放映中!

【キャスト】
ピーター・グリル:下野 紘
ティム・ロビンソン:浅水 健太朗
ルヴェリア・サンクトゥス:二ノ宮 ゆい
ミミ・アルパカス:竹達 彩奈
リサ・アルパカス:山村 響
ビーガン・エルドリエル:上原あかり
ピグリット・パンチェッタ:千本木彩花

【スタッフ】
原作:『ピーター・グリルと賢者の時間』(双葉社 アクションコミックス)檜山大輔
監督:辰美
脚本:毛利のら
キャラクターデザイン:石毛るい
アニメーション制作:ウルフズベイン

©檜山大輔/双葉社・「ピーター・グリルと賢者の時間」製作委員会

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