メジャーデビュー作となる1st EP「ハミダシモノ」に込めた想いとは――楠木ともり、リリースインタビュー

現在20歳、数々の人気アニメ・ゲーム作品に出演し、若手最注目の声優として人気を集める楠木ともり。声優の仕事と並行してインディーズで音楽活動を行い、作詞・作曲も自らこなしてきた彼女が、4曲入りの1stEP「ハミダシモノ」でついにメジャーデビューする。表題曲は、自身もヒロインのミーシャ・ネクロン役で出演するTVアニメ『魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』のEDテーマ。作品の世界観に寄り添うべく“強さ”をテーマにしつつ、はみ出し者=マイノリティの心に希望の灯をともす、彼女自身の心情や信念を形にしたロックチューンに仕上がっている。音楽好きの彼女が、自らの音楽に託すものとは? 今回のEPとアーティスト活動にかける想いを聞いた。

声優とアーティスト活動――等しく情熱を注いできた夢が叶った瞬間

――今年4月からスタートした文化放送のラジオ番組「楠木ともり The Music Reverie」を聞いたのですが、楠木さんはまだお若いのに、音楽の趣味が幅広くて驚きました。今どきのロックやポップスはもちろん、ダリル・ホール&ジョン・オーツといった昔の洋楽もお好きなんですね。

楠木ともり ありがとうございます! 父と姉が少し昔の洋楽が好きなので、家や車の中でそういった音楽が常時流れているような環境だったんです。有名どころばかりではありますが、いろんな世代の曲を聴きたいなあと思っています。

――しかも、そのラジオ番組内の企画で、ゆらゆら帝国の「発光体」をカラオケで歌ったという話を知って、「ええっ!」となりました(笑)。

楠木 あれはリクエストをいただいた曲でした。カラオケコーナーをやるにあたって事前に歌ってほしい曲を募ったんですが、アニソンとかJ-POP系のリクエストが多かったなか、あの曲だけ異彩を放っていて(笑)。ゆらゆら帝国さんは名前しか知らなかったんですが、すごくサイケだし、曲の構成も面白かったので、(番組の)オープニングに持ってきたら、車とかで聴き流している方も耳に留めてくれるんじゃないかなと思い、歌わせていただきました。

――それらのエピソードからも、楠木さんが相当の音楽好きだということは伝わってきますが、過去のインタビューなどによると、元々は歌手志望としてオーディションを受けたというお話ですよね?

楠木 ちょっと複雑なんですが、最初は演技がしたくて声優を目指していたんです。ただ、昔、プロの声優さんの前でセリフを読む勝ち抜き戦のような大会に出場したときに、全く歯が立たなくて予選落ちしてしまい、心が折れてしまったことがあって。でも、どうにかアニメに関わるお仕事がしたかったので、私は小さい頃から音楽が好きで、高校の軽音楽部ではボーカルをやっていたことから、歌手としてアプローチしてみようと思いました。そこで見つけたのが、私が今所属している事務所(ソニー・ミュージックアーティスツ)が主催するオーディション(「アニストテレス」)でした。そのオーディションは、声優や歌手志望に限らずアニメが好きなら誰でも受けられるという条件だったので、私は基本的には歌手志望として参加しつつ、「できるならば声優もやりたいです」というお話をさせていただいたんです。声優と歌手、どちらが上というのはなく、どちらも本気で目指していた夢でした。

――そのオーディションで特別賞を受賞し、2017年に声優としてデビューされたわけですが、その後もアーティスト活動をやりたい気持ちはずっと持っていた?

楠木 はい。事務所の方からの提案で、声優としてデビューすることになったんですが、声優になる夢が叶った嬉しさもありつつ、歌手としての夢も一度本気で目指したので諦めることができず。そんななかで、通い始めたボイトレの先生である多田三洋さんが、定期的にアコースティックライブを開催されていたので、そこに出演させていただくことで、歌手としての夢も途切れることがなく、定期的に人前で歌う機会を得ることができました。なのでずっとアーティスト活動はやりたいと思っていました。

――そこから多田さんのバックアップでインディーズ活動を始めて、個人名義のCDを2作品リリースされました。こちらの収録曲は基本、楠木さんが自ら作詞・作曲をしていましたが、それまで自分で曲を作った経験は?

楠木 まったくなかったです。軽音楽部にいたときも、作りかけて結局ボツになったことが1回あっただけで、(曲作りの)勉強もしていなくて。でも、アコースティックライブではずっとカバー曲を歌っていたので、多田さんに「私、自分で曲を作ってみたいんですけど……」と相談したら、「どんどんチャレンジしてください!」って背中を押してくださって。それがきっかけで生まれて初めて自分で作詞・作曲したのが、今回のEPに収録されている「眺めの空」という楽曲です。

――2018年発表の作品『Acoustic CD [bottled-up]』にも収録されているナンバーですね。ちなみに楽曲を作る際は、何か楽器を使うのでしょうか?

楠木 楽器は子供の頃に少し習っていたピアノと、小学校と中学校で所属していた吹奏楽部で担当したトランペット、そしてこのお仕事を始めてからギターも弾き始めたのですが、メロディは楽器を使わず鼻歌で作っています。

――そのように個人での音楽活動を行うなか、昨年末のバースデーライブでメジャーデビューを発表したわけですが、やはり喜びもひとしおだったのではないでしょうか。

楠木 マネージャーさんからは、ソロメジャーデビューと『魔王学院の不適合者』の作品タイアップとミーシャ(・ネクロン)役が決まったことを同時に知らされたので、最初は情報量が多すぎて「えっ、なになになに?」という感じでした(笑)。私は自分の作詞・作曲した曲で作品のタイアップを担当することが目標だったので、「これは私に曲を作らせてもらえるのだろうか……?」ってちょっと気になりつつも(笑)、また1つ夢が叶うことがすごく嬉しかったですし、逆に信じられなくて受け止めきれなかったです。

――『魔王学院の不適合者』という作品にはどんな印象を抱きましたか?

楠木 原作の小説を読ませていただいたら、主人公のアノス(・ヴォルディゴード)が2000年前から転生した魔王ということで、高貴なイメージが文章からも伝わってきましたし、規模的に枠から外れるぐらいの強さだったので、「こんなラノベあるんだ!?」ってビックリしました(笑)。

――アノスの桁違いな強さが、作品に触れる側からすると痛快ですよね。

楠木 いろんな理不尽がどんどん降りかかってくるところを、アノスがまったく想像もしなかった角度からぶった切ってくれるところが爽快なので、私も「早くスッキリしたい!」と思ってどんどん読み進めてしまいました(笑)。どこで読むのを止めたらいいのかわからないぐらい病みつきになってしまって。なので、いち読者としてはものすごく楽しかったんですが、アノスのほかにも魅力的なキャラクターがたくさん登場して、内容がとても濃い作品なので、逆に曲を書くときは何をテーマにすればいいのかわからず、悩みました。

――楠木さんが声優を担当するミーシャはメインヒロインの一人ですが、彼女のキャラクターについては、どのように捉えて演じましたか?

楠木 ミーシャは、アノスに突っかかることなくいちばん最初に慕う子なので、アニメを観ている人にとって癒しになる、愛される子になればと思って演じました。ほかのキャラクターは結構血の気が多くて感情がわかりやすいなか、ミーシャは気持ちは真っ直ぐなんですけど、凪みたいに起伏がない子なので、何を考えているのかわからないところがあるんです。自分の考えを話すときはひと言だけだったり、「ん」っていう返事だけだったりして。私は気持ちが表に出やすいタイプなんですけど、ミーシャは表に出る気持ちの規模感がほかの人より小さいので、自分の気持ちで演技をし過ぎると感情が出過ぎてしまうので、そこのバランスを取るのが難しかったです。アニメでは感情の起伏が激しい子を演じることが多かったので、新たな挑戦となりました。

「ハミダシモノ」を肯定する、作品愛と自身の想いが重なった“強さ”の歌

――同アニメのEDテーマとなる新曲「ハミダシモノ」は、楠木さんが自ら作詞を行っていますが、作品のどんな部分を意識して歌詞に落とし込みましたか?

楠木 真っ先に思ったのが、誰か特定のキャラクターに絞った曲にはしたくないということだったので、まず(登場キャラクターの)共通項を考えていったら、みんながそれぞれの“強さ”を持っていると思ったんです。“強さ”には単純に戦いの強さだけではなくて、例えば気持ちの面での強さ、自分を犠牲にしてでも誰かを守る強さ、自分の追いかけるものに対してまっすぐ進める強さ、自分の弱音をしっかり吐き出せる強さだとか、いろんな種類の“強さ”があると思うんです。それをテーマにすることで、聴いてくださる方がいろんなキャラクターだとか自分自身に歌詞を重ねて、違った聴こえ方になる曲になればいいなと思って歌詞を書かせていただきました。

――いろんな種類の“強さ”があるなかで、楠木さんが思う“強さ”とはどんなものでしょうか?

楠木 今回いろんなキャラクターに出会うなかで、“強さ”は1つにカテゴライズできるものではなくて、いろんな要素の入り混じった“強さ”があると思いましたし、作品やキャラクターのことだけを書くのではなく、現実の皆さんにとっても共感できる曲にしたかったので、自分の“強さ”についてもすごく考えました。そこで思った私の“強さ”というのは、一度決めた目標に対して、どんなに挫折しかけたとしても根本の部分では折れないということでした。なので歌詞にはそういうこともジワジワと入れながら書けたと思います。

――先ほどのオーディションの話にも通じますね。そういった“強さ”というテーマを踏まえてこの曲を聴くと、タイトルの「ハミダシモノ」というワードも重要なフックになっていると感じたのですが。

楠木 「ハミダシモノ」というのは世の中からはみ出ている存在のことなので、どうしてもマイノリティじゃないですか。逆に“強さ”というワードはポジティブな印象があるので、「ハミダシモノ」と“強さ”は真反対な単語に感じると思うんですけど、私はそれがすごく嫌だなと思っていて。今って自分の個性をすごく持ちづらいなと感じるんです。周りからはみ出すことは世間的にあまりいいこととされていなくて、それを認めてもらうのが本当に難しいなかで、自分がはみ出していることをマイナスに感じてほしくないし、それがあなたの個性であり強みだということを肯定してあげたい気持ちがすごくあって。なので、この曲はあえて「ハミダシモノ」というタイトルにしました。

――「ハミダシモノ」という言葉は、アニメの『不適合者』というテーマとも重なりますし、楠木さん自身が自分の歌を通して伝えたい想いとも重なるわけですね。

楠木 すごく綺麗に重なります。実はこのタイトル、思いつくまでにすごく時間がかかったんです。この曲は曲先で作ったのですが、最初にいただいたデモには仮の歌詞が付いていて、その歌詞のサビの最初の音が「は」だったんです。仮歌を録ったときも、「は」から入るとすごく勢いがついて、ニュアンスを入れやすかったので、サビの頭の音は「は」にしようと思って。それから「は」で始まって作品らしさもある単語をずーっと探していたんですが、やっと降りてきた単語が「ハミダシモノ」だったので、見つけたときはパズルのピースがハマったみたいな感じで、ものすごく爽快でした(笑)。

――例えば、楠木さん自身も「ハミダシモノ」、あるいはマイノリティ側の人間だと感じることがありますか?

楠木 自分が学生だった頃は、少数派だった意識はあります。というのも、私、中学生のときに生徒会長をやっていたんですが、その時期に友達とあまりうまくいかないことがあったんです。私は小学生のときから、誰かの前に立って自分の意見を発信したり、何かの代表になることに抵抗がない人間だったんですが、周りの反応を見ているとそれが普通じゃないんだなということがあって。逆に高校生のときは前に立つことをやめて、自由に生きていました(笑)、進学校に通っていたので、そこでも周りはみんな当たり前のように大学を受験するなか、自分だけ進学せず、芸能系の仕事に就職したので、周りにもすごく驚かれたし、少し心細い気持ちがありました。

――なるほど。たしかに学校は集団生活が重んじられるので、周りと横並びであることを強制される側面がありますよね。自分も学生時代は窮屈に感じていたので、よくわかります。

楠木 そうですね。やっぱり特に学生時代の思いが強いのかもしれないです。同じような思いをしている人に「大丈夫だよ」って言ってあげられたらなと思っています。

――そのお話を聞くと、2番の歌詞によりリアリティを感じますね。Aメロの“咲いていた噂話の香りは 濃厚で後味悪い果実のようだったの”とか、Bメロの“真っ暗で見えない ヒヤリと触れる好意”とか。

楠木 1番の歌詞はアニメで流れることを想定して作品に近いものを書いていたのですが、2番はスタッフさんの意見も聞きながら、自分のこともより深く書いていこうと思っていました。2番の歌詞は作品のこともありつつ、より自分のことが強く出ていると思います。

――特に自分の気持ちが出たと感じるフレーズは?

楠木 まさしくさっき言ってくださった部分でした。だから見抜かれたなと思いました(笑)。私、今までの曲も全部そうなんですが、実は2番のA・Bメロにいちばん伝えたいことが入っていたりするんです。サビはキャッチーにしたいので抽象的な表現が多くなるし、1番は曲としてのまとまりがほしいので、そうすると自分のことをより正直に書くことができるのが、2番のA・Bになるんですよ。実はそこが楽曲としての本質に迫る部分になっていることが多いです。

――一方でサビのフレーズには、ある種、挫けそうな人に手を差し伸べるような力強さがあって、そこはアニメの主人公であるアノスのイメージに沿った部分でもあるのかなと。

楠木 サビはただ強いだけだと突き放すような感じになってしまうので、アノスみたいに包み込むような強さ、導いてくれるような部分は入れたいと思っていたので、そう言っていただけて嬉しいです。

――それこそが楠木さんがこの曲で表現したかった“強さ”でもあるのかなと。歌入れで特にこだわったポイントはありますか?

楠木 今回は自分で作詞をさせていただいたので、どこにどういうニュアンスを入れるかというのは明確に組み立ててからレコーディングに挑んだんですが、同じようなテイクを何回も録って、そこから一番いいものを選ぶというよりは、まずいろんな歌い方に挑戦して、いちばん曲に合うニュアンスを探してからそれを極める、という録り方ができました。曲を書いてくださった重永(亮介)さんがディレクションしてくださって、最終的には伴奏の雰囲気に合っていて、いろんな歌詞のフレーズに寄り添ったニュアンスの歌が選ばれたと思います。特に1Aとサビは全然違っていて、1Aは静かに入っていきますけど、そこからだんだん高まって、サビでドンと爆発するように意識していて。

――たしかに楠木さんの歌声自体に、ドラマチックな抑揚を感じました。

楠木 曲にメリハリがあるので、そこは歌でも表現しないと、メリハリがなくなってしまったらもったいないと思っていて。あと、先ほども話に出たサビの「は」の音はあえてしゃがれさせて歌うことで、そこでサビがドンときます!ということを表現しているので、注目して聴いていただけると嬉しいです。

――「ハミダシモノ」は重永さんが作曲・編曲を手がけていますが、重永さんとの共同作業はいかがでしたか?

楠木 重永さんには今回のカップリング曲もすべてアレンジしていただいていて、何度かお話したこともあったので、「ハミダシモノ」では私のやりたいことをすごく汲んでくださって。今回は初めて曲先で詞をつけることに挑戦したんですが、私の声質や歌い方に合う楽曲を作ってくださった印象です。

聴いている人に寄り添える曲を――アーティスト・楠木ともりの芯にあるもの

――ではその流れでカップリング曲のお話も。「眺めの空」と「ロマンロン」はインディーズ時代からある楽曲ですが、今回のEPには重永さんのアレンジによる新バージョンが収められています。

楠木 インディーズのときは多田さんにアレンジしていただいたので、同じ曲で2種類のアレンジが存在するのはすごく幸せなことだなと思います。私的には、今回がリニューアルとかではなく、どちらも並列にあるものとして全く違ったアプローチのアレンジが2つあるという気持ちなので、ぜひ聴き比べていただけると嬉しいです。

――そのうち「眺めの空」は、楠木さんが初めて作詞・作曲した曲とのことですが、そもそもどういう曲想のもと作られたのですか?

楠木 これは……家でアイスを食べているときに作った曲です(笑)。初めての作詞・作曲だったので、まだ自分の意見を曲にするのが恥ずかしくて、アイスに映えるような妄想のストーリーを曲にしました。ただ、それだとリアル感がなさ過ぎて、みんなに寄り添う楽曲を作る、という自分の目標に反すると思ったんです。そこで、経験したかのような感覚を出すために、視覚や味覚といった五感を中心に歌詞を書きました。曲が進むごとにどんどん五感が奪われていくような描写にすることで、聴いている皆さんもまるで経験したかのようなリアリティが出ればいいなと。

――たしかにこの曲、すごく情景が浮かぶ歌詞ですよね。夏の日の気怠い雰囲気と言いますか、まさにアイスが合いそうな世界観で。

楠木 「アイスを食べながら書いていた」と言うと笑われるんですが(笑)。ただ、10代特有のもどかしい感じとか、尖った部分を歌詞に入れたいと思っていたので、そこが夏の暑苦しい感じとリンクして、自分的にもうまくまとまったなと思っています。

――それとインディーズ版はアコギ中心のフォーキーなアレンジでしたけど、今回はバンドサウンドになっていて、随分雰囲気が変わりましたよね。より暑苦しさというか情念が増した印象です。

楠木 そうなんです! アコースティックのときはひっそりと独白している感じがあったと思うんですけど、バンドサウンドだとより景色が鮮明になって、想いも強くなった感じがすると思います。

――そして「ロマンロン」は、トリッキーな雰囲気の疾走感あるギターロック。こちらはどんなイメージで作られたのですか?

楠木 これはまず変拍子の曲にチャレンジしてみたくて。そこからどんな歌詞にしようかと考えたときに、友達と夢を追いかけることついて話したことを思い出したんです。自分もその大変さを経験していたので、それを歌詞にできたらなと。一生において何も考えず純粋に夢を追いかけられる時間って、たぶん小学生の6年間ぐらいだと思うんです。中学生になると周りの意見が気になるし、高校生になると現実的な進路を考えるように言われることが多いと思うので…。そんななかで、周りからの圧力にも負けず、自分の意志を通して夢を追いかけるのは本当にかっこいいと思うし、その夢を追いかける姿勢そのものを肯定してあげられるような曲を作ろうと思って出来たのが「ロマンロン」です。

――それは今までの楠木さんのお話ともリンクするところで、自分の信じたものや自分自身を貫き通すということが、楠木さん自身が伝えたいことの芯にあるものなんでしょうね。

楠木 それはすごくあると思います。私も周りからの目も気になりつつも、ずっと夢を追いかけてきましたし、周りで夢を諦めてしまった子は何人もいました。なので、「頑張れ」って応援する曲よりは、肯定してくれる曲を書きたい気持ちがすごく大きいです。後ろとか隣に寄り添ってくれる曲を書きたいなと思っています。

――それを変拍子の曲で表現するというのも、楠木さんらしい個性と言いますか。

楠木 夢を追いかけている間って不安じゃないですか。自分を肯定できる瞬間もあれば、何もかもが嫌になる瞬間もあって。それって感情の起伏が激しくて難しい時間だと思うので、変拍子だとそういう不安定な空気感が作りやすいと思ったんです。私としてはいい組み合わせだったと思います。


――なるほど。もう1曲の「僕の見る世界、君の見る世界」は、作詞は楠木さん、作曲は楠木さんと重永さんの共作になっています。この曲はどのように制作を進めたのですか?

楠木 最初に私が書いた歌詞を重永さんにお渡しして、「こういう雰囲気の曲にしたいんです」というお話をしたら、重永さんがギターや打ち込みのドラムなどが全部入ったデモを作ってきてくださって。「このコードにメロディをつけていきましょう」と、その場で鼻歌でメロディを作っていったんです。出来たメロディが「いける!」ってなったら、そのフレーズだけ歌を録って「OK!」っていうのを繰り返す感じでした(笑)。そんなふうに一緒にお話しながら作っていった楽曲ですね。

――半分セッションのような作り方だったんですね。曲調的にはポップで爽やかな感じですが、歌詞のテーマ的には、今まで話していただいたことにも通じる内容に感じました。

楠木 そうですね。まさしく繋がる部分があります。私自身がそうなんですけど、例えば女優さんや声優さんで憧れの存在ができて、「この人みたいになりたい!」と思ったときに、ついその人と同じになろうとしてしまって、いつの間にか自分を捨ててしまっていることが多くて。それって自分のことを全然大切にできていないし、その憧れの人よりも上に行くことはできないのではないかなと。そういうことをやめたいなと思って作ったのが、この曲なんです。憧れの人を追いかけるのもいいけれど、同じ道をたどるのではなく、自分のことも愛せる人間になれたらいいな、ということを、物語調で比喩を交えながら書いた曲です。

――自分らしくあることの大切さを形にしたわけですね。それとこの曲、“トゥットゥルー♪”といったコーラスが可愛らしくていいですね。

楠木 ありがとうございます! 歌詞自体は重い部分もありますけど、全体的に爽やかなロックにしたかったので。皆さんにはどちらかと言うと楽しく聴いていただける曲になったらいいなと思います。

――ちなみに今回のEPに収録の4曲は、歌詞の一人称が「僕」になっていますが、これには何かこだわりがあるのでしょうか?

楠木 私自身の普段の一人称が「私」なので、歌詞に「私」を入れてしまうと「楠木ともりの曲」になりすぎてしまうと思っていて。私は自分の曲を、聴いている人に寄り添える、共感できる曲にしたいので、そこで私の存在がチラつきすぎるのはよくないなと感じるんです。なので、あえて突き放すような形で「僕」という言葉を選ばせていただいています。

――それは面白いですね。楠木さんはご自身で曲を作りながらも、曲と自分自身は少し離れたものとしてあってほしい気持ちがあると。

楠木 まさしくそうです。極端な話、私がこの世からいなくなったとしても、曲だけはずっと命を持って存在していてほしいと思っていて。私は楽曲って完パケしてリリースされたところで完成だとは思っていなくて、聴いてくれる皆さんの耳を通して、その人が何を考えるかで、初めて曲が彩られていくんじゃないかと思うんです。そこにいく過程で、自分が見えると少し邪魔に感じてしまうというか。私が気になるのはむしろ「この歌詞でみんなは何を感じるんだろう?」ということなんです。だから「私」という表現はたまにしか使わないです。

――どの曲でも自分の伝えたいことを一貫して表現しつつ、曲調的にはバリエーション豊かで、メジャーデビュー作にして非常に完成度の高い作品になりました。最後に、今後のアーティストとしてのビジョンについてお聞かせください。

楠木 まず、自分で作詞・作曲することは続けていきたいです。今まで通り、自分の伝えたいことを真っ直ぐに書きつつ、でも受け取ってもらう段階ではその人自身の曲になっていてほしいなと思っていて。それと、この年齢でデビューさせてもらえるのはすごく貴重なことで、今の感性でしか書けない歌詞もあると思うので、そこは無理して背伸びせず、等身大の歌詞で書いていきたいです。曲自体も、いろんなことに挑戦しつつ、自分の強みを見つけていきたいですし、進化は続けながらも、芯のところはブレずに、皆さんの心にしっかり寄り添える楽曲を作っていければと思います。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
楠木ともり 1st EP
「ハミダシモノ」
8月19日(水)発売

【初回生産限定盤A(CD+BD)】

品番:VVCL-1660~1
価格:¥2,400+税

【初回生産限定盤B(CD+フォトブック)】

品番:VVCL-1662~3
価格:¥2,400+税
フォトブック 24P
※三方背ケース

【通常盤(CD)】

品番:VVCL-1664
価格:¥1,500+税

【期間生産限定盤(CD+DVD)】

品番:VVCL-1665~6
価格:¥1,600+税
※アニメ描き下ろしイラストジャケット仕様

<CD>※全形態共通
01. ハミダシモノ(TVアニメ「魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」エンディング主題歌)
作詞:楠木ともり 作曲:重永亮介
02. 眺めの空
作詞・作曲:楠木ともり
03. ロマンロン
作詞・作曲:楠木ともり
04. 僕の見る世界、君の見る世界
作詞:楠木ともり 作曲:楠木ともり・重永亮介
05. ハミダシモノ -Instrumental-
06. 眺めの空 -Instrumental-
07. ロマンロン -Instrumental-
08. 僕の見る世界、君の見る世界 -Instrumental-

<Blu-ray>
01. ハミダシモノ -Music Video-
02. 眺めの空 -Lyric Video-
03. ロマンロン -Lyric Video-
04. 僕の見る世界、君の見る世界 -Lyric Video-

<DVD>
TVアニメ「魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」ノンクレジットエンディングムービー
特典&イベント情報

「ハミダシモノ」先行フル配信中!
ダウンロードはこちら

●イベント情報
オンラインリリースライブ
「ハミダシモノの声よ響け!~Online Acoustic Live~」
8月22日(土)19:00
内容:アコースティックミニライブ+トーク(予定)
対象商品販売店舗:タワーレコードオンライン
詳細はこちら

「ハミダシモノの声よ届け!~Online Studio Live~」
8月23日(日)19:00
内容:ミニライブ+トーク(予定)
対象商品販売店舗:SonyMusicShop・アニメイト通販・ゲーマーズオンライン
詳細はこちら

●作品情報
TVアニメ『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』

TOKYO MX:毎週土曜23:30~
とちぎテレビ:毎週土曜23:30~
群馬テレビ:毎週土曜23:30~
BS11 :毎週土曜23:30~
読売テレビ:毎週月曜25:59~
テレビ愛知:毎週日曜26:05~
AT-X:毎週土曜23:30~
※リピート放送:毎週(火)15:30~/毎週(金)7:30~
d アニメストア:毎週土曜23:30~
※地上波同時
※放送日時は編成の都合等により変更となる場合がございます。予めご了承ください。

<イントロダクション>
二千年の時を経て蘇った暴虐の魔王――だが、魔王候補を育てる学院の適性――《不適合》!?
人を、精霊を、神々すらも滅ぼしながら、延々と続く闘争に飽き、平和な世の中を夢見て転生した暴虐の魔王「アノス・ヴォルディゴード」。しかし二千年後、転生した彼を待っていたのは平和に慣れて弱くなりすぎた子孫たちと、衰退を極めた魔法の数々だった。
魔王の生まれ変わりと目される者を集め教育する“魔王学院”に入学したアノスだが、学院は彼の力を見抜けず不適合者の烙印を押す始末。さらには、伝説の魔王は自分とはまったくの別人という事になっていた。
誰からも格下と侮られる中、ただひとり親身になってくれる少女ミーシャを配下に加え、不適合者(魔王)が、魔族のヒエラルキーを駆け上がる!!
「摂理だろうと運命だろうと、奇跡だろうと、俺の眼前ではただひれ伏し消えるのみだ。」

©2019 秋/KADOKAWA/Demon King Academy

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