ファン待望17年ぶり一夜限りのスペシャルライブ!“See-Saw LIVE ~Dream Field 2019~”ライブレポート

ボーカル・石川智晶、キーボード・梶浦由記によるユニット、See-Sawが、2019年12月15日(日)に東京国際フォーラム ホールAにて17年ぶりとなるライブ“See-Saw LIVE ~Dream Field 2019~”を開催した。

See-Sawは1993年に1stシングル「Swimmer」でデビュー。6枚のシングルをリリースしたのち、1995年に1度目の活動休止期間へ。6年を経た2001年にアニメ『NOIR』の挿入歌「indio」で活動を再開して以降、アニメ『.hack//sign』OP・EDテーマ、アニメ『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』EDテーマを担当するなどの活躍を見せたが、2006年から再び活動を休止する。だが、干支が一回りも果たした2019年、See-Sawが動いた。所属レーベルのフライングドッグが2019年2月に10周年記念ライブ“犬フェス!”を開催した際、それぞれソロアーティストとして同フェスに出演していた梶浦と石川がコラボ、See-Sawとして「あんなに一緒だったのに」(『機動戦士ガンダムSEED』EDテーマ)を披露する。一方で、梶浦は自身が担当することとなったアニメ『鬼滅の刃』(2019年4月期アニメ)で石川を挿入歌のボーカルとして招聘しており、2019年8月の“Yuki Kajiura LIVE TOUR vol.#15”国内最終公演におけるアンコールでは、「the Main theme of “Kimetsu no Yaiba” LIVE ver.」を梶浦と石川で共演する姿を披露、しかも、See-Sawとしてライブを行うというビッグニュースをその場でファンに届けてもいた。

このような流れの中でSee-Sawのファンに訪れた、待望の日が2019年12月15日であった。その幕開けは暗がりにovertureが流れる中、ステージ上にバンドメンバー、そしてSee-Sawの二人が次々と現れるところから始まった。そのまま、原曲よりも重くフロアタムがリズムを響かせ、管楽器がメロディを奏で、アジア大陸風の「優しい夜明け」へと突入する。ステージ中央でゆらゆらと揺れながらエキゾチックな声で歌う石川、その左手やや後方でやはり体を揺らしながら鍵盤を弾く梶浦。二人の姿によって人々は目でも復活を感じとった。「優しい夜明け」の2番で石川が放ったソロの歌声、ボーカルに力強さが要求される「黄昏の海」で石川が背中を見せるとそこには二つの「S」を組み合わせたロゴ、瞬間瞬間が僥倖であった。

最初のMCは石川が進行したが、「ホント、久しぶり。だって17年ぶりだもの。ね?」で梶浦と目線を合わせる、石川が「昔に戻るのではなく新しくやるような気持ちで」と話すと梶浦が「完全にそうでした」と言葉を挟む、二人のテンポで進む会話が心地よい。石川が「どういう心境になるのかと本当に思っていた」とこぼすと梶浦が「本当に」と相槌を打ち、「個人的なライブに関しては背負ってるものがあるから」(石川)「お互いにね」(梶浦)「だから逆に落ち着いてられるんだけど。本当に緊張した」(石川)「さっき(出る前に)袖で二人で『緊張する』って」(梶浦)と細かいリズムで軽妙に掛け合っていく。そして石川が「皆さんと私たちが生きている者同士だからこそできたこと」で梶浦は何度もうなずいていた。

MCは、「梶ちゃんの素晴らしい楽曲、まるで私を死なせるのかというような」という石川による梶浦評と実感で一旦締められ、楽曲の披露へと戻っていく。西川 進がアコギでイントロを爪弾き、石川のボーカルと共に中島オバヲがマラカスを振り、直截なタイトルの「LOVE」が始まる。今野 均が間奏でバイオリンソロを魅せ、そのあとを受け取って歌う石川、その上をライトが移り変わっていく。続いて「Emerald Green」。高橋“Jr.”知治が沈むベースの音で楽曲を包み込み、ドラムの佐藤強一はマレット、トラディショナルポジションでのスティックワークと手元を変えてドラムを操る。その曲名に相応しく「不透明水彩絵具」が、ピンク、水色、黄色、オレンジの円形スポットがステージを彩る中で始まると石川は客席に向かってクラップを要求する。そして梶浦のキーボードからスタートし、石川が低音で始めて高音まで響かせる曲は「Swimmer」。そのあとのドラムフィルインから始まるバンドサウンドは非常に若々しく、客席も顔がほころぶ。ステージ上も心踊らされるように、石川、西川が梶浦のそばへとやってきて演奏、歌を披露していた。

ここまで歌ったあと、今度は梶浦が主となってMCを進める。梶浦が「女性ボーカルの音域というものをはるかに超えている」と説明した曲のあとだけに、「どうしようもなく息切れがすごい」石川は扇子で仰ぎながら、相方のターンを見守る。梶浦はかつての曲からは、今と同じ自身の「好きツボ」を感じると述べる。See-Sawの活動自体はアマチュア時代から数えると30年近く前に起点を持ち、今披露した「不透明水彩絵具」と「Swimmer」はその頃からのつきあいとなる楽曲。特に「Swimmer」は大学生になってバンドを組み、「バンドっぽい曲を書いてやろう」と思って初めて書いた曲でもある。毎月のように渋谷にあるegg manでライブをし、石川は何度歌ったことか。梶浦は楽しそうに、「でも爽やか」「この曲を書いた人が30年後にみんな死ぬような曲ばっかり書く」ようになるとは、とファンに昔の思い出と今の気持ちを交えながら話していく。

そこから「See-Sawでいちばん古い曲」から「いちばん新しい曲」と紹介して「静寂はヘッドフォンの中」に。続いて「また会えるから」。軽やかにシンバルで刻むビートに乗って、ニューエイジでありながら懐かしいスタンダードのような空間が生まれる。音符を自在に転がす石川の歌声に客席は聴き惚れ続ける。

次のMCはまた石川の主導で。まずは『ガンダム』に関する思い出話から。アメリカで起きた出来事の内容はあえて内緒にしておくが、この話をしたとき、ツボに入ったらしく梶浦が思わず声を挙げて笑ったことが印象に残った。その後も石川は、See-Sawとしてデビュー後にライブの裏側ではどのような事件があったのか、「白い傘事件」「オカリナ事件」とサルベージしながら、大いに客席を沸かせたあと、「うた」へとつなげる。この曲は、時代に寄せたアレンジの1stアルバムver.ではなく、アマチュア時代からの大人な雰囲気のアレンジver.で。ステージメンバーの技巧もあるだろうが、一回りして今の時代にマッチした楽曲へと生まれ変わった感を抱いてしまうところが面白い。そこから「千夜一夜」「夏の手紙」と楽曲を並べていくが、どれも今の梶浦を思い起こさせる幻想的な雰囲気を漂わせると同時に、石川智晶のために作っていたということを気付かさせる。ライブ中は常に、今の二人へとつながることを味わえる瞬間、当時だからこそ生まれたと感じる瞬間の連続だった。

交互にしゃべり手を担当していくMCで梶浦は、終えた「夏の手紙」に対して、「こういう詞がついてくると思ってなかった」と話し、自分の想定を超えた曲だったと振り返る。「歌詞を受け取ったときに思わず立ちあがった」ほど、心打たれたということを明かすと、石川は両手を上げて嬉しそうにした。その後も、自分で詞も曲も手掛ける場合と異なり、計画していたアレンジを覆すことにはなるが、だからこそどう歌詞を生かそうかという思いも沸き上がる、まるで「趣味曲」だったと話を続ける。多くの裏側をまといながらも、人前で披露されることがなかった『Dream Field』というアルバムの楽曲たちだけに、初のお目見えとなり、楽曲たちも心から楽しんでいるだろう。それにしても「“初”が随分久しぶりすぎるんですけど」という梶浦の感想に、石川も拍手で賛同していた。ここでバンドメンバー紹介を挟む。西川、“Jr.”、佐藤強一、今野 均とは、See-Saw最後のライブとなった17年前のあのときを一緒に過ごした同志。ついつい昔の話で興じたあとは、アラブ民族音楽色をまとう「記憶」、英語詞曲でありながらアジアンな雰囲気の「Obsession」と個性ある2曲が。続いて、ハイハットがカウント後に高速でリズムを刻み、石川がクラップを要求、そうして始まったのは「edge」。ボーカル、バイオリン、メロディーが三位一体となって泣きへと誘いながら、ギターソロが増幅させ、シンバルは最後の余韻まで刻み続ける。そして同じく『.hack//Liminality Vol.1』のOPテーマ「君がいた物語」。石川もここではステージを歩き回りながら熱唱、熱い思いを表すかのように最後はその指で天を指した。See-Sawらしく東洋世界を落とし込んだ音楽をライブ空間に満ち溢れさせた時間はまさに、梶浦がそのあとのMCで述べたように「アゲアゲコーナー」であった。

今回のライブで「千夜一夜」からの6曲中、「夏の手紙」を除く5曲は『.hack』ソングであったが、一度目の活動休止を経た後期See-Sawは「物語に寄り添う曲を作る」ことが多く、またそれが楽しくてSee-Sawとも相性が良かったという話を梶浦が口にする。そして、アニメ作品とSee-Sawといえば、ということから「あんなに一緒だったのに」へ。石川が客席に「Stand Up!」と声をかける。ここまで着席のまま耳に意識を集中させていたフロアが、全身で楽曲の勢いに身を任せる。曲が終わった際には予想通り、掌を思い切りたたき合わせて、賛美と感謝の拍手を送る人々の姿が。その拍手の合間から鐘の音が聞こえ、パイプオルガンの音が響き、教会のような雰囲気へと一新される。ピアノを携え、石川が天に向かって歌い上げる。途中からは絶え間なくシェイカーが癒しのリズムを刻み、歌詞が終わったあとも長く長く余韻を声で表現し続け、だが、やがてその声が細くなり、消えゆくと、楽器隊を残して先に下手へ下がる。残された者たちによる神秘的かつ荘厳な時間のエンディングもやがて終わりをつげ、メンバーも全員が立ち去った。

ポップスユニットのアルバム発ライブとは思えないほど、高く構築されたライブ空間に、享受した者からの拍手がいつまでも鳴りやむわけもなく。そのあと押しに促されるように、石川と梶浦が歩いてステージ中央に戻ってきた。二人だけで生み出したのは「Jumping Fish」。一転して、See−Sawとして純度100パーセントという時間に幸せを感じずにはいられないが、間もなくアンコール最後の曲に至る。バンドメンバーも加わってのラストナンバーは、ラストシングルでアルバム『Dream Field』にも未収録の「君は僕に似ている」。演奏後には、この夜のライブにおける演者全員がステージ前方に並び、「ありがとうございました」と挨拶を。そしてライブタオルに梶浦と石川がサインをする。梶浦がそのタオルを手に取り、しばって投げやすくすると石川が感心したような顔を。ステージ上で見せる一幕一幕がほほえましい。

「『Dream Field』のライブやってなかったよね、というところから始まった大人の遊び」と梶浦は話した。大人の遊びであるがためにお知らせできるニュースはないと続け、それに対して石川も「本当に」「潔いよね」と相槌を打った。休止があったからこそ、『Dream Field』がこれほどの音楽性とクオリティを伴うライブとして我々の目の前に現れたことは事実だが、だからこそ二人が成熟したアーティストとして成長した今、奇跡を再び望むことは罪だろうか。十数年ぶりに手を取り合った時間を二人が楽しんでいると体感してしまった我々が新たな夢を見てしまう、そんな素晴らしき夢の野であった。

Text by 清水耕司(セブンデイズウォー)

“See-Saw LIVE ~Dream Field 2019~”
2019年12月15日(日)東京国際フォーラム ホールA
<セットリスト>
1.overture
3.優しい夜明け
4.黄昏の海
5.LOVE
6.Emerald Green
7.不透明水彩絵具
8.Swimmer
9.静寂はヘッドフォンの中
10.また会えるから
11.うた
12.千夜一夜
13.夏の手紙
14.記憶
15.Obsession
16.edge
17.君がいた物語
18.あんなに一緒だったのに
19.indio
―アンコール―
20.Jumping Fish
21.君は僕に似ている

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