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2019.08.08

シンガーとして歩んできた10年の軌跡。中島 愛デビュー10周年記念ライブ“10th Anniversary Live ~Best of My Love~”レポート

シンガーとして歩んできた10年の軌跡。中島 愛デビュー10周年記念ライブ“10th Anniversary Live ~Best of My Love~”レポート

中島 愛のデビュー10周年を記念したワンマンライブ“10th Anniversary Live ~Best of My Love~”が、7月21日(日)に東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで開催された。自身の30歳の誕生日にあたる今年6月5日に初のベストアルバム『30 pieces of love』をリリースし、これまでのキャリアを集大成した中島。そのベスト盤を引っ提げた本ライブで彼女は、シンガーとして歩んできたこの10年の軌跡と、その先に広がる金色の未来を描き出してみせた。

ワンマンとしては、今年2月に地元の茨城・mito LIGHT HOUSEで行った凱旋公演以来、約5か月ぶりとなった今回のライブ。オールスタンディングの会場には、中島の10周年を祝するべくフロアいっぱいのファンが詰めかけ、ステージの両サイドに飾られた数字の「30」と「10」をかたどったバルーンアートもお祝いムードを盛り上げる。開演前にはザ・コアーズやトリスタン・プリティマンといった女性シンガーものの洋楽ナンバーがSEとして流され、ゆったりと心地良い雰囲気のなか照明が暗転し、ハウス調のパーカッシブなリズムが鳴り響き、ついに中島のライブがスタートする。

ライブ用に制作されたのであろう、その昂揚感溢れるイントロが観客の興奮を煽るなか、中島がステージに登場し、まずはベスト盤に収録された北川勝利(ROUND TABLE)提供の新曲「Love! For Your Love!」を披露。水色のワンピースを着た彼女は、のっけから「カモン!」と元気いっぱいに声をかけ、バックバンドのディスコティックな演奏に乗せて、明るく愛に満ちた歌声を会場中に届ける。ハンドマイクを握っていない方の手でかわいらしく手ぶりをしたり、クルッとターンしたりと、歌詞にもある通りのプリンセス気分な振る舞いに、観客もピンク色のペンライトを振って笑顔で応える。

1曲目からキラキラとしたステージで魅了すると、続いては『すのはら荘の管理人さん』のOPテーマだったシングル曲「Bitter Sweet Harmony」へ。軽快かつ華麗にスウィングするサウンドと、ちょっぴり大人な甘さを漂わせた歌い口が絶妙なハーモニーを形成する。そこから今度は、『マクロスF』の放送10周年を記念して2018年にリリースされたシングル「Good job!」より、カップリングに収められたランカ・リーのソロ曲「ランカとBrand New Peach」を歌唱。先ほどの「お姉さん」な雰囲気から一転、アイドルチックな甘々なボイスで“ちょ デレデレギュッ”と歌ってフロアをデレデレにする。

続くMCで「これは自分を卑下するのではなく、誇りを持って〈三十路〉のまめぐ」と自己紹介しつつ、30歳になったことをアピールする彼女。30代になって初の大きなワンマンライブだが、いい意味で飾らない自由なMCは健在だ。そしてこの日の公演について「私の10年間のヒストリーを旅するライブ」と紹介して観客の期待値を上げた中島は、近年のライブでは定番のナンバー「サタデー・ナイト・クエスチョン」でステージを再開。「ヘイ!」とこぶしを突き上げるロックなパフォーマンスに加え、間奏では外園一馬(ギター)による熱いソロパートも炸裂し、会場の熱気が一気に上昇する。

そこから自身の活動復帰シングルとなった爽快なロックチューン「ワタシノセカイ」で、改めて“ずっと 追い続けていたい この夢を”と歌って想いを滲ませると、次は活動休止前の最後のシングルだったバラード「ありがとう」をしとやかに歌い上げてクールダウン。その後のMCで彼女は「「ありがとう」は最後のシングルと思って出しましたけど、その後にもシングルを出すことができて、本当に恵まれていると思います」と語る。ファンとしては、むしろこうして再びステージの世界に戻ってきた中島に対して「ありがとう」と、感謝の気持ちを伝えたいぐらいだろう。

ここまでの6曲で気づいた人も多かっただろうが、中島はこの日の公演を「(自身の)歴史を辿っていくライブ」にしようと思ってセットリストを組んだことを説明。ベスト盤に収録した楽曲を中心に、そこに入れることのできなかった楽曲も交えつつ、キャリアを現在から過去へと順に辿っていくような構成にしたと語る。この時点ではベスト盤から4thアルバム『Curiocity』(2018年)を経て、3rdアルバム『Thank You』(2014年)の時代の楽曲にまで遡ってきたことになるが、彼女は「『Curiocity』期を経て『Thank You』期に……なんか「産休」してたみたいになったけど、休んでた間は結婚も出産もしてないです(笑)」と冗談を言ってファンを笑わせる。

そして彼女は「ここからは結構体力使うよ?」と宣言して、「そんなこと裏のまた裏話でしょ?」「マーブル」「愛の重力」「TRY UNITE!」「Hello!」という怒涛のセットを休みなく披露。特にアルバム『Thank You』収録のノンタイアップ曲ながら、今回のベスト盤にも収められたプログレッシブなフュージョン曲「愛の重力」は、フルバンド編成で披露されるのは活動休止前の最後のライブ以来約5年ぶりということで、同曲を作編曲した西脇辰弥(キーボード/バンドマスター)の指揮のもと、ひときわ熱のこもったパフォーマンスを展開。バンドのテクニカルかつファンキー極まりない演奏と、どこか神秘性を感じさせる中島のファルセットボイスが溶け合って、圧巻の光景が描き出された。

「Hello!」のコール&レスポンスと大合唱で楽しい一体感を生み出した中島は、続くMCでバンマスの西脇、ギターの外園、ベースのBOH、ドラムスの前田遊野、マニピュレーターの須藤豪という豪華なバンドメンバーをひとりずつ紹介。その後、「この作品との出会いは私に大きなものをたくさんもたらしてくれました」と前置きし、アニメ『たまゆら』との縁で生まれた2曲を続けて歌い始める。1曲目の「神様のいたずら」では、西脇がクロマチックハーモニカの切なくも暖かい音色でサポート。中島いわく「普段、家にいるときに口ずさむことが多くて、自分の心の中から片時も離れていなかった曲」だという「夏鳥」では、しっとりとした歌声で夏の懐かしい景色を呼び覚ます。

そのように「TRY UNITE!」から「夏鳥」まで、2ndアルバム『Be With You』(2012年)時代の楽曲を歌った彼女は、続いて1stアルバム『I love you』(2010年)のセクションに突入。まずは「10代の気持ちになりたい!」とのことで、同アルバム収録の甘酸っぱいポップソング「Raspberry Kiss」を歌うことに。この楽曲、初期のライブではファンと一緒に振り付けを踊るのが恒例になっていたことで知られ、彼女は今回、久々にみんなで一緒に踊りたいがために、セットリストに組み込んだのだという。みんなに振りをレクチャーする姿も実に楽しそうだ。

そして「ここからはラストスパート!」と呼びかけ、「Raspberry Kiss」を披露。事前に練習した甲斐あって、会場全体が同じ振り付けを踊って一体となり、Aメロ部分では往年のアイドルソングっぽい追っかけコールも入って、大きな盛り上がりを見せる。さらに曲の終わりでBOHが愛用の6弦ベースを駆使した超絶プレイで見せ場を作り、そこから続けて夏にぴったりの燦々ロック「Sunshine Girl」に突入。10年分の成長を感じさせる安定した歌声を聴かせつつ、いつまでもフレッシュさを損なわないパフォーマンスが眩しい。同曲を前田による熱狂的なドラムソロで締めくくると、今度は西脇のロマンチックなピアノをイントロに「Shining on」を歌唱。発表当時よりも一層輝きを増したその歌声に、あの頃を知る人も、後追いでファンになった人も、改めてグッときたことだろう。

投げキッス&華麗なターンで「Shining on」を締めくくった中島が、続いて自身のソロデビュー曲「天使になりたい」を歌い始めると、オーディエンスのボルテージはさらに上昇。彼女は「ラストはデビュー曲で盛り上がっていきましょう!」と檄を飛ばし、会場は一面赤色のペンライトでそれに応える。バンドのエネルギッシュな演奏とフロアからの大歓声に負けることなく、力強くも存在感のあるボーカルを聴かせる中島。デビュー曲だからこそ、その歌声に刻まれた成長と進化の度合いがより如実に伝わってくる。ラストは背中を向け、まるで羽を大きく広げるかのように両手を左右いっぱいに伸ばしてフィニッシュ。最新曲「Love! For Your Love!」から順に、自身のキャリアを遡るように楽曲を披露してきた彼女は、最後にデビュー曲「天使になりたい」で羽ばたく天使となってステージを降りた。

その後に巻き起こった盛大な「まめぐ」コールを受け、ポップにアレンジしたツアーTシャツとオレンジと白のロングスカート姿に着替えた中島が再登場。場内からの「かわいい!」という声に「その言葉が私の人生にいちばん必要な気がする(笑)」と喜びつつ、バンドメンバーに対しても「かわいい!」のコールをするように促して盛り上げる。そして「アンコールをいただきましたので、もう1曲のデビュー曲をみんなと一緒に歌いたいと思います」と宣言し、次に何を歌うのかを察したオーディエンスから歓声が巻き起こる。そう、中島 愛=ランカ・リーの代表曲「星間飛行」だ。中島いわく「キャラソン集をいつか出したい」という夢があるため、今回のベスト盤『30 pieces of love』にはあえて収録しなかったとのことだが(同ベストのアナログ盤『8 pieces of love』には収録)、やはり10周年イヤーを締めくくるライブにこの曲を外すことはできない。フロアは瞬く間にランカのカラーである緑色のペンライトで染まり、みんなで声を揃えて「キラッ!」と歌う。彼女にとっての本当の意味での始まりの歌で、この日ライブに来た全ての人が心を通い合わせた。

続くMCで中島は、10月20日(日)にFCイベントアコースティックライブ、10月26日(土)~27日(日)にこちらもファンクラブ限定で初のバスツアーを開催することを告知。前者はベスト盤や今回のライブから漏れた楽曲を「アナザーサイド的に披露できる場」になり、後者では「(自分の)持ち歌ではない曲のカラオケを観てほしい(笑)」とのことで、彼女が普段友人とカラオケに行ったときに歌う楽曲やオーディション時に歌った曲などを披露するつもりとのこと。どちらも貴重な機会になることは間違いなさそうだ。

さらに彼女は、今後の予定として、自身もトゥーリ役で出演する10月より放送予定のTVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』のEDテーマ「髪飾りの天使」を担当することを報告。この曲の作詞・作曲を手がけたシンガーソングライターの吉澤嘉代子とは、2017年に作詞家・松本 隆と縁のあるアーティストが一堂に会したイベント“風街ガーデンであひませう2017”で初対面し、その頃からいつか一緒に楽曲を作ることを望んでいたのだという。なお、本楽曲の編曲は、堀江由衣や上坂すみれといった声優アーティストへの楽曲提供でも知られる清 竜人が担当。彼はかつて女性メンバー全員が竜人の嫁というハーレム設定のアイドルユニット=清竜人25を結成していたり、楽曲提供などで繋がりのある女性アーティストを招いて“ハーレムフェスタ”と題したライブイベントを定期的に行っていることから、中島も「私もハーレムの一員にやっとなれました(笑)」と喜びを表現した。

そしてもう一曲、同じく10月放送予定のTVアニメ『星合の空』にて、オープニングテーマ「水槽」を歌うこともアナウンス。この曲は、中島とは「サブマリーン」以来の邂逅となるポルノグラフィティの新藤晴一が作詞を担当。作曲は「忘れないよ。」「パンプキンケーキ」などの矢吹香那、編曲は中島とは初仕事のトオミヨウという豪華布陣で制作されたという。先の「髪飾りの天使」と「水槽」は、11月にリリース予定のニューシングルに収められるとのことだ。

そして中島がこれから「水槽」をライブ初披露することを伝えると会場は喝采に沸く。中島の「めっちゃ緊張するね」という言葉に、客席から「がんばれ!」「大丈夫! まめぐならできる!」と励ましの声が飛び、中島は「超うれしい」と喜びの表情を浮かべる。そのようなファンの応援を後押しに歌われた「水槽」は、水のように波打つサウンドが心地良い序盤から、ストリングスが加わってさらに美しい景色が広がるサビへと、ドラマティックに展開していくミディアムナンバー。幻想的な深みを湛えた中島の歌声が会場全体を包み込み、オーディエンスはその中を泳ぐかのように身を揺らせながら、「水槽」の世界にどっぷりと浸った。

そこからピアノの穏やかな調べに導かれて歌われたのは、『劇場版 マクロスF 恋離飛翼 ~サヨナラノツバサ~』のエンディングを飾ったランカのナンバー「ホシキラ」。本来は劇中でのランカの心情を意識して書かれた楽曲ではあるのだろうが、愛の強さと大切さに気づいたことで“もう夜に振り向かない”と歌い、“何度でも また会おうね”と誓うその歌詞は、彼女の10周年を記念したライブというこの場面においては、どうあっても中島 愛がファンに向けて直接投げかけるメッセージに聴こえてならない。ミラーボールが回転して星空のような光景を演出するなか、中島はこの感動的なバラードを慈しみに満ちた声でしっとりと歌い上げ、銀河の果てまで抱きしめんばかりの愛をみんなに届けた。

しばらく鳴りやまなかった拍手に続き、中島は自身のライブで久々に披露した「ホシキラ」について、自分の気持ちが溜まり切るまで、ずっと温存していたと説明。10周年を締めくくるこのステージで歌うことに、彼女は大きな意味を見出していたのだろう。改めて「すごく色んな気持ちが沸いてきます」と今の心情を説明した彼女は、続けて、前日にふたつのライブを観に行ったことを明かす。ひとつは、中島がファンとして敬愛する渡辺満里奈が28年ぶりに行ったライブ。もうひとつは、彼女が昨年に出演した音楽番組『僕らの音楽』の企画によるイベント“武部聡志 ピアノデイズ”。そこで改めてライブの素晴らしさを実感したうえで、自身もステージに立つと「普段の自分」とは違う底知れないパワーを得られるのは、応援してくれる人が会場に集ってくれるからだと語り、「リスナーのひとりひとりが、こうやってステージに立つ人の人生を変えていってるんだと思います。だからみんなはすごいです!」と力説する。ステージに立つ機会を与え続けてくれ、そこで違う自分を見出させてくれたファンに対して、改めて感謝の言葉を伝え、「いつでも私の扉は開いてますので、みんなの人生に中島 愛が必要になったときは、ぜひ会いに来てもらえれば」と想いを語った。

そしてライブは最後の楽曲に。彼女の10周年イヤーを締めくくるのは、アルバム収録曲ながらベスト盤にも収められ、今や彼女のライブでは欠かせないものとなっている、山田稔明作詞、菅野よう子作曲、ラスマス・フェイバー編曲のナンバー「金色~君を好きになってよかった」。サビで中島が“君を好きになってよかった”“今ならもっと素直に言えるかな”と歌えば、ファンは“笑わないで聞いてくれますか?”“君をもっと好きになっていく”と大合唱で応える。金色に輝く青春の日々、中島とファンが一緒に歩んできた10年分の思い出を胸に、また新しい青春へ。一面黄金色のペンライトがあまりにも美しすぎる光景を描きだすなか、まめぐは最後に満面の笑顔で「ずっと一緒だよ!」と呼びかけて、次の10年へのスタートを切った。

中島自身がMCでも何度か言及していたように、彼女のこれまでの10年間のなかには、約3年の活動休止期間が含まれているわけだが、だからこそ、こうして歌い続けること、ステージに立ち続けること、その道のりが容易ではないことを、中島は誰よりもよく知っているはず。だが、この日の彼女に、この先も歌い続けることに対する迷いや逡巡は感じられなかった。むしろステージに立てる喜びの気持ちが、何よりも勝っていたように思う(その証拠に本人が涙を流すような感傷的な場面は微塵もなかった)。今の彼女ならきっと、いつまでも色褪せない夢の続きを、この先もずっと見せてくれることだろう。

Text By 北野 創(リスアニ!)
Photography By BETO(Sketch)、KOBA(Sketch)

“10th Anniversary Live ~Best of My Love~”
7月21日(日)東京・恵比寿ザ・ガーデンホール

<セットリスト>
M1:Love! For Your Love!(ベストアルバム「30 pieces of love」新曲)
M2:Bitter Sweet Harmony(TVアニメ「すのはら荘の管理人さん」OPテーマ)
M3:ランカとBrand New Peach(歌マクロス 1周年記念曲)
-MC-
M4:サタデー・ナイト・クエスチョン(TVアニメ「ネト充のススメ」OPテーマ)
M5:ワタシノセカイ(TVアニメ「風夏」EDテーマ)
M6:ありがとう(TVアニメ「たまゆら~もあぐれっしぶ~」EDテーマ)
-MC-
M7:そんなこと裏のまた裏話でしょ?(TVアニメ「琴浦さん」OPテーマ)
M8:マーブル(TVアニメ「輪廻のラグランジェ season2」OPテーマ)
M9:愛の重力(3rdアルバム「Thank You 収録曲)
M10:TRY UNITE!(TVアニメ「輪廻のラグランジェ」OPテーマ)
M11:Hello!(TVアニメ「輪廻のラグランジェ」EDテーマ)
-MC
M12:神様のいたずら(TVアニメ「たまゆら~hitotose~」メインEDテーマ)
M13:夏鳥(OVA「たまゆら」パッケージ版第2巻EDテーマ)
-MC-
M14:Raspberry Kiss(1st アルバム「I love you」収録曲)
M15:Sunshine Girl(テレビ東京系音楽番組「アニソ~ンぷらす」2010年6月度EDテーマ)
M16:Shining on(2ndシングル「ノスタルジア」カップリング曲)
M17:天使になりたい(中島 愛名義デビュー曲)
~ENCORE~
EN1:星間飛行(TVアニメマクロスF挿入歌※ランカ・リー=中島愛デビュー曲)
-MC-
EN2:水槽(2019年10月放送予定 TVアニメ「星合の空-」OP主題歌)
EN3:ホシキラ(劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~ED主題歌)
-MC-
EN4:金色~君を好きになってよかった(2ndアルバム「Be With You」収録曲)

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