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2019.07.08

バンドサウンドで新しい世界を魅せた“三月のパンタシア LIVE 2019「ガールズブルー・ハッピーサッド」”ライブレポート

バンドサウンドで新しい世界を魅せた“三月のパンタシア LIVE 2019「ガールズブルー・ハッピーサッド」”ライブレポート

2019年6月9日、東京・EX THEATER ROPPONGIにて“三月のパンタシア LIVE 2019「ガールズブルー・ハッピーサッド」”が開催された。3月に発売されたニューアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」をテーマにした三月のパンタシアのワンマンライブで、アルバムの曲を中心に17曲を披露。みあの歌に、短いナレーションや映像を交えたライブで、三月のパンタシアの世界観を存分に味わえるライブとなった。

夏の始まりを告げるようなナレーションが流れ、ボーカルのみあが登場する。最初はアップテンポな曲の「パステルレイン」。今回のライブは1曲目から観客がスタンディングになって盛り上がりをみせる。みあは歌い終えると「こんばんは。三月のパンタシアです。久しぶりだね」と軽く挨拶をして、次の曲「青春なんていらないわ」へ。左右に動き回ってクラップをうながしながら、切ない夏の景色を歌っていく。背景にはLEDライトで花火が表現されるという演出も見られた。そして「青に水底」では背後にあるセットに海底の世界が描き出され、みあは全身でエモーショナルな歌詞を表現していた。

今回のライブは各ゾーンで四季を表現するというコンセプトになっていた。ここからは照明がオレンジ色に変わり、季節は秋へ。「オレンジ色のハロウィンカボチャだけがバカみたいに浮かれている――」。そんなナレーションの後に歌ったのは「ビタースイート」だった。スクリーンにはハロウィンのカボチャと少女が登場する情念あふれるMVが映し出されており、スタンドマイクを使っていたみあも、後半のテンションの高まりとともにマイクを外して感情をぶつけるように歌っていた。そして秋の終わりの曲は「ルビコン」。“『一人じゃないんだ』”という歌詞のところで客席を指さすなど、ポジティブなメッセージが伝わってくる歌だった。

「夕暮れの街はとても静かで、キミのいない世界はあまりに冷たくてさみしいよ。冬の風が頬を切る。私はぎゅっと、まぶたを閉じた」。冬の訪れを思わせるナレーションの後、「恋を落とす」、「東京」と続く。背景には雪が降るビル街が映し出され、静かだが強い感情を歌っていく。「街路、ライトの灯りだけ」は一転してポップな曲調で、みあも観客にクラップをうながしていた。冬のブロックの最後の曲はWEBアニメ『衛宮さんちの今日のごはん』EDテーマとなった「コラージュ」で、会場は温かい雰囲気に。笑顔のみあに合わせて観客も手を左右に振り、一体となって盛り上げていた。

そして季節は春へ。「まるでピンクレモネードのように甘くはじけるこの恋を、私はまだうまく泳げずにいる」というナレーションの後の曲は、もちろん「ピンクレモネード」だった。TVアニメ『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』OPテーマとなったキュートな曲で、観客のテンションも上がっていた。「シークレットハート」に続けて歌った「風の声を聴きながら」では、「手を振り」という歌詞のところで客席に手を振るなど、観客とのやり取りを楽しむような動きも見られた。

最後のMCでは、「夏から始まって、秋を経て、少し冷たい冬も越えて、春まであなたと一緒に季節の旅をしてきました」と今回のライブを振り返った。その中でさまざまな種類の“切なさ”を歌ってきた彼女は、「なぜ三パシが“切なさ”を歌い続けてきているのかというと、私自身がそういう気持ちを直接言葉にして伝えるのがあまり得意じゃなくて、だから、せめて歌の中ではあの時言えなかった気持ちを言えたらいいなという想いがひとつ。もうひとつは自分と同じような気持ちを抱えている“誰か”の想いを私が代わりに歌うことができたらいいなという想いがあります」と語り、そんな音楽を楽しんでくれるファンに感謝を述べた。そして、今回のライブが春のブロックで終わったことについて、「梅雨の季節なのに、どうして春で終わったのと思っていますか? それは私が春がとっても好きな季節だから。そして、“三月がずっと続けばいい”と思っているからです!」と話し、最後の曲「三月がずっと続けばいい」へとつなげた。みあはタオルを回しながらステージを動き回り、観客からはコーラスの合唱が起きる盛り上がり。最後はタオルを客席に投げ入れて、ステージを後にした。

すかさずアンコールを求める“三パシ”コールが起こり、ほどなくしてみあとバンドメンバーがステージに戻ってきた。「もう少しだけ歌います」と言うと、まずは「day break」を歌った。バンドメンバー紹介の後、セカンドアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」の話に。バンドサウンドが増え、“新しい三パシ”を魅せたアルバムだったが、“言いたくても言えない切なさ”という三パシの根柢の部分は変わっていない。「私たちは変わらないまま、変わっていきたいと思っていて、一歩ずつ前に進んでいくための物語を、あなたとこれからも長く丁寧に紡いでいけるようにがんばっていきたいと思います」とこれからの抱負を語っていた。

「次で本当の本当に最後の曲です」というみあに、観客が「えー」と残念そうなリアクションをすると、「いいねー」とうれしそうな表情を見せた彼女。「私たちはいつもこの“はじまりの物語”でつながっています」と言うと、「はじまりの速度」を歌った。デビューシングルであり、三パシとファンが出会った“はじまりの物語”。最後に「私に居場所をくれてありがとう! 転んだりしても、立ち止まっても、痛くても、私はもう一人じゃないから、怖くないよ! ありがとう!」と絞り出すようにメッセージを送り、この日のライブは幕を閉じた。

終演後、スクリーンには三月のパンタシアの自主企画「ガールズブルー」の情報が映し出された。「音楽×小説×イラスト」を組み合わせた2019年夏の最新作で、みあによる小説「8時33分、夏がまた輝く」と、主題歌「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」を発表。7月14日(日)から、みあの公式Twitterにて書き下ろしの小説が連載され、主題歌はYouTubeで公開されるという。

今回のライブではバンドサウンドによって音楽的にも新しさを打ち出し、MCではファンとの近さをさらに感じられるようになった三月のパンタシア。新しい企画によってどのような世界を見せてくれるのか、楽しみに待ちたいところだ。

Text By 金子光博

“三月のパンタシア LIVE 2019「ガールズブルー・ハッピーサッド」”
2019年6月9日(日)東京・EX THEATER ROPPONGI

<セットリスト>
1 パステルレイン
2 青春なんていらないわ
3 青に水底
4 ソーダアイス
5 ビタースイート
6 ラフスケッチ
7 ルビコン
8 恋を落とす
9 東京
10 街路、ライトの灯りだけ
11 コラージュ
12 ピンクレモネード
13 シークレットハート
14 風の声を聴きながら
15 三月がずっと続けばいい
<アンコール>
16 day break
17 はじまりの速度

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