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INTERVIEW

2019.06.12

「悠木碧らしさとは何か?」を1枚に詰め込んだニューアルバム『ボイスサンプル』が完成!悠木 碧インタビュー

「悠木碧らしさとは何か?」を1枚に詰め込んだニューアルバム『ボイスサンプル』が完成!悠木 碧インタビュー

声優アーティストの悠木碧が待望のオリジナルニューアルバムをリリースした。『ボイスサンプル』と名付けられたそれはバラエティ豊かな内容で、声づくりや表現、歌詞楽曲すべてにわたり、「悠木碧らしさ」とは何かを示してくる内容だ。この内容にした意図とこだわりの表現、そして芝居の組み立て方から声優アーティストとしての意義まで、たっぷりと語ってもらった。

「共通点がない」アルバムを作った理由とは?

――バラエティさのあるアルバムになりましたが、これは悠木さんからのご提案ですか?

悠木 碧 はい。様々なキャラクターの芝居をするというのは声優特有の仕事だと思っていて、それを楽曲を通じて表現することで声優が歌う意味を出していけたらなと、以前から思っていました。このアルバム以前にリリースしたシングル曲の「永遠ラビリンス」と「帰る場所があるということ」を、アルバムに収録する考えは私も持っていたのですが、これらはそれぞれ作品主題歌なので、共通点がありません。そこで、それがアルバムとしてのキーになるように、「共通点がない」ことをアルバムとしての共通点にしようと思いました。今までアルバムを作らせていただく中で、一貫性のあるストーリー性を持たせたり関連性をつけたりしていたのですが、このアルバムでは逆に共通点はいっさいありません。曲の主人公も全員違うし、聴いて脳内に流れてくる映像も、それぞれ別の絵柄の世界が流れたらいいなと思って提案したところ、「すごくいいですね」と言っていただいて、実現したという形です。

――制作期間は長くかかりましたか?

悠木 アイディア自体はずっと考えていたので悩むことはなかったのですが、コンペで150曲くらいいただいたので、それらをじっくりとていねいに聴いて「こういうキャラクター性にしてみようかな」と考えて選ぶことに時間をかけました。要は“逆配役”ですね。曲の側を、私がよく任せてもらうキャラクターのラインに乗っけていくという作業は非常に面白かったです。

――先ほど「よく任せていただけるラインの配役」とありましたが、それはご自身ではどのように自覚をされていますか?

悠木 基本的には小さくて強いキャラが多いですね(笑)。強さといっても、その子たちごとに「強い」の方向性が異なります。器が広くて強いタイプもいれば、能動的という意味で強い子もいます。技術的に強いとか、しぶといという意味での強さを持ったキャラクターもいます。その子がいちばん強い所を最初に見つけ、そこを重点的に見えるようにしてあげると強い子になる感じはします。一見、おどおどして弱そうに見えるキャラクターでも、最終的にフルパワーを発揮して強くなるというパターンも多いので、何が彼女の最強なのかを考えてあげることが重要。逆にその子の弱い面も考え比較していくと、輪郭やその子が大事にしているものが見えてくるという形で取り組むことが多いです。

――キャラクターって多層的なものだから、中に何があるかを想定することも組み立ての上では重要なんですね。

悠木 例えば、他の人物が言った言葉に対する反応といったことでも、キャラクターづくりの十分なヒントになり得るんです。言われた事を「なるほど」と一回受け止める強さの形もあるし、逆に論理で包んで戦うパターンもあるかもしれない。その割合がどんなふうになっているかを紐解いていくという作業もあります。ただ今回は、私が曲も一から選ばせていただいているなかで、強さの種類についても自分で付けていくという、いつもの仕事とはちょっと違う面白さがありました。

――「強さ」が分かりやすく現れている曲だと「Counterattack of a wimp」がそうですね。

悠木 私のラインのなかには「元気で明るく戦う強い子」も多く、さらにライブを想定した際にお客さんがノリやすい曲ということで選ばせていただきました。この曲では歌詞も私が書いていて、元々は普通の子だった彼女の広い心の部分と、だからこそ強くなれる部分を書いてあげられたらと思いました。あっけらかんと他人を守れる正義の味方のキャラクターを演じる際、私が重視しているのは、彼女の持つプライドの置き所です。彼女たちって「あんぽんたんだなぁ」と言われても「えへへ、ごめん」と言えるんです。他人よりも優れていたいと思うのではなく、「全員が笑っていて、そのために頑張ること」、みんなでハッピーになることにプライドを持つ子。それって、めちゃくちゃ「強い」ことだと思うし、そういう曲にしたいなと思いました。

――ほかにも作詞された楽曲がありますね。「バナナチョモランマの乱」は、また毛色が違うコメディソングで驚きました。

悠木 コメディ系も演じさせていただくので、それを想起して書いた曲ですが、これがいちばん難しかったですね。自分で書いていて何が面白いのかわからなくなってくるんですよ(笑)。でも笑わそうと思って書くとスベるから、「ポリプロピレン」とか「ガングリオン」とか、「言いたくなる言葉」をランダムに並べる形にしました。その唐突さがコメディ向けかなと。あとコメディとしては、いろんな表情を付けられることや、”間”というものが重要なので、それを出しやすい言葉にできたらいいかなと。

――曲のタイトルに「無修正版」と書いてあるのはどういう意図でしょうか?

悠木 これはいろんな声音や歌い方をした曲なのですが、実は収録の際に切らずに1本つるっと歌っているんです。その意味での「無修正版」です。声優的なギミックではこれがいちばん大変な曲でした。被せや人間の機能的に厳しいところは重ねていますが、主メロの部分は切らずに行っていて、ナレーションもその中で同時に行っています。しかもその場で適当に考えていたので、我ながらもう二度とできないなと思いました(笑)。4テイクくらい録ったのですが、前のテイクがどうだったか、もう覚えていないんですよ(笑)。でも、これだけワケ分からない曲なんだから、せっかくなら前のテイクでやっていないことをやりたいじゃないですか。覚えていないからこそ1本でいきたいという形で楽しかったです。

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