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INTERVIEW

2019.06.13

背中をそっと押してくれるような一作に……『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』カスミ役・水瀬いのりインタビュー

背中をそっと押してくれるような一作に……『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』カスミ役・水瀬いのりインタビュー

6月14日に公開される劇場アニメ『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』(以下『タガタメ』)。バベル大陸というファンタジー世界を舞台に錬金術を巡る争いが展開する同名スマートフォン用ゲームを原作とする本作に、オリジナルキャラクターとして水瀬いのりが演じる女子高生の永坂カスミが登場する。現代からバベル大陸へと突然召喚される彼女を水瀬はどのように演じたのか。またTVアニメ『ノブナガ・ザ・フール』以来となる総監督・河森正治監督とはどのようなやり取りがあったのか。公開に先駆けて語ってもらった。

――元々『タガタメ』という作品はご存知でしたか?

水瀬いのり タイトルはゲーム版のCMなどで耳にしていましたが、世界観やキャラクターには今回の劇場版のシナリオで初めて触れました。でもアフレコに入る前に総監督の河森(正治)さんを始め、制作に関わる皆さんが作品について説明してくださる打ち合わせの場を設けてくれたんです。その打ち合わせのおかげで作品への疑問点が解決されて不安がなくなり、アフレコにはモチベーション高く臨めました。

――『タガタメ』の世界に触れての印象は?

水瀬 タイトルから難しそうなファンタジーを連想していましたが、実際は全然そんなことありませんでした。既存のキャラクターもカスミも、ストレートに感情のまま動いていて人間味を強く感じました。

――ファンタジー世界が舞台ですが親しみやすそうですね。カスミを演じるうえで大切にしたことを教えてください。

水瀬 事前の打ち合わせで河森総監督から「カスミは普通でいいです」「この作品はファンタジー世界に転移してきて何も知らないカスミが成長する物語なので、水瀬さんも必要以上に事前に調べる必要はありません」という話をいただいていました。だから何もかもわからないでいることこそが彼女の個性だし、そういうふうに演じるのが正しかったんだと思います。そのためアフレコには台本を必要以上に読み込まずに臨んで、他のキャストのセリフを受けて感じたことを元に演じました。

――自分に自信が持てないカスミ自身についてはどのように感じますか?

水瀬 設定から想像していたよりカスミは強い子でした。自分の好きなものや譲れないものはきちんと胸の中に持っている子です。またカスミはお芝居が好きなので、そこは私と一緒ですね。彼女も自分ではない何かになる、何かに身を預けて憑依される楽しさを知っているんだと思います。

――既存のキャラクターとの関係について、どのように考えていていましたか。

水瀬 エドガーやリズを始めとする既存のキャラクターも、カスミに触れることで今までになかった一面が引き出されていると思います。何でも質問するカスミに嫌気がさすエドガー、それを一生懸命フォローするリズ……みたいな。

――そんなエドガーたちの印象は?

水瀬 エドガーは二枚目を装いながらも男臭さを隠しきれていない印象があります。それと本人はお兄ちゃんであろうとしていますが、どこか放っておけない弟感があり、肩を叩いて「楽になりなよ」「もっと正直になっていいんだよ」と言ってあげたい。自分の中の“お姉ちゃん”な心がくすぐられます。

――リズはいかがでしょう。

水瀬 見た目と中身にギャップがありますね。すごくかわいらしくて守ってあげたくなる小動物的なキャラクターと思いきや、世界を救うためにすごく努力していて。カスミに対しても真摯に向き合ってくれるし、妹みたいな見た目に反してお姉ちゃんっぽいです。

――そのふたり以外に収録していて気になったキャラクターはいますか?

水瀬 カスミと同じくオリジナルキャラクターのパタです。カスミのパートナーとなるマスコット的な存在なんですけど、名付け親はカスミで。すごくふわっと名前が決まるのですが、カスミらしさが出ているシーンなのでぜひチェックしてみてください。

――彼らとのやり取りで思い出深い場面は?

水瀬 エドガーはよく「女に涙を流させない」と言うんですが、それに対してカスミが彼女なりの観点で感情をぶつけるシーンです。キャラクターが異性同士だからこそのやり取りがいいんですよ。しかも雨が降っているのでより青春を感じるというか。エドガー役の演じている逢坂良太さんと、ふたりでグッときていました。

――アフレコ現場で印象的だったことは?

水瀬 収録の合間にスナック菓子を食べていたら先生役の小山剛志さんが「いい音がするな」と声をかけてくださったんです。朝から夜までスタジオでみっちり収録し、張り詰めた空気があったのでそのひと言に救われました。小山さんは大柄な方なんですけど、より大きく見えました。

――水瀬さんは、本作の総監督である河森さんが監督だった2014年放送の『ノブナガ・ザ・フール』にも出演されていました。河森さんのイメージを教えてください。

水瀬 とにかくお若いですね。『ノブナガ・ザ・フール』でご一緒したとき、私はまだわからないことばかりの高校生でした。それが今回『タガタメ』で再会し、思わず二度見しちゃうくらい変わっていなくて。

――(笑)。

水瀬 作品に対する熱量の高さもお変わりなく!あと河森さんと言えばメカが出てくる作品が多くダイナミックな戦闘アクションが印象的ですが、その中でも高さや奥行きの表現が毎回素晴らしいです。『タガタメ』でもその点は変わりません、ってどこ目線で話しているんだって感じですけど(笑)。背景や美術も異世界が舞台だけど突飛すぎず、親しみやすい“異世界感”があるのでそういったところも注目してほしいです。

――ここからは水瀬さん自身について伺います。先ほどカスミとの共通点としてお芝居が好きな点を挙げられていましたが、声優を志すようになったきっかけは?

水瀬 この仕事を目指し始めたのは5、6歳の頃です。アニメのキャラクターを好きになって、あわよくば結婚したいとまで思っていました。ただその作品にはヒロインがいたし、両親から「キャラクターは実在せず、それを演じている人がいる」ということを聞いて自分の恋は永遠に実らないのを悟ったんです。でもそこで「私も声優になればいいんだ」とポジティブに考え、それからは黙々と声優が出ている雑誌やインタビュー、ラジオ、キャラソンなんかをチェックして、結果的にこの世界に来ました。だから最初はお芝居が好きというより、キャラクターに会いたかったという思いの方が先でしたね。

――そんな水瀬さんが今では多くのアニメでヒロインを演じています。責任感は増していますか?

水瀬 はい。だから、今はとにかく風邪をひきたくないです。声優は声を使う仕事なので、鼻声になったり咳が出たり声が枯れたり……そういう状態になるたびに「どうすれば風邪をひかなくなるんだろう」と考えてしまいます。「現場に迷惑をかけないように」という思いは年々増しているので、今は自分の体ではありますがなるべく“ご自愛”しています(笑)。

――なるほど。カスミは劇中で母親とのやり取りもあります。水瀬さん自身のお母さんに対する思いを教えてください。

水瀬 だいぶ迷惑をかけました。中学生の頃は反抗期で、お父さんが仕事で家にいないぶん、お母さんと一緒にいる時間が多かったので、よくもどかしい思いをぶつけていました。私はどちらかと言うと行動や口に出してぶつかるタイプで……幼少期の頃ですが、怒ったらふすまを外したり電話の線を引っこ抜いたりしていたんです。さすがに今は自分をコントロールできるので、物には当たりませんけど(笑)

――そんな過去があったとは。それでは最後に『タガタメ』を一緒に観たい人、そしておすすめしたい人を教えてください。

水瀬 私なら両親と行きますね。先ほど話したような自分の古傷をえぐる部分もありますけど(笑)、今では笑い話にできるし、そういう関係を築くためにも家族で行くのもいいかもしれません。もちろん『タガタメ』ファン同士で観に行くのもアリでしょうし、『タガタメ』を知らなくても夢を追う人や目標を持ちながら生きている人にも触れてほしいです。逆にやりたいことやなりたいものがない人にも、夢を見つける糧にしてもらえる作品だし……皆さんの背中をそっと押せるような映画なので、ぜひ劇場に足を運んで観てほしいです。

Interview & Text By はるのおと


●作品情報
『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』

6月14日(金)より公開

【キャスト】
水瀬いのり 逢坂良太 降幡愛
花江夏樹 石川界人 堀江由衣
生天目仁美 内田雄馬 今井麻美 早見沙織 江口拓也
Lynn 福山潤

【スタッフ】
総監督/ストーリー構成:河森正治
原作:今泉潤/FgG
監督:高橋正典
脚本:根元歳三
キャラクターデザイン:嘉手苅睦
サブキャラクターデザイン:戸谷賢都
作画監督:宮西多麻子、長坂寛治、大河内忍、福田佳太、田中亜優、堀内修、出野喜則、小園菜穂、芳賀亮、小橋陽介
美術設定:二エム・ヴィンセント、ロキャデリ・ロイック、ジェローム・ペリヤ
美術監督:古宮陽子、湖山真奈美
色彩設計:秋元由紀
CGディレクター:原田丈
撮影監督:若林優(T2studio)
特殊効果:永良雄亮
編集:兼重涼子
企画・プロデュース:今泉潤
プロデューサー:木村将人、佐藤道明
制作プロデューサー:高野健一
音響監督:明田川仁
音響効果:小山恭正
音響制作:マジックカプセル
音楽:Akiyoshi Yasuda(★STARGUiTAR)
音楽制作:フライングドッグ
音楽プロデューサー:佐々木史朗、永原洋子

主題歌:「Namida」石崎ひゅーい(EPICレコードジャパン)
エンディングソング:「あの夏の日の魔法」石崎ひゅーい(EPICレコードジャパン)

製作:FgG
制作:サテライト
配給:アスミック・エース
宣伝:博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ、ガイエ
宣伝協力:ファイズマンクリエイティブ

©2019 FgG・gumi / Shoji Kawamori, Satelight

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