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INTERVIEW

2019.03.29

TVアニメ『ガーリーエアフォース』音楽担当 I’ve 高瀬一矢&NAMIスペシャル対談

TVアニメ『ガーリーエアフォース』音楽担当 I’ve 高瀬一矢&NAMIスペシャル対談

北海道を拠点に2000年代以降のアニメ/ゲーム音楽を牽引する音楽集団、I’ve。現在放送中にTVアニメ『ガーリー・エアフォース』では、Run Girls, Run!によるOPテーマ、キャスト陣によるEDテーマ、そして劇伴とすべての音楽をI’veが手がけることとなった。今回はそんなI’veより、設立から中心メンバーである高瀬一矢と、気鋭のクリエイターであるNAMIのふたりに『ガーリー・エアフォース』の音楽、現在のI’veサウンドについて話を聞いた。

――現在放送中のTVアニメ『ガーリー・エアフォース』ですが、OP/EDテーマ、劇伴と音楽はオールI’veとなりました。こうして音楽面をすべて手がけるのはひさびさですよね。

高瀬一矢 たしかにひさしぶりですね。最初の『とある魔術の禁書目録』以来かなあ。まずこうしたお話をいただけて率直にうれしかったですね。若い子はあまりI’veを知らないじゃないですか。なので、若い人から来るのはうれしいです(笑)。

――今のアニソン・ファンはI’veのサウンドを潜在的に通っているという印象ですね。まずは『ガーリー・エアフォース』の作品に対する印象はいかがですか?

高瀬 かっこいいですよね。いろいろ背景を調べたり、陰謀めいたストーリーもあって。そこから曲はどんな感じにしようかっていう話で、制作サイドからは「『トップガン』で」って言われたんですよ。

――言わずと知れたトム・クルーズ主演の名作ですね。

高瀬 戦闘機のアニメだからそこは合っているのかなと。それをI’veなりに咀嚼して、こういう形になりました。

――そこからRun Girls, Run!が歌うOPテーマ「Break the Blue!!」を高瀬さんが、キャストが歌うEDテーマ「Colorful☆wing」をNAMIさん、劇伴をC.G mixさんがそれぞれ手がけることになりました。

高瀬 I’veの顔といっちゃなんですけど、やっぱりオープニングは俺かなと(笑)。

NAMI  そこは使命感があると(笑)。

高瀬 で、次は劇伴どうしようかってなって。そこを例えばみんなでやると世界観がバラバラになっちゃうからひとりに絞ろうと。で、エンディングは声優さんが歌うかわいい感じにしたいのでNAMIちゃんに。となると劇伴はmixにお願いしようってなて、43曲作ってもらいました。

――さて、EDテーマを手がけるNAMIさんですが、改めてI’veで活動する経緯を教えてください。

NAMI  私は3歳からピアノをやっていたんですけど、それをバックグラウンドに音楽活動をしていました。最初はI’veでLarval Stage Planningで歌い手としてデビューさせていただいたんですけど、その頃からスタジオワークにも興味があったんですね。I’veのスタジオでレコーディングしているときも、大きいスピーカーで音を聴いていると「この音はどうやって出しているんだろう?」って思っていて、高瀬さんに何気なく「これってどうやって打ち込んでいるんですか?」って聴いたら「おっ」って思ってもらったみたいで(笑)。

高瀬 そうなんですよ。そんなことを聞いてくる歌い手さんなんていなかったので、「これはもしかして……!」と(笑)。

NAMI  それでLarval Stage Planningをやりながら、裏でちょっとずつご指導いただいて今に至るという感じですね。

――NAMIさんはI’veでも最年少クリエイターとなりますが、所属する以前からI’veの影響は大きかったんですか?

NAMI  高校生の頃からI’veサウンドを聴いていて、特にMELLさんの大ファンで、札幌のライブにも行っていました。私は最初歌手志望でしたけど、その根底にはI’veというのがずっとありました。

――高瀬さんもI’veにこうした若い才能が加わることはいかがですか?

高瀬 刺激になりますよ。「こんな音使いするんだ、今の若い子の感性はこうなんだ」って逆に勉強させていただいています。

――さて、『ガーリー・エアフォース』の楽曲についてですが、まずはRun Girls, Run!によるOPテーマ「Break the Blue!!」について伺います。高瀬さんはどのように作られていきましたか?

高瀬 楽曲作りとしてはまずサビのメロディを作っちゃうことが多いですね。今回も何回かサビを作って提出して、2回目に出したサビが採用されたのかな? そこから前奏とかつけていくんですけど、今回はあのイントロをまず思いついたんです。戦闘機のアニメということで自分の中であのイントロに、声優さんのセリフを入れたいなってイメージがあって。なのでイントロを作ったあとに『ガーリー・エアフォース』のPVで使っていたセリフを使わせていただいたんです。あれでこれから発進するぞという感じになったんじゃないかな。

――たしかにこの曲はサビも印象的ですが、イントロのリフがセリフと共に非常に効果的ですよね。

高瀬 あれは何十回も弾いてみて出てきたリフのひとつです。俺は基本的にサビのメロディを大事にしていますけど、ケースバイケースで前奏から作ることもありますよ。イントロが長い曲は大体前奏から作っていますね。例えばKOTOKOちゃんの「羽」とかはそう。今回「Break the Blue!!」の場合はサビのメロやコード進行から組み立てていきましたね。

――またアレンジとしては、高瀬さんは完成までいろいろ音を足していくそうですが。

高瀬 足しますね。今回は歌を取ったあとも音を足していっています。Aメロのわんわんと鳴っているところもそうだし、サビでもシンセを足していますね。歌入れしてからわかる部分もあるし、足りないと思ったところは最後まで足そうというのはあります。

――逆に言うとレコーディングのときのトラックは比較的シンプルだということも聞きますけど……。

高瀬 うん、ふふふ。まあ間に合ってないというのもあるんだけどね(笑)。でも「とりあえずここまで」っていうものでレコーディングしてみて、そのあと音を足して完成させるとまた感動があるんですよ。「こんなになったんだ!」っていう快感も正直あります(笑)。

――なるほど(笑)。ちなみに今回のレコーディングは札幌のI’veのスタジオではないんですよね。そこも珍しいかなと。

高瀬 珍しいっていうか、I’veのスタジオがボロいですから(笑)。最近の歌録りは別のスタジオで録るようにしていますね。今回はエイベックスさんが手配したスタジオでやりました。

――「Break the Blue!!」は、いわゆる高瀬さんらしくI’veらしいデジタル・ビートが印象的な疾走感溢れる楽曲になりました。それをRun Girls, Run!というフレッシュなチームが歌うというのも新鮮ですね。

高瀬 そうなんですよ、彼女たち若いですからね。とにかく楽しかったです。面白かった。三者三様でそれぞれ違っていて。

――レコーディングはメンバーそれぞれ順番に録っていったんですよね。

高瀬 最初は森嶋(優花)さんから始まって、厚木(那奈美)さん、林(鼓子)さんという順番かな。森嶋さんも元気よくハキハキしていてすごくよかったし、厚木さんはとにかくかわいいっていう感じですよね。あと林さんが驚いたのが、まだ16歳なんですよね。でも大人っぽくて。

NAMI  歌い方も味がありますよね。

高瀬 そうそう、声に細かいビブラートがかかっていて。

――そうした3人をまとめすぎないというか、特にサビではそれぞれの個性を出してユニゾンも輪郭を出しているように聴こえました。

高瀬 そこは難しいところでもあります。例えば3人とも平均的に並べるやり方もあって、それだとどうやっても合うじゃないですか。でも歌い方やビブラートも違うし、それをちゃんと聴かせるとなるとそんなに簡単にはいかないですよね。

――3人を押し並べて聴かせるというよりかは、それぞれの個性も見せながらそれも楽しめるというほうを今回は選んだと。

高瀬 そうそう。どっちをとるかという話ですよね。

――さて、そうしたOPテーマに対して、NAMIさんが手がけたEDテーマ「Colorful☆wing」についても伺います。今回EDテーマを作るにあたって、高瀬さんの楽曲というのは参考にされましたか?

NAMI  あ、そこはまったく気にしていなかったです(笑)。それよりもまず制作サイドの方から「戦闘機で戦っているアニマ3人の日常感を出してください」という発注ありきでした。私もまずサビから浮かんだんですけど、サビで3人が手を振っているようなイメージで書こうというところから始めました。

――まさにそのサビがキュートなダンス・ナンバーに仕上がりましたね。

NAMI  ありがとうございます。ただかわいさといってもI’veがやっていた電波ソングっぽいキュンキュンさではなくて、まずは戦闘機でアニマちゃん3人の日常感を重きにおいて、みんなで仲良く歌っているイメージで作りました。

――トラックは今っぽくもあり、やはりI’veらしい音色も見受けられますね。そこはDNAが受け継がれているのかなと。

NAMI  普段作っているときは「I’veっぽくしなきゃ」というのはそこまで考えてないんですね。ただ高瀬さんやC.G mixさん、あと中沢(伴行)さんや井内(舞子)さんの曲を聴いて、「この曲はどういうふうに展開しているのかな」って研究はしています。コード進行ひとつにしてもそうだし、そういうことは今も勉強しますね。

――森嶋(グリペン役)さん、大和田仁美(イーグル役)さん、井澤詩織(ファントム役)さんとのレコーディングはいかがでしたか?

NAMI キャラクターとしては声の感じは出来上がっていたんですけど、例えばファントムはクールだけど曲調はキュートなんですよね。今回(小野勝巳)監督もレコーディングに来てくださいましたが、そこで役と曲のイメージをすり合わせる感じで作っていったように思います。

――あとNAMIさんは『ガーリー・エアフォース』の挿入歌「awake from the deep」も手がけています。

高瀬 そうですね。今回の作詞を担当しているRINAが歌っています。全部英語詞なんですけど、かっこいいですよ。

NAMI  挿入歌なのでコンテをもとに書かせていただきました。盛り上がるシーンだったので、そこは勢いで書きました。

――EDテーマに挿入歌にと、NAMIさんがアニメの楽曲を手がけるのは初になりますが、これからさまざまな作品でNAMIさんの名前がクレジットされることも増えていきそうですね。

高瀬 そうですね。でもまだまだ改善しないといけないところはありますよ。

NAMI  汗が……(笑)。

高瀬 サビとかお客さんを掴むメロディというところがまだまだ。アレンジはいいんですよね。

――なるほど。

高瀬 やっぱりサビって聴いている人の心をいちばんに掴むところですから、メロでもアレンジでもそこを真っ先に掴みにかからないといけないですよね。そういうものすべて満足のいく1曲は俺もまだ作れていないから。まあそういうところだよね。

NAMI  はい!勉強になります!高瀬さんは普段からいろいろ教えていただくことはありますけど、それも示唆してくださるという感じなんですよね。具体的にこうしなさいという教え方は一切されなくて、「これってどういうイメージでやってる? じゃあこういう方向性を向けたらいいんじゃない?」ってアドバイスをいただけるので、自分はすごく成長できる環境にあるんだなっていつも思いますね。

――まさに高瀬さんの好きなジェダイとパダワンの関係のような(笑)。

高瀬 そうそう(笑)。

――NAMIさんのご活躍はもちろんですが、今年はさらにI’veの楽曲が聴ける場が増えてほしいと思います。

高瀬 そうなるとうれしいですね、I’veとしても。今年はちゃんとリリースを決めて、その計画をもとに出したいと思います(笑)。

――そこは書いていいですか?(笑)。

高瀬 よろしくお願いします(笑)。

NAMI  私もこうした機会がまたいただけるならどんどんやりたいですね。

高瀬 本当にどんどんやってくれるから頼もしいですよね。曲を作るのも早いですし。

NAMI  そこにクオリティが伴わないと……って言われる前に自分で言いますけど(笑)。でも数を伴わないと大先輩方には追いつけないので、そこはもっと頑張っていきたいと思います!

Interview & Text By 澄川龍一


●リリース情報
「Break the Blue!!」 Run Girls, Run!
発売中

【CD+Blu-ray】
価格:2,268円(税込)

【CD】
価格:1,296円(税込)

<CD>
1.Break the Blue!!
作詞:RINA 作曲 / 編曲:高瀬一矢
2.never-ending!!
作詞・作曲:宮崎まゆ (SUPA LOVE) / 編曲:賀佐泰洋 (SUPA LOVE)
3.Break the Blue!!(instrumental)
4.never-ending!!(instrumental)

<Blu-ray>
『Break the Blue!!』 Music Video

EDテーマ
「Colorful☆Wing」
グリペン(CV.森嶋優花)、イーグル(CV.大和田仁美)、ファントム(CV.井澤詩織)
発売中

【CD】
価格:1,296円(税込)

<CD>
1.Colorful☆Wing
作詞:RINA 作曲 / 編曲:NAMI
2.Daisy*impulse
3.Colorful☆Wing(instrumental)
4,Daisy*impulse (instrumental)

©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

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