さユりワンマンツアー「レイメイのすゝめ」の初日、Zepp Tokyo公演レポート

さユりのワンマンツアー「レイメイのすゝめ」の初日、Zepp Tokyo公演が10月19日に開催。約1年ぶりとなるワンマンライブで彼女は、“レイメイ(黎明/明け方、夜明け)”という言葉に象徴される、この先の希望に繋がるようなステージを体現してみせた。このツアータイトルの由来は、MY FIRST STORYとのコラボ・シングル「レイメイ」(12月5日リリース/TVアニメ『ゴールデンカムイ』第二期OPテーマ)。この言葉自体が、いまの(そして、これからの)さユりにとって大きな意味を持っているのは明らかだ。

開演時間の30分前に会場に入ると、既にフロアはファンで埋め尽くされていた。以前に比べると女性の観客が増えた印象があり、“約1年ぶりのワンマンで、どんなライブを見せてくれるのだろう?”という期待感が伝わってきた。
19時を少し過ぎた頃、ついにライブがスタート。フロアの照明が落とされ、マスクをかぶったバンドメンバーが姿を現すと、大きな拍手が巻き起こる。そして、ステージ前方の透過スクリーンの向こうには、さユりの姿が。オープニングナンバーは、アコギの弾き語りによる「夜明けの詩」。力強いギターのストロークから放たれる凛とした音とともに、切なさと悲しさをたたえたメロディ、何ひとつうまくいかない現実とぶつかりながら、それでも夜明けの光を探し続ける少女の姿を映し出す歌詞が響き渡り、会場は一気にさユりの音楽世界によって染め上げられる。2曲目は弾き語りから始まり、そしてバンド演奏に突入するという展開で、「来世で会おう」を披露。さらに「さユりです。どうぞよろしく」という短い挨拶を挟み、スクリーンにリリックと映像を映し出しながら演奏された「アノニマス」へ。じっくりと歌に耳を傾けたり、サビのリズムに合わせて手を挙げたり、激しく身体を揺らしたり、観客の反応が“人それぞれ”なのも興味深い。無理に一体感を演出するのではなく、音源を聴くときと同じように、さユりとオーディエンスが“1対1”で向き合っているのだ。

「改めましてこんばんは、さユりです。『レイメイのすゝめ』というツアー、ワンマンライブです。今日は来てくれてありがとう」「夜明けを自分で選ぼうと思って、こんなタイトルのライブをしようと思いました。バンドメンバーと一緒に5人で演奏していきます。2018年10月19日、Zepp Tokyo、『レイメイのすゝめ』、どうぞよろしくお願いします」
このツアーに対する思いを率直に語った後、冬の始まりの風景と行き場所を見失いつつある“僕”の心象が重なり合うアッパーチューン「プルースト」、“ベランダから見える世界”をテーマにしたミディアムナンバー「いくつもの絵画」が披露される。ステージの奥に設置されたスクリーン、前方の透過スクリーンには立体的な映像(実写、アニメ、グラフィック)が映され、楽曲の世界観を増幅させていく。“歌と映像がシンクロした2.5次元ワンマンライブツアー”というのが今回のツアーのコンセプトだが、そのクオリティは驚くほどに高い。特に「フラレガイガール」における“宇宙”“星”をモチーフにしたステージング、そして、「月と花束」の“月”“深い森”を想起させる映像とレーザーを駆使した空間演出には、本気で圧倒されてしまった。
強調しておきたいのは、このライブの軸になっているのは映像や演出ではなく、あくまでも彼女自身の存在感だということだ。ステージ上での佇まい、シャープで力強いギター、そして、強い意志と深い思いを同時に放つボーカル。1曲目の「夜明けの詩」が始まった瞬間からさユりは、バンドメンバーを牽引し、会場のムードを完全にコントロールしながら、すべての楽曲を的確に表現していたのだ。2015年のメジャーデビューから3年。さユりはライブ・パフォーマーとして確実に進化を続けている。今年6月の「さユり2マンツアー 月と越境」(ゲストはクリープハイプ、ヒトリエ、夜の本気ダンス、PassCode、大森靖子、感覚ピエロ、BRADIO)が彼女に大きな刺激を与えであろうことも、ここに記しておきたい。

ライブ中盤でもっとも強いインパクトを感じたのは、MY FIRST STORYとのコラボによる新曲「レイメイ」だった。
「“黎明”は“夜明け”“新しいことの始まり”とか、そういう意味のある言葉なんだけど……私たちは毎日、どこかに向かって歩いていて。未知のことがあるから、迷ったり、苦しくなったり、悲しくなったり、私たちはもがくんだと思う。不器用でも、そんな日々を愛せたらいいなって。喜びだけじゃなくて、悲しみも。ワクワクするような朝と不安になる夜を繰り返しながら、勇ましく進んでいけたらいいなって、そんな思いを込めて、この歌をMY FIRST STORYと一緒に作りました」
そんな言葉とともに放たれた「レイメイ」は、ラウドロック系のバンドサウンドと圧倒的な解放感に溢れたメロディがひとつになったナンバー。新しい夜明けを求める気持ちを描いたこの曲は、さユりのキャリアのなかでももっともポジティブなパワーに満ちている。言うまでもなく、今後のライブでも大きな役割を果たす楽曲になるだろう。

さユりの鋭利なエレクトリックギターを軸にしたロックナンバー「光と闇」からライブは後半戦へ。“太陽系を抜け出して平行線で交わろう”というフレーズが聴こえてきた瞬間にゾクッとするような興奮が広がった「平行線」、会場全体にナチュラルな一体感が生まれた「るーららるーらーるららるーらー」。そして、記念すべきメジャーデビューシングルであり、さユりにとって重要なモチーフである“欠けている月”を叙情的に描き出した「ミカヅキ」へ。「私が私であるがゆえに生まれるもの、みんながみんなであるがゆえに降り注ぐもの。それらに間違いなんてひとつもないじゃん、と思いました。足りなくても欠けてても、そんな私だから作れる今日がある、光があると信じたくて、こんな曲を作りました」という言葉も強く心に残った。
アコギのボディを叩く音がまるで鼓動のように響き、歌へと繋がる「birthday song」、ドラマティックな旋律と“この時代でこの場所で 何ができるだろう”というフレーズがひとつになった「十億年」でライブは終了。アンコールはなく、フロアの照明が付けられた後も、拍手が長い間止まることはなかった。

この日のMCのなかで「いままでの私にとって“夜明け”は、手を伸ばした、もうちょっと先にあるものだったの。でも、今回『レイメイ』という曲を作って、『レイメイのすゝめ』というツアータイトルを決めたとき、夜明けという言葉は、いま私がいる場所、あるいは自分の中にあるものと思いました」と語ったさユり。自ら“夜明け”を選んだ彼女は、この先も様々な経験を重ね、様々な感情を抱えながら、それを音楽に変換していくことになるだろう。そして何よりも、彼女が自分の意志で“レイメイ”を掴み取り、前向きな表現を刻み始めたことこそが、今回のツアーのもっとも大きな収穫だったのだと思う。

Text By 森 朋之

さユりワンマンツアー“レイメイのすゝめ”
2018年10月19日(金)Zepp Tokyo
<セットリスト>
1.夜明けの詩
2.来世で会おう
3.アノニマス
4.プルースト
5.いくつもの絵画
6.フラレガイガール
7.オッドアイ
8.月と花束
9.レイメイ さユり×MY FIRST STORY コラボシングル 2018年12月5日発売
10.よだかの詩(新曲)
11.光と闇
12.平行線
13.るーららるーらーるららるーらー
14.ミカヅキ
15.birthday song
16.十億年

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