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INTERVIEW

2018.11.06

「カゲロウプロジェクト」、約5年半ぶりに再始動!!じん『メカクシティリロード』リリースインタビュー

音楽、小説、コミック、アニメなど幅広いメディアで展開され、2010年代を象徴するコンテンツとなった“じん”の「カゲロウプロジェクト」が約5年半ぶりに再始動。3rdアルバム『メカクシティリロード』について、じん自身に語ってもらった。

「カゲロウプロジェクト」は有機的で生々しい作品

――「カゲロウプロジェクト」のオリジナル作品として約5年半ぶりとなる3rdアルバム『メカクシティリロード』がリリースされます。「カゲプロ」の再スタートはいつ頃から考えていたんですか?

じん いつなんでしょうね?(笑)。「カゲロウプロジェクト」には“これが正解”というものはなくて、そのときにいちばん表現したいことをカタチにしながら進んできたんですね。ただ、2ndアルバム『メカクシティレコーズ』を作った時点で「音楽で表現したいことはやりきった」という感覚があって。そのあとは小説を書かせてもらったり、マンガの原作を手がけることが増えたのですが、そのうちに2ndアルバムで語りきれていないことが見えてきて。当時の自分の目では追いきれなかったことだったり、キャラクターに対する理解が深まって、「このシーンをこういう曲で表現したい」という気持ちが出てきたんです。

――それが今回の『メカクシティリロード』に繋がった、と。

じん そうですね。1stアルバム(『メカクシティデイズ』)が1期、2ndアルバムが2期だとすると、3rdアルバムはOVAとか劇場版みたいな感じかなと。もちろん「カゲロウプロジェクト」のストーリーに沿った重要な作品だし、説得力のあるアルバムを作れたと思っています。制作環境が変わったこともすごく大きいですね。2ndアルバムのリリース以降、モノ作りが停滞して、心が荒んでいた時期もあったんです。「自分が音楽で成し遂げられるものは何もない」と思い込んでしまって、1日中、ずっと壁を見て過ごしたり。

――その時期はどうやって乗り越えたんですか?

じん 今回のアルバムにも参加してくれているマンガ家の沙雪先生(今回のアルバム『メカクシティリロード』の初回限定盤Aには、じんがストーリーを書き下ろし、沙雪が作画を担当したオリジナルマンガを封入)が「一緒に何かやりませんか?」と声を掛けてくれたことですね。「あなたが作ってきたものに興味がある」と言ってくださったのがすごくうれしくて。

――「NIRIVANA -ニルヴァーナ-」(じん×沙雪のユニット“ZOWLS”によるコミック)を制作することで、じんさん自身も荒れた時期を脱したと。

じん そうですね。それと前後して、音楽作品の制作に協力してくれる方々が集まってくれて。元々「カゲロウプロジェクト」は有機的で生々しい作品だと思っているんです。「こういう物語を描きたい」「このキャラクターを通して、こういうメッセージを伝えたい」という気持ちでやってきたし、お金を出して作品を聴いてくれる子供たちに対して、胸を張って差し出せるものでないといけない。計略的に「この作品にはこういう効果があって、これだけ儲かります」みたいなものではまったくないし、少しでもウソが混じったものを出してしまったら、地獄に落ちるって思っているので。沙雪さんとの出会い、今のスタッフの皆さんとの関わりのなかで、「これだったら良いものが出来る」という確信が得られたのはすごく大きいですね。

「人に聴いてもらわらないと音楽は成立しない」ということを改めて実感した

――なるほど。217年12月にYouTubeとニコニコ動画で「失想ワアド」を発表。ユーザーの皆さんからの反応はどうでしたか?

じん 「久々に『カゲロウプロジェクト』の曲がきた!」「受け取りました」という感じがすごくあって、純粋にうれしかったですね。「人に聴いてもらわないと音楽は成立しない」ということを改めて実感したし、音楽に対する熱が強まったというか、「もっとやりたい」と思えて。「失想ワアド」は小説の7巻で描いたエピソードが元になっていて、それを音楽で表現したんですね。そういう意味では、小説を書いていた間も、ずっと曲作りをやっていたのかもしれないですね。

――じんさん自身が生み出した物語なので、当然、その世界観を深く掘り下げながら楽曲に結び付けられるというか。

じん そうですね。アニメ作品などの楽曲を作らせてもらうこともありますが、そのアニメの内容は理解できても、原作者の方がどうしてそれを作ったのかはわからないじゃないですか。でも、「カゲロウプロジェクト」はすべて自分で作ってるので、もっと深いところからテーマを引っ張ってこられるんです。今回のアルバムに入っている「アディショナルメモリー」もそう。この曲で描かれている女の子のキャラクターは本来優しい子なんですが、実はヒリヒリした部分を持っていて。それをようやく音楽として表現できたし、キャラクターが抱えている切実な思いを感じてほしいなと思います。

――制作の段階では、ファンの反応は気にしてない?

じん そうですね。「みんなを喜ばせたい」という意識が強くなると、どうしても迎合してしまう。そうじゃなくて、作品を通して「こっちだよ」と引っ張っていかないとダメだと思うんです。ありがたいことに、ファンの皆さんも「じんはなぜ、こういう曲を作ったのか」ということに気づいてくれるんですよ。そのぶん、僕が迷っているときは「迷ってるんだな」とシビアに見てくれるだろうなと。

――「カゲロウプロジェクト」は、少年少女をテーマにしたジュブナイル的な要素が色濃い作品だと思います。プロジェクトがスタートして8年になりますが、思春期を描くことはじんさんにとって、今も変わらない魅力があるんでしょうか?

じん はい。むしろ以前よりも色めいている感覚がありますね。「カゲロウプロジェクト」を始めたのは19歳のときだったんですけど、あれから8年経って、子供だった時代に対する憧れはさらに強くなっているんです。それを描く技術も少しずつ手に入っているだろうし、表現すべきことはまだまだあるなと。特に「リマインドブルー」は少年時代への憧憬がすごく出ている曲なんですよね。題材として心地いいから“夏”とか“ジュブナイル”というテーマを選んでいるわけではなくて、僕の中では「これしかない」という思いで表現していて。作家性というよりも、本気で自己投影しているというのかな。やっぱり、いちばんビビッドな時代だったと思うんですよ。友達と川で遊んだり、カードゲームしたり、親戚の家に遊びに行ったり。すべてがものすごく大きなイベントだったので。今後もそういう世界は描いていきたいですね。

――「カゲロウプロジェクト」はこの先も進んでいきそうですね。

じん そうですね。ゴールというか「これを描けたら終わりにしよう」というビジョンはあるんですが、そこに向かって進んでいると、意外なところに沼地があったり(笑)、思いもよらないことが起きたりするんですよ。少しずつゴールに近づいている感覚もあるし、ライフワークというか、今は「もっとやりたい」と思っています。ファンの皆さんも僕と同じように大人になっていますが、中学生くらいの人もずっと聴いてくれたり、読んでくれたりしていて。学校の図書館にも「カゲロウプロジェクト」の小説が置かれていて、そこから音楽を聴いてくれる人もいるみたいで。11月に図書館でライブ(11月11日に宮城・多賀城市立図書館で行われる「じん Book Forest MUSIC Tour ~図書館LIVE~ in 多賀城市立図書館」)をやるんですけど、それも楽しみですね。

――音楽という表現に対するモチベーションも完全に戻ってきた?

じん はい。自分のメロディが大好きなんですよ、僕は(笑)。以前からそういう感覚はあったんですけど、それがさらに強くなってきて。もっと良いメロディが自分の中にあると思っているし、それを聴いてほしいんですよね。その気持ちが曲を作る動機に繋がっているし、どんどん作っていきたいと思います。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之


●リリース情報
『メカクシティリロード』
11月7日発売

【初回限定盤A/CD+漫画】

品番:TYCT-69133
価格:¥2,980+税

【初回限定盤B/2CD】

品番:TYCT-69134/5
価格:¥2,980

【通常盤】

品番:TYCT-69136
価格:¥2,000+税

<CD>
1. エバーユースロードショー(Instrumental)
2. イマジナリーリロード
3. 失想ワアド
4. マイファニーウィークエンド
5. アディショナルメモリー
6. ロストデイアワー
7. リマインドブルー
8. 忘れてしまった夏の終わりに
9. グッバイサマーウォーズ(Instrumental)

<特典CD>
じんによる弾き語りアコースティックバージョンの4曲を収録
1. 失想ワアド(Acoustic)
2. ロストデイアワー(Acoustic)
3. リマインドブルー(Acoustic)
4. 忘れてしまった夏の終わりに(Acoustic)

(C)UNIVERSAL MUSIC LLC / Worded Notes, Inc.

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