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INTERVIEW

2018.09.26

TVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』スタッフ座談会【前編】

TVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』スタッフ座談会【前編】

“ミュージカル×アニメーションで紡ぐ二層展開式少女歌劇”をコンセプトに、様々なプロジェクトを展開している『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』。その大きな柱のひとつとなるTVアニメが間もなく放送終了を迎えようとしている。そこで「リスアニ!WEB」では、ほぼ全話にわたって登場し視聴者に強烈な印象を残した“レヴュー曲”の秘密に迫るスタッフ座談会を敢行。ポニーキャニオン・野島鉄平音楽プロデューサー&アップドリーム・山田公平音楽プロデューサー&作詞家・中村彼方の音楽制作チームによる鼎談で、前編となる今回は前半6話分のレヴュー曲について振り返ってもらった。

――この座談会ではレヴュー曲の作り方や各曲の聴きどころについて伺っていきたいのですが、まずは第1話の「世界を灰にするまで」からお願いできますでしょうか?

野島鉄平 そうですね。まず、レヴュー曲の作り方というのが、ある程度の流れがありまして。最初に古川(知宏)監督から言葉でアイデアをいただいて、それを僕が受けて山田さんに楽曲を発注し、楽曲が出来上がったところで僕がまた監督に確認して、決まったところで彼方さんが作詞に入るという形です。ただ、1話のレヴュー曲に関しては、とりあえず決めていたのが「フィルムスコアリングで行きたい」という話だけで、まだ作り方としては雲を掴むような状態でした。実はこの「世界を灰にするまで」という曲自体は、以前にユニット曲を限定シングル「プリンシパル -Fancy You-」のバラードとして候補で残っていた曲です。監督にも聴いてもらったうえで使うことが決まり、作曲をされた石井(健太郎)さんが大阪に住んでいる方なので、FaceTimeで繋げながら打ち合わせをしました。

山田公平 その場でパソコンを立ち上げてもらって、ディスカッションしましたね。

野島 僕が映像ソフト上にコンテを張って、そのコンテの映像に対して「目の開き、曲スタート」など曲のきっかけをメモしたものをお見せしてました。

山田 テキストでキュー出しをしてくれる。

野島 「この曲はこういうアレンジで」「ここは(神楽)ひかりが歌ってください」というテキストを入れた映像データを作家さんにお送りして、それをもとに作家さんが曲を作ってくれるというのが、レヴュー曲を作るうえでの最初の段階ですね。楽曲ラフができてからは山田さんのお仕事がいっぱい待っていて。いわゆる生オケ録りとか。

山田 セリフとか絵の動きに合わせた楽器編成の熱量変化をどうするかという調整を作家と詰めて、それを最終的に皆さんに確認してもらって、OKとなったら楽器のレコーディングの段階に入るという。ほぼ毎話、それを繰り返すという作り方をしていました。

野島 ほかに気をつけたのが、監督のほうで「歌い出しと歌い終わりはなるべく口パクを合わせたい」という要望があったので、コンテに対して口パクまで合うフィルムスコアリングというのは意識して作りました。もちろん音楽に絵を合わせていただく作業もしてもらいました。あとは作詞ですが、1話はどうでしたか?

中村彼方 なるべく舞台装置の動きに合わせた歌詞と、ふたりの心情に合わせた歌詞というのを、ものすごく意識しました。“流星を象った矢が 追いかけて行くわ”という歌詞があるんですけど、そこがまさに(星見)純那の放った矢が流星の中を縫っていく感じになっていて、そういうわかりやすさを1話は特に意識しましたね。

――ここでレヴュー曲の作り方に大体の流れができて、そのまま第2話で流れる「The Star Knows」の制作に入れたという感じでしたか?

野島 2話はまた、違う苦労がありまして……。これは、元々舞台で使われた楽曲をアレンジしたものなんです。やはり“二層展開式”と言っているからには、舞台の曲をアニメでも流したら舞台を観ている人が楽しんでくれるだろうというところもあって、1曲は舞台曲を入れようという話を僕のほうから提案させていただきました。なかでも2話が心情的なところも合うかなと思って、この曲をいれさせていただいたんですが、既に完パケされた楽曲があるものを再構築するというのは大変でしたね。

山田 ただのリアレンジじゃなくて、絵に合わせて尺を変えたりとか、音の厚みの波とかも変えたりしなきゃいけなかったので、リテイクもすごく多かった。元の印象から脱却するのに、ちょっと時間がかかってしまいましたね。それは作家さんというよりも、我々制作側の問題だったんですけど……。

野島 僕らも迷いがあって、作家さんに発注しながらも「うーん……」って悩んじゃったんですよ。で、これは別の視点で見ないとバランスが悪くなってしまうだけになるなという話を山田さんとして、急きょアレンジで3名の方に入っていただきました。

山田 小高(光太郎)君と、藤井(亮太)君と、谷(ナオキ)君ですね。

野島 安定感抜群の3人に入っていただいて、頑張って仕上げていただくという。

中村 作詞も同じように元の曲に引っ張られちゃって、フラットな立ち位置で書くというのが大変でした。で、特に後半の(愛城)華恋と純那のやりとりは、シナリオ上のセリフを汲んで同じようなことを言っていたりします。“触れられない未来かは”というところは(天堂)真矢と(西條)クロディーヌのカットを受けて「いつだって届かなかった。前を走り続けるあの人たちには」という言葉を純那自身が否定しているという部分もあったりして。どちらかというと1話は舞台装置に合わせて歌詞を書いたんですけど、2話はセリフに合わせて、それを汲む感じで書きました。

――セリフと歌詞で流れが繋がるように書いたということですか?

中村 歌にセリフが入るとさらにつじつまが合うように作っています。

野島 なるべく曲だけで聴いても整合性が取れるようにはやってもらっていますけど……大変ですよね?

中村 手間はかかります(笑)。そのぶん、出来上がった曲はものすごくかわいいですね。

――第3話の「驕りと誇り」も苦労されましたか?

野島 3話は副監督の小出(卓史)さんがコンテを描かれていて「ここに絶対これ当ててください!」とか、参考楽曲を張った映像を見せてくれていたんですよ。「こうしたい」という意図が明確にあって、逆に3話はすんなりできました(笑)。

山田 実際、上がってきたデモも特に修正もなく。

野島 小出さんがムービーを作って、それに対して藤澤(慶昌)さんが楽曲ラフを作ってくれたんですけど、最終的なカッティング映像で微妙に尺が変わって、そこは藤澤さんがやや苦労したとは言っていましたが……。

山田 音楽的には一発OKでしたけどね。

野島 あとは真矢役の富田(麻帆)さんの歌唱力をとにかく生かしたくて。1~3話で初期レヴュー曲の三部作が完成すると僕は思っていたんですけど、その3曲目を富田さんに歌っていただくというのがよかったかなと思います。

――中村さんには「リスアニ!」本誌(Vol.34)でもこの曲について語っていただきました。

中村 でも、今この3人の楽曲制作チームで深い話をしているので、さらに深いことを思い出しました。野島さんがおっしゃったように、1~3話でひとつのまとまりになって第1章みたいな位置づけになるんですけど、1話でやった舞台装置との連動、2話でのセリフとの連動というのを合わせたのが、この「驕りと誇り」だと思います。“登ってきなさい 意地があるなら”というところで、華恋が真矢に向かって登っていっていたりとか、冒頭でのふたりの応酬だったりとか。あと、思っていることと歌が一緒になる瞬間が、真矢の“より高く より輝く”という1フレーズだと思っていて、これをセリフにするか歌にするか迷っているというのは、小出さんがたぶん言われたんですよね。「せっかくなので、そこは歌にさせてください」と言って、藤澤さんにメロディをつけていただいて。

野島 そこだけ詞先みたいな。あとはセリフっぽいところと感情と、まぜこぜで歌にしちゃおうかという話もしていましたね。レヴューというのは彼女たちが演じているものでもあるので、“女神の呼び声 空の玉座”というところは「誇りのレヴュー」というレヴュー曲がもともとあるかのような歌詞にしてくださいと。

中村 これは自分的なこだわりなんですけど、「その眼差し」と言っているあとでみんなのカットが入るんですよ。(西條)クロディーヌの眼差しだとか。かなりこだわっているので、気づいていただけたらうれしいなって(笑)。

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