小松未可子ニュー・アルバム『Personal Terminal』リリース記念 小松未可子×黒須克彦(Q-MHz)スペシャル対談

2016年よりプロデュースチームのQ-MHzとタッグを組み、音楽活動を活発化させている声優の小松未可子が、ニュー・アルバム『Personal Terminal』を7月11日にリリースする。「Maybe the next waltz」「Swing heart direction」という新機軸を打ち出したシングル曲を含む本作は、もちろん前作『Blooming Maps』に引き続きQ-MHzの面々が完全バックアップ。各曲で描かれる様々な女性像をとおして、みかこしのパーソナルな部分にも触れることができる、凛とした風合いが魅力の作品となっている。

今回は、Q-MHzのメンバーである黒須克彦と小松の対談を企画。ツアーのバンドマスターとしても彼女を支える黒須から見た、小松のアーティストとしての成長や課題、ニュー・アルバムで踏み込むことができたあらたな表現などについて、たっぷりと語り合ってもらった。

――黒須さんは小松さんのプロジェクトにどのように関わってるのですか?

黒須克彦 音源の制作に関しては、Q-MHzの1/4として関わらせていただいてます。ライブではバックバンドのメンバーかつバンマスという形でサポートしていますね。

小松未可子 ライブでは黒須さんに頼りきっています(笑)。本当は自分がみんなを引っ張っていかなくてはならないと思うのですが、バンドの皆さんの熱量とエネルギーがとても高いので、最初は逆に私が引っ張っていただくような状況でした。もちろん私もライブの経験はありましたが、今の体制になって自分のなかでライブの景色がガラッと変わったんです。バンドの皆さんは「ライブの空間」という年に数回しかない特別な時間を一緒に作り上げてくれるチームだと思っていて、そのなかでも黒須さんはバンマスとしてすごく支えてくださっています。

――ライブでの黒須さんはどんな感じなんですか?

小松 黒須さんはライブのときと素のときのギャップがすごいんですよ。特に今年の春に行った“LIVE TOUR「小松の夜のパレード 2018春」”では、普段からは想像できないような黒須さんを間近で見ることができました(笑)。

黒須 テンションが上がってしまって、気付いたらベースをお客さんに渡しちゃってたんです(笑)。

――ハハハ(笑)。気分が高まってベースを手放してしまうことはよくあるんですか?

黒須 よくはないですね(笑)。一応会場の作りとか、お客さんの様子を見たうえで、「あっ、今日は行けるな」って考えながらやってるんですよ(笑)。バンマスとして冷静な部分も常に持っているつもりなので。

小松 そういう場面を経験することで、ライブというのは自分の奥底に秘めたものが出てくる空間と知ることができました。私は今まで内面が表出してくることに対して少し恥ずかしさを感じる一面もあったのですが、今は少しずつ改善されてきているように思います。

――黒須さんは様々なアーティストのライブをサポートをされてますが、小松さんのライブのバンマスとして特別に心がけてることはありますか?

黒須 バックバンドのメンバーはバンドマン寄りというか、元々そういうコンセプトで集めたんですが、それはライブパフォーマンスや見せ方として、ひとつのバンドのように表現できればと考えてのことなんですね。なので、僕はバンマスとは言えども、あまり仕切る感じではなくて、実際はメンバーみんなで1曲1曲を作っていけたらと思ってて。だからリハ中のコミュニケーションも大事だし、それらを含めたバンド的な空気感をステージに持っていくようにしています。特に今回のツアーは小さめの会場を回ったので、ステージにいるみんなが一体となって表現できればと考えてて。まあ、バンマスとは呼ばれてるけど、そんなには……。

小松 いえいえ!(笑)。そんなことはないですよ。

――小松さんをボーカルとするひとつのバンドみたいなイメージでしょうか?

黒須 そこは踏み込み過ぎないようにしていて。当然ですがお客さんは小松さんを観に来るわけですし、対等な目線でいるのは違う気がするんですよ。そこのさじ加減はつねに意識していますね。

小松 でも、バンドメンバーの皆さんの人気もすごいんですよ。会場で「ローリン(黒須のニックネーム)!」って歓声もあがったりして。音楽を作っているバンドも含めて観に来てくださってるお客さんが多いのはうれしいです。

――黒須さんは小松さんのライブを2年近くサポートされてますが、アーティストとして成長を感じる部分はありますか?

黒須 今のライブは曲の構成にしても、MCの位置や全体の流れにしても、バンド寄りな作り方だと思うんですね。それは小松さんにとって今まであまり体験したことのないものだったと思うし、うまくハマればと思いつつも、最初はどういうふうになっていくか気になっていたんですよ。もちろん始めのうちは「ここはどうしたらいいんだろう?」という場面もありましたけど、回数を重ねていくうちに良い方向に向かってて。最近はパフォーマンスも熱量をストレートに伝えようとする部分が強くなったし、元々持っていたクールな部分と、我々とやり始めてあらたに吹き込まれた部分が混ざり合って、よりたくましくなったんじゃないかな?

小松 たしかに、私はそれまでステージ上では自分を作らなくてはいけない意識があって、素は見せない感じでした。でも、今は「もっと無防備でいいんだ!」と感じています。それはライブを経て、お客さんの姿はもちろん、バンドの皆さんが自由で楽しそうにしてるところを見て、「こんなに無防備でいいんだ」と思ったところが大きいように思います。

黒須 それはやっぱり、ライブハウスという狭い空間でバンドと同じステージに立ったことで、自然とそう思うようになったんだろうね。例えばギターの新井(弘毅)くんのステージングを間近で見て感じるというものもあったりすると思うし。

――バンマスがベースをお客さんに渡しちゃうぐらいですからね(笑)。

小松 アハハ(笑)。私もそういう皆さんのステージングを見て「負けないぞ!」と思うんですよ。バンドの誰かが目立つパフォーマンスをしていると、お客さんはそちらに目が行くのですが、私は自分で口に出して「私を見て!」と言えないタイプながらも「いやいやいや!私が主役主役!」みたいな意識であいだに割り込んだりしています(笑)。でも、基本的にはバンドメンバーも含めてみんなが主役という気持ちを持ちながらステージに立っています。

黒須 ちょっと聞いてみたいことがあるんだけど、このあいだのライブツアー(“LIVE TOUR「小松の夜のパレード 2018春」”)は、いわゆる我々(Q-MHz)が制作する体制になってからの曲だけでセットリストを固めたじゃない?実際にやってみてどうだった?

小松 その前のツアー(「小松未可子TOUR 2017 “Blooming Maps”」)のときは、「このライブは一歩踏み込むともう逃げられないぞ!」と思うような、本当にジェットコースターみたいなライブだったので、まず「自分がついていけるのか?」という課題に挑む姿勢だったんです。今回は、Q-MHzさんの楽曲だけということでの気負いはなかったのですが、自分のなかでは挑戦という意識がありました。ツアーを終えて、「もうちょっといけたなあ」という気持ちはありつつも、完遂できたことですごく自信がつきました。

黒須 良かった(笑)。

小松 私も逆にライブのことで質問したいのですが、黒須さんのスイッチが入る瞬間はどこですか?

黒須 瞬間ねー。でもたしかにその瞬間はあるんだよ。お客さんを見て、というよりも、ステージの空気が上がったことを感じてスイッチが入ることが多いかもしれない。それは視覚だけじゃなくて耳からの場合もあって、ステージ上のグルーヴが上がってきたなと感じる瞬間があるんだよね。あとは単純にお客さんの熱量がガーッて上がったときかなあ。でも、演奏してる曲の曲調も多少は関係してて。ストレートに進む曲は一回テンションが上がったらそのままいけるからスイッチが入りやすいけれど、我々の曲はいきなり複雑な展開になる曲も多いからね(笑)。

小松 私はいちばん初め、ステージに上がるときにスイッチが入ってないとダメなんです。ライブ中もところどころにスイッチの入る場所があるんですけれど、今回のツアーであれば(1曲目の)「Tornado Voice」のイントロが流れた瞬間にバチン!ってスイッチが入って、ステージに上がるイメージがありました。

黒須 自分は、無理にスイッチを入れる必要もないかなと思ってて。本来なら自分でスイッチを入れるよりも自然に入るのがいちばんだからね。でも、たしかに自分でいちばん初めのスイッチを入れるぐらいはいいんじゃないかなと思う。

――さて、ここからは制作面のお話を聞かせてください。小松さんと黒須さんは、Q-MHzの1stアルバム『Q-MHz』(2016年)で初めてご一緒されたんですよね?

黒須 それまでも同じイベントに出演したりということはあったんですけれど、ちゃんとご挨拶したのはQ-MHzのアルバムの打ち合わせが最初でしたね。でも、Q-MHzが4人揃うと、僕は基本何もしゃべらなくなってしまうので(笑)。

小松 ほかの3人がしゃべり倒しますからね(笑)。皆さん勢いのある方なので、そのときも差し入れ合戦が始まって、「これ食べなさい!」と親戚の人みたいに親切にしていただきました(笑)。

――『Q-MHz』では「ふれてよ」「short hair EGOIST」の2曲で、小松さんがフィーチャリング・アーティストとして参加しています。黒須さんはこの2曲の制作に関わってますが、小松未可子というアーティストにどんなことを表現してもらおうと思ったのでしょうか?

黒須 あのアルバムは参加してくれたアーティスト(小松未可子、鈴木このみ、東山奈央、南條愛乃、LiSA)にそれぞれ2曲ずつ歌っていただいてるんですけれど、1曲は我々のイメージする皆さんの姿、もう1曲はイメージにない姿をテーマに作ったんです。小松さんには勝手ながらエレガントなイメージがあったので、「ふれてよ」はそのイメージに沿って凛とした雰囲気、逆に「short hair EGOIST」はそれと対極のハチャメチャで弾けた感じの曲にして。もちろん僕一人ではなくてQ-MHzの4人で決めたんですけどね。

小松 黒須さんは、そのレコーディング現場でディレクションしていただいたときのイメージが強くて。「ふれてよ」はしっとりした楽曲だったので、そのときに自分が今までやってきたレコーディングとは違う感覚やアプローチをたくさん引き出していただいたんです。黒須さんはQ-MHzの皆さんのなかでも、いちばんドッシリとされてる印象がありました。

黒須 そうしようとするつもりはなかったんだけど(笑)、ほかの3人がいるとしゃべる隙がないので。“長縄跳びに入りたいんだけど入るタイミングが掴めない子”みたいな感じですよ(笑)。

――おふたりは普段、どんなお話をしたりするのですか?

小松 皆さんとのグループLINEがあって、そこに私が「いま北海道にいます」とつぶやいたら「セイコーマートのおにぎりが美味しいよ」って教えてくれたり(笑)。意外なことをご存知だったりするんですよ。

黒須 興味のある話題にはすぐ食いつくんです(笑)。

小松 そういうところで黒須さんの意外な一面を知ることが多いですね。でも、そういう音楽とは関係ない日常の会話から生まれてくるものもあると思いますし。

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