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INTERVIEW

2018.05.11

10th Anniversary Best Album『Going my rail』リリース記念、鈴村健一インタビュー

10th Anniversary Best Album『Going my rail』リリース記念、鈴村健一インタビュー

アーティストデビュー10周年を記念して2枚組ベスト・アルバム『鈴村健一 10th Anniversary Best Album “Going my rail”』をリリースする鈴村健一。初めて自分の想いをメジャー・シーンという大海原に放った「INTENTION」から網羅した10年分の楽曲を、まるでライブのセットリストのような流れで聴かせる本作について話を聞いた。

――デビュー10周年のベスト・アルバム『鈴村健一 10th Anniversary Best Album “Going my rail”』が完成!こちらのアルバムは聴いているとまさに鈴村さんのライブを見ているような、躍動感と楽曲の並びになっていますね。

鈴村健一 よかった!そう言ってもらえるとうれしいです。まさにライブが見えるベストアルバムを、というのを狙って曲順も並べたので。

――ファンの皆さんもきっと、ライブでのいろいろな場面が思い出されるアルバムになっているように感じます。今回は2枚組でdisc1は「JOYFUL」、disc2は「NATURE」と銘打たれていますが、これって「JOYFUL」というライブと「NATURE」というライブを想像しながら作られたのか、それとも2枚を通して1本のライブを想像していらっしゃるんですか?

鈴村 これは悩むところです。でも僕のイメージとしては「JOYFUL」というライブと「NATURE」というライブのような気がしています。僕としてはそういうつもりで作ったんですけどね。

――たしかに。disc1の1曲目が「im my space」、disc2の1曲目が「INTENTION」。そのどちらも幕開け感があって、それぞれのラスト・ナンバーが「Go my rail」と「この世界の好きなところ」という新曲で、やはりライブのオーラス感もあって。そんな楽曲を並べられてみて、改めて10年という活動を振り返られるとどんな時間でしたか?

鈴村 わりとあっという間だったな、という感じかなぁ。でも一つひとつを振り返れば「いろいろなことがあったなぁ」とも思うんですけど。複雑な感じはするな。あっという間だったけど、でも得たものもいっぱいあって、10年やってきた甲斐があったなっていう感じはしていて。新曲を作ってみて改めて、10年やってきた今だからこそ書けた歌詞だなと思っています。作り直した楽曲たちも10年経ったから出来たようなこともいっぱいやれたと思うので。こうして並べてみると、あっという間だったけどいろんなことがあったし、いろいろと自分が成長させてもらえたんだなぁ、ということはちゃんと感じられるベストになったかなとは思います。

――10年前の楽曲たちを改めて歌い直したものもありますが、改めて10年前の音に触れた今、当時の事をどのように思い出されますか?

鈴村 今までもライブでやるたびに自分の楽曲は結構聴いているんですけど、これまでは「これ10年前の曲だもんな」って思いながら聴くことはなかったんです。でも今回はこうしてベストの中で並べるので「これは10年前の曲か!」という想いもあって、なんだか新鮮だったり、初々しかったりする部分がありました。このベストに入れた楽曲はライブでやってきた曲ばかりだから、ライブで育った部分もあって。あの時にしかできなかったこともたくさんあって、それはすごく今見てもいいなぁ、と思うんですけど、そのときにしか出来なかったことがこうして形になっているのは幸せなことだと思うし、だからこそこうして「New Vocal」ということで録り直すのはめちゃくちゃ緊張しましたね。

――大変でしたか?

鈴村 特に今回は「New Vocal」なので。リアレンジはまだ、今に寄せたアレンジにしているので、今の気持ちで歌えるんですけど、「New Vocal」はあの当時の楽曲に今の声を入れる、ということをやるので、それはそれは緊張しましたね。もっとお祭りっぽくやる予定だったのが、ちゃんと向き合ってみると、あの時はピュアに歌っているけど、それから10年経って歌い継いできたものだからあの時よりも今の方が凄くないといけない、みたいな謎のプレッシャーが誕生して、すごく緊張しました。でも最終的には今の自分で歌うしかない、というところに辿り着いた。ピュアっていうのはあの当時にやっていたこと。いっぱいいっぱいいろんな人に支えてもらって、今この楽曲は育ってきたんだよ、ともうちょっと踏み込んだところで歌えたかなと思って。結果、やってよかったな、と。最初に「INTENTION」のNew Vocalから撮り直しはスタートしたんですけど、あの歌録りの瞬間は「やめればよかったな」と思うくらい緊張しました。

――でもファースト・シングルである「INTENTION」を聴くと、現在の鈴村さんの歌詞がグッとソリッドになっていることを改めて感じます。

鈴村 そうですね。あの時代に書いていた歌詞たちは、モチーフを遠くに置く、というやり方をしているんですね。最近の楽曲の方が素直に書いているというか。シンプルな言葉を使っていることが多くて。始めた頃は「アーティスティックであれ」という、自分の中での大きなハードルがあって。誰も使ったことのないような歌詞を使って音楽が作れないか、というようなすごく野心的な部分があったんですよね。とは言え、そんな言葉なんてあるはずもないので、自分のワードチョイスがどういうものか、ということに終始して書いていったんですけど。そういう意味では今よりももっとこねくりまわしているし、自分の思っていることをそのまま書くことに照れもあったんですよね。でもこの10年で僕にとって本当に良かったなと思うことは、ちゃんといい歳の取り方が出来た事というか。わりと素直におじさんになれたかなって。音楽活動にそれがよく表れているかなって思うんです。今回作った新曲なんてよっぽど素直に出来ていて、そんなに難しいことも書いていない。そんな遍歴も改めて聴くと感じられますよね。

――そういった音楽への姿勢がライブへと向いてきたのはどのあたりでしたか?最初の頃はきっと、夢中で進んでいらっしゃったんじゃないかと思うんですが。

鈴村 まさにそうですね。最初の頃って、そもそもライブをする、ということが僕の頭の中ではすっぽり抜けていて。「鈴村さん、アルバムも出来ましたし、ライブをやりましょうか」って言われたときに「そうか!僕はライブをするのか!」って驚いたくらい、ライブをやるということにイメージがなかったんです。とにかく楽曲を作ろう、CDを出そうっていうことに終始していたんですよ。そんな中、ずっと楽曲を作ってきて、自分の思っていることとや日常で転がっていることをいかにアーティスティックに作っていくか、ということをがむしゃらにやっいたんですけど、自分の中でアンセムになる楽曲でいうと「SHIPS」なんです。多分、僕にとってはこの曲が(ライブの)アンセムなんじゃないかって思うくらい、育った楽曲なんですけど、この曲をやってからですよね。ライブでみんなでコール&レスポンスをやったり、ライブ用にアレンジを変えてやってみたり。とにかく一体感が生まれて、会場がすごく盛り上がったんですよね。それから、もっとシンプルでいいとか、音で遊ぶこと、まさに“音楽”でいいんだ、と感じましたし、歌詞ももっとシンプルでいいんじゃないかって思い始めたのはこの曲をライブでやるようになってからですよね。それからは頭の中もだいぶシンプルになって。元々この活動を始めたときにはライブって物凄く苦手で。なんだったら“やりたくない”って想いが3割くらいあったんですよね。7割は楽しかったんですけど、本当はしんどくて。どこかで自分に言い訳できる余地を探してもいたような気さえしていて。そんなとこから「SHIPS」をやったことでライブが本当に楽しいって思えたし、そこからのライブって「とにかく歌えばいいんだ」ってことに落ち着いたんです。ライブって「パフォーマンスしなきゃいけない」とか「カッコつけなきゃいけない」と思ったりもしていて、出来もしないことをやろうとしていたのが、もっと自然な形で、等身大でいいんだと思えるようになった。例えば「おれパラ」だったら、森久保祥ちゃんを見れば、それはそれはカッコいいパフォーマンスをするし、GRANRODEOを観に行けば「谷山紀章すげぇな」って思うし。そんなところを見ていると、みんなを「すごい」と感じて、誰かを追いかけるような自分もいたんです。でもそうじゃなくていいんじゃないのか、と思えたときに楽になって。自分にしか出来ない音楽があるし、カッコつけようということではなく今作った歌をていねいにうたおう、誰かに届けたいという想いを込めて歌おう、と考えるようになったら。本当に楽になってライブが楽しくなったんです。今は早くライブがしたいって思うもん。

――そこからシンプルになっていった鈴村さん。楽曲もライブもご自身に近づいてきているのかな、とも感じますが、そんな経緯もあって楽曲がライブユースなものになっていったんでしょうね。

鈴村 それはあったと思います。そういった心境になっていくと、ライブのために曲を作ろうってなっていきますよね。「SHIPS」で味をしめてからは、そこからはライブ仕様にしよう!って思うようになりましたし。たとえば「NAKED MAN」もライブで盛り上がる曲を作ろうと思って出来た曲でしたし、「HIDE-AND-SEEK」もタイアップだけど「これはライブでやったら絶対に盛り上がるよね」っていう曲を作ろうっていうところから制作し始めて、「ここはライブでも遊べるパートだね」ってところにわざと遊べそうな歌詞を入れる余裕も出て来た。タイアップだから、とガッツリと作らなきゃいけない、というところから、自分のライブのために、という想いも半分織り交ぜられるようになったのもライブを意識するようになったから。ここはライブで盛り上がるな、と思いながら曲を作るようになりましたね。

――だからこそこのベスト・アルバムを聴いていると鈴村さんのライブが見えてくるんですね。

鈴村 そうかもしれないですね。だからこのアルバム自体も、自然とライブのセットリストのような並びで作れましたし。途中でミディアムな部分を作って、後半はアガってきて、最後はガーン!とあげて終わるのが「JOYFUL」だとしたら、「NATURE」はより情熱的になっていく楽曲の並べ方で、最後はみんなで歌っているイメージが湧くので、空間が一体化していくような、熱を集約していくようなセットリストを作りましたしね。ライブ感がしっかり刻まれたベストになりました。

――そんな10年を網羅したベスト・アルバム収録された新曲はどのようなお気持ちで作られたんでしょうか。

鈴村 「10年間ありがとう。ここまでみんなで育てて来ることができました」というのは全ての楽曲に詰まっているので、だからこそ「これを持ってまた新しいことをやっていきます」という決意表明をしなきゃいけないと思ったんです。それで「Go my rail」という曲になって。新しい路線図を探すということを自分の中でやっていかなきゃダメで。停滞しているようにはなりたくない、というのを10年経った今も言える人間であろう、という姿勢に大きな意味がある、と思って作ったのが「Go my rail」です。ライブチューンでとにかくアガるものを、それこそ「JOYFUL オブ JOYFUL」を作ろう、ということで曲を作り始めたんですけど、上がって来た曲がとにかく明るいもので、僕が求める“遊べる”要素が入っているので、歌詞に関しては少し角度を変えて、文面だけを見たらちょっとドキッとするようなものにしようかなと思って作ったんです。10周年という記念日は自分の中でもちろん大切だとは思うんですけど、やっぱり通過点であって。そこに留まるというのはもったいない気がしてしまうんですよね。今までやってきたことが。だからそうならないように、新しいレールを探しましょうってみんなにも言っておこうって思って作りました。

――そしてもう一曲は「この世界の好きなところ」はいかがですか?

鈴村 10年前からずっとラジオでも活動していますが、ラジオの相談コーナーでも「毎日しんどいです」「どうしたら気持ちを切り替えられますか」というようなお悩みが多くて。僕はそういうことに長けている方なので、視点を変えるだけで楽しいんだよ、と言ってあげたいし、押し付けるつもりはないんですが、音楽って「ちょっと視点を変えてみると楽しいかもしれないよ」と伝えるにはすごくいい表現方法だなって思ったんです。音楽はそんなメッセージを柔らかく、多角的に見せてくれるメディアでもある。だからこそ音楽活動を始めたんですよね。それを今、また書いておこうと思って。好きなところを探せば、意外と世界はまだハッピーが残っていて。僕はこの世界の好きなところがいっぱいあるし、そうじゃないしんどいことを探すのが人生ではないよって。人ってついしんどいことを探してしまうんですよね。ちゃんとしなきゃ、とか、誰かにこう見られているかもしれない、とか。そんなことってあまり関係がなくて。自分が楽しいって思うことにちょっとでもシフトしてあげるだけで思った以上に人生楽しくなるよ、というのを音楽活動の指針としてやってきた僕が、この楽曲を作っておくべきだなと思って。「この世界の好きなところ」というすごくシンプルではあるんですが、そのまま書こうと思って作った曲ですね。

――今、お話されたことって鈴村さんの中で本当にブレない指針ですね。いつお話を伺っても、必ず出て来る言葉で。

鈴村 これしかないですし、これのためにやっているから。これ以外に理由はないんですよ。原点であり、今も突き動かしてくれるのはこのことですし、どの曲も全部そのメッセージを浮かべながら書いているから、統一されたテーマにもなっているので。

――そういった意味でも10年、そしてこの先のことまで網羅したベスト・アルバムとなったんですね。さらに今回はライブ・バージョンで収録した曲もあるのですが、それも大きく起因してか、野外ライブを聴いているような気持ち良さのあるベスト・アルバムになっています。なんだったら鈴村さんの「満天LIVE」を彷彿とさせる印象さえあるかと。

鈴村 そういうふうにイメージしてもらえたらうれしいですね。「満天LIVE」は今年、2年ぶりに開催することになりましたし。初めてやったときから、自分で勝手に「聖地にしたい」って思った場所だったので、今年3回目が出来ることに感謝ですね。

――初めて会場の河口湖ステラシアターをご覧になったときはどんな印象がありましたか?

鈴村 「これはすごいところだ!」って。元々は最初の「満天LIVE」をやった前の年のツアーでライブ制作をしてくださっている舞台監督が「次は野外をやりましょう!」って、打ち上げ会場でパソコンを開いて見せてくれたのがステラシアターだったんです。「いろんなアーティストのライブをここでやっているけど、僕がイメージするに鈴村さんがいちばん合っていると思います!」と情熱的に言われて開催を決めた場所だったんですが、現地に行ったらもう虜ですよ。こんなに素敵な場所があったんだ!って。また、初めて開催した年がめちゃくちゃいい天気で。富士山も丸見えなんですよ。ドカーン!と。残念ながら僕は背中に富士山を背負う形になるので見えないんですけど(笑)。

――たしかに(笑)。客席からは富士山をバックに歌う鈴村さんを見られるのですが。

鈴村 でもリハとかバンドだけでサウンドチェックをしているときに客席から見ていたりもするんです(笑)。そのときに、音がガンガン鳴るところで見る富士山が最高で。そこで完全に虜になったことをよく憶えています。それ以来、僕は勝手に「聖地にしたい」と思うようになったんですが、3回目に辿り着けたので、ここまで来れば鈴村健一のライブの聖地になった気がしています。

――夕闇に浮かぶ富士山と鈴村さん、という瞬間は本当に最高です。観客としても忘れられない時間になりますよね。

鈴村 自然が究極の演出なので。ライブハウスとかだといろんな照明で演出を考えたりもするんですけど、結局ステラシアターではそういうものがいらない。自然に経過する時間というのが最大の演出で。毎回、満天を前にした取材では「どういうことを考えていらっしゃいますか?」って聞かれるんですけど、残念だけどあの自然には敵わないので、自然に合った楽曲でセットリストを組むことが僕に出来る最大限の仕事だと思っているんです。だから今回も、あの自然にぴったりと合うセットリストを組んでいるので、楽しんでいただけるライブになると思います。

Interview & Text By えびさわなち


●リリース情報
鈴村健一 10th Anniversary Best Album “Going my rail”
【2CD+DVD】

品番:LACA-9575~6
価格:¥4,500+税

<CD>
[Joyful Disc]
01.in my space
02.The whole world
03.ミトコンドリア -Live Arrange Version-
04.ポジティヴマンタロウ
05.NAKED MAN
06.おもちゃ箱
07.シンプルな未来 (New Vocal)
08.CHAPPY
09.HIDE-AND-SEEK
10.All right
11.シロイカラス -Anniversary Edition-
12.あいうえおんがく
13.SHIPS -Live Arrange Version-
14.ハナサカ
15.Go my rail

[Nature Disc]
01.INTENTION (New Vocal)
02.brand new
03.あすなろ -Anniversary Edition-
04.ALL GREEN
05.messenger
06.CHRONICLE
07.Landscaper
08.そりゃそうです
09.スケッチ
10.Butterfly
11.月とストーブ -Live Arrange Version-
12.ロスト
13.太陽のうた
14.and Becoming (New Vocal)
15.この世界の好きなところ

<DVD>
・Go my rail (Music Video)
・鈴村健一 Live Tour 2017「NAKED MAN」
・Life is like it
・あすなろ
・夕暮れタイムトラベル
・CHAPPY
・NAKED MAN
・home sweet home

LIVE DVD&Blu-ray
鈴村健一 10th Anniversary Live “lo-op”
5月9日発売

【Blu-ray】

品番:LABX-8266〜67
価格:¥8,800+税

【DVD】

品番:LABM-7249
価格:¥6,800+税

<Disc1>
1.INTENTION
2.The whole world
3.ALL GREEN
4.ハナサカ
5.home sweet home
6.月のうた
7.Butterfly
8.CHRONICLE
9.ロスト
10.月とストーブ
11.スケッチ
12.おもちゃ箱
13.CHAPPY
14.シロイカラス
15.HIDE-AND-SEEK
16.All right
17.in my space
18.あいうえおんがく
19.太陽のうた
20.ポジティヴNAKED MANタロウ -ENCORE-
21.ミトコンドリア -ENCORE-
22.SHIPS -ENCORE-
23.ひとつ -ENCORE-
24.and Becoming -ENCORE-

<Disc2>※BD盤のみ
1.鈴村健一 10th Anniversary Live “lo-op” ライブドキュメンタリー

●ライブ情報
鈴村健一 満天LIVE 2018 “Going my rail”
2018年6月2日(土) 開場 16:00 / 開演 17:00 [SOLD OUT]
2018年6月3日(日) 開場 16:00 / 開演 17:00
会場:
山梨・河口湖ステラシアター

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