INTERVIEW
2017.04.28
「できるかなって☆☆☆」
( 『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 OPテーマ)
歌:ゆの( CV.阿澄佳奈), 宮子( CV.水橋かおり), ヒロ( CV.後藤邑子), 沙英( CV.新谷良子)
作詞:畑 亜貴 作曲:村井 大 編曲:安藤高弘
佐藤 なにが“しゅわしゅわ”なのかがわからない(笑)。
ミト 小1時間問い詰めたい(笑)。当時アニソンDJとしてこの曲を掛けると、お客さんの誰もがこの手拍子を全部叩けたんですよ。キュレーター(専門家)であるはずの私たち自身が間違うくらいなのに、完璧なタイミングでバンバン当ててくるんです。
佐藤 これは「もっと上げてください!」とお願いして、クラップのボリュームを限界まで上げたんですよ。
ミト このくらいまで聴こえているからこそ、クラップが記憶に残っている人が多いんですよね。あっ、ここも絶対上げましたよね!サビ直前のドラムの“ダツ、ダツ、ダダダ”!
佐藤 はい、死ぬほど上げました(笑)。

ミト ここね、クソデカすぎるんですよ(笑)。CD音源では事故が起こる寸前でしたけど、ハイレゾだときれいに聴こえるようになってますね。
佐藤 ダイナミック・レンジが広がってますからね。ハイレゾ版では「小さところは小さい、大きいところは大きい」というのがハッキリ出ていると思います。
ミト この時期の楽曲のバランスは音楽的には不整合です、正直。
佐藤 3作目のOPですし、意図的にそういういびつさを狙った部分がありますね。
ミト 成熟の3作目と言われているだけのことはありますよね。この頃の『ひだまりラジオ』も、相当おかしなことになっていて素晴らしかった(笑)。
───こなれてきたからこその、意図的なバランス崩しだったんですね。
佐藤 そうですね。あえて下手に歌ってもらっている場所もあったりするんですよ。「塗って振ってペインティング」とか、わざと音を外して歌っているテイクを重ねてあるんです。もはや音程がめちゃくちゃで、でもかわいけりゃOKという精神で作っていました。
ミト 2サビから間奏への転調もヤバかった。あとブラストビート※っていうのがまずおかしい。アニソンにブラストビートを出しちゃいかんだろう(笑)。
※ブラストビート 主にエクストリーム・メタルのジャンルで使用される、ドラムのリズムパターン。交互または同時にバスドラムとスネアドラムを打つことで演奏される。
「さくらさくら咲く~あの日君を待つ空と同じで~」
( 『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 EDテーマ)
marble
作詞:micco 作曲・編曲:菊池達也 ストリングスアレンジ:ぺーじゅん
佐藤 この曲は2008年制作当時に、マスターを96kHzのハイレゾで録っています。松本靖雄さんにミックスをしていただいているんですが、とにかくmarbleのプロデューサーとして最高のものが作りたいという気持ちが超絶に高まりまくっていて、今までの最高傑作を作るにはどうすれば良いかと考えて、最高のエンジニアに最高のクオリティで、最高のフォーマットで作ろうという気持ちでした。曲の発注としてmarbleに対しては、「パンクを作ってくれ」と言っていましたね。『ひだまり』の正反対って何か、と考えたらパンク。でもmarbleがパンクを作ってもパンクにはならないということもわかったうえで、パンクを作ってと頼んでいました。
ミト 今これを聴いていて、たまたまリンクしたことがあるんです。この曲が「EDがエモ・アップテンポ・ギターロック」というひとつの形の先駆けになっているのかなと。それは現在の『けものフレンズ』のEDにも繋がってくることなんですよ。EDって当時、アップテンポでギター・ロックって少なかったですからね。どちらかというと制作チームって、EDは落としたがるんですよ。
佐藤 EDに求められていたのは、読後感ですよね。
ミト そうそう「余韻を残したい」と言われるんですよ。でもこの辺りから「EDでむしろ伸ばす」という形が出来上がっていきましたよね。
佐藤 前のOPを含めた過去2期のテーマ・ソングで、アニメ制作チームにすごく信用してもらえていたんですよ。だから「3期はどんな曲にしましょう」と聞いたら「もう信用してるんで、任せます」と言われました。
ミト シャフトってたまにそれありますよね。私も〈物語〉シリーズで何度かお世話になっているんですけど、どっかのタイミングで「あとは好きにしてください」って言われるんですよ(笑)。
佐藤 そうなってくるとmarbleのプロデューサーとして、marbleをもっと知ってもらうためにはどうしたらいいのかを考えるわけです。それと「任されたからには裏切りたい」という気持ちもありました(笑)。楽器構成も変えていますし演奏の仕方も違うんですけど、「芽生えドライブ」と「流星レコード」は曲のジャンルとしては同じじゃないですか。でも「今度はmarbleのファンすらも裏切ってやろう」というのがこの楽曲における挑戦でしたね。

───アニメ制作スタッフからの信頼があったからこそ、あらたな挑戦ができたと。
佐藤 音楽制作側としても、シャフトさんには1期も2期もすごく良い画をつけていただいたんですよ。それでアニメのOPってテンポが上がることによってカット割りが増えるんですけど、テンポが速いEDテーマを納品すればカット割りの多いEDを作ってくれるだろうと考えたんです。大団円感は大事にしようという話しもしつつ、「marble史上最速のパンクを作ってくれ」という発注をしてこの曲ができあがりました。ただギター・ロックのままだと『ひだまり』感とインテリジェンスが足りないなと思ったので、ここでもまたぺーじゅんさんのアレンジでストリングスを入れましたね。実は僕、この曲ができた段階からストリングスのアレンジが頭の中で完全にできていたんですよ。普通のストリングスだとサビ裏に流れるようなゆったりしたフレーズが来ると思うんですけど、この曲は“タトトタトトタト、タトトタトトタト”と細かいフレーズになっていて、これはスティーヴ・ライヒ※にしたかったんですよ。
※スティーヴ・ライヒ 1960年代から活動している、ミニマル・ミュージックを代表する作曲家。テクノ・ミュージックやエレクトロニカにも多大な影響を与えた。
ミト ああー、そうなんだ。スピッカート(跳弓)が強いから、とにかくエッジを強くしようと思ってたのかなと考えてました。
佐藤 この曲は今までの曲と違ってほとんどシンセは使わずに、リズム隊を生にしています。スティーヴ・ライヒのミニマルな感じを歌モノでやりたかったんですよ。そのアイデアがなぜ浮かんだかというと、細かいストリングスのフレーズと桜が舞い散るイメージが頭の中でシンクロしたからなんです。思いついたフレーズが絶対にこの曲に合うと確信していたし、「この曲を納品したら、それに合わせて映像でも桜吹雪が舞うんだろうな」とまで思っていました(笑)。
ミト もはや演出まで浮かんでいたんですね(笑)。
佐藤 そういう気持ちを込めて作ったら、やっぱり桜が舞っていましたね。絵コンテを描いている方とは直接やり取りはしないんですけど、曲の中にとにかく込めました。3期の第1話が放送されて、できあがった映像を見たときは号泣しましたよ。
ミト この曲はやっぱり、特に説得力を持ちましたね。
佐藤 この曲でmarbleのネクスト・ステップが作れたと思います。
SHARE