Chima「はじまりのしるし」レビュー

2017.05.10

『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」のヴォーカルでもおなじみの、シンガーソングライター・Chima。自身がアニメ作品のために初めて書き下ろした、TVアニメ『ゼロから始める魔法の書』エンディング主題歌。

Chimaは、北海道を拠点として活動しているシンガーソングライター。藍井エイルの楽曲にも携わっている下川佳代がプロデュースを務めた『鈴蘭』(2011)、アコースティックなポップサウンドが響く『そらのね』(2013)、フォークトロニカの要素を含んだ爽やかなシーズン・アルバム『夏のおはなし』(2016)などをリリースしている。

TVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のオープニング主題歌「青い栞」を始め、Galileo Galileiの楽曲にコーラス参加しているChimaだが、2016年10月より放送されたTVアニメ『フリップフラッパーズ』では、伊藤真澄、ミト(クラムボン)、松井洋平(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)からなる劇伴ユニット“TO-MAS”が手がけたエンディング主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」にヴォーカリストとしてフィーチャーリングされている。

アニソン・リスナーからも注目を集めているChimaが、アニメ作品のために初めて書き下ろした曲が、TVアニメ『ゼロから始める魔法の書』エンディング主題歌「はじまりのしるし」。シングルにはカップリング曲「つま先立ち」とインスト・ヴァージョンを含む計4曲が収録されている。

「はじまりのしるし」

作詞と作曲は、Chima。編曲は、“高鈴”のギタリスト・山口彰久。高鈴は、ヴォーカルの山本高稲と、サウンドを担当する山口彰久のユニット。2009年1月より放送された『続 夏目友人帳』のエンディング主題歌「愛してる」(編曲は伊藤ゴロー)で、彼らの名を知った方も多いだろう。山口彰久はChimaのミニアルバム『そらのね』のサウンドプロデュースを手がけており、今回の楽曲も『そらのね』や、高鈴の音楽性に通じる美しいアコースティック・サウンドに仕上がっている。

エンディング主題歌ながらも、いつものChimaらしい実な自然体な楽曲。と思いきや、作品のイメージがさまざまな箇所に反映されている。例えば、遠くで霧笛が鳴っているようなイントロは、「船出」といった旅の始まりを連想させるし、その夜明けにはまだ遠いような寂しげな雰囲気は、それぞれひとりで旅を続けてきた主人公たち、ゼロと傭兵の孤独を表わしているようでもある。そこから楽曲は、ふたりが出会ったあとを描くように明るく展開。そのサウンドはヨーロッパ中世をイメージした作品とも重なる牧歌的なもので、あたかも街道をのんびりと進んでいるような、おおらかさが感じられる。

歌詞もまた物語を映し出すように、人間社会の枠からははみ出した存在である「魔女」と「獣人」が目指す、“ふたつの世界をのぞんだっていい  一緒に行こう”や、誤解や偏見がはびこる世界に立ち向かう、“戦って あなたにしかできない優しさで”の言葉が、希望を与えるように歌われている。優しいニュアンスが伝わる澄み切ったChimaの歌声が美しい。このようにアニメの世界観を充分に取り込みながらも、普通にラジオからふと流れてきても違和感のない、こんなにもナチュラルなポップスは最近ではちょっとめずらしいかも。

ハイレゾでは、アコースティックギター、チェロなど弦楽器の音のまろやかさが感じられる。輪郭が混じり合い、溶け合うような、音のなじみのよさで、乳白色のサウンドが空間を満たしているようなイメージだ。柔らかな雰囲気が心地好く、ヘッドホンとスピーカーで空気感の違いを聴き比べることもできる。

「つま先立ち」

カップリング曲は、「はじまりのしるし」と同じく作詞・作曲はChima、編曲は川本 新が担当している。川本 新は、「divine intervention」「星屑のインタリュード」「ワンダーステラ」「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」「虹を編めたら」「青空のラプソディ」など、fhánaのストリングスのアレンジを多数手がけている。またChouCho「starlog」(作曲・編曲)、麻生夏子「Never Ending Voyage」(作曲・編曲)「MoonRise Romance」(ストリングス・アレンジ)、上田麗奈「あなたの好きなメロディ」(fhánaの佐藤純一と共編曲)などの楽曲に携わっている。得意とするストリングスをふんだんに使用したアレンジをこの曲にも加えている。

アコースティックギターのフレーズとストリングスのピチカートが弾む、フォークトロニカっぽい出だしから、みずみずしい躍動感があふれる「つま先立ち」。「はじまりのしるし」の牧歌的な雰囲気を少しポップな方向へと進め、“かかげた期待”につま先立つ胸の高まりを、爽やかなサウンドに乗せて描き出す。どことなくアイリッシュ・ポップスをも思わせる、ストリングスの闊達な旋律が、先へと誘なう風のように奏でられ、後半からはエレキギターも加わり、開放的なイメージをさらに展開させる。グルーヴィかつダイナミズムを内包したサウンドに、歌声はなめらかに踊りながら、そして、時折意思の強さを垣間見せる。想いが先走る、“押し上げてくるよ どけよ”や、“蹴り上げて ひよわず進め”といったぶっきらぼうな言葉と、対照的にイノセンスな歌声の組み合わせがちょっとかわいい。

Chima
はじまりのしるし

Lantis
2017.05.10

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.はじまりのしるし
   作詞・作曲:Chima 編曲:山口彰久

 2.つま先立ち
   作詞・作曲:Chima 編曲:川本 新

 3.はじまりのしるし(Instrumental)

 4.つま先立ち(Instrumental)

この記事を書いた人