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INTERVIEW

2017.05.24

TVアニメ『アリスと蔵六』EDテーマ「Chant」toi toy toi インタビュー

トイピアノの魅力・影響について

───それぞれの楽しみ方にメンバーの個性が表われているようですね。そんな皆さんが集まったtoi toy toiですが、このユニットの特徴であるトイピアノについてお聞きします。伊藤さんがトイピアノに魅かれるようになったのはいつごろからですか?

伊藤 私が参加しているユニット、“TO-MAS”で『ももくり』というTVアニメの劇伴を作るときでした。とてもかわいらしい作品でしたのでトイ系の楽器が合うだろうと思い、トイピアノやハンドベル、グロッケンですとか、ピアニカ、アンデスなどを多用したんです。そうしたら、トイピアノの音色にすっかりはまってしまい、あちらこちらでトイピアノを探すようになりました。トイピアノ博物館に行き、一目惚れしたトイピアノをすぐ手に入れたりですとか。

アンデス 鈴木楽器製作所が製造している鍵盤リコーダー「アンデス25F」のこと。鍵盤ハーモニカのように息を吹き込み、鍵盤を弾いて音を出す。笛のような独特な音色がこの楽器の特徴。TVアニメ『あずまんが大王』の音楽でもおなじみ栗コーダーカルテットのリーダー・栗原正己が愛用していることでも知られている。
鈴木楽器製作所のHPには、栗原正己がアンデスとの出会いを記した「わたしとアンデス」や、栗コーダーカルテットのメンバーがアンデス開発担当者にインタビューした話などをまとめた「アンデス特集記事」が掲載されている。
https://www.suzuki-music.co.jp/products/22031/

良原 すごいトイピアノをお持ちなんですよ。グランドピアノの形をしているのですが、蓋を開けたところにオブジェのようなものが入っていて。

①toi toy toiのお気に入りトイ楽器【伊藤真澄】

Babi ジオラマ?

伊藤 そうだね。ジオラマが収まっていて。私はこれを「アートピアノ」と呼んでいます。いつかライブで演奏したいと思っているので、今運べるように改造してもらっています。

───昔、僕が見たトイピアノは黒鍵が絵で描いているだけのものがあって(笑)。

伊藤 あー、ありますね(笑)。塗ってあるだけの。

───では、いろいろな種類のトイピアノを集めだしたのはここ最近のことなんですね。

伊藤 そうですね。ここ1年で随分と集まりました。

───そこから、このカルテット結成までに至るという、伊藤さんの情熱がひしひしと伝わってきます。

伊藤 いえいえ。ここまで広がったのはリエさんのおかげです。

───では良原さんはいかがですか?

良原 私は元々アコーディオンをやっていました。日本ではアコーディオンの種類があまり多くないため、デザインや重さ、また鍵盤の幅など気に入ったものがなかなか見つからず、もっぱら海外のオークションで手に入れていました。アコーディオンを探しているうちに素敵なトイピアノもちらほら目につくようになり、私も一時期たくさん集めていました。

②toi toy toiのお気に入りトイ楽器【良原リエ】

───伊藤さんと同じようにトイピアノを一気に集めていらした時期があるのですね。

良原 ただ集めているばかりでは仕事には結びつかないので、アコーディオンの仕事で呼ばれたときに、トイピアノも一緒に持って行ったんです。レコーディング・スタジオでアコーディオンをひとしきり弾いたあとに、「こんなのもありますよ」と営業の人みたいにトイピアノを出して弾き始めて、「この曲ならばこんな感じで合いますよ」なんて、アピールしたりして。10年ほど前は、興味は示してくれるけど、使う勇気はまだちょっとないといった雰囲気でした。でもしばらくすると覚えてくれていた人から「この曲でトイピアノをお願いします」「ライブでトイピアノを」と仰っていただけるようになりました。ここ4、5年ぐらいは「アコーディオンだけでなくてトイピアノも」とお願いされることが多いですね。こんな地道な努力をずっと続けてきました(笑)。

伊藤 すごいですね。素晴らしい!

良原 最近では何も言われなくてもトイピアノを持って行って、普通にセッティングして、フレーズを考えて入れてしまったりとかしています(笑)。自分のアルバムにもトイピアノをたくさん使用しています。

───トイピアノの営業期間、結構長かったんですね。

良原 はい(笑)。その分、愛は強いと思います。

───Babiさんはいかがですか?Babiさんもアルバム制作にトイ楽器を取り入れていますよね。

Babi 大学生のとき、楽器を買える予算があまりなかったので、トイピアノとかアンデスを買って、録音を始めました。演奏のうまい方が周りに多かったので、ちょっとキャラクター出したいなというのもありまして(笑)。リコーダーとかちょっとチープなものばかりを集めていました。

良原 トイ楽器は安くても大丈夫!(一同笑)。

Babi (笑)。その限られた範囲でいかに楽しくなれるかを追い求めていた時期があります。

───トイポップやトイトロニカといったジャンルのアーティストも、子供が使うものや日用品など身の回りにあるものを音楽に取り入れることで、独特なサウンドを生み出しています。そういった楽器の選択が、Babiさんの音楽を生む土壌にもなっていますね。

Babi しかも大学生の頃、雑貨屋さんで良原さんの“ノーベル・セル・ポエム”のCDに収録されている曲を聴いて、良原さんのことを知るようになったり。

ノーベルセルポエム トイミュージック専門の日本の音楽レーベル。クリンペライや、ドラジュビス、イトケン、珍しいキノコ舞踏団、良原リエらの作品をリリースしている。フランスの子供たちが童謡やジャズを歌った『かけるよフェレット』『プティルーデュジャズ』などのアルバムも人気。
http://www.novelcellpoem.com/index2.html

伊藤 そうなんだー。

良原 ふふふん(照れ笑い)。

Babi そのおかげで、トイピアノをすごく研究するようになりました。

③toi toy toiのお気に入りトイ楽器【Babi】

───コトリンゴさんもトイピアノ作品に影響を受けていると思いますが、いかがですか?

コトリンゴ 真澄さんのライブをご一緒させていただいたときに、良原さんがサポートをされていたんです。そのときの良原さんの演奏は、トイ楽器に対する愛が溢れていてとても素晴らしかったんですよ。例えばブタのブーブー鳴るおもちゃとかの鳴らし方もきちんと研究されていたり。でもなにより、こんなふうに「大好き!」と全身で弾いている方を初めて見たので、いつかご一緒させていただきたいと思っていました。ですので今回、誘ってもらって大変うれしかったです。でも私は壊れたトイピアノしか持っていなかったので、皆さんに貸してもらいました。「こういうサウンドだったら、このトイピアノがいいよ」って真澄さんとリエさんが選んでくれて。それを弾いて……「うん、楽しいな」って(一同笑)。

───その「楽しい」感じが、今ものすごく伝わってきました(笑)。皆さんのお話をお伺いしていると、良原さんが皆さんに影響を与えていることがよくわかります。

良原 ブタとかニワトリとかのおもちゃはひとりでずっと研究してきたので、実を結んでくれてとてもうれしいです。

コトリンゴ リエさんに「汽車の音をここで鳴らしたいんですけど」と尋ねると、「これもいいけど、こういう音もあるよ」って、いくつも提案してくれる。すごいプロフェッショナルなんです。

伊藤 いつも魔法みたいですよね。

コトリンゴ 使ってもらえるおもちゃは幸せですよね。

───たしかに音楽的解釈をここまで与えてくれれば、おもちゃもきっと満足してくれることでしょう。

良原 ありがたいです。頑張ってきた甲斐がありました。

④toi toy toiのお気に入りトイ楽器(水笛)【コトリンゴ】

───皆さん、ご自分のこだわりをとことん追求されていますよね。この部分にお互い共感したからこそ、このメンバーが集まったのではないかと思います。さてtoi toy toiの音楽は、ジャンルとしてはトイポップに分類されるかと思いますが、あえてそのような音楽性を目指したというよりも、もっと自然な流れでこの独特なサウンドが生まれたように感じます。

良原 そうですね。ジャンルはなんでもいいのではないかと思います。それこそトイピアノ4台にこだわる必要もないと思います。でも『フリップフラパーズ』に参加したとき、まず4台並べましたよね。4人横に並んで同時に録音したんですよ。すごく壮観でした。

───「大きなスタジオにトイピアノを4台」は随分とかわいらしい光景ですね(笑)。

Babi でも結構、激しい曲でしたよね。

伊藤 オーケストラと共演といったイメージで演奏しました。ジャズ・オーケストラにトイピアノがキンキン入る、ちょっとトリッキーな感じ。

良原 すごく感動した覚えがあります。

───それこそ伊藤さんが2002年に作られたOranges & Lemons名義の「空耳ケーキ」も、いわゆるアヴァンポップとアニソンが融合した、アニソンにおけるトイポップの元祖に近いものだと思います。

伊藤 あー。「空耳ケーキ」この4人でやってみたいんですよ。

Oranges & Lemons「空耳ケーキ」のレビューはこちら

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