花澤香菜「辿りつく場所」レビュー

2015.10.21

ハイレゾ・プレイヤーのみに収録されていた曲が配信開始。「天使の声」に一番近づく高音質で、静かに美しく響く。

「天使の声」と度々称される花澤香菜だが、彼女が所属するレーベルが日本音響研究所にその声の分析を依頼したところ、「20kHz以上の帯域まで伸びた声の成分が清涼感を与え、振幅ゆらぎによるリラックス効果が期待できる」との報告がなされた。甘く優しく澄み切った声は自然界に多く存在する「1/fゆらぎ」(川のせせらぎの音など)による癒しをもたらし、超広域の倍音成分が、存在が見えないが確かに聴こえる、いわゆる「天使の声」を形作っているとのことだった。花澤香菜の美しい声が比喩だけでなく、科学的にも「天使の声」であることが証明されたのだ。

オーディオブランド「Astell&Kern(アステルアンドケルン)」は、ハイレゾ対応ポータブルオーディオの人気製品を数多くリリースしており、ハイレゾ・ユーザー、ポータブルオーディオ・ファンから高い支持を得ているメーカーだ。このAstell&Kernの人気製品「AK100II」と花澤香菜がコラボレーションしたモデル「Astell&Kern AK100II KANA HANAZAWAエディション」がリリースされた。

「ヘッドフォン推奨」とは、花澤香菜の作品にはなくてはならない言葉となったが、美しき天使の歌声を最高の音質で体感すべくとのことで、人気ブランドのハイレゾ対応ポータブルオーディオとのコラボレーションが実現された。

2015年7月に発売された「Astell&Kern AK100II KANA HANAZAWAエディション」は、予約の時点で限定300台が即完売。追加生産分150台も同様の結果となり、完全生産限定品のためもはや幻の存在となった。

この「Astell&Kern AK100II KANA HANAZAWAエディション」のために書き下ろされ、製品にプリインストールされていた曲が「辿りつく場所」。コラボモデル購入でしか聴くことがかなわないと思われていたこの曲だが、2015年10月から配信されることになった(ただし、プリインストールされた192Khz/24bitではなく、ハイレゾ配信は96kHz/24bitのデータ)。圧縮音源も配信されているが、花澤香菜の「天使の声」を聴くならばやはりハイレゾがふさわしいだろう。

 

作詞のReomは、クリエイターチーム「AQUA ARIS」のリーダーであり、空想世界構築プロジェクト「アルマギア–Project-」のトータルプロデューサーでもある。幻想的なジャケットのイラストは、同じくAQUA ARISのよしともによるもの。AQUA ARISは、映画『心が叫びたがってるんだ。』劇中歌の楽曲制作協力や、花澤香菜のツアーグッズのデザイン、ミオ(cv.新田恵海)『「変則系クアドラングル」キャラクターソングVol.1「ミオ」』の作詞、作曲、編曲など、様々な活動を行なっている。

作曲、編曲は「Mili(ミリー)」のメインコンポーザー、Yamato Kasai。Miliもデザイナーやイラストレーター、映像作家をメンバーに含むアーティスト集団で、音楽を主軸にしながら多彩な創作活動を続けている。クラシカルなサウンドを基調に音響、ポストロック、エレクトロニカの要素をも取り込み、透明感のある歌声を持つカナダ出身のトリリンガル・ヴォーカリスト、momocashewをフューチャーした楽曲がMiliの特徴だ。こちらもクリエイター集団の「H△G  (ハグ)」とのスプリット・アルバム「H△G × Mili vol.1」、『H△G × Mili vol.2』も大きな話題を集めた。

今作のレコーディング・エンジニアは杉山勇司。エンジニア、サウンド・プロデューサーとしてくじら、東京スカパラダイスオーケストラ、ソフトバレエ、Schaft、Pizzicato Five、X JAPAN、河村隆一などのJ-POPから、麻生夏子、寺島拓篤、堀江由衣などのアニソンまで多くの作品を手がけている。ナーヴ・カッツェがテクノを指向した後期の傑作『うわのそら』、Aphex Twin、Black Dog、Ultaramarineらを迎えたリミックスアルバム『Never Mind the Distortion』なども杉山勇司のプロデュースによるものだ。

 

AYAKIのピアノと門脇大輔ヴァイオリン、そして村中俊之によるチェロ。この三人の編成による室内楽のサウンドと花澤香菜の歌声が静謐に響く、ハイレゾならではの味わい深さがあるこの楽曲。流麗な調べを紡ぎ出すによるヴァイオリンのしなやかさ、膨らまず濁らず低域の豊かさを保つチェロの響き、ガラスの階段を駆け下りるような高音の打鍵が鮮やかなピアノの音色。それぞれが奏でる旋律が時にはふっと離れ、また絡み合い、そして重なり合う。音が優美に舞い踊る様子が活写されている。弦の震えや弓が動いているさまをありのまま再現しつつも、ただリアル、ただハイファイといったものだけに終わらないハイレゾの表現力。解像感が空気感を濃密に映し出し、今回はこの曲がもたらす翳りのあるセピア色の情景を色濃く描きだすことに強く作用している。

いつもよりやや低めの歌声は落ち着いた雰囲気を漂わせつつも、その心情を切々と訴えかけるかのよう。語りかけるような歌唱はなめらかに、しかし繊細な抑揚に憂いが帯びるさまを描写している。そのヴォーカルはすぐそばで囁くように、スタジオライヴのような臨場感で耳に伝わる。

 

生楽器とヴォーカルが美しく折り重なり見事な調和をみせる「辿りつく場所」。この曲のinstrumentalヴァージョンも配信されており、上質なポスト・クラシカルの楽曲としても充分に楽しめる。
その始まりからハイレゾを前提として楽曲が制作された、ハイレゾ・リスナーのためのハイレゾによる作品。花澤香菜ファンのみならず、ハイレゾ好きにこそ愛聴してもらいたい一曲。

花澤香菜
辿りつく場所

Aniplex Inc.
2015.10.21

FLAC 96kHz/24bit

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e-onkyo music
mora

イラスト:よしとも(AQUA ARIS)

 収録曲

 1.辿りつく場所
   作詞:Reom 作曲・編曲:Yamato Kasai from.Mili

 2.辿りつく場所(instrumental)

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