南條愛乃『Nのハコ』レビュー

2016.07.13

南條愛乃の姿をそれぞれの視点から描き出した13曲を“ハコ”に収めた2ndアルバム。

TVアニメ『ラブライブ!』絢瀬絵里役でもおなじみの声優、またfripSideのヴォーカリストとしても知られる南條愛乃。2012年12月にはミニアルバム『カタルモア』にてソロ・アーティストとしてデビュー。2015年7月には、TVアニメ『東京レイヴンズ』EDテーマ「君が笑む夕暮れ」、TVアニメ『グリザイアの果実』EDテーマ「あなたの愛した世界」などを収めた1stアルバム『東京 1/3650』をリリース。

その1年後にリリースされたのがこの2ndアルバム『Nのハコ』。「南條愛乃を“ハコ”として捉えたら、その中には何が入っているのか?」とのテーマを元に作り上げられた今作では、飯田里穂、yozuca*、rino、畑亜貴、KOTOKO、川田まみ、しほり、はるかひとみ、ミルノ純ら、南條愛乃と所縁の深いアーティストたちが作詞を担当しており、プライヴェートな姿から内面性まで、南條愛乃の姿を様々な角度から描き出している。

「ゼロイチキセキ」

南條愛乃自身も斉藤結衣(猫姫)役で出演をしたTVアニメ『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』のEDテーマとなったシングル曲で、南條愛乃が作詞、橋本由香利が作曲・編曲を手がけている。橋本由香利の出自でもあるギターポップのサウンドが歌詞のメッセージとともにストレートに鳴り響くナンバー。

イントロではエレキギターが左右に切り替わりながら奏でられるが、CDよりも音の広がりや音が奏でられる際の空気感の違いも感じ取れる、ハイレゾの情報量が印象的だ。分離感も良く、より後方で快活な鳴りを聴かせるドラムの張りのあるキックや、音数が重なるとやや埋もれがちになっていたストリングス・シンセの軽やかに舞う音色もさらに自然な響きで伝わってくる。

ヴォーカルはじわっと厚みを増した低音部の歌唱からキーが高くなるサビの後半まで移行する抑揚もなめらかに、しなやかさと可憐さの均衡を保つ。“想いは距離さえこえて いつか君のもとへ”のフレーズに託す“本物”の気持ちが強く湧き上がる、ニュアンスの付け方が絶妙だ。

「0-未来-」

「今日もいい天気だよ」に参加している井内舞子と同じくI’ve所属の、そして2016年には惜しくも歌手活動を引退する、川田まみ作詞によるアルバムのクライマックス・ナンバー。作曲は、petit milady「鏡のデュアル・イズム」、春奈るな「君色シグナル」、『東京1/3650』では「believe in myself」、「+1day」を手がけた増谷 賢が担当。

オープニングナンバー「きみからみたわたし」と同じく、すっと音が入ってくるイントロから、音場の広がりと解像感が明瞭に伝わってくるハイレゾ。CDと比べると音の存在感が強まっており、引き立て役といった背景に埋没せず、また主張しすぎずに、ヴォーカルと程よく調和している。柔らかなビートに鮮やかなギターと弾むようなシンセが重なり、未来へと向かう姿を映す楽曲に爽やかさやみずみずしさを導き出す。

ヴォーカルはすっきりとした輪郭に透明感を放つ高域が美しく、音量や韻の強さよりも、語感の跳ねや伸び、高いキーからの声の戻しなどの表現の繊細さがエモーショナルな雰囲気をもたらしており、“さよならじゃなくて永遠のリング”である出発点=“今”が夏の風景の中に清々しく浮かび上がる。

前作に引き続き戸田章世による「きみからみたわたし」、幻想的で落ち着いたサウンドがセンチメンタルな情景に沈んでいく「ヒカリノ海」では、エレクトロニカ調のサウンドの精細さ、また澄み切った歌声が印象深い。

休日のナンジョルノの姿をyozuca*&黒須克彦で描く「Oh my holiday!」は、CDよりもエフェクトやミックスが効果的に浮き上がる。KOTOKOによる歌詞で挑発的なポップスタイルを描く「idc」では、メリハリの効いた躍動的なサウンドがさらに刺激的に響く。

前作に収録された「だいすき」のlottaが作曲を手がける、ネコ目線で日常の一コマを切り取った「NECOME」では柔らかな音の質感が、南條愛乃が作詞で参加した飯田里穂のアルバム『rippi-rippi』に収録された「まだ言えないけど、◯◯◯」のアンサーソングとも言うべき「Dear..」(作詞は飯田里穂)では温かい空気感が心地よい。
これらのようにサウンドがより濃密になってくるのがハイレゾ版の特徴だ。

これまでの自身を綴った歌詞が多く収められた前作『東京 1/3650』から、客観的な視点で南條愛乃を捉えた今作『Nのハコ』。開放的なサウンドに乗せて、前に進む勇気や希望を高らかに宣言する「灰色ノ街へ告グ」、葛藤しながらも立ち止まることを許さず、明日の自分へと進む「ツナグワタシ」、未来へのカウントダウンを続ける“今”を爽やかに歩き出す「0-未来-」など、描くその姿には重なる部分が多い。

もちろん我関せずとがむしゃらに突き進むような孤立した姿ではなく、「ヒトビトヒトル」のようにそれぞれの“独る”存在を理解した上で、人々とたおやかにまた深く触れ合うもの。それは「希望」「前進する」という花言葉を持つガーベラを南條愛乃の姿に重ね合わせた「Gerbera」や、一緒にいることで目の前の世界が素敵に感じられる「今日もいい天気だよ」の歌詞にもよく表われているように思える。

南條愛乃
Nのハコ

NBCUniversal Entertainment
2016.07.13

FLAC・WAV 48kHz/24bit

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e-onkyo music
mora

 収録曲

 1.きみからみたわたし
   作詞:南條愛乃 作曲・編曲:戸田章世

 2.Oh my holiday!
   作詞:yozuca* 作曲・編曲:黒須克彦

 3.NECOME
   作詞:rino 作曲・編曲:lotta

 4.灰色ノ街へ告グ
   作詞・作曲:しほり 編曲:長田直之

 5.ゼロイチキセキ(TVアニメ「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?」エンディングテーマ)
   作詞:南條愛乃 作曲・編曲:橋本由香利

 6.Gerbera
   作詞:はるかひとみ 作曲・編曲:渡辺拓也

 7.ヒカリノ海
   作詞:ミルノ純 作曲・編曲:安瀬 聖

 8.idc
   作詞:KOTOKO 作曲・編曲:黒須克彦

 9.ツナグワタシ
   作詞:南條愛乃 作曲・編曲:黒須克彦

10.ヒトビトヒトル
   作詞:畑 亜貴 作曲・編曲:安瀬 聖

11.Dear..
   作詞:飯田里穂 作曲・編曲:増谷 賢

12.0-未来-
   作詞:川田まみ 作曲・編曲:増谷賢

13.今日もいい天気だよ
   作詞:南條愛乃 作曲・編曲:井内舞子

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