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INTERVIEW

2016.10.21

教えて純之介さん!Lantis音楽プロデューサー・佐藤純之介がズバリ回答!!「ハイレゾQ&A」Vol.3

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今さら人に聞きにくい、「ハイレゾって何?」という素朴な疑問。CD音源との違いから、ハイレゾを存分に楽しむために必要な機材の話まで、『ラブライブ!』など数多くの作品の音楽制作プロデューサーを務め、自らが手がけた作品のハイレゾ配信にも積極的な佐藤純之介氏に話を聞いた。
この「ハイレゾQ&A」の最終回となるVol.3では、佐藤氏のハイレゾに対する様々な試みや音楽と映像の関係、またレコードについてなど、さらに話を掘り下げて聞いてみた。

●教えて純之介さん!Lantis音楽プロデューサー・佐藤純之介がズバリ回答!!「ハイレゾQ&A」Vol.1はこちら
●教えて純之介さん!Lantis音楽プロデューサー・佐藤純之介がズバリ回答!!「ハイレゾQ&A」Vol.2はこちら

Interview by 田中尚道(クリエンタ)
Text by 青木佑磨(クリエンタ/学園祭学園)
at Lantis Magic Garden Studio 3st

Q. オーディオマニアの方が言う、ケーブルやSDカードのこだわりには意味があるんですか?
A. デジタルデータは劣化するものなので、ちゃんと意味があります!

──ハイレゾは上下の広がりではなく、解像度が上がることを楽しむものであるということがわかってよかったです。最初は正直、オカルト研究家に霊についての話を聞きに来るような気分でした(笑)。

佐藤純之介 まあケーブルの話とかになると、そういった側面もありますね(笑)。ただケーブルにこだわる理由ははっきりとわかっているんですよ。「CDはデジタルだから音が変わるわけないだろ」というのが皆さんの第一声なんですけど、実はデジタルだから音が変わるんです。デジタルデータからデジタル機材に繋がっていたとしても、ケーブルに流れている信号はアナログなんですよ。すごい高周波のアナログが流れているんです。すごく高周波なので、普通のケーブルのキャパシティを超えているせいで劣化(すべてが伝わっていない)しやすいんですね。実はCDには、その劣化をごまかすすテクノロジーが入っているんですよ。

──音楽に限らずにデータ全般がそうですね。断片化されたものが入っているとピックアップするときに読み落とすことがあって、コンピュータに錯覚させて間を埋めてしまうという技術があります。

佐藤 同じCDのデータでもただiTunesでリッピングするのではなくて、データを欠損させずに取り込んだものをちゃんとしたプレーヤーに入れてあげると、同じソースなのに全然良い音で聴こえるというのはありますね。劣化をごまかすためのエラー訂正は、結構厄介です。

──プレーヤーが解釈して訂正しているとなると、違う味付けになって出てくる可能性もないとは言い切れない訳ですね。

佐藤 僕が「ハイレゾをパッケージで出したくない」と思っているのは、そういう部分も含まれていますね。光メディア、回転メディアはエラー訂正が含まれるので劣化してしまうんです。USBメモリにも、「読み込みムラ」というのが存在したりしますので。

──SONYがハイレゾ用のmicroSDを出していましたが、あれには根拠はあるのでしょうか?

佐藤 あれは全然オカルトではないですよ。読み込むときにムラがあることで、音が悪くなると気付いた結果だと思います。

──製品化されているものには意味がある訳ですね。そう考えるとゼロイチのデジタル神話の方がオカルトなのかもしれませんね。

佐藤 そうなんですよ!「デジタルは変わらない」というのが、まず嘘ですからね。「そのゼロイチは、どこかでイチ消えているぞ」という。

──無限に0と1が入っている中で、どこかの一部が消えてしまう可能性はありますよね。

佐藤 その0と1をどう読み込むのかというのは、機械によってまた違うんです。だから使う機械によって音が変わるのは当然のことなんですよ。

Q. ハイレゾ音源のパッケージ販売はしないのですか?
A. ハイレゾの特性上、パッケージ販売は推奨していません。

──ハイレゾ音源は現状、値段が1曲につき1.5倍程度高いものになります。データ容量も大きいですし、「マニアのためのもの」ならばパッケージ化されてしかるべきという中で、その方法は考えられていますか?

佐藤 ちょっとマニアックな話になってしまいますが、SDカードやDVD-Rなどパッケージ化を試行錯誤してみた時期もあったんですよ。ただやっぱり自分の家に持ち帰って再生してみたときに、ストレージによって音が変わることがあったんです。こだわっていくと、やはりパッケージで売るフォーマットではないなと。僕は自分でもエバンジェリスト(宣教師)になりたいと思って、色んなフォーマットでの制作を試しているんですよ。例えばTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの曲でやったDSD256というフォーマットがあるんですけど、それは1曲につき1GBあるんです。ただ、周波数特性で言うとCDの256倍の特性があるんですよ。それで作ったら作ったで、旨みもあれば手間もかかって大変だったり。でもこういう音源を表現したいときには、このフォーマットがいいよねといつも話し合っています。

──ハイレゾに限らず様々なチャレンジをされているんですね。

佐藤 384kHzという96kHzのさらに4倍のフォーマットで音源を作ってみたり、今はとにかくいろいろ試してみているんです。いろんなフォーマットで作っている内に、じゃあ24bit/96kHzのハイレゾというのがすべてにおいてベストかというと、ノーだなと。でもいろいろなフォーマットにチャレンジしたうえで、毎回「◯◯版にしました」と再生のパッケージを変えていくと、毎回対応しているかどうかを確認しながらユーザーが再生機器を考えなくちゃいけない。でもパソコンに取り込んでハイレゾ対応ソフトをインストールしたら、どのフォーマットでもとりあえずドラッグ&ドロップしたら再生できる訳ですよ。だったらファイルで販売するのが、今としてはベースとして良いのかなという感じです。なるべくパッケージ販売ではない方法を社内でも推奨してやっています。

──たしかに再生ソフトなら、アップデートにも対応がしやすいですよね。

佐藤 そうなんです。いろんな再生ソフトって、なんやかんや変換して再生できたりもするんですよ。DSD256も、5万円のプレーヤーでもとりあえず突っ込んでおけば、96kHzに変換されて再生できて、96kHzの恩恵には預かれるわけです。だから、プレーヤーを買い替えて同じ音源を入れたら今度はフォーマットが上がって聴けるようになったりするので、それはそれで面白いなと思います。

──物を買わなきゃいけないということに、我々の世代は囚われてしまっているのかもしれませんね。

佐藤 でも僕は物を買ってもらうためにいろいろやっているところもあります。なぜなら、ハイレゾの機器が売れないことにはハイレゾ音源は売れないので。なので、買いたくなるような施策というのはすごく練っています。「自分が聴いている環境はこれ」というのを積極的に世に出すのも、それで興味を持って買ってくれることでハイレゾユーザーがひとり増えるわけじゃないですか。そういうお客さんを増やして、96kHzを聴けるユーザーを増やして、今度はDSD256で作った音楽を配信して、それを聴きたいがためにユーザーが増えてくれるというのが理想ですね。「買わなきゃ聴けないぞ~、でも聴いたらすごいんだぜ~」みたいな(笑)。

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