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REVIEW&COLUMN

2016.11.02

竹達彩奈『Lyrical Concerto』レビュー

竹達彩奈『Lyrical Concerto』レビュー

「Hey!カロリーQueen」「Little*Lion*Heart」「Miss. Revolutionist」などのシングル曲に新曲などを加えた15曲を収録した3rdアルバムが完成。

前作『Colore Serenata』から約2年ぶりとなる竹達彩奈のオリジナル・アルバム『Lyrical Concerto』。3枚のシングル曲「Little*Lion*Heart」「Hey!カロリーQueen」「Miss. Revolutionist」、ならびにそのカップリング曲や、書き下ろしの新曲などを加えた全15曲を収録している。Takeshi Yokemura(YMCK)、シミズコウヘイ(カラスは真っ白)、ミト神前 暁沖井礼二小林俊太郎中塚 武山田高弘、やしきんなどの作家陣が参加。さらに幅を広げたサウンドに挑戦する竹達彩奈のヴォーカルが、多彩な表情をみせる楽曲の数々が収められている。

「Hey! カロリーQueen」

竹達彩奈もメインヒロインである枝垂ほたる役で出演したTVアニメ『だがしかし』のEDテーマとなった8枚目のシングル。「Strawberry☆Kiss」「CANDY LOVE」「マシュマロ」「ちょこっとHONEYCOMB」など甘いものやお菓子といったものを連想させる曲名が多い竹達彩奈の作品において、駄菓子がテーマであるアニメの世界観を投影しつつ、さらに“食す”という行為まで踏み込んだこの曲は、ある意味、名(迷)曲「ライスとぅミートゅー」の発展系とも言えるかもしれない。なるほど、彼女にふさわしいというか竹達彩奈ならではのナンバーだ。作詞、作曲、そして編曲までをも手がけるのは、自身の作曲家デビューから竹達彩奈には縁が深いやしきん

チョコやラムネ、キャンディやグミ、ソースせんべいにコーラ味のチューインガムとお菓子の国を縦断する歌詞と併行して、情熱的なスパニッシュギターの旋律にミュゼット風のフレーズを交え、カルヴァナルのパレードのようなアッパーなものへとめくるめく展開を遂げるサウンドを構成する音色がいっそう鮮やかに伝わってくるハイレゾ。
作曲を手がけた水樹奈々の「METRO BAROQUE」や、内田真礼「ギミー!レボリューション」のアレンジでも披露した、やしきんの特色である跳ねるサウンドがさらに活き活きと鳴り響いている。ダイナミクスの広がりによって音の大小がよりきめ細かく表現されており、ますますノリの良さが印象的に感じられる仕上がりになっている。

“乙女のウエストには 愛と夢と欲望がのってるの”と語る歌声は、恋する気持ちと食べたい気持ち、どちらも「別腹」と言わんばかりに“止まらないやめられない”衝動を貪欲に表わし、躍動的なビートやリズムが織り成すはち切れんばかりのサウンドに抑揚を弾ませる。その熱量の高さはまさに“カロリーQueen”。“しゅわり”や“はむはむ”などの、韻を踏みつつ差し込む擬音ちっくな言葉遣いも可愛らしく、“イェイイェイ”も合いの手が入れやすい、また雑食的な歌謡要素も多分に含んだサウンドによるこの曲は、実にアニソンらしい、そしてアニソンならではの完成度を誇っている。

「キミイロ モノローグ」「ユメイロソレイユ」

作詞は竹達彩奈、作曲と編曲は、カラスは真っ白のシミズコウヘイ。シミズコウヘイはこのアルバムにも参加している沖井礼二のバンド、TWEEDEESのライヴ、また沖井礼二や小林俊太郎とともに竹達彩奈のバースデーイベントにギタリストとして参加をしている。「キミイロ モノローグ」はシングル『Little*Lion*Heart』のカップリングとして収録され(この時のハイレゾは48kHz/24bit)、このアルバムではYMCKのTakeshi Yokemuraによる1分弱のオープニングナンバー「JUMP AND DASH!!!」に続いて並んでいる。

こちらも前述の通り音量の抑揚を生かした傾向となっており、鼓動を映すタイトなビートと揺れ動く想いを伝える柔らかに反復するリズムによるしっとりとした導入部から、波紋のような音に導かれ、心の奥底に押し込めていた“気づかないふりをした ほんとのきもち”に触れた瞬間を表わす、荒々しくかき鳴らされるギターの激しさに至る展開へと、内面を描く音の強弱、そのコントラストも著しく、楽曲をさらにスリリングによりドラマチックに彩る。コンプレッションも程よく保たれており、しっかりとした分離感もあいまってそのメリハリ感が明快に伝わる。

ヴォーカルはリズムに寄せて囁くような前半部から次第にメロディへとその比重を移し、伸びのある抑揚で情景を淡く照らし出す。前向きな歌詞を歌いながらも透明感のある穏やかな歌声は何処か切なく、月が浮かぶ夜の狭間に漂ってはやがて静かに消えゆくような儚さをそっと忍ばせている。

同じく竹達&シミズのコンビによるラストナンバー「ユメイロソレイユ」は、“僕”の想いを語り夜のイメージを醸し出す「キミイロ モノローグ」とは対照的に、太陽の光がキラキラと降り注ぐ中、カラフルなポップトロニカ・サウンドに明るい歌声がふわふわと弾む。包み込むような“にゃにゃにゃー”のコーラスと、“街で見かけたかわいい子猫のように 「にゃ~お」なんて言ってみたりしちゃったんだ”の言葉の通り、恋に夢中な女の子の甘える姿を描く「あやにゃん」の甘さもアルバム随一、とろけるような歌声が耳元で軽やかに響く。立体的な音像のギターやベースもその甘さをさらに引き立てるようにファンキーに奏でられている。不思議な浮遊感を帯びたファニーなヴォーカリスト・ヤギヌマ カナを有するカラスは真っ白の作曲を担当するシミズコウヘイだけに、ウィスパーヴォイスが効果的に映える楽曲制作に長けており、またそれにすんなりと調和させる竹達彩奈の表現力も巧みで、二人の音楽的な相性のよさがこの曲でも感じられる。

80年代のゲーム機器のようなチップチューン・サウンドにこれまたゲームの中のヴォイスのような歌声がアルバムの始まりを告げる「JUMP AND DASH!!!」
ストレンジ・フューチャーポップの名盤『FAKEVOX』を生み出したPlus-Tech Squeeze Boxのハヤシベトモノリによる、ファンタスティックな音世界が広がる「SWEETS is CIRCUS」
作詞がTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND松井洋平、作曲と編曲はクラムボンのミトという劇伴ユニット“TO-MAS”のメンバーでもあるふたりが手がけたエモーショナルポップ「AWARENESS」
中川翔子の「空色デイズ」を初めとして水樹奈々や高垣彩陽、fripSide、やなぎなぎなど様々な楽曲に携わっている齋藤真也によるストレートなロックナンバー「Starline」
藤林聖子MONACA神前 暁とともに、抑圧された近未来社会で解放を唱える少女革命家のイメージを楽曲に投影する「Miss. Revolutionist」

NHKの『みんなのうた』で放送された「恋花火」や「月のワルツ」が大きな話題を呼んだシンガーソングライターの諫山実生(「月のワルツ」のアニメは『さくら荘のペットな彼女』『ノーゲーム・ノーライフ』の監督・いしづかあきこのプロとしての監督デビュー作である)の作詞・作曲と、おおたか静流や河井英里らの作品を手がけた加藤みちあきによるアレンジで、恋するネコの姿を優しく描く「君に恋シテル。」
沖井礼二らしくベースラインが曲を引っ張り、過ぎ去る季節をやり過ごしてきた感情をセンチメンタルに加速させる「朝焼けと約束の歌」

TVアニメ『魔法陣グルグル』の主題歌「晴れてハレルヤ」「Wind Climbing ~風にあそばれて~」などでもおなじみのシンガーソングライター、奥井亜紀と、乃木坂46の「ガールズルール」やフェロ☆メンの名曲「 抱きよせてTONIGHT」を手がけた後藤康二(TVアニメ『黄昏乙女×アムネジア』のEDテーマとなった奥井亜紀の「カランドリエ」の編曲も担当している)との組み合わせによる「パルス通信」は、聴く者をそっと元気にしてくれるメロディとのどやかな歌声が温かい。
Rhodanthe*の「Your Voice」や花澤香菜への楽曲提供も多い中塚 武「ナナイロ⇔モノクロ」は、洗練されたエレクトロニック・サウンドが耳に心地好よい。
『ラブライブ!』の楽曲や楠田亜衣奈の音楽プロデュースでもおなじみの山田高弘による青春ロック「Happy Future」
爽やかにサウンドが疾走する、竹達彩奈もホー・ユイフォン役で出演していたTVアニメ『ランス・アンド・マスクス』のEDテーマ「Little*Lion*Heart」は、LiSAの「AxxxiS」「アコガレ望遠鏡」「FRAGILE VAMPIRE」を手がけ、OLDCODEXの楽曲に数多く携わっているebaによるもの。

「齧りかけの林檎」や「わんだふるワールド」など竹達作品では多くの楽曲を手がけている小林俊太郎による「らっきーちゅーん♪」は、前作に収録された「サーフでゴゴゴ」(作詞・作曲・編曲:沖井礼二)のようなオールドスタイルでシンプルなロックを軽快に聴かせる。

理想と空想と幻想の夢物語を描くというテーマをもとに制作された今作。それぞれの楽曲の主人公の心情を歌い分ける竹達彩奈の表現力が前作にも増して豊かになっており、ハイレゾではその響きもまた活き活きと伝わってくる。歌声はこのうえなくキュートに、その魅力がさらに深まる内容となっている。

1010_通常盤_Lyicalconcerto_booklet_p28_ol竹達彩奈
Lyrical Concerto

ポニーキャニオン
2016.11.02

FLAC・WAV 96kHz/24bit

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e-onkyo music
mora

 収録曲

 1.JUMP AND DASH!!!
   作詞・作曲・編曲:Takeshi Yokemura(YMCK)

 2.キミイロ モノローグ
   作詞:竹達彩奈  作曲・編曲:シミズコウヘイ

 3.SWEETS is CIRCUS
   作詞・作曲・編曲:ハヤシベトモノリ

 4.AWARENESS
   作詞:松井洋平  作曲・編曲:ミト

 5.Starline
   作詞:Rico  作曲・編曲:齋藤真也

 6.Miss. Revolutionist
   作詞:藤林聖子  作曲・編曲:神前暁(MONACA)

 7.君に恋シテル。
   作詞・作曲:諫山実生  編曲:加藤みちあき

 8.朝焼けと約束の歌
   作詞・作曲・編曲:沖井礼二

 9.パルス通信
   作詞・作曲:奥井亜紀  編曲:後藤康二(ck510)

10.ナナイロ⇔モノクロ
   作詞・作曲・編曲:中塚武

11.Happy Future
   作詞・作曲・編曲:山田高弘

12.Little*Lion*Heart
   作詞:hotaru  作曲・編曲:eba

13.らっきーちゅーん♪
   作詞:加藤哉子  作曲・編曲:小林俊太郎

14.Hey! カロリーQueen
   作詞・作曲・編曲:やしきん

15.ユメイロソレイユ
   作詞:竹達彩奈  作曲・編曲:シミズコウヘイ

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