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2018.04.10

ライブは帰る場所になった――鳴り止まない拍手に、特別なダブルアンコール!坂本真綾LIVE TOUR 2018 “ALL CLEAR”ファイナル公演レポート

ライブは帰る場所になった――鳴り止まない拍手に、特別なダブルアンコール!坂本真綾LIVE TOUR 2018 “ALL CLEAR”ファイナル公演レポート

20周年イヤーを終え、全国ツアーとしては約2年ぶりとなる今回のツアー。その間もファンクラブツアーや広島・嚴島神社の高舞台でのライブはあったものの、こうやって全国でライブを見ることができるのは本当に久々な感じがする。ツアーのタイトルは“ALL CLEAR”。今そのくらい彼女の気持ちは晴れ渡っていて、離陸したい、飛び立ちたい気持ちでいっぱい、ということのようだ。2日間行われたNHKホールの二日目、ツアーファイナルの模様をレポートする。

会場に飛行機が離陸する音が響くと、演奏とクラップがほぼ同時にスタート。坂本真綾がステージ袖から登場しセンターにたどり着くと、「プラチナ」を歌い始める。TVアニメ『カードキャプターさくら』のOPテーマで、リリースしたのは99年となる。これまでたくさんの人に影響を与え、そしてずっと愛され続けてきたアニメ史に残る名曲である。18年1月から始まった『カードキャプターさくら クリアカード編』で再びOPテーマ「CLEAR」を歌うことになり、それがこのツアータイトルにも繋がっているのだが、それを踏まえても最高の選曲と言えるだろう。

そして今回のツアーの大きな見どころのひとつが、今堀恒雄と石成正人という、超絶素晴らしいギタリストがふたり同時にいるという点だ。坂本真綾のライブではお馴染みのふたりだが、どちらか一人ということが多いのに、今回はふたりいる。つまりアコギのバッキングとエレキのギターソロが楽しめるという贅沢!さっそくそれが顕著だった「走る」。ずっと鳴り響くアコギでリズムを取りながら、途中、石成正人のムードのあるギターソロが盛り上げてくれる。アウトロなどはライブならではのアレンジで、会場の雰囲気を気持ちよく引き上げてくれる感じがした。

「38年と1日生きています!昨日誕生日に一緒にいられなかった人、今日祝ってくれても大丈夫です。ツアーファイナル、一緒に楽しんでください!」と短い挨拶の後、懐かしい曲行くよ!と「ハニー・カム」に。リリースタイミング的には前の2曲よりも新しいのだが、ライブではほとんど聴いたことがない。今回のツアーはアルバムを引っさげてのライブではないので、彼女が歌いたい曲をうたうという意図があったそう。しかもパンフレットによると、このふたりがギターを弾いてくれるからこの曲をやりたいというのもあったらしいので、最初からツインギターが映える曲ばかりだった。「マメシバ」などは原曲の雰囲気のまま、ボーカルを軸に、今堀のエレキと石成のアコギ、そしてベース、ドラム、コーラス、クラップが一体となって徐々に盛り上がっていく感じが素晴らしく、続く「24」と新曲「レコード」では、今度は今堀のムーディーなエレキギターが冴え渡っていた。特に「レコード」は12弦のアコギの響きも心地良かったし、歌のノスタルジックな感じが音全体から伝わってきた。演奏面のことばかり書いてしまっているが、坂本真綾のボーカルの存在感というのは図抜けていて、発した瞬間、会場全体を彼女の世界に取り込んでしまうような、そんな圧倒的なところがある。それは、その場にいないと伝わらない凄みなのかもしれない。

「ここからアコースティックでゆったりと聴いていただく曲が続きます。次の曲は懐かしいにもほどがある!……私がデビューして間もない頃に歌った曲で、愛とか何のことかさっぱりわからないくらいの時期に、こんな大人っぽい歌を歌わせていただきました」と言って初期の楽曲「光の中へ」を歌う。あまりにも美しい旋律に感動する楽曲だが、ピアノやマンドリンの柔らかい音色に包まれながら、音源とはまた違う、今の坂本真綾の深みのある表現力に聴き入ってしまった。「美しい人」の最後、佐野康夫による迫力のあるドラムソロから「奇跡の海」へ流れるように繋がる。そして「ロードムービー」では“でも終わらない旅もあるのね”と歌う。離陸するところから始まったこのライブで、まだこの先も旅は続いていくんだと、そんな未来を感じさせてくれた。

石成のアーバンなギターもカッコ良かった。坂本真綾が衣装チェンジのためステージから一旦退場すると、インストの「夜明けのオクターブ」へ。バンマスの河野伸もアコギで加わり、ギタレレ(石成)、マンドリン(今堀)が中央で、軽快に、そして陽気にこの楽曲を奏で、観客もクラップをしながら一緒に楽しんでいた。

青く爽やかな衣装を着てステージに戻った坂本真綾。「Million Clouds」は、ワクワクするような初々しい想いを感じさせてくれる。これは『あまんちゅ!』第1期(2016)のOPテーマだったが、彼女のタイアップ曲は作品との親和性も高く、次に歌った「ロマーシカ」(※「Million Clouds」のカップリング曲)含め、きれいな海が目の前に広がっているような感覚だった。

メンバー紹介のあとのライブ終盤は、坂本真綾難解楽曲のオンパレード(笑)。何年も愛され続けている「ヘミソフィア」、そしてスマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』第2部の主題歌「逆光」を披露。ゲームのCMでサビだけは流れていて、その時点でメロディが独特だと感じていたが、展開が難しく、速い楽曲もいつの間にか彼女の色となり、ライブを彩るようになっている。さらに「“ALL CLEAR”メドレー」と題して、『Fate/Grand Order』の主題歌「色彩」や「Be mine!」など、新旧織り交ぜたセレクトのメドレーで楽しませる。どれも色褪せず、心に響く曲ばかりだ。

青から、いろいろな色が重ねられていったライブの本編最後に歌われたのが「CLEAR」。
「約20年前、『プラチナ』で〈みつけたいなあ かなえたいなあ〉って言っていたときの私は、文字の通り、何かが起きることを待っている女の子でした。それがライブで歌い続けていく中で、自分で見つけたい、叶えたいって手を伸ばして掴んでいくような歌に変わっていった。みなさんと育てていった曲だと思います。『CLEAR』の歌詞は、今の子供たちだけではなく、あの頃見ていた人たちが20年近く経って、それなりに社会に出てもまれて、いろいろ経験して、心の泉が枯れそうになるときもあって……魔法が使えるわけではないとわかったあとの女の子たちが今どうしているかを考えながら書きました。それは私もそうだからです。いろんな経験をして、でもまだここに立っている。〈翼がないなら走ってくわ〉という歌詞は、きっとみんなもそうなんじゃないかなと思って書いた言葉です。あのあとの私たちの日々を歌ったつもりです」
歌の前のMCでこの曲の歌詞について触れる。歌がアニメと結びつき、歌詞を深く理解することで、楽曲の良さがさらに広がっていく。この曲で、ステージのバックの装飾がなくなり真っ白になる演出があったが、いろいろなものを抱えた上での新たな始まり、晴れ渡ったまっさらな気持ちを表しているようだった。

アンコールのMCで「ツアー終わるけど、終わりは始まり。離陸した飛行機が、行く先々でいろんな景色をお見せできると思うので楽しみにしてください」と約束すると、『The best covers of DREAMS COME TRUE ドリウタ Vol.1』でカヴァーした「三日月」を、曲に対する深い思い入れを語ったあとに唄う。そして、〈春に生まれたせいかしら〉という歌詞から始まる誕生日時期にピッタリの「カザミドリ」、「最近難しい曲ばかり歌っているイメージですが、一瞬で覚えられる曲です」と言って、TVアニメ『あまんちゅ!~あどばんす~』のEDテーマ「ハロー、ハロー」(5/23発売)を披露。最後は「私が一番好きな曲かもしれません」と言って「シンガーソングライター」を歌ってライブを終えたはず……なのだが、全員がステージを去っても、客電が点いても拍手が全然鳴り止まない。場内アナウンスも聞こえないレベルの拍手がずっと響き続けてしまう。

「まだ帰んないのかい!まったくもう、そんなに楽しかったとは(照)。手を叩いたら出てくる前例じゃないからね!特別よ。でもうれしいです、ありがとう。ライブが帰ってくる場所になったのは、私だけじゃなくてスタッフも泣いてると思うよ」と言って、最後の最後に“特別に”「ポケットを空にして」をみんなで歌って、本当に幸せだったツアーを終えた。

Text By 塚越淳一

坂本真綾 LIVE TOUR 2018 “ALL CLEAR”
2018年4月1日(日)【東京】NHKホール
<セットリスト>
1.プラチナ
2.走る
3.ハニー・カム
4.マメシバ
5.夜
6.24
7.レコード(新曲)
8.光の中へ
9.美しい人
10.奇跡の海
11.ロードムービー
12.夜明けのオクターブ
13.Million Clouds
14.ロマーシカ
15.ヘミソフィア
16.逆光(新曲)
17.“ALL CLEAR”メドレー
色彩~トライアングラー~Be mine!~tune the rainbow~指輪~
幸せについて私が知っている5つの方法~マジックナンバー
18.CLEAR(新曲)

ENCORE
19.三日月
20.カザミドリ
21.ハロー、ハロー(新曲)
22.シンガーソングライター

W ENCORE
23.ポケットを空にして

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