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INTERVIEW

2018.03.21

VALSHE 集大成だったアルバムの先への一歩 両A面シングル「激情型カフネ/ラピスラズリ」インタビュー

VALSHE 集大成だったアルバムの先への一歩 両A面シングル「激情型カフネ/ラピスラズリ」インタビュー

VALSHEが11枚目の両A面となるシングル「激情型カフネ/ラピスラズリ」をリリースする。『WONDERFUL CURVE』という充実のアルバムの制作を完成させたあとのあらたな一歩を踏み出す、2018年の彼女の道を示す重厚感のある1枚となったようだ。この1枚に込められた世界観をインタビューから解き明かしていこう。

ストーリーに感動した思いから、ストレートに収録した歌

――今回のシングルは両A面で、どちらの曲もストーリー性の高い内容です。「激情型カフネ」の方は和のテイストが盛り込まれていますが、これらはVALSHEさんが今こうしたモードであるということを示したものなのでしょうか?

VALSHE 構想としては温めていました。過去の楽曲の中にもサウンドや歌詞に和のテイストが含まれているものはわずかにあるのですが、たしかにがっつりと表題楽曲でこうしたテイストを入れたのは初めてですね。全体的な構想としては2017年のアルバム『WONDERFUL CURVE』の制作と同時期にありました。サウンド感に和のテイストを盛り込むとか、ジャケットの髪型とかまで漠然と考えていて、アルバムの制作が始まったときにサウンドプロデューサーと音作りを相談するなかで、来年(2018)やろうという話にまとまりました。『WONDERFUL CURVE』という作品はそれまでの2年間位のサウンド的なまとめという意味のフル・アルバムだったので、その次という意味での新しいこととして、和がやりたいというところに着地したという感じですね。

――今までで和のメロディーに触れた強烈な体験はお持ちだったりしますか?

VALSHE 自分自身が奏者になったことはないのですが、祖母がお琴の師匠で、その意味では和楽器というものや旋律には幼い頃から親しみがありました。あと祖父が演歌の師匠で音頭取りなどをしていたので、和の文化やサウンド感は最初としてはなじみ深くあります。

――このシングルは両A面ですが制作順としてはどちらから?

VALSHE 「ラピスラズリ」がPCゲーム「マジェスティック☆マジョリカル」のEDテーマで、その制作時期も関係してこちらが先です。『WONDERFUL CURVE』のツアーである「WONDER BALANZA」を終えてすぐくらいに作り始めた感じでした。

――では「ラピスラズリ」の方から伺わせてください。このゲームではこれまでVALSHE さんのイメージイラストを描かれている白皙さんがキャラクターデザインをされています。そこで主題歌を歌われるということに対してどんな想いでしょうか?

VALSHE 自分自身、過去に「WRITERZ」というスマートフォンアプリの作品でデザインから制作まで加わらせていただいて、そこで白皙がキャラクターデザインやイラストを手がけ、VALSHEが曲を乗せてというところは経験があったのですが、いつかもっと大きなフィールドの中で白皙が描いたイラストの作品でテーマソングを歌うのがひとつの夢だよねと話していたので、今回こうしたお話をいただいてそれが叶ったことがうれしかったです。VALSHE としては顔を出してライブやイベントに出るなかでイラストとの比率が変わっていく一方、イラストで何かを作りたいという思いも変わらずに持っているので、自分自身も気合を入れて最大限作品に歩み寄れるような曲を作りたいなという気持ちがありました。

――作詞に当たっては主題歌としてゲームのストーリーや世界観をじっくりとお読みになって書くという作り方でしょうか?

VALSHE そうですね。ゲーム作品の世界観が宇宙を舞台にした物語というところから、楽曲もそうした星空を連想させるようなイメージのものがあればというリクエストをいただき、脚本も読ませていただきました。自分としては乙女向けゲームの脚本をじっくりと読むことは初めてでしたので、ただただストーリーに感動したことが意外な経験でした。一人ひとりにエピソードがあって、主人公の行動や人間味のあるストーリーというところに惹かれていき、作詞をするうえでは自分自身が共感した部分や感動した部分を集中的に書かせていただきました。

――編曲のHijiri Anzeさんとは初めてのお仕事になりますが、この曲の完成までにはどのようなアイディアのやり取りをされたのでしょうか?

VALSHE ストリングスやピアノといった楽器については自分が作ったデモのサウンドを引き継いでいただいて、それをブラッシュアップしていただいたような形です。作品性やプレイヤー層をディレクターと一緒に考えてアレンジャーさんを検討していくなかで、Anzeさんが編曲した楽曲を聞かせていただいて「ラピスラズリ」の楽曲のイメージにすごくマッチしていると思って。初めての方とお仕事をするという意味での挑戦も含まれていたのですが、一回目からイメージに沿った編曲を戻してきてくださって、これからもお願いしたいなと思うくらいとても素敵な編曲でした。自分自身、デモの段階だと半信半疑な部分がいつもあるんです。それが編曲だったり他の人の手が加わって形になることでより良い曲になっていくのを、初めての方と短時間で実感できたことが自分自身すごいなと感動した楽曲でもありました。

――歌入れはいかがでしたか?

VALSHE いつもレコーディングの前はどういうふうに歌うかを頭の中で考えるのですが、この曲は素直なバラードというところであまり難しく考えずに素直に歌うのがいいんだろうなと漠然と思っていて。なので、歌唱的にはあまりトリッキーにならずに気持ちを伝えるところをいちばん大事にしてブースに入りました。ゲームのテーマソングというところもあるからか、自分の頭に浮かべるイメージもすごく具体的でストレートに出てきたので、そういう意味では自分自身でテーマを決めて作る楽曲のレコーディングよりはストンと落ちてきたような感じがしました。

――では一方の「激情型カフネ」はご自身の中でじっくり作り上げていったタイプの楽曲といっていいものでしょうか?

VALSHE はい。楽曲の背景やテーマ、ストーリー性というところも含めて自分自身で作り上げているものなので。こういうふうに歌ってみたら面白いんじゃないかとか、イコールの先を知っているのは自分なので、そういう意味では模索のしようが多分にあった楽曲でした。

――「模索のしようがある」というのが興味深いです。自作で自演する場合はその先の答えを知って作っていると勝手に想像していたもので。作っていくなかでいかようにも変わるんですね。

VALSHE そうですね。すごく簡単なところでいうと自分の声質だとかビブラートがどれくらいの温度感で感情を出すかによって聞こえ方が全然変わったりするんです。模索と言いましたが遊んで試している感覚に近かったりします。この歌詞でいえば「比べられて傷ついたわ」という部分をどれくらいのテンション感で言うのがいちばん曲として良いだろう、とか。感情を込めるか、それとも淡々と表現するかによって結構印象が変わるので、それを遊びながら見つけていくというのが楽しい制作でした。

次を作りたいという欲を自分の中で発見したツアー

――「激情型カフネ」の楽曲はどんなふうに作られていったのでしょうか?

VALSHE 自分の中では疾走感があって、アニメソングにもなりそうな楽曲を作りたいと思っていたときにデモを作った曲なんです。今回のテーマで作るにあたって曲のイメージと紐付いて、和のテイストやバンド感を肉付けしていったという作りです。

――この歌詞のストーリーはどういう発想から生まれたのでしょうか?

VALSHE もともと自分自身が現実的に感じている心情や経験をフィクションの中に投影するという作り方はおなじみなのですが、それを突き詰め、自分から遠いところにあるフィクションに自分の気持ちを突っ込んだらどういうふうになるかというところに興味がありました。「激情型カフネ」も「ラピスラズリ」も対照的ですが、「愛」というテーマをもとに作っている楽曲で、これまでちょっといびつな愛はテーマにしたことはあっても、「ラピスラズリ」のような純粋でストレートな愛の曲は少なかったんです。「愛」って、過去には自分が歌詞に積極的に採用しないテーマで遠いところにあると思っていて、もっと言えばあまり触れたくないなというようなテーマでもあったんですね。そのうえで、自分が理解しえない更に向こう側の情念をキーワードにした世界観というのも面白いかもと思って、自分自身と真逆のところにいるようなものに踏み込むという挑戦からこのテーマに決まった感じですね。

――ちょっと遠ざけていたものに踏み込もうと思ったのはやっぱり『WONDERFUL CURVE』の達成の後のシングルだから?

VALSHE そうだと思います。きっと『WONDERFUL CURVE』の前の段階でこういうことをしようとは思わなかったはずなので。フルアルバムを持ってツアーを回る中で自分自身で得たものだったりが今回の作品のテーマを作る経緯になっていたりします。「WONDER BALANZA」は自分がどこに行きたいのかと感覚的にすごく感じるツアーでした。これまでのライブは自分のやりたいことができたとか、お客さんがうれしそうで良かったとか、語弊を恐れず言えばその都度に対しての充足感だったんですが、このツアーは次はもっとこうしたいとかこうでありたいとか、あってほしいとか、こうなりたいんだと思える欲が自分の中にちゃんとあるんだと思えたんです。だから翌年の構想や想像の仕方が自分の中で変わった。それを今年これからこの作品の向こう側にあるものというところも含めて見せられたらと思っています。

――歌詞がタイトルの「カフネ」を除きすべて日本語なのは最初から意図されていたことなのでしょうか?

VALSHE 厳密に言うと意図してではないのですが、「激情型カフネ」というタイトルをつけた段階でビジュアルの構想とかミュージックビデオまで漠然としたイメージはあったので、そのうえで歌詞を具体的に書いていったので自然と日本語以外が出てこなかったという。結果として出来上がったものを見たら使われていなかったという形ですね。

――歌唱の部分でここまでの低音は聞いた覚えがないくらいのものでした。

VALSHE リード曲ではないもので言えば低いものも過去にはありましたが、表題楽曲でここまで低いのはたしかに初めてですね。音域を駆使した楽曲を歌うことは個人的にすごく好きで、広ければ広いほど曲や歌詞の世界にも真実味や抑揚が出ると思っていて、その中でサビに向かうまでのメロディラインという構成は今回のテーマにすごく合っていて自分自身も良かったなと思います。

――トライは何度も重ねられましたか?

VALSHE レコーディングに関しては基本的にどの曲も4テイクです。録る時間もほぼ変わらないですね。30分強くらいで、それ以上時間はかけないし、それ以下でもないので。ただ、これは5回録りました。表題楽曲でレコーディングが久しぶりのときはボーナストラックというのがあるんですよ(笑)。4テイク目の最後のサビをとっているときに、「終わってしまう~」と自分が叫ぶと、サウンドプロデューサーが「じゃあ、ボーナストラック行ってみる?」と言ってくれるんです(笑)。

――5本目のニュアンスや歌い方は4本をとる中で湧いてきた気持ちを発するという感じですか?

VALSHE いや、5本目は気の向くまま好きに歌いますね。レコーディングに向かうときの歌唱って感情的な歌であってもやっぱり気をつけたり気に留める部分が必ずあるんですけど、ボーナストラックに関してはそういうことを気にせずに、歌いたいように歌うという感じなので。

――「激情型カフネ」にもその部分は採用されていますか?

VALSHE はい。リスナーにはそれがどこかを探してもらいましょう(笑)。

―― 「激情型カフネ」ミュージックビデオでは初めての男役に挑戦されましたが、いかがでしたか?

VALSHE 物語の上で男性であるという設定を自分でつけたので一応男役とは言っているんですけど、男役だから何か変えたかということはなくて、収録の日の朝に「今日は男性役か」と一瞬思いはしたものの、その後は一切思い出すことなく撮っていったので、わりと自然に撮れたと思います。
――MVではお芝居が長めに使われていましたね。あの女性はどんな方ですか?

VALSHE 以前「storyteller」という作品をステージ化した、ファンクラブ限定の「歌劇演舞」という音楽劇を行なった際にキャストだった大野 愛さんに再びお願いしました。作品のストーリーとこの女性の立ち位置、VALSHE演じる役柄との関係性は事前に伝えた上で本人に役の細かな部分は考えて作ってきてもらいました。期待以上のものを見せてくれて非常に良いお芝居になったと思います。MVにストーリー性を盛り込むのはよく行なっていますが、今回はストーリーの結末がハッキリ描かれているので、全編通して気持ちよく見終えることができるのではないかなと思います。

――ちなみにMVに登場したあの掛け軸はどなたによるものですか?

VALSHE 絵を手がけているのは白皙です。あの掛け軸は「激情型カフネ」の重要なモチーフになっていてキャッチにもある「千年あれば、ケリはつく」と関係しています。まだすべては明かせないのですが、2018年のVALSHEはこれを拠点にしてと考えていただければ今年すごく楽しい一年になるんじゃないかなと思います。とは言いつつも「激情型カフネ」単体でも曲やストーリーが仕上がっているので、まずは今聴いて楽しんでいただければと思います。

重厚感のある作品が作れたという実感、2018年の展望

――3曲目の「EXECUTOR」はdorikoさんの楽曲ですがこの制作においてはどのようなやり取りがあったのでしょうか?

VALSHE この楽曲はアーケードゲームの「CHUNITHM」という作品に収録されている楽曲で、ゲームの制作サイドからのリクエストとして、ヴァンパイアハンターであるとかゴシックなというイメージがあって、その上でdorikoが考えて制作したものです。VALSHE の歌唱、dorikoが楽曲を手がけてキャラクターデザインを白皙が手がけるという新しいコラボレーションに挑戦できた思い出深い曲です。ゲームの制作タイミング的に昨年の春頃に収録をしたので、次の音源として入れたいと思っていました。今回収録するにあたってあらたなコーラスやハーモニーを随所に散りばめていてサウンドも生まれ変わっているので、ゲームで知ってくれた方や既に聴いている方が聴いていただくと変化が顕著なものになっているのでより楽しんでいただけると思います。

――アーケードで聴いていた方もまた新たに楽しめるトラックに仕上がっているんですね。

VALSHE 自分自身もdorikoと一緒にゲームをプレイしに行ったのですが、かなり100円玉を積まないと出てこない曲なんです(笑)。ピアノの鍵盤のようなキーをリズムに合わせて叩くというゲームということもあって、ピアノの旋律がすごく美しい楽曲になっていて、それがまた本当に演奏しているような気分になれるので、シングル先行で聴いた方はゲームをやっていただくと自分が本当に演奏しているかのような気持ちになれるので、いろんな楽しみ方ができる曲になったなと作者的にもうれしく感じていると思います。

――あとひとつ気になったのですが、ラピスラズリ盤のDVDに「激笑型VALSHE」とありますが、これは何でしょうか?

VALSHE これはタイトル通り完全バラエティ映像なんです。「激情型カフネ」というシリアスでクールな作品とか「ラピスラズリ」という純粋な愛をテーマにしたストレートなものを全部払拭するくらいの映像です(笑)。ヒントとしては洗面器と水とVALSHEで、自分自身も本当に楽しく収録させてもらった映像なのですが、スタッフ間でギリギリまで物議を醸した内容です。身体を張りました。

――VALSHEさんは自分自身が作りたいものを作っているという印象ですが、そういうところには止めが入るんですね。

VALSHE 最終的に「やるならとことんやらないとバラエティではない」という信念を汲んでいただいて、やるところまで行った作品になっています(笑)。これもMVを制作してくれているチームにお願いして作っていただいているので、仕上がりとしても完成度が高いので、ぜひぜひこれも皆さんに観ていただきたいですね。

――最後にこの一枚全体を作り上げての達成のお気持ちを聞かせていただけますでしょうか?

VALSHE ツアーを経て気持ちをあらたに2018年全体を見据えて作った作品ということもあり、さらに久しぶりの両A面の作品ということもあって非常に自分自身でも重厚感のある作品が作れたのではないかなと感じております。またこれから生まれてくるまだ見ぬ作品というところも引き続き楽しみにしていただけるような作品ができたと思いますので、楽曲を聴くのみならず、見たり体感するというところも、今後楽しみにしながら作品を追っていただけたらなと思います。

Interview&Text By 日詰明嘉


●リリース情報
VALSHE 11thSingle
「激情型カフネ/ラピスラズリ」
3月21日発売

【カフネ盤(CD+DVD)】

品番:JBCZ-4040
価格:¥1,900(税込)

<CD>
M1. 激情型カフネ
M2. ラピスラズリ
M3. EXECUTOR

<DVD>
・「激情型カフネ」Music Video
・Making of 「激情型カフネ」

【ラピス盤(CD+DVD)】

品番:JBCZ-4041
価格:¥1,900(税込)

<CD>
M1. ラピスラズリ
M2. 激情型カフネ
M3. EXECUTOR

<DVD>
・「ラピスラズリ」Music Video
・激笑型VALSHE

【通常盤(CD)】

品番:JBCZ-4042
価格:¥1,300(税込)

<CD>
M1. 激情型カフネ
M2. ラピスラズリ
M3. EXECUTOR

※全共通封入特典
アナザーJK 全4種類のうち1種類ランダム封入

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