1月31日に活動10周年を記念し、凛が全16曲入りの1stフルアルバム『凛イズム』を発売。本作には、TVアニメ『クロスファイト ビーダマン』のOPテーマ「TRUTH」やEDテーマ「片翼-ツバサ-の行方」、TVアニメ『カードファイト!!ヴァンガード アジアサーキット編』のEDテーマ「情熱イズム」なども収録。改めて、凛とはどういうシンガーかという魅力も伝えつつ、ここへ至るまでの苦悩や葛藤も含め、ふたたび高らかに声を上げた凛の魅力を、ここにお伝えしたい。
――2017年にデビュー10周年に突入。10年間の活動の集大成とも言えるアルバム『凛イズム』を1月31日に発売します。この10年間、波瀾万丈な人生を送ってきたようですね。
凛 この10年間で、失声症を患い声を失ったり、病気で倒れ活動を休んでいた時期もありました。ただ、一時期とはいえ声を失くしていたときも作詞家としての活動は継続していたように、つねに音楽を身近に感じる状態ではあったんです。続けてきたからこそ、デビューから10年目にして初めてフルアルバムをリリースできて、改めて、「継続は力なり」を実感しています。
――10周年というひとつの区切りを迎えた時期に作品化できたのも、うれしいことじゃないですか?
凛 今は配信や定額制が主流になっていて、時代の流れ的にもこれが最期のCD盤になるかもという想いも含みつつ。だけど、もし「盤」が求められない時代になったとしても、音楽がなくなるわけじゃないですし、いろんな形を取りながら音楽自体は連綿と受け継がれていくものだと思います。むしろ、これから先どう面白いことができるかな?という期待も私は持っています。そういうことも象徴しているのが、今回のアルバムのアートワークなんです。私の足元にある丸いものは何だと思います?
――えっ、何だろう?
凛 これは、割れたCDなんです。でも、ブックレットの裏表紙の写真では、大きなCDの上に私が立っている。その意味も探っていただきたいし、時間をつかさどる空間の中に立つこのジャケットのアイデアや、衣装、メイクも含めたヴィジュアルなどの世界観すべて、私のアイデアで構築しています。収録曲も全16曲と、CDの収録時間限界ギリギリまで詰め込みました。本当はもっともっと入れたい曲があったし、なんなら「二枚組にする?」という話もしていたくらい、この10年間の中で歌ってきた楽曲から絞り込むのはとても大変な作業でした。
――どの楽曲も思い入れが強いでしょうし、選び抜くのは大変だったろうなと想像します。
凛 この10年間の中、私自身の声質や歌声の表現にも変化が出てきたので、最初の時点では過去の楽曲を歌い直そうかとも思いました。だけど、「その時代だからこそ生まれた勢いや空気感、その時代の中で抱いていた想い」をそのまま届けたかったので、すべて歌入れした当時の声で収録しています。だから、どの歌からも「熱さと勢い」を感じていただけるんじゃないかな。ただ、私のサウンド・プロデューサーである島崎(貴光)さんの「その当時のヴォーカルトラックを活かしながらも、今のサウンドで組み上げたい」という想いから、アレンジ面は今のテイストにしています。それでも、昔録った歌声が負けてないどころか、時代も温度差も感じさせない形になっていて、うれしい手応えも感じました。
――先にも軽くお話が出ていましたが、凛さん自身、一時期失声症を患い、声を失った時期があったんですよね。
凛 そうなんです。歌えないどころか、声そのものが出ないからしゃべることさえできない状態に一時期陥りました。それまでは、歌えるのは当たり前の感覚でいたんですけど、声を失ったときには、歌えないどころか、自分がしゃべれないから人と会話などのコミュニケーションさえも取れない。あの頃は相当落ち込んで、人間として当たり前に備わっているものを必死で取り戻そうとしていました。実は、そんな時期に励まされのが、私が声を失う前まで歌っていた自分の楽曲なんです。
――自分の歌声や楽曲に励まされたと……。
凛 それまでは、あまり自分の歌に自信がなかったんですけど、そんな、自分の歌声や歌詞へ記した想いたちに励まされている自分がいました。そのときに、「声が元に戻るかは正直わからない。もしかしたら、戻らないかもしれない。それでも、やっぱり私は歌いたいんだ」とはっきりと再認識することができました。そこから、声の治療やリハビリを含めて必死に乗り越え、今へと繋がっています。そこまでの歩みのすべてを、今回の『凛イズム』という作品へ詰め込むことができました。だからこそ、本当に愛おしい大切なアルバムになりましたね。
――声が出るようになっても、求める歌声を手にするまでにも時間を費やしたんですよね。
凛 そうなんです。しゃべり声を取り戻すところから始まり、そこから歌い始めたんですけど、最初の頃は音域も狭ければ、ロングトーンを歌うたびに声が裏返ったり。それでも地道に、必死に治療を続けてきました。声を失っていた時期は、「私は何のために生きているんだろう」とまで考えていたけど、やっぱり私は音楽が、歌うことが大好きなんですよね。実際に声を取り戻すまでの時期も作詞家としての活動を続けていたように、私は音楽からは離れられないし、離れたくはないんです。
島崎貴光 彼女の場合、年々覚悟が増してきてると言いますか、伝える言葉に強さや覚悟がより描き出されるようになったなと、側で見ながら感じているんですね。とくに、歌えなくなり、そこから復帰して以降の言葉には、より覚悟を綴るようになったと思います。
凛 たしかに、歌詞に書いてる言葉はどれも強いですよね。その言葉だけを見たら、とても強い女性と思われそうですけど、けっしてそんなことはないんです。むしろ、普段の私は逆じゃないかな(笑)。
――島崎さんが、「これは」と感じた言葉の一節などもいろいろあったのでしょうか?
島崎 もちろん、たくさんあります。ひとつ上げるなら、「人生ゲーム」の一節に、彼女は“足踏みだって全力だろ”と書きました。「この子は足踏みするのだって全力なんだ」と思えたときには、まさに凛というシンガーを象徴する言葉であり、彼女にしか出せない言葉だなとも強く感じさせられましたね。
凛 誰だって、何かをやるからには前へ進みたいと思うじゃないですか。でも足踏みしてるということは、前に進むことなく、同じ場所にずっといることなんですよね。それでも、私は全力で足踏みしてたいんですよ。だって、そこでさえ全力を出し切れていなかったら、前へ進めもしなければ、歩いたり走ったりすることにも繋がっていかない。今(声を取り戻している頃)はまだ傍目には全力には見えてないかも知れないけど、それでも私は全力で生きてるんだよと、この歌で私は言いたかったんです。それが私の価値になり、勝ちへと繋がっていく。そういう言葉の掛け合わせも、「人生ゲーム」の歌詞には記してあります。
――何事にも全力な姿勢を持って臨んでゆくからこそ、一つひとつの歌からも心を揺さぶられる想いを感じ取れるんでしょうね。
凛 だとしたらうれしいです。私、パッと見は派手かもしれないけど、実はものすごく暗い性格なんですね。私は、ポジティブな性格を歌にしているのではない。ネガティブだからこそ、そこから抜け出すためにポジティブな想いを求めたり、ぶつけていけば、そういう気持ちへすがっている自分がいるんですね。そういう感情から、私の歌は生まれています。
――凛さんの歌はどれも、アニソンの持つ力強さや前向きさと共通するパワーを備えていますよね。それも、みずからを鼓舞する意識が、そういう想いへと繋がっているからなんでしょうね。
凛 そうなんだと思います。同時に、島崎さんの作る楽曲が、とても耳に残りやすい力強いメロディという理由もあると思います。そこはまさに、アニソン楽曲と共通するところ。事実、収録したどの曲をアニソンに使ったとしても映えそうですからね。
――凛さん自身、いくつものアニメソングやゲームソングを歌っていて、アニソン好きな人たちからの支持も強く得ていますよね。それも、凛さんの楽曲がアニソンやゲームソングと共通する意志を持っているからなんでしょうね。
凛 アニソンやゲームソングの好きな人たちからの支持を強く得られているとすれば、歌詞や楽曲はもちろん、私自身の性格と、そういう歌を支持してくださる人たちの気質が似ているからなのかな?とも、私は感じています。個人的にうれしいのが、フリースペースでイベントライブをやると、小さな子供さんからおじいちゃんおばあちゃんまでが、私の歌にじっと耳を傾けて聴いてくれること。とくに子供さんは、自分が興味なかったら聴きもしないじゃないですか。でも、私の歌を聴いて立ち止まってくれるお子さんって多いんです。そうやって私の歌を通して人の心を振り向かせられたときほど、私自身もうれしくなりますからね。
――アルバム『凛イズム』には、10年間の凛さんの歩みどころか、生きざまを刻んだ16曲を収録。まさに、タイトル通りの作品だなと感じました。
凛 最初はいろんなタイトルを考えたんですけど、やっぱりここには「10年分の凛の主義や想いを詰め込んでいる」ことから、わかりやすく『凛イズム』と名付けました。
――そういえば、凛さんは仮歌シンガーとしても絶大な支持を得ていますよね。
凛 ありがたくもそのご縁から、まさかの「ニノさん」という嵐の二宮和也さんの番組へ「日本一の仮歌シンガー」としてテレビ出演させていただいたんです。
島崎 きっかけは、彼女がAKB48さんの『フライングゲット』の仮歌を制作現場で歌っていたことからなんです。
凛 仮歌って、その曲を歌う人が歌いやすいようにと、私が先に歌のガイドラインを歌うお仕事なので、けっして表にも出なければ、仮歌という存在さえ知らない方も世の中には多いと思います。だからこそ、最初は出演オファーに驚きつつも、あくまでも裏方仕事だからこそ出演を断ろうかとも思っていたんです。だけど、仮歌の仕事を発注してくださる方々から、「仮歌の存在を世の中へ知らしめて欲しい」と言われたことから出演した形でした。
――そんな経緯もあったんですね。これからも凛さんは、止まることなく歌い続けていくわけですが、改めて最期に、アルバム『凛リズム』についてひと言お願いします。
凛 このアルバムは五感で感じて欲しいです。中に収録した16曲すべてに、私なりに伝えたい想いを詰め込んでいます。だけど、そこは受け止める方の自由でいいなと思っています。そのうえで語るなら、収録した16曲のうちに、何かしら心に刺さる歌があると思います。私、よくリスナーの方々から「歌を聴いて元気をもらえた」という言葉をいただきます。先にも語ったように、私はけっしてポジティブな人間じゃない。そんな私の歌でも、誰かの心を押す力になっているのなら、そんなうれしいことはないなと思います。だからと言って「力を与えるから聴いてくれ」と押しつけたくはない。まずは、ただただ「聴いて感じて欲しい」んです。そこで何を感じたのか、それは聴いた人それぞれの自由でいいなとも私は思っています。ぜひ『凛イズム』を聴いてください。
Interview&Text By 長澤智典
●リリース情報
『凛イズム』
1月31日発売
品番:MGCD-1001
価格:¥2,778+税
<CD>
01. 夢×現
02. 華燈-HANABI- (Version.2017)
03. FREEDOM (Version.2017)
04. 情熱イズム
05. イカロス
06. 片翼-ツバサ-の行方
07. 孤独なマニフェスト
08. 浸食アルゴリズム
09. LiLiA
10. ULTIMATE SOUL-幾千の岐路- (Version.2017)
11. LOOP (Version.2017)
12. Xana-シャナ-
13. SPIDER GIRL (Version.2017)
14. Dear DESTINY
15. 人生ゲーム (Version.2017)
16. TRUTH
<凛 プロフィール>
リン/元ハロープロジェクト「シェキドル」メンバー。2007年に「凛」としてソロ・デビュー。2011年11月23日、テレビ東京系アニメ『クロスファイト ビーダマン』のオープニング曲「TRUTH」と、エンディング曲「片翼-ツバサ-の行方」を収録したシングルで、ランティスよりメジャー・デビュー。続けて、2012年5月9日、テレビ東京系アニメ『カードファイト!! ヴァンガード アジアサーキット編』のエンディング主題歌「情熱イズム」を2ndシングルとしてリリースするが、その後2度の失声症を患い、幾つもの持病と戦いながら活動を続ける。
リハビリの末に歌声を取り戻し、復活。AKBグループを始め多くの有名アーティスト・声優の仮歌(ガイドボーカル)やコーラスを務め、「ニノさん」へのTV出演を機に、「日本一の仮歌シンガー」とも称される。
また「末永茉己」という名前で、作詞家として、アニメ『遙かなる時空の中で』シリーズや、『三國無双』シリーズ作品などの作詞提供も行うなど多岐にわたり活動しており、自身が全身全霊を込めたアーティストとしての「凛」活動10周年を記念して、初のフルアルバム『凛イズム』を2018年1月31日にリリースする。
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