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INTERVIEW

2018.01.22

度肝を抜くストレートパンチ+新境地+王道安定感 喜多村英梨ニューシングル「妄想帝国蓄音機」インタビュー

度肝を抜くストレートパンチ+新境地+王道安定感 喜多村英梨ニューシングル「妄想帝国蓄音機」インタビュー

「引き算」による匠の仕事が30代の目標

――そして先ほどお話された「fairy ∞ world」ですが、こちらはどのように作られた楽曲でしょうか?

喜多村 デモの段階での印象としては、アンティークゴシックの世界観、くるみ割り人形の表情から感じられる美しさ、そしてそこからさらに妄想が膨らみそうだなと感じました。そう思った時にはもう自分の中で物語が出来上がって、「片思いの恋模様の話と思わせて、最終的には人形同士による距離が縮まらずに世界を回り続ける、怪しくも強いファンタジックミステリー」になりました。サビは開けているんだけれども、最終的にはどこか脆くて儚いところがすごく綺麗で素敵だなと思いました。

――喜多村さんの曲のなかで、こうしたメタルコアで変拍子を使ったテンポ感は珍しい印象です。

喜多村 そうですね。ストリングスが入ったシンフォニックなメタルやロックな楽曲はこれまでもありましたが、今回のような曲は今までやってそうで、やっていなかったんです。ちょっとジャンルが分類できないような感じの楽曲を今回作曲してくれたnecchiさんが作って下さいました。2番もキラキラしたAメロから、Bメロに行かずにプログレメタルっぽく展開していく。サビが後に来ようが長い間奏が入ろうが、そこは別に変にルールにとらわれなくてもいいかなと。これまで避けてきたわけではありませんが、きっかけがなかっただけで、それができたことも自分としては新境地だなと思っています。2018年の1発目のリリースとして新たな喜多村を提示してくれている曲になったなと思います。

――間奏のなかの声も喜多村さんですか?

喜多村 そうですね。きれいで怪しい感じが好きで、「fairy ∞ world~」も私ですが間奏入りのところのグロウル(咆哮)も実は私なんです(笑)。試しに1回ツルッと録って、「あとは加工するか、これを参考にどなたか男の人に頼んで下さい」と言ったら、そのまま使われて(笑)。でも自分の声を主線以外にも使っていただけるというのは光栄だなと思います。それは声優だからこそできる引き出しかなと。声の素材取りという面においても喜多村英梨のスキルを発揮できた楽曲に仕上がっています。

――レコーディングはいかがでしたか?

喜多村 今までもいろんなスタッフの皆さんの下で様々な曲を歌わせていただきましたが、このプロジェクトでは喜多村が好きなように歌うということが大前提としてあるので、とてもやりやすいレコーディングにしていただいています。ですから、今までの自分のスキルは余すことなく出そうと意識したり、自分からもう1回やらせてくださいと言ったりしていました。「fairy ∞ world」は特にそうなのですが、好きな歌い方をしていればいいというわけではなくて、核となるリズムを取ることが重要で、ドラムをよく聴いて歌うようにしていました。変拍子っぽくなるところをシンセメロに沿って歌うと平坦になってしまうんです。

――10月のライブではMCのなかでこの曲を紹介した時に「演奏は激しいが歌は無機質で怪しく」とおっしゃっていましたが、「無機質を表現する」というのはどういう風に歌うことなのでしょうか?

喜多村 これはよく声優の芝居の中で言うことなのですが、「ナチュラルな芝居」というのがいちばん難しい、と。それと一緒で、「無機質」というのは歌詞の内容にニュアンスとか意味を持たせすぎずに、メロディーラインに忠実に音を出していく作業というのが、私のなかでの「無機質」なんです。静と動でいえば静の方が難しいなと思っていて。動の方は情熱とか一生懸命さを出すことによって表現できるけれども、静の方はいろいろ計算された上での表現だけれども、それは表に出ない。たとえば北欧メタルとか嬢メタル(女性ボーカルによる最近の日本のメタルの総称)の方って、しんしんと朗々と、「私は別に誰に届けたいわけでもなく、この世界を彩るために歌っています」といった姿勢で歌っているじゃないですか。スノードームの中の人みたいな。でもそれを外側から見るとすごく格好良く映る。あれをやってのける中心点の人物になるのが、私の中での「無機質」。それはアーティストとしてできたらいいなと持っている目標の一つです。これまではキャラソンとか、足し算をして分かりやすい歌い方だったのですが、引き算の匠の仕事ができたら、より良い年のとり方をできるかなと。『fairy ∞ world』はまさにそういう立ち位置に仕上げていきたいなと思っています。

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