『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語』1stアルバム発売中!原作・音楽担当 矢内景子インタビュー

ファンタジー好きだった過去をゆりかごに

――物語の作り手としての根幹について伺います。昔はどんな本を読まれていましたか?

矢内 最初で言うと青い鳥文庫から始まり……、それもファンタジー寄りで。私が北海道出身ということもあるんですけど、「コロボックル物語」をよく読みました。小さい頃からディズニーやジブリを何度も見ていて、全部セリフを言えるくらいです(笑)。いろんな本を読むというよりは、同じ本を何十回も読むんですよ。あとは「ナルニア国物語」とか「ハリーポッター」「ダレンシャン」とかやっぱりファンタジー物が好きですね。ファンタジーとは違うと思いますが、小学校のときにヨースタイン・ゴルデルの「ソフィーの世界」を読んだんですよ。当時は全然理解していなかったですけど。そういう世界観に憧れました。さらに中学校に入る前に村上春樹にはまりました。「ロード・オブ・ザ・リング」も日本語と英語で読んでます。

――「ラファンドール国物語」は副題に「ある少女の光と影の追憶」とありますが、ル=グウィンはいかがでしょう?

矢内 ル=グウィン、全部読んでいます。「ゲド戦記」だと序盤のほうの話に影響されてたりするかな。今回のアルバムの最後のメッセージにも書かせていただきましたけど、ファンタジーって昔は、現実逃避であり自分の空想を広げられる場所であり、なんでもできるいつか行ってみたい場所だったんですよ。でも大人になってみたら、火こそ出せないけど、壮大な世界で行われていた空想上の人との繋がりとか絆とか光と影みたいな二面性は、今この世界にも普通にあることだなと思ったんです。ただそこは、人が向き合いづらい部分だからこそファンタジーというくくりにされてしまう。私は逆にファンタジーの世界に行けば向き合えるのかなとか、ちょっとわかりやすくなるのかなとか感じていて。向き合っていてもおかしいと言われないし。「そういうもんだよね」と、意外とフェアにぶつかり合える場所だと思っています。作品のテーマは常に二面性なんですよ。自分の知ってる自分がいて、自分の知らない自分、人が知ってる自分がいて、人も自分も知らない自分がいる。そういう部分に向き合おうと思って。ずっと目を背けてきてたなと感じたんですよね。向き合おうと思ってからは、それがすごく辛くもあるんですけど、生きることがすごく楽になったんです。

――ある種のコンプレックスということですね。

矢内 音楽も同様の想いがありました。例えば、ボカロではひとつの物語を描いてる曲はたくさんあります。お話としてすごく面白いし音楽との新しい融合だなと思ってはいるんですけど、私がやりたかったのは、ひとつの壮大なファンタジーを何曲もかけて紡ぐことなんです。ですからひとつではストーリーは完結しない。その歌だけを聴くと「ラファンドール」を知らない人にとっては1曲のポップスなんですね。それを「こういう気持ちすごくわかる」というものにしたかったから、敢えて出来事ではなくてキャラクターの心情部分を描いているんです。歌を聴いて自分の経験と重ねてもらえたらうれしいし、人ってこういうときこういうふうに感じるんだということを自分と繋げて考えてくれたらいいなと思っています。物語を紡ぐといっても歌詞で話をなぞることはしていないんです。

――たしかにCDを通して聴いてもお話は分かりませんね。

矢内 そうなんです。そしてすごく言われるのが「セリフ入れるんだね」って。でも「ラファンドール」はそれを含めて私にとって音楽なので。とはいえ、アルバムって本来プレイヤーに入れて1から順に聴いていくものですから、アルバムにあたって聴いたときに気持ちのいい順、意味のある順番にしたくて今回はお話の順番は全部無視してるんですよ。音楽として全部通したときにどうかっていうことを重視していて、お話通りに聴きたければWEBを見てくれればいいなっていうふうにしています。

――キャストについてもお伺いしたいんですが、お話しを作られる際に決められていたんでしょうか?

矢内 そうですね、ほぼ独断と偏見で(笑)。幸い全員OKしていただきました。夏木マリさんはワーナーで音楽をやられている御縁もあってのお願いです。作品をとても理解してくださいました。

――ちなみにリエンを花江(夏樹)さんにされたのは?

矢内 いろいろありますが、『東京喰種』での演技が素晴らしかったこと、音に乗ったときの声の響きなどですね。キャスティングで気をつけたところのひとつに、ラファンドールでは音だけでやり取りするので、同じような声だとどちらがしゃべっているかわからなくなってしまう可能性があるということでした。声での演技とか声色の差だったりとか、音に乗せたときにどうなるとか。そういうところはすごく考えてキャスティングはしていて。脚本の野島一成さんとも話していたんです。私としては最高のキャスティングだと思っています。

――現在物語的にはどれくらいなんでしょうか?

矢内 WEBでは一幕が終わっていて、今二幕を制作中なんです。このお話を二幕で終わらせるか、終わらせないかととても考えています。

――終わらない物語なのかと思っていました。どこかでピリオドが来るということですね。

矢内 もちろん。リエン君にまつわるお話ですから。一幕は特にリエンにまつわるストーリーという認識です。今回の物語はそのリエンがどこかに落ち着くというところで話が終わると思います。一幕はリエンが自分と向き合う話。二幕はリエンが世界と向き合う話です。二幕では新しい人たちもたくさん出てくるので、人との関係性やそれぞれの思惑とかはもっと複雑になっていくかもしれないです。あとちょっと戦いだします。リエンがいくら弱いとはいえ、いろいろ勃発しますので

――副題の「ある少女の光と影の追憶」の意味なんですが。

矢内 少女(シェルシュ)がいろいろな人の記憶を感じ取り、それを残していこうとする行為が歌うことなんです。それがラファンドール国の記憶の断片という形で残っていくというのがこのお話です。影の王の力で時の狭間だったりとか時の外という空間が存在していて、二幕ではシェルシュもそういうところに入ったりもしちゃうんですけど、ラファンドールと現実世界はつながっているという想定で、彼女が現実世界に迷い込んだり、お客さんがその世界に行ってしまったりという形でライブも行います。

――今後の展開はいかがでしょう?

矢内 音楽プロジェクトですので音楽は今後も発表していきますし、ライブももちろんあります。あと1月9日からpixivコミックでコミカライズの連載も始まりました。一幕の補足も入りますし、物語がわかりにくいという方はそちらで補完していただけるとうれしいです。

Interview&Text By 田中尚道(クリエンタ)
Photography By 山本哲也


●リリース情報
『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~』
12月6日発売

品番:WPCL-12814/5
価格:¥3,000+税

<DISC 1>
M-1 約束
M-2 囚われた光 [リエン・マキュール (cv:花江夏樹)]
M-3 ひとつだけ
M-4 満月の夜のこと [トレスタ・マキュール (cv:日岡なつみ)]
M-5 魔法の鍵
M-6 霧の世界
M-7 名もなき少年
M-8 Deep Down
M-9 愛しい人よ [ネブラエス・デュガン (cv:鈴木達央)]

<DISC 2>
M-1 SOL
M-2 walking away
M-3 僕のいない朝 [アイソル・ナザド (cv:梅原裕一郎)]
M-4 Trigger
M-5 RISE
M-6 翔 [ブライ・アル・カーラ (cv:浪川大輔)]
M-7 face
M-8 four windows
M-9 大切な人

© 2016−2017 Shadow of Laffandor

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