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INTERVIEW

2017.12.22

ベストアルバム『LIFE of DASH』リリース記念インタビュー Part3 鈴木このみインタビュー

ベストアルバム『LIFE of DASH』リリース記念インタビュー Part3 鈴木このみインタビュー

鈴木このみが12月20日に初のベスト・アルバム『LIFE of DASH』をリリースしたことを記念して、リスアニ!WEBでは全3回の特集記事を掲載。その第3弾として今回お届けするのが、鈴木このみ本人への単独インタビューだ。2012年のデビューから約5年、時に悩みを抱きながらも、立ち止まることなく全力でダッシュしてきた彼女がベスト盤に込めた思いとは?各収録曲にまつわる思い出から、自身が初めて作詞・作曲に挑戦した新曲「夢の続き」の話題まで、たっぷりと語ってもらった。

――今年も残すところあと僅かですが、2017年は自分にとってどんな年になりましたか?

鈴木このみ とにかく新しいことに挑戦し続けた1年でしたね。まずは作詞作曲に挑戦して、アニサマでは西沢幸奏ちゃんとコラボでギターを弾いて、初めてギター・ソロもやって、自分のスタンディング・ツアー用にスタッフさんにも内緒でキーボードでの弾き語りを練習して……。

――スタッフにも秘密だったんですか?

鈴木 会場がファースト・ワンマンライブをやった場所と同じ新宿BLAZEだったので、サプライズで何かしたいと思ったんです。それで今年は作詞作曲をするにあたって音楽理論も学んでたんですけど、ギターよりキーボードのほうが理論を勉強する上では便利という話もあったので「じゃあ弾けるようになっちゃえ!」ということで1か月ぐらいこっそり練習したんです。ライブでは白戸(佑輔)さんが作ってくださった「フラジャイルな君」を弾き語りすることにしたので、白戸さんに「誰にも内緒で教えてくださ~い」って協力してもらいました(笑)。

――心強い協力者ですね(笑)。

鈴木 あとは『LOST SONG』(2018年に放送予定のテレビアニメ)で声優にも挑戦したり、2017年は本当にいろんなことに挑戦して、ずっと次を追いかけてる状態だったと思います。今も休む間もなくカウントダウン・ライブまで走るぞ!って感じですね(笑)。そもそもツアーも2つありましたし、アルバムもリリースしましたし、すごく大きい1年だったと思います。

――そんな充実の1年を締めくくる作品が、キャリア初のベストアルバム『LIFE of DASH』です。改めてベスト盤をリリースした今のお気持ちを聞かせてください。

鈴木 振り返ると5年間は一瞬でしたけど、こうして曲を聴くと5年間の間に本当にいろんなことがあったのが思い出されますね。たぶんファンの皆さんにもいろんな思い出があると思うんですけど、自分もその当時悩んでたこととか、その曲をもらって立ち直れたこと、逆に考えるきっかけをもらって良い意味で悩んだりとか、いろんな思い出が浮かんできたので、それだけ大事に作ってこれたし大切なんだろうなって思いました。

――『LIFE of DASH』というタイトルにはどんな意味が込められてるのでしょうか?

鈴木 ベストアルバムってひとつの区切りでもあるじゃないですか。だから終わりを感じさせるものにはしたくないというのは最初からずっと言ってたんです。まあアップテンポの曲が圧倒的に多いので、そうならないとは思っていたんですけど、そういう意味でタイトルも走り続けていく感じをイメージして付けました。タイトルはいちばん悩みましたね。

――曲順はリリース順で並んでますけど、他のパターンも考えたりしたんですか?

鈴木 みんなで相談した結果、リリース順しかないっていう話になったんですよ。というのも、デビュー時と今では明らかに歌い方も声の質も変わって、少しずつ大人になってきてるので、並び替えるとチグハグになってしまうと思って。それに成長の過程も感じてほしいですから。

――ジャケットは珍しく鈴木さんの写真が使われていないデザインですが、どのようなコンセプトでこのジャケにしたのですか?

鈴木 これは水をモチーフに作ってもらったんですけど、走り続けた汗やうれし涙、悔し涙、そういう汗にも涙にも見える水をモチーフにしてほしいとお願いしたんです。今回は曲によって込めてる感情が全然違うし、収録曲の幅があまりにも大きすぎるので、ひとつの見え方しかできないデザインだと合わないと思ったんです。

――鈴木さんの楽曲は熱いイメージが強いので、水がモチーフというのは少し意外でもありますね。

鈴木 でも、レコーディングのときはいつも「この曲は○○属性」って言うところから入るんですよ。最初は炎属性が多かったんですけど、最近は風属性が増えてきてて。「銀閃の風」はアレンジ的に炎っぽいですけど、歌い方は意外と熱くなりすぎないようにしていて、風を感じるような歌をイメージしていて。この当時の炎属性の最終形態が「This game」で、そこでベストな曲を出せたからこそ、その後はいろいろ変えていけたんだと思います。

――その分け方はおもしろいですね。例えば他の曲は何属性なんですか?

鈴木 「Absolute Soul」は炎系でも変化球ですし、ライブ映えする「Beat your Heart」とか、炎系はいろんな種類の曲をやってきましたね。「Redo」は自分のなかでは熱もあるけど炎属性ではなくて、どちらかというと光と闇みたいなイメージがあります。(「Redo」がOPテーマになっている)『Re:ゼロ』のスバルの死に戻りの設定を考えると、熱い気持ちもあるけど、真ん中にあるのは光と闇というか。よくゲームとかにある、光属性と闇属性のどちらかに分岐するキャラみたいな(笑)。

――すごくわかりやすいです(笑)。

鈴木 それと「カオスシンドローム」は完全に闇ですね。この曲のMVは去年のクリスマスに撮ったんですけど、渋谷に午前4時に集合してリア充たちを視線で撲滅していくっていう内容を撮影しました(笑)。おもしろかったけどめちゃくちゃ寒かった思い出があります。

――そのようにいろいろな思い出の付随する曲ばかりなわけですが、今回の収録曲のなかでいちばん転機になった曲を挙げるとしたらどれですか?

鈴木 う~ん……畑さんや白戸さんとの対談でも話しましたけど、いちばんの転機はやっぱり「Love is MY RAIL」だと思います。この曲のメロディと歌詞をもらった頃は、「Beat your Heart」や「Redo」を歌いながらも実はすごく悩んでたんですよ。このまま歌手として続けていけるのかすごく不安があって、自分らしい発信ができないのであれば意味がないし、辞めたほうがいいのかなと思ったり、いろんなことを考えてて。そのことは身内にも誰にも言ってなかったんですけど、畑(亜貴)さんが「Love is MY RAIL」の歌詞でズバリと言い当ててくれて、答えを導き出してくれたので「よし!」と思ってもう一回出発できた曲なんです。

――鈴木さんの気持ちを読み取ってしまう畑さんの力はすごいですね。

鈴木 どんな人生を歩んだら自分もあんなふうになれるんだろうって思いますね。あまりにも自分のことを見透かされすぎて、畑さんに合うときはちょっとドキドキするんですよ(笑)。会ったときには、こういうことで悩んでるのねとか、こういうことで吹っ切れたのねとか、ひと言で全部ばれちゃうんじゃないかなって思って。

――そんな方が鈴木さんのことを本当に応援してくれてるわけですからありがたいですよね。

鈴木 でも畑さんとの対談記事を読んだときに、私が気づいてないだけでいろんな人に愛してもらえてる5年間だったことをすごく実感しました。特に畑さんは最初の頃はあえて厳しく指導してくださったんですけど、それは誰にでもできる優しさではないと思いますし、そういう本当の愛情のなかで育ってきたんだなって。それと自分が畑さんや白戸さんとちゃんと音楽の会話ができるようになったことで5年間の重みを感じましたね。

――成長の証ですね。他にも「いちばん○○な曲」というお題でいろいろ聞きたいのですが、いちばんレコーディングで苦労した楽曲は?

鈴木 エエーッ!どれも苦労してるからなー。単純に時間がかかったのは「DAYS of DASH」で、2日間かけて2日目の晴れやかな感じのテイクを採用してもらったんです。それと「This game」はテレビアニメ版とCD版で実は録り直してて、2~3時間ぐらいで急いで歌ったのでライブ感の強い感じの音源になってるんですよ。

――そうだったんですね。他にも技術的に難度の高い楽曲が多いと思うのですが……。

鈴木 技術的にはやっぱり後半の曲かなあ。特に「Beat your Heart」は英語が多くて。のり方も当時はタテノリに苦手意識があって、これで少し克服したと思います。英語の発音もその場で教えてもらって、耳で覚えてその場ですぐ歌ってたので、もう何があってて何が間違ってるのかわからないままでしたね(笑)。MVの撮影もタテノリの動き方が全然わからなかったので、いろんなバンドさんのMVをたくさん見たりしてのり方を覚えた記憶があります。

――後半ということであれば「Absolute Soul」や「Redo」あたりも難しそうです。

鈴木 「Redo」もちょっと高貴というか高い目線から歌うのが難しくて。この曲はガムシャラにワーッて歌う感じではなくて、少し見下ろしてる感じなんですよね。「Absolute Soul」は音程やリズムが難しいように聴こえますけど、自分のなかでは結構大丈夫だったんですよ。たぶん「This game」で若林(充)さんの曲を一回歌ってたので、歌い方が染み込んでたんだと思います。

――それは意外ですね。

鈴木 それとレコーディングに持っていくまでがいちばんキツかったのは「カオスシンドローム」です。単純にこの曲がEDテーマになっている『CHAOS;CHILD』がグロテスクだったからなんですけど、まずはゲーム版をやってみようということで、内容もよく知らずに夜中にやり始めてしまったんですよ。そしたら最初にコンコンコンってやるところから始まって、ウインナーか何かを切ってるのかと思ったら自分の指を切ってるシーンで「これは夜中にやったらダメなヤツだ……!」って一回止めて(笑)。シリーズの前作の『CHAOS;HEAD』も見たんですけど、その準備期間がとにかく辛かったです(笑)。でも歌入れのときはゲームの設定資料集をレコーディングブースに置いてもらって、キャラクターの顔を見ながら歌ったんです。この曲がいちばんアニメの世界にどっぷり漬かった曲ですね。

――いろいろ苦労されたんですね……。逆にいちばん楽しかった曲はどれでしょう?

鈴木 楽しかったのは「わたモテ」(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い)ですね。歌ってる内容はキバオブアキバのボーカルふとしさんがリア充目線で、自分が非リア充のもこっち目線だったので、とにかく「爆発しろ!」って叫ぶのがスカッとしましたし、いつもはひとりで歌ってるのでキバオブアキバの皆さんとコラボ形態でやるのがすごく楽しくて。アニサマでこの曲を初披露したときもフトシさんに出ていただいて、ZAQさんがピアノを弾いてくださったんですけど、それがすごく気持ちよくて。いつもはひとりでステージに立ってるので、そういう楽しさもわかった1曲でしたね。

――誰かと一緒に曲を作ったりステージに立つ楽しみを覚えた曲ということですね。

鈴木 あとは「AVENGE WORLD」も楽しかったですね。ずっとレコーディングブースで周りに聞こえないように「憎い……憎い……すごく憎い!」って言ってましたから(笑)。自分の中に復讐心を燃やして「愛などいらない」みたいな感じに精神統一して録ったんです(笑)。自分の曲は好きな曲ばかりなんですけど、歌っててハマリがいいのはそういう復讐心のあるものだったり、わかりやすくスカッとするものなんですよ。たぶんメジャーよりも少しマイナー調のもの、切なかったり悔しかったりという曲調が本来得意なんだと思います。エンジニアさんにも最初の頃は「明るい曲はそんなに得意じゃないね」って言われてて。ただ得意なものだけ歌ってると偏ってしまうので、明るい曲も少しずつ歌っていって、いまは歌えるようになったと思います。

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