2017年・元日、年明けを飾ったワンマンライブで、Pileは今年12月2日の武道館公演の開催を発表。以降、自らの活動10周年を記念したそのライブを前に、リリース・ライブを精力的に重ねてきた。そんな彼女は武道館公演を前に、TVアニメ『王様ゲーム The Animation』のEDテーマに起用されたニュー・シングル「Lost Paradise」をリリース。これまで以上に重く激しい表題曲と、『ラブライブ!』制作プロデュースチームによるディスコナンバー「Undefined Angel」を収録した1枚が完成した。本稿ではそのシングルについてはもちろん、間近に迫った日本武道館でのワンマンライブ“Pile Live at Budokan 〜Pile feat. ラブライブ!〜 ”への想いも語ってもらった。
――表題曲がEDテーマに起用されている『王様ゲーム The Animation』へは、どんな印象をお持ちですか?
Pile 原作の漫画を読んだんですけど……ショッキングですよね。しかもアニメは“終極”スタートで“無印”が間に入ってくるような構成なので、どう終わるかが個人的にも楽しみなんですよ。原作を読んだ方でもラストへの持っていき方は楽しみなんじゃないかな、と思います。
――Pileさんの曲としては、今までにないぐらい重いサウンドの曲になっていますね。
Pile そうなんですよ。メロディアスなのに、ちょっとメタルっぽいというか。『王様ゲーム』にもすごく似合う、ダークなロック色の強い曲ができあがったなと思っています。
――ただ、そこに乗っているシンセの音から、Pileさんらしさも感じました。
Pile そうですね。でも「また新しい感じだな!」っていうものは打ち出せたなとは思います。それに私のライブって結構男気満載ロック”みたいな感じなので、それをゴン!と音源としても打ち出せたかな、とは思いますね。
――その重いサウンドに負けないように、歌うときに心がけたことはありますか?
Pile いつもよりも歌い方をちょっと男っぽくと言うか荒っぽくというか……しっかりきれいに歌うというよりは、それこそライブで歌うように、ぶつけるような感じでちょっと崩して歌いました。
――たとえば、「Melody」といった爽やかな曲と比べると、歌声の質が全然違いますね。
Pile そうなんです。あとは、シングル曲では初めて、サビの最後あたりで思いっきりビブラートを効かせてみたりとか。いつもはあまり効かせないように歌ってたんですけど、今回は全部開放して歌いました。
――本当に“ライブっぽい”歌い方なんですね。
Pile そうです!だから早くライブで歌いたいんですけど、なかなか歌えてなくて(笑)。レコーディングの前にもアジアツアーの移動中にもずーっと口ずさんじゃうぐらいに好きな曲なので、ライブで歌って“ライブ感”をつかめるのが楽しみですね。
――ただ、Bメロのドラムのリズムが特殊な感じなので、取りづらいようにも思うのですが。
Pile たしかに。でもレコーディングでは全然平気でしたし、むしろ個人的には、あそこがかっこいいと思うんですよ。歌だけじゃなくてそのうしろの音もすごく入ってくる場所なので、結構聴きどころだと思うんですよね。
――では、今回も例に漏れず、レコーディングでは歌うたびに楽しくなっていったんでしょうか?
Pile いや、実は今回は最初から「サビのこの感じいいよね」みたいなものが録れて、レコーディングでは3回ぐらいしか歌ってないんですよ。しかもTVサイズはアニメ第1話の放送後からカラオケで歌えるようになっていたので、もしかしたら私よりもガチで歌ってる回数が多い追い風さん(=Pileファン)もいらっしゃるかもしれないですね(笑)。でもライブでは、そんな追い風さんに「ここ、こういう感じで歌うんだ!」って思ってもらえるように歌いたいです。ライブとCDとで歌声が違うっていうのは私の色だとは思うし、しゃくったりとかも気分で「ここで入れたらかっこいいだろうなぁ」ってやっちゃたりするので、CDはCD、ライブはライブで楽しんでもらいたいなぁって思います。
――歌詞の面では、特にサビを中心に主人公である金沢伸明を連想させられるものになっています。
Pile そうですね。作中の1話での「いつぶりだろう、こんなに楽しめているのは」みたいなセリフとか。それと今回は、いつものように「私のことをよくわかってくれてる曲だなぁ」と曲から寄せてもらっているというよりも、聴いて共感できる側の、自分から寄せていく感じの歌詞だと感じているんですよね。
――それは、どんな部分で?
Pile ライブで歌ったらグッときそうだし、来てくれている人の顔が浮かぶ曲かなって思います。「いつまで活動できるかなんて、確証がないんだよな」って思うと、いろんな方が来てくれるなかで自分が歌えていることを、すごく素敵なことに感じると思うんですよ。しかもこの曲をワンマンで歌うのは武道館が最初になるので、そういう意味でも武道館は、私にもみんなにもいい思い出になるんじゃないかなって思いますね。
――その「Lost Paradise」のMVは、序盤ではコンクリートの壁にPileさんや背負ったバンドの姿の観られる、力強くもオシャレなものになっていますね。
Pile そうなんですよ。また今までとはガラッと変わった感じで、私もすごく好きで何回も観ちゃうMVなんです!サビでバーンとそのコンクリが割れてバンドを背負ったシーンに移るんですけど、武道館でこの曲を歌うときも、シンプルにこんな感じでステージにポンッて出てくるのもアリかなっていう絵が浮かんでたりもしますね。武道館もフルバンドなのでさらに音の厚みが出ると思うので、あえてシンプルに、いつも通りに暴れようかなぁ……?
――ラスサビだけ映像がカラーになるという見せ方も、印象的でした。
Pile そこは『王様ゲーム』とも若干繋がっていて、「未来があるかな?ないかな?」ぐらいの感じを表すために、最後だけちょっと光を当ててあげた、という感じになっているんです。ホントお気に入りなので、武道館まで3日間しかないですけど(笑)、ぜひ観てきてほしいです!
――続いて、カップリング曲「Undefined Angel」のお話をお伺いしたいのですが。
Pile この曲は、畑(亜貴)さん作詞、佐々倉(有吾)さん作曲と激アツメンツで、おふたりにはソロでは初めて曲を書いていただきました。表題曲とはド反対な、お祭りみたいな感じにアガれる、合いの手も入れやすいディスコナンバーみたいな曲になっています。
――おっしゃるように表題曲と真逆な雰囲気なので、ライブでの盛り上がりが気になりますね。
Pile ね!祭り系の曲でまとめたら面白いのかな、とも思いますけど。
――ちょっと、ジュリ扇が似合いそうな感じで。
Pile そうなんですよ!ちょいちょい昔な感じなんですけど、それをうまく今風な感じにしてくれて。
――しかも若干「輝夜の城で踊りたい」に近い感じの曲で。
Pile それは、「“っぽく”してください」って木皿(陽平)プロデューサーが言ったらしいんです。今回は会社の枠を超えて、初めて木皿さんにディレクションしてもらったんですけど、私、木皿さんの音楽センスがすごく好きなんですよ。それこそディレクションとか、誰がどこを歌うかを全部木皿さんが決めていたので。そんな木皿さんが「こういう曲を1回歌ってほしかったのかな?」って思うんですよね。私も「Pileとしてだったら、こういう曲はどうやって歌うんだろう?」っていうところが難しかったんですけど、でも楽しかったです。
――歌って難しかったのは、どんな部分でしたか?
Pile やっぱり制作陣が制作陣だけに、その方たちの作ってくれる曲となると“降りて”来そうになっちゃって。しかもレコーディングもたまたまそっちのスタジオだったので、「これ、降りてきますわぁ」とか冗談で言ってたりもしましたね(笑)。やっぱり“っぽい”曲だったので、Pileとして歌うのは難しかったです。
――もう何年も一緒にいる存在ですからね。
Pile そうなんですよ。それと、歌うときの歌詞の語尾の処理も普段と違うっていうのもあったと思います。たとえば「なくちゃ」とか「悪いし」みたいな歌詞って、ソロの曲には絶対ないので。でも、畑さんがいつもの私の曲のように、私のことを書いてくれてるのかなっていう感じがして、歌詞を読んですごくうれしかったですね。絶対忙しいのに、すごくよく見てくれてるのを感じて。「畑さんに1回Pileを降ろしてるのかな?」っていうぐらいに思いました。
――内面的なところではないんですが、歌詞に出てくる「dark my angel」と「shiny angel」で、「素晴らしきSekai」のMVを思い出しました。
Pile なるほど。それに私、ソロだとこのまんまというか……ダークな部分も結構出したりするからなのかな?(笑)。それにライブのときはまたちょっと音源と表情が違うっていうところもあるので、そういういい意味での二面性みたいなものを描いてくれているようにも感じました。でもただのangelじゃないところが、「わかってますねぇ」って感じがします(笑)。
――さて、いよいよ武道館でのワンマンライブが間近に迫りました。
Pile この1年、早かったですね。アジアツアーがあったりライブも多かったりと毎週何かしらがあったので、特に一週間一週間が早かったと思うんです。だから、いつものごとくまだ全然実感がなくて(笑)。今は楽しみでしかないんですけど、出る直前は絶対緊張してるんだろうなぁ……って思います。日本で音楽をやっている人からすると特別な場所のひとつですからね。
――『Tailwind(s)』のインタビューのときに、「武道館までにどういう活動をして、パフォーマンスの面でどういう結果を残せるかが武道館につながる」といったお話をされていました。武道館に向けて、この1年間意識的にやられてきたことはあったんでしょうか?
Pile うーん……やっぱり武道館って特別な場所だと思うし、自分ができるとは思ってなかったですし。でも、たくさんの人が来てくれることはすごくうれしいんですけど、今の私は自分の歌を聴きに来てくれる人がいるっていうことだけでだいぶ幸せで。その気持ちは場所がどこであれ、変わらないものなんですよね。
――以前から、そういったお話はされていましたね。
Pile はい。そう思っているなかで、自分自身もいろんなライブに行ってみて思ったのは、みんなライブに来るまでにいろんな意味でたくさん時間を使って来てくれるんだな、っていうことで。それに値する時間を、どのライブでも返せるようなパフォーマンスをしたいなっていう気持ちなんですよ。だから「武道館だから頑張んなきゃ」じゃなくて、今年1年どの会場でもそういう歌がうたえていて、「じゃあ武道館でも聴いてみたいな」って思える活動ができてたらいいなって思います。またこの1年で、めっちゃ声も出るようになりましたし(笑)。
――さらに!?(笑)
Pile はい(笑)。それに、ずっと「ソロのPileも聴いてほしいです」って言っていたしその気持ちは変わらないけど、10年やってきたなかですごく濃い期間やいろんな経験を経たからこそ、それをソロで発揮できる土台を作ってもらった方とも出会えたし、Pileとしてリリースできるんだと思うんですよね。そういう意味では、今まで自分が歌ってきた楽曲全部に感謝をした1日の公演にしたいし、やりたいこともやる。そんな現時点での集大成のライブにしたいと思います。
――今回のライブタイトルに『ラブライブ!』とつけたのも、その大事な一要素でもあるということで。
Pile そうなんです。ただ普通に歌っちゃもったいないかな?っていうところで思いっきりつけさせていただきました。実は私のアジアツアーでは、ユニット全員揃って1ヵ国も行けなかったというのもあって、その曲をセットリストに組み込ませてもらっていたんです。でも日本のワンマンでセットリストに組み込むことは初だし、しかもえみつん(新田恵海)も来るし(笑)。えみつんと歌うっていうのもやってみたいことだったので、すごく楽しみです!
――どんなステージになるか楽しみです。
Pile 今回もバンドさんがいるので、演出とかにはこだわりすぎず、歌をしっかりうたいたいと思っています。本番で弾くわけじゃないんですけど、家に最近ピアノが来たので防音のしっかりした部屋でよく昼間に歌っていて……そういえば、こんなに歌の練習をしたのは久しぶりですね。だからやっぱり、どこかしらでプレッシャーは感じてるのかもしれません。「起きたら30分後に公演時間」みたいな夢も見ますし(笑)。
――すごく変に焦ってるわけではないけれども。
Pile そう。じわじわ。やっぱり記念になる場所や時期なので、無意識的なところで意気込みも高まってるのかもしれないです。武道館ではソロのライブでやるからこそ見せられるようなものをお届けするつもりなので、それをぜひ楽しんでもらいたいですね。
Interview&Text By 須永兼次
●リリース情報
7thシングル
「Lost Paradise」
11月29日発売
【初回限定盤A(CD+DVD)】
品番:VIZL-1276
価格:¥2,000+税
【初回限定盤B(CD+GOODS)(Pile BIGトートバッグ)】
品番:VIZL-1277
価格:¥2,000+税
【通常盤(CD ONLY)】
品番:VICL-37338
価格:¥1,200+税
<CD>
M01. Lost Paradise
M02. Undefined Angel
M03. Lost Paradise <off vocal>
M04. Undefined Angel <off vocal>
<DVD>
「Lost Paradise」ミュージックビデオ、「Lost Paradise」ミュージックビデオオフショット映像
【アニメ盤(CD ONLY)】
品番:VICL-37339
価格:¥1,000+税
<CD>
M01. Lost Paradise
M02. Undefined Angel
M03. Lost Paradise <TV version>
●ライブ情報
“Pile Live at Budokan ~Pile feat.ラブライブ!~”
2017年12月2日(土)会場:日本武道館
16:00開場/17:00開演
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