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INTERVIEW

2017.11.13

TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』EDテーマ「虚虚実実」リリース記念 nano.RIPEインタビュー

TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』EDテーマ「虚虚実実」リリース記念 nano.RIPEインタビュー

nano.RIPEのニューシングル「虚虚実実」は実に1年3か月ぶりのアニメタイアップ曲。TVアニメ『食戟のソーマ 弐ノ皿』のED主題歌だった前作のシングル「スノードロップ」に続き、TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』のED主題歌として制作されたドライブ感溢れる攻めのナンバーだ。そして、きみコ(ヴォーカル&ギター)とササキジュン(ギター)の新体制となった彼らの決意が込められた楽曲でもある。アニメ作品と寄り添いながら進化してきた彼らが踏み出した新たな一歩とは? きみコにその思いのたけを語ってもらった。

――今年に入ってバンドが2人体制になりましたが、意識面での変化はありましたか?

きみコ 去年の年末にメンバーがふたり抜けて、それでもバンドを続けるという決断はけっこう大変なことではあったんです。でも、あたしが歌って、ササキジュンが曲を作りギターを弾くことで、nano.RIPEというものが成立するという自信があったし、ふたりになって新しく気付くことも山ほどあったので、そういう意味でも希望のあるスタートになりました。今いちばん感じてるのは、リズム隊にサポートメンバーを迎えたことでバンドのサウンドがよりロックの方向になったので、あたしがそれに負けないようなボーカルにならなくちゃということですね。

――ライブはずっと続けてこられたわけですが、今回の「虚虚実実」はひさびさのアニメタイアップ曲ということで、待っていたファンも多いことと思います。しかも一聴して新生nano.RIPE感が伝わるナンバーですね。

きみコ 自分たちでは前回の「スノードロップ」を評価していただいたからこそ、今回のTVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』のお話もいただけたと思ってるんです。なので「スノードロップ」も攻め攻めの曲だったんですけど、今回はそれを上回るというところから曲を作り始めたんです。それでジュンが出してきたのがこの「虚虚実実」という曲で、あたしも「おおー、ずいぶんいったなあ」と思いましたね(笑)。

――ファンキーかつグルーヴ感が強調された曲調で、これまでのnano.RIPEにはあまりないタイプの曲ですしね。

きみコ せっかく新体制になって、いろんなことがリセットされて進んでいくなかで、今が「nano.RIPEはこんなこともやっちゃうよ!」と提示するには良いタイミングかなと思って。体制が変わったので音が変わっても当たり前ということもありますし、そのなかでも変わらないものを自分たちでわかっていれば、その外側の器みたいなものはいくら変わってもいい時期だとも思いますし。そういった挑戦の気持ちも込めた曲ですね。

――TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』のED主題歌として意識した部分は?

きみコ 歌詞は原作のコミックを、特に今回『餐ノ皿』で放送されるストーリーの部分を中心に読み込んで書いたので、作品に沿っているところがかなりあると思います。でも、ぼくらがタイアップ曲を歌わせていただくときは必ずそうなんですけど、その物語のことを歌詞にするときには自分自身が共感できる部分を見つけて、最終的にその作品以外のところで流れても共感を得られたり、自分の気持ちとして歌い続けられる歌にしたいというのがあって。

――今回の曲で言えば、『食戟のソーマ』という作品のどんな部分に共感を覚えて歌詞を書いたのでしょうか?

きみコ この曲は薙切えりなの気持ちに沿って書いたんです。『餐ノ皿』では彼女が父親の束縛から解き放たれるために戦うんですけど、あたしも今年バンドが新体制になって同じような環境を体験しているように感じて。今まで積み上げてきたものがなくなるかもしれないと思ったり、最初のうちはちょっと不安だった気持ちを、「そうじゃない!」っていう前向きな気持ちに変えて書いたのがこの曲なので、アニメに寄り添いながらも、あたしの気持ちを歌える曲になったと思います。

――個人的には、歌詞の世界観も「スノードロップ」に繋がるものを感じましたが、そちらは意識して書かれたのですか?

きみコ たしかに「スノードロップ」のその先を書きたいというのはありました。あの曲は葛藤してる真っ只中で曲が終わるという感じだったので、今回の「虚虚実実」ではその葛藤がまだ続いてるんだけど、最後は<籠の中>から飛び出すっていう風に、物語の続きをイメージをしてましたね。

――今作ではCoda名義での活動でも知られる小田和奏さんがサウンドプロデューサーを務めてますが、楽曲は具体的にどのように作っていかれたのでしょうか。

きみコ 「虚虚実実」に関しては、ササキジュンの作ったデモを元にしていて、全体的には彼がもともと持っていたイメージのままなんですけど、コード感とか細かいところを和奏さんに手伝っていただいて。カップリングの2曲については、もっと根本的なアレンジの部分から一緒に作業しました。

――小田さんとの作業で新しく得られたことはありましたか?

きみコ あたしとジュンは、良くも悪くもずっと感覚で音楽をやってきた人間なので、理論的なことはあまりわかってない部分が多いんです。和奏さんにはそういった感覚でやっていて埋まらなかった隙間を埋めてもらったような感じがすごくありましたね。コードもいままでは響きでやってきたところを、ちゃんと理論に沿った形で理想に近づくやり方を教えていただいたりして。サウンド的にもいろいろ気付くことが多くて、いまさら勉強させてもらってる感じです。来年で結成20年なんですけどね(笑)。

――でも、カップリング曲の「ヒーロー」は、そのnano.RIPEの感覚的な部分の良さが出た曲だと思います。個人的にも大好きな曲でして。

きみコ ありがとうございます!この曲はあたしが書いたんですけど、最近ジュンの書く曲が良すぎてちょっと自信がなくなっていたのでうれしいです(笑)。

――2ビートでパンキッシュに駆け抜ける、潔いほどストレートなロックチューンに仕上がってますが、どんな着想で書かれた楽曲なのでしょうか。

きみコ 最近は車で移動するときに自分の曲をずっと聴いてるんですけど、例えば「虚虚実実」とか前作のアルバム(『スペースエコー』)みたいにアレンジを細かいところまで練った曲もカッコイイと思いつつ、あたしはすごくシンプルなnano.RIPEも好きだなと思っていて。そういう昔のインディーズ時代に作ったような曲、本当に何も分からずに勢いだけで作ったような荒削りな曲を、今のnano.RIPEでやったらいっそうカッコ良くなるんじゃないかと思ったんです。それでコードはシンプルに、メロも詰めすぎずに、1回聴いたら歌えちゃうようなシンプルでキャッチーな曲を書こうと思って、書き始めた曲なんです。

――歌詞も空を翔けるような様子が描かれていて爽快な内容ですが、こちらはどんなイメージで書かれたのですか?

きみコ nano.RIPEには昔から空を飛んでる曲がたくさんあるんですけど、この曲は最近知ったブロッケン現象というものをイメージして書いたんです。これは雲の上に飛行機とかの影が映るとき、その影の周りに虹の輪のようなものができるっていう現象で、例えば人の影でもそういうことが起こるらしいんです。それが素敵だなと思って曲として物語を書き始めたので、サビの歌詞はブロッケン現象のことをそのまま言葉にしてますね。

――それで<バリオ>という珍しい言葉も使われてるんですね。パラグライダーのバリオメーター(昇降計)を指す言葉というのは、今回調べて初めて知りました。

きみコ そうなんですよ。たぶん歌詞で<バリオ>という言葉を使ったのはあたしが初めてじゃないかと思ってます(笑)。パラグライダーもやってみたいんですけど、職業柄ケガはできないのでやったことなくて。その分いろいろ調べたりしてて、バリオっていう言葉も知ってたんです。

――サビの“上昇気流を捕まえて”の箇所も、歌詞とメロディーの一体感が素晴らしくて、聴いていてすごく外に飛び出したくなるんですよね。

きみコ これはどちらかというと言葉が先にあったんですよ。それをギターで弾きながら歌って作ったメロディーなので、言葉とメロのハマり具合はそこからきてるんだと思います。

――もうひとつのカップリング曲「深く」は、これまでの2曲とは趣きを変えた生ストリングス入りのバラードですね。

きみコ この曲は3~4年前に作ったものでプリプロまでしていて、毎回アルバムを作るたびに入れようって話になってたんですけど、何となく収録しないまま温めてた曲なんです。でも、すごく大事にしていた曲だし、他の2曲とのバランス的にもバラードが入るとちょうどいいということで、このタイミングで発表することに決めたんです。アレンジは和奏さんに「和奏節でやってください」ってお願いして、コードをかなり変えてもらったり、鍵盤も弾いてもらっていて。しかも初めて弦を生で録音したので、nano.RIPEのバラードのなかでもかなり異質な曲になったと思います。

――歌詞はどんなイメージで書かれたのですか?

きみコ このときに何を考えて書いたかは憶えてないんですよ(笑)。テーマとしては大きな意味での愛を書いたんですよね……きっと(笑)。nano.RIPE自体が恋や愛について歌った曲がすごく少ないなかで、何でそれを飛び越えた人間の愛、母の愛みたいなものを歌おうと思ったのかはわからないんですけど……でも、書いたときの気持ちがわからないからこそ歌詞を客観的に読むことができて、単純に良い歌詞だなって思えたんですよね。それもあって今回入れることにしたんですけど。

――歌詞で“深くなりゆくのは秋と夜とあともうヒトツあったような”というふうに謎かけしてるのもユニークです。

きみコ 今も憶えてるのは、「秋」は「深くなる」っていう表現をするじゃないですか。あたし的にはそれがすごく不思議で、春も夏も冬も「深くなる」とは言わないんですよね。それで「他に『深くなる』って表現するものは何だろう?」って当時考えて、「夜」と「愛」があるなと思って書き始めたんです。そういう日本語の不思議なところが好きなんですよね。でも、今回この曲を録り終えてから、メンバーに「深くなる」ものを訊いたら「謎」とかいろいろ出てきたんですけど(笑)。

――今回のシングルは3曲ともバンドの新しい可能性やポテンシャルを提示していて、新体制の一発目にふさわしい作品になりましたね。

きみコ そうですね。アレンジ的にも演奏的にも、歌詞も曲も、すべてにおいてそういうシングルになったと思います。「深く」に関しては昔に作った曲ですけど、作った当時にリリースしなくて良かったと思うぐらい、今のnano.RIPEでやる意味みたいなものが見つけられて。

――今回の「虚虚実実」ではTVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』という作品に触発されて新しいことにチャレンジされましたが、これまでのアニメタイアップ曲も含めて、いろんなタイプのアニメ作品の曲を手掛けることで、自分達の音楽性の幅を広げてきた部分もあるんじゃないですか?

きみコ それはすごくありますね。曲はもちろん、歌詞もその作品に出会わなかったら書けなかったということは、改めて自分の曲を聴きなおしたりしていてもよく思うので。そうやって書いてきたものは確実にnano.RIPEの血となり肉となってますし、でもそのなかでnano.RIPEらしさを見つけられてるのもいいことだなと実感してます。

――10月にはTVアニメ『花咲くいろは』で縁のできた金沢でワンマンライブ「なのぼり祭り in 金沢AZ」も実施されて、過去に関わってきた作品のことも大切にされてますものね。

きみコ 「ぼんぼり祭り」の前日にライブさせていただいて。特にTVアニメ『花咲くいろは』は初めてのタイアップ曲だったり、「ぼんぼり祭り」が今でも続いてるっていういろんな要素があるので、金沢でいちばんたくさんライブをやるバンドになりたいんですよね。金沢でライブしたときは「金沢はnano.RIPEの領土だ」って言うこともあるぐらいで(笑)、その領土を誰にも明け渡したくないんです。せっかくTVアニメ『花咲くいろは』でできた縁なので「nano.RIPEと言えば金沢」というのは守っていきたいですね。

――素敵な関係ですね。ぜひ今後もいろいろタイアップしてnano.RIPEの領土を増やしていただきたいです!

きみコ そうですね、47都道府県を制覇するのが理想です(笑)。

Interview&Text By 北野 創


●リリース情報
TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』ED主題歌
「虚虚実実」
11月15日発売

品番:LACM-14683
価格:¥1,200+税

<CD>
1. 虚虚実実
2. ヒーロー
3. 深く

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