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INTERVIEW

2017.10.17

最新アルバム『Don’t Worry~モノタリナイ物語~』リリース記念、野島健児インタビュー

最新アルバム『Don’t Worry~モノタリナイ物語~』リリース記念、野島健児インタビュー

声優のみならず、アーティストとしてもコンスタントに音楽活動を続けている野島健児。『いつかどこかの僕について』、『Between the lines』に続く、セルフプロデュースアルバム第3弾『Don’t Worry~モノタリナイ物語~』をリリースした彼に、このアルバムに込めた想いを聞いた。

――前作『Between the lines』を発売してから、今作『Don’t Worry~モノタリナイ物語~』に着手するまでにどのような流れがあっての新作制作となっていったんでしょうか。制作のきっかけになった出来事などがあったんですか?

野島健児 そうですね。実はCDを制作するにあたって、「三部作にしたい」ということを漠然とですが考えていたんですね。公にはしていなかったんですが、なんとなくのイメージとして、3枚のアルバムをまずは作りたい、という想いがあって。その第一弾として『いつかどこかの僕について』というアルバムを出したんです。そのときの想いとしては「歌いたい」「自分のアルバムを作りたい」というものだけで、まだ自分の中にどんな可能性があるのか、何ができるのかも全然見えてはいなかったので、自分がどういう人間なのかを立ち止まってちゃんと見直してみよう、というところからスタートしたんですね。それが1stアルバム『いつかどこかの僕について』。いつかの、あのときの僕に会いたい。「歌いたかった」と思っていたり、そんないつかの僕に辿り着くためのひとつの物語のスタートだったんです。

――その自分探しから、続いたのが『Between the lines』。

野島 そう。「行間を読め」という意味ではあるんですけど。この作品では『いつかどこかの僕について』で一度、遠くから俯瞰で自分を見てみて、そこで初めて、遅まきながら「自分はこういう人間だった」というひとつの形に辿り着いた。「僕は歌が好きだったんだ」。そんなひとつの核心を得てから、ここで初めて人間として、表現者として蘇生しよう、というプロジェクトが『Between the lines』だったんです。もう一度、一から始めよう、と。何とか自分を蘇生させて、ここからのはじまりを表現しよう、と臨んだ『Between the lines』だったんですが、その次となる作品をこんなに早く作ることになるとは正直思っていなかったんですよね。それまでに1、2枚シングルを挟んで、ちょっとずつ曲を作り溜めて、今ある自分の集大成をそんな作り溜めた作品の中から積み上げていこうかなと思っていたんですけど、打合せを重ねていくうちにいい曲の構想がどんどんあがってきて。「もうこれはアルバムにしてしまった方がいいかもしれない」という話になったんですよね。まだコンセプトもできていなかったし、形作りにも達してはいなかったんですが、アルバムにしてしまおう、と。三部作にしたい、というなんとなく浮かんでいたチームの意識にリンクすることで、そこからコンセプトについてやアルバムの構想へと結びついていきましたね。

――とてもスピーディーに歯車が回り始めたんですね。

野島 普段なら構想に一年くらいかかるんです。でも今までの2枚のアルバムとは全然違うものにしていきたいね、という話もしていましたから、これまでにない動きにもなったのかもしれないですね。ゼロから見つけるものから蘇生していくもの、そこからさらに新しいもので羽ばたきたいという想いがありましたから。もちろん今までよりもさらに上の世界にいきたいという想いですし。でもどうやっていこうか。そうやっているうちに、自分の中でもいろいろと思いがけないことがあったり、ショッキングなことやうまくいかないことに遭遇するようなこともあって。自分ではどうしようも出来ないことに出会うことって、生きていく中であるんですよね。でもそんなときでも「まぁ、いいか」って言える強さって大事だな、ということをものすごく実感していったんですね。「Don’t Worry!なんとかなるさ!」という想いが湧き上がって、今回のアルバムの裏テーマは「まぁ、いいか」でいこう!ということでスタートしたんです。その強さを表現していきたい。この言葉は「諦め」と捉えられるけど、そこには覚悟があるし、現時点での等身大の自分を認めることになるんですよね。今の自分ではどうしようもない。それなら「まぁ、いいか」。そう思うことで初めて前に進めるし、そこで初めて受けられる光がある。そんな希望の言葉でもある。僕は「まぁ、いいか」という言葉にすごく救われているなという想いがあるんです。そういうところを今回のアルバムで表現していきたい。その想いを「Don’t Worry」という言葉と共に表しました。

――今回は作詞をされた野島さんですが、作詞作業はいかがでしたか?

野島 今回は共作ということで「Don’t Worry~モノタリナイ物語~」というタイトル曲の歌詞を松井五郎さんと一緒に書かせていただきました。最初は全部、自分ひとりで書いてみたんですね。まずはフレーズを聴いて、パッと浮かんできたのが「モノタリナイ物語」という言葉で。その言葉が降って来たことで「モノタリナイ物語って何だろう」というところから書き始めました。「書かなきゃ!」と焦る気持ちよりも、本当に素直に「何だろう?」と探していくように。自分に足りないことって何だろう。モノタリナイと思うことって何だろう。いつも何かが足りないと穴が開いているような感覚を覚えていたり、そんなことを書き始めていったんですが、なかなか拙い部分もたくさんあって。一度は自分ですべて書き上げて、何度も書き直して、自分で書くということもやったんですが、そこで松井さんに改めて読んでいただいて「こういう方法もある」という別の方向からのアプローチも見せていただいて。それはもう、目からウロコが落ちるような感覚なんです。そこに広がっていたのは「まぁ、いいか」で。僕だけで書き上げたものでは辿りつけなかった「まぁ、いいか」に答えを導き出してくださった松井さんの歌詞ってすごいな、と思いました。でも難しいけれど、まだまだやっていきたいなって感じています。

――先日「LisOeuf♪」での野島さんの連載コーナー「のじけんBar」で対談をされた鈴村健一さん然り、最近では周囲でも作詞をされる方が多いかと思います。現場でお会いになった際などに、そういった方と作詞に関してお話されたりはしましたか?

野島 そうですね。それぞれ書く方法があるみたいですよね。気になって、どうやって書いているのか、聞いちゃいます。人によっては、ギターを弾きながら一緒に歌詞が浮かんでくるっておっしゃっていたりもしましたし。僕の場合はそれがかなわないので、曲をいただいてから書いているんですが、ほかの方でも「キャッチーな言葉を使って、そこから広げていく」というお話も聞けたり。お客さんに楽しんでもらいたいから、というお話に「なるほど、そういう書き方もあるのか」と思ったりもしましたし。でもそれぞれに共通して言えるのは「声優」というひとつの出来上がったものの中で自分を表現していく、ということ。声優はキャラや声を通して表現をしていく人間だけど、歌詞は完全にゼロから自分で発信していくもの。だからこそ「言葉で表現をしたい」って思うのかなって強く思う。だから僕も歌詞を書きたい、自分の歌で表現したいって思うのかもな、と。皆さんからエネルギーをもらって、そういった想いを改めて強くしました。

――特に前作と違って、今作は外に向かっている、開放的だな、と感じました。前作までは内側に向かっていたものが、外へと放っているような印象があって。

野島 まさにそうですね。『いつかどこかの僕について』は自分探しで、『Between the lines』は自分の内包するものを問うものが多かったんですが、今回の『Don’t Worry~モノタリナイ物語~』は一度自分を紐解いて「まぁ、いいか」と言える、自分を受け入れた後なので、自然に、全体に発信していくものになったんだと思います。もちろん僕から出ているものなので、これまでの作品とガラリと別人格なわけではないですが、また僕の中の膨らみを通して初めて外に出てきたもの、ということを今回のアルバムからは感じますし、このアルバムからは聴いてくださっている皆さんの顔が浮かぶんです。聴いてくれる人がこのマイクの先にはいる、というのをレコーディングのときから意識をして歌ったんです。だからかもしれないですが、このアルバムを聴いていると、人間のために歌った曲たちだ、と感じるし、曲も聴いてもらえることを喜んでいることや聴いてくれる人たちが喜んでくれるんだ、ということも感じる。そんな想いが投影されてきて、聴いている自分自身も力をもらえるし、励まされるんですね。「まぁ、いいか」の精神じゃないですが、日々、厳しい現実があったとしても励まされるんです。今日も、きっと明日も。

――そんな楽曲が披露された先日の吉野裕行さんをゲストに迎えたライブ「Reflection」の感想と、開催が待たれる吉野さんとのライブ「NeotenY」への意気込みをお願いします。

野島 「Reflection」=乱反射。そこからお互いがどう見えていくのか。一人ひとりからの見え方や相手を通して反射してくる自分たちを見つめる、というコンセプトでもあったので、やっぱりよっちん(=吉野)という人物を通して、僕の知らない自分を知ることになりましたし、よっちんの中でも発見したいろんなことがあったと言ってくれて、楽しんでもらえたことがまずうれしかったです。それとお客さんの反応も思っていた以上のもので返って来たのが驚きでした。想像以上に喜んでくださっていたのが。楽しんでもらいたくて作っているんだけど、やってみたらその何倍も返って来るものがあって。「やってよかったな」って、やりながら思いました。お客さんと気持ちを共有している実感は今までの中でもより強かったです。「NeotenY」はキラミューンさん主催のイベントというところで、どんなものになるのか、どんな表現ができるのか。僕自身も楽しみです。

――そして11月4日には「LisOeuf♪ Party」へも出演していただきます。

野島 今回は若くてキラキラしていると思いますが、楽しんでいるおじさんもいるよ!と。きっとそれぞれの面白いものを、それぞれのアーティストならではのものが出てくるなかで、僕は僕らしいものをお見せしたいと思っていますので、皆さんに楽しんでもらいたいです。今の時点でも皆さんが楽しんでいる様子が見えるんです。その皆さんが楽しんでくださっているので、僕は安心して、当日のステージを迎えたいと思っています。

――では最後に読者へメッセージをお願いします。

野島 まずは、今回の『Don’t Worry~モノタリナイ物語~』をぜひ聴いていただきたいです。僕自身もこのアルバムに助けられています。自分の中の足りない部分は何かというと、きっとそれは自分自身の尊厳で。人に見られている自分や見られたい自分といったような外的なもので見失ってしまっている、自分にとって大切なもこそモノタリナイと感じるもので。それに気が付かせてくれる大切なCDになっています。そんなシンデレラのガラスの靴のようなものは誰かが見つけてくれるものではなく、自分自身が見つけるものだと思います。その皆さんにとって大切なものになるように心を込めて作ったので、ぜひ聴いてください。

Interview Text Byえびさわなち


●リリース情報
『Don’t Worry〜モノタリナイ物語〜』

発売中

【モノタリナイセット(CD+ALBUM CONCEPT BOOK)】
価格:¥3,500(税込)

【CDのみ】
価格:¥2,700(税込)

<CD>
1 Don’t Worry 〜モノタリナイ物語〜
2 とある石についての考察
3 Happy endの白い地図
4 エーテルの風
5 モルフォ蝶の生まれる朝に
6 Bring Word
7 希望の1mm
8 やぁ、みんな!

VOICE ・VOCAL 野島健児
LYLIC 松井五郎・野島健児
MUSIC 藤谷一郎

野島健児ALBUM CONCEPT BOOK
「Don’t Worry〜モノタリナイ物語〜」
¥1500(税込)
ALLカラー 40ページ

写真 大泉美佳
デザイン 横山啓太

購入は「のじまーけっと」にて

●イベント情報
Kiramune Special Project“NeotenY”
11月26日 (日) 16:00 開場/17:00 開演
【大阪】グランキューブ大阪
(問)ソーゴー大阪 06-6344-3326(平日11:00-19:00)

1月21日 (日) 16:00 開場/17:00 開演
【千葉】舞浜アンフィシアター
(問)インフォメーションダイヤル 03-5793-8878(平日13:00-18:00)

出演:吉野裕行、野島健児
チケット料金:全席指定 7,500円(税別)/8,100円(税込)
※ご入場の際、ご本人確認をさせていただきます。

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