声優活動25周年を記念したアニソン・カバーアルバム『アニメグ。25th』をリリース!緒方恵美インタビュー

声優・緒方恵美が声優活動25周年を迎えるにあたって、海外のファンにオフィシャルの商品を正規のルートで届けること、またアニメやアニソン業界が陥っている現状を人々に広く知ってもらうことを目的に、クラウドファンディングでアニソン・カバーアルバム『アニメグ。25th』の支援企画を立ち上げた。スタート前から人々の耳目を集め、見事な成功を収めたが、一方で早々に販売予定枚数に達してしまったため、入手できない人も多数現れることに。そこで改めて一般流通版のCDを10月11日にリリースする彼女に、今回のアルバムに賭けた想いを聞いた。

なおリスレゾではアルバムの楽曲についてさらに掘り下げた記事を掲載。本インタビューとの連動記事となっているので、ぜひ併せてご一読いただきたい。

選曲する際にまず考えた3つのこと

――『アニメグ。25th』の収録曲はどのように選ばれたのでしょうか?

緒方恵美 まずメインキャストであるかどうかに限らず、この25年の間に自分が出演した作品の中からです。それから15周年のときにもアニソン・カバーアルバム『アニメグ。』を出しているので、それ以外の楽曲。そして、せっかく海外の方にもダイレクトにお渡しできる機会なので、「海外の方にも楽しんでもらえる」「日本のアニメーションには素晴らしい楽曲がたくさんあることを紹介できる」、そんな曲ですね。最初にこの3つを決めて、選曲を進めました。

――どうしても入れたいと考えていた楽曲はありましたか?

緒方 まず最初に、この曲が好き!と思う曲を多数書きだし、その中から先ほどの基準に則って全体のバランスを考えていったので、「この曲は絶対」というのは敢えてあまり考えないようにしました。許諾がとれなければショックですし、心の防御的な意味もこめて(笑)。「この曲を選ぶならこちらの作品ではこの曲」という感じで、まずは「好き」の中からのバランスをとろうと思いましたが、最終的には、ほとんど全ての希望楽曲で許諾がとれたので、それは本当にありがたかったです。また、最初に収録曲として10曲を選びましたが、クラウドファンディングで「この金額を達成したら曲を追加する」というストレッチゴールで設定しなければならない曲もあり、交渉の順番にも悩みつつ、また達成金額によっては交渉し直せるかもしれないという曲もありましたから。なので、最終的に全曲決まったのはあとのほうでした。

――楽曲の制作についてですが、今回は緒方さんが仮歌を入れてアレンジャーに渡したそうですね。

緒方 はい。すべての曲で仮歌を入れさせていただきました。以前、作詞家の及川眠子さんがツイッターで、“最近はシンセでメロを弾いてくる作曲家も多いけど、やはり「ラララ」なりでたらめ英語なりで歌が入っていると、こちらも気持ちの入り方が全然違う。エヴァシリーズの曲は全部高橋洋子ちゃんが自分の声でラララを入れてきてた。それ聴いたとき、一瞬にして世界を捉えることができた”とつぶやかれていたんですね。

――エヴァ関連はすべて曲先で、高橋洋子さんの仮歌を及川さんにお渡ししていたそうですね。

緒方 そのツイートを今回、参加していただいている作曲家の中土智博さんがご覧になっていて、彼も“アレンジするときに、アーティストさんご本人の仮歌があると単純に気分も上がるし、完成形も見えやすい”とツイートされていたんです。ですので、「桜流し」のアレンジを中土さんにお願いするとき、「仮歌は私がやらせていただきます」とお伝えしました。実は私、普段から仮歌を歌いたいと思っているのですが、ほとんど機会がないんです。多分、私に仮歌を歌わせるなんて、と、レコード会社さんが気を遣ってくださっているからだと思いますが。でも今回は私がアレンジャーさんにお願いする立場でしたので、アレンジを依頼するとき、「もしご希望があれば仮歌を私が歌わせていただきます」とそっとお伝えしてみました。そうしたら、ほとんどの皆さんに「ぜひ!」と仰っていただけて!うれしかったー(笑)。

――緒方さんがアレンジの発注もされているので、仮歌にも想いを込められたのかと思いますが。

緒方 あくまで仮歌は仮歌なので、熱はこめつつ、1・2回のみでサラッと。ピッチが若干ずれてもそんなに細かく合わせるということはしていません。イメージをお伝えする程度で。仮歌の段階で本気に歌ってしまうと、本番での新鮮さがなくなってしまいますから……それでも本番のシンガーの「想い」を仮歌でお渡しすることによって、アレンジャーさんやミュージシャンとのキャッチボールが増え、結果、曲の完成度は上がっていると……信じます(笑)。

佐藤純之介(ランティス・プロデューサー) そうですね。「桜流し」もまずベーシックなトラックに緒方さんの仮歌を乗せて、その仮歌を元にテンポのゆらぎなどを作り直しました。そのうえで本番の歌を録る、という手順でした。手間はかかりましたが、その分精度が上がりましたね。宇多田ヒカルさんの「桜流し」ではなく、緒方さんの「桜流し」になったのは、その段階を経たからだと思います。カバーではあるけれど、あらたに生まれ変わった感じになっています。

楽曲にゆかりのある豪華ゲストボーカルの参加

――今回、「Moon Revenge」「太陽がまた輝くとき」「バイバイ YESTERDAY」ではゲストボーカルを迎えています。

緒方 ありがたいことに、クラウドファンディングで予想以上にご支援をいただいたので、実現することができました。

――劇場版『美少女戦士セーラームーンR』のED主題歌「Moon Revenge」のカバーには、セーラーネプチューンを演じられた勝生真沙子さんが参加されています。勝生さんとの初デュエットはいかがでしたか?

緒方 私が言うのもたいがいアレですけど、今でもこの声が出るということは、本当にすごいと思います。少年役より、少女の……凜としたハリのある、でも儚い声は、キープが難しい。勝生さんは私より先輩ですが、当時のキャラクターの声でそのままで歌われていて、本当に素晴らしかったです。おかげで「彼女」と再会できた。泣きました。

――「太陽がまた輝くとき」は『幽☆遊☆白書』のED主題歌でした。飛影役の檜山修之さんと歌われるのは初ではありませんよね。

緒方 『幽☆遊☆白書』で、昔もデュエットさせていただきましたが、久しぶりでした。檜山君は、いつもあまり変わらないですけど(笑)。お互い、スッと蔵馬と飛影になれた。だけじゃなく、合わせたわけではないのにレコーディングのときに似たような格好をしてきて、「何?このデュエット感」みたいな(笑)。楽しかったです。

――『暗殺教室』のOP主題歌「バイバイ YESTERDAY」は、アニメの雰囲気までカバーしたような曲ですね。

緒方 『暗殺教室』のチームってスタッフさんもキャストさんも本当に仲がいいんです。クラウドファンディングでアルバムを出そうと思ったとき、最初に相談したのも『暗殺教室』のメインスタッフチームだったんです。そうしたらみんなが「ぜひやったほうがいい!」と言ってくれて。みんなで応援してくれ、文字通り支えてくださいました。この楽曲をやると決まって、できたら私が演じる堀部糸成が所属する寺坂組(木村 昴、はらさわ晃綺、下妻由幸、斎藤楓子)のみんなで歌いたいという話をしたときも、実は難しい許諾がいろいろと必要だったんですけど、「集英社さんには私たちで話をもう通してあります」って(笑)。

――えっ?(笑)。

緒方 作品の音楽プロデューサーも、別会社で発売するアルバムなのにいろいろと動いてくれて、「英語のラップOKです!」とか。別のプロデューサーも、「『寺坂組』という名前を入れたいですよね?」って聞かれて、「はい」って答えたら、「そのまま入れるにも許諾が必要なんですけどもう取ってあります」って。「えーっ!?」って、目が点になりました(笑)。レコーディングにも来てくれましたし、寺坂組じゃないキャストまで差し入れを持って応援に来てくれたり。もう本当に、足を向けて眠れません。。

――皆さん、本当に仲がいいんですね。

緒方 はい、そうなんです(笑)。その寺坂組なんですが、寺坂竜馬を演じている木村 昴がラップの名手でして。本当にすごいので彼のラップを「バイバイ YESTERDAY」には絶対入れさせてもらいたくて。とてもカッコヨカッタんですけど、後奏では、それをぶち壊しにする寺坂組のほかの4人という(笑)。でもおかげで、『暗殺教室』のチームっぽい曲になりました。

クラウドファンディングが開くあらたな可能性

――海外のファンに届けることを目的とされている今作ですが、海外公演などは考えていますか?

緒方 単独では難しいですが、海外のフェス等のなかで招致いただける折りには、ぜひやらせていただきたいと思います。ありがたいことに、ライブをやる環境を整えてオファーいただけることもあり、そのときは喜んで伺うのですが……実は交通費と飲食代だけ出すので来てほしい、という海外からのオファーが多いのですね。いろいろな考え方があると思うのですが、私は、今はそういう「ギャラなし」のイベントは、ちょっとお断りしていました。もちろん顎足代だけでも大変で、皆さん頑張っていらっしゃるし、そのご好意は大変うれしいのですが。

――たしかにアーティストに戻ってくるものがないと、その後の活動は難しくなってきます。

緒方 そうなんです。タダでもいく、という方もいらっしゃるようですが、私個人的には、私がそれをやったら、後輩の仕事にも影響がでる気がして……それは今回のアルバムの主旨にも繋がりますけど、我々が作った作品が海賊版としてタダで見られるような状態になっているのは困るわけで、やっぱりリターンが制作サイドに返ってこないのはよくあないと。でも、今回のカバーアルバムはせっかく海外にもお届けできるので、そういうオファーがあったら、ご相談させていただきながら、ぜひ行きたいとは思っています。完全無料でなければ(笑)。

――アルバムリリースを達成し、クラウドファンディングでやることの魅力についてはどのように考えていますか?

緒方 例えばツイッターで自分のアルバムを出すとつぶやくと海外の方から「どこで買えますか」って必ず聞かれるんです。でもそれに答えてあげられないという状況がずーっと続いていました。今回、25周年なのでアルバムを出しましょうという話をランティスさんからいただきましたが、手が届く人にだけに作品を届けるということでいいのか、と考えたのが最初のきっかけでした。クラウドファンディングのリターンという形なら、国内外に関わらず同じタイミングでアルバムを届けられます。それから、支援サイトに私がなぜこういう形でやろうと思ったのかを書くことで、日本のアニメーション制作会社が困っている現状や、アニソンにしても今後海外での展開を予定しているANiUTa(アニュータ)など公式なものを利用してほしいと思っている、ということを知ってもらうことができる。私ひとりで改善できるわけではないですけど、ちょっとずつでも変えていくことが大切だと思っています。でも正直、海外でサクセスするとは思ってなかったんですよ。もちろんきちんと有料配信等をご覧いただいている方もいてくださいますが、今まで無料で見聴きしてきた方々にとっては、「お金を払ってください」とつきつけられているのと同義ですから。賛同して下さる方が少なくてもいい、目を通してくださる方がいれば。それで少しでも認知が上がれば、という想いからでした。

――今回のクラウドファンディングには、いろいろなメッセージが込められていますね。

緒方 そうですね。それにこういう方法もあるとわかれば、後輩声優やシンガーの中にも、私よりもっといい別のアイデアを思いついて、チャレンジする人が出てきてくれるかもしれないから。

――クラウドファンディングが失敗すると、下の若い世代がもっと出せなくなるということも緒方さんは仰っていました。

緒方 そうです。だから、自分を踏み台にして後輩もやってくれればいいと思っています。「みんなもなんかやるがいいよ!」(笑)。

――先輩としてひとつの道筋を示しているのですね。

緒方 そんなカッコイイもんではないですけどね。大変ですし!(笑)。でもおかげさまで一般流通版も出ることになりました。これが売れないと、ランティスの皆さんに申し訳ないので、精一杯頑張ります(笑)。

――最後に、25周年をあらたな試みで迎えた今の気持ちは?

緒方 声優を始めたときは、まさかこんなに長く続けられるとは思っていませんでした。世代交代も早い中、何とか生きながらえ、アルバムも出させてもらえるなんて。本当に感謝です。業界のみなさま、応援してきてくださったファンの皆さま。また改めて、ここからマイペースで頑張ります。今後ともよろしくお願いします。

Interview & Text By 清水耕司 (セブンデイズウォー)

リスレゾのインタビューはこちら


●リリース情報
『アニメグ。25th』
緒方恵美
10月11日発売

品番:LACA-15665
価格:¥3,000+税

<CD>
1.プラチナ(TVアニメ『カードキャプターさくら』)
2.My Soul, Your Beats!(TVアニメ『Angel Beats!』)
3.不完全燃焼(TVアニメ『神様ドォルズ』)
4.神様のいたずら(TVアニメ『たまゆら』)
5.Moon Revenge(TVアニメ『劇場版美少女戦士セーラームーンR』 緒方恵美 feat. 勝生真沙子)
6.Driver’s High(TVアニメ『GTO』)
7.キミの記憶(劇場版『ペルソナ3』)
8.太陽がまた輝くとき(TVアニメ『幽☆遊☆白書』 緒方恵美 feat. 檜山修之)
9.絶望性:ヒーロー治療薬(TVアニメ『ダンガンロンパ The Animation』)
10.桜流し(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』)
11.Hikari(TVアニメ『ハマトラ』)
12.バイバイ YESTERDAY(TVアニメ『暗殺教室』 堀部糸成 feat.寺坂組(木村昴、はらさわ晃綺、下妻由幸、斎藤楓子))
13.Komm, süsser Tod(『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』)

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