VALSHE 記憶をテーマにした3rdアルバム『WONDERFUL CURVE』リリースインタビュー

VALSHEにとって、フルアルバムは『V.D』以来、3年ぶりのリリースとなった『WONDERFUL CURVE』。「記憶」をテーマに作り上げられ、さらにライブやその他の表現方法で広がって補完される世界観があるという、掘り下げてじっくり聴き込める作品だ。ボリューム感いっぱいのこの作品を読み解く鍵や作り上げる過程についてVALSHEに聞いた。

――『WONDERFUL CURVE』は記憶をテーマにされたそうですが、それはどんな理由からだったのでしょうか?

VALSHE 私自分自身の経験として、昨年はViCTiMの活動が困難になるという状況から再びソロとして動き出すという過程は、とても辛いことだったのですが、それを思い返そうとした時に、発言や行動が詳細に思い出せなかったんです。どれだけ楽しかったことも、つらかったことも、人はどうして「忘却」をするのだろうと考えて。そこで調べたところ、「人が忘却する際にグラフに表したときゆるやかなカーブを描いて忘れていく」という理論を提唱したエビングハウスという心理学者に行き着きました。「人はすべてのことを緩やかに、だけど確実に忘れていく」のであれば、どんなに良いライブをやってもつまらないライブをやっても忘れられてしまう。それは悔しいなという思いから、その忘却のカーブを緩やかにするアルバムを記憶をコンセプトにして作れないだろうかと考えました。「WONDERFUL CURVE」というアルバムタイトルには、忘却に振り回されるのではなく、覚えておきたいことを一秒でも長く覚えておくために、大切な瞬間は逃さず、自分でコントロールして素敵な曲線を描きましょうという意味を込めています。

――2曲目に置かれたタイトルトラックの「WONDERFUL CURVE」は3000年代の未来が舞台になっているとのことですが、今のお話からSF的な世界にはどのようにしてたどり着いたのでしょうか?

VALSHE 今回のアルバムでは音楽作品としての「WONDERFUL CURVE」以外に、物語としての「WONDERFUL CURVE」が存在しています。今後ライブなどを通じて照らし合わせたり紐付けできるようなものに仕上がっているので、今確認することができる断片的な言葉に関しては今後明らかになっていく世界観を待ってその謎解きを楽しんでほしいなと思っています。楽曲としてはアルバム全体を見渡したときの導入になるような曲にしたかったので、「テーマソング」にはしたくなかったんですね。 ただ、その思考は「表題曲」としては全く対極にあるものなので、その矛盾をひとつにまとめるところが制作上の課題になりましたね。

――4曲目の「shut out」は感情を露わにした歌詞が印象的でした。これはどんな思いで書かれたのでしょうか?

VALSHE これは「頑張ることだけが美徳ではない」というメッセージを書いています。諦めないことや頑張ることがすばらしいと言われますが、実際にはそれがなんらかの事情、環境でできない人もいれば諦める人もいます。ファンの人の話を聞いていると、頑張れない自分を責めていたりすることがあるのですが、自分が精一杯やったなかで夢の扉を開けられなくても、それが悪いことなわけでもないし、終わりなわけではない。それも一つの選んだ道筋だと思うんです。頑張れない自分だってあって当然なのにと思ったことが書くきっかけになりました。

――ご自身でもそう思うときはありますか?

VALSHE 最近はあまりありませんが、「自分ができることだからって周りができるとは限らない」と言われたことはあります。逆に言うと、自分は例えばそういう状況になったときにそこでちゃんと引くことができないと思うんです。

――6曲目「ガランド」はピアノ伴奏のみで、これまでVALSHEさんにはないタイプの楽曲という驚きがありました。

VALSHE この曲はdorikoが作曲してくれて、当初はストリングスを入れようと思っていたのですが、デモのピアノがすごく良かったので、ピアノ一本で仕上げて行こうと。こういう曲は聞くのも歌うのも本来好きなのですけど、作品として形にしたことはほとんどなかったので、歌えることは念願でした。歌も作詞も、降りてくるものに身を任せる感覚が強かったですね。

――前半はアルバムの世界観を作っていく楽曲が多く、後半はポップな楽曲が多い印象でしたが、アルバムの曲順や構成は事前に考えられていたのでしょうか?

VALSHE 軸になる数曲は決めていました。途中に「ガランド」があって、最後は「GREAT JOURNEY」というところは早い段階で決まっていたのですが、曲順を決めたのは制作において最後の最後ですね。ただ、どういう曲を作ろうかと考える時にアルバムの中での流れ、起承転結についてはサウンドプロデューサーの瞬さん(shun sato)と共有していたので、曲順はわりとスムーズに決まりました。

――7曲目の「embrace」は不思議な言葉の歌詞ですが、これは造語ですか?

VALSHE はい。「WONDERFUL CURVE」の物語をつくる中でブックレットを読み返すきっかけを作りたいと思ったんです。後に出てくるいろいろなものを照らし合わせることで解読できるようになっていますので、世界観を掘り下げるのが好きな方はぜひ、後々に照らし合わせて何と言っているのか読んでみて欲しいと思います。楽曲は、「embrace」=抱擁という意味の通り、すごく心地よい音作りになっていて、音に包まれるような、インターバルになる位置づけの曲です。

――歌詞の内容はここでは伺いませんが、歌う時にはどういう気持ちを乗せたかをヒントとして教えていただければと思います。

VALSHE 立ち位置としては、ミュージックビデオに出てくる男の子と女の子が歌っているというもので、お話の中で登場する“ある歌”をイメージしています。

――MVと合わせてトータルに考える作品作りということなのですね。

VALSHE そうですね。MVは物語全体の真ん中ぐらいをくりぬいているような感じです。前と後ろはまだ見えていない部分なので、ひとつのヒントとして見てもらえたら良いなと思っています。ナレーションも前半と後半で内容が微妙に変わっているので、文字に起こしてみると面白いかもしれません。これも後に不明だったところがハマって気持ち良い瞬間が訪れますので、そこをしっかりと何度も聞いていただければと思います。

――先ほどのお話にあった早い段階でアルバムのラストに置こうと考えられていた「GREAT JOURNEY」はどのようにしてできた楽曲でしょうか?

VALSHE アルバムの締めくくりは明るく終わりたかったんですよね。自分自身が「WONDERFUL CURVE」を描きたいと思っていたことも理由のひとつです。今回のアルバムを作っていく過程は、新しい作家さんを招いたりとか、「ツリーダイアグラム」でこれまでで最高のキーを出したりとか、自分にとっても冒険のようで、それを思わせる曲がいいなと思って瞬さんにつくっていただきました。

――日頃、新しい試みをする際には不安を感じずに楽しめるほうですか?

VALSHE 楽しめますね。『GREAT JOURNEY』の歌詞にも「予想した通りの航海よりも 想像も出来ない景色を見てみたい」とありますが、想像できないことの方が楽しいんです。すべて自分の思い描いた通りのものができるよりも、「こんなことができるとは思っていなかった」というものが仕上がるほうがワクワクするんです。これから先もそうしたものを作っていきたいなと思えるアルバム制作でした。自分が何か失敗してしまったとしても、一緒に向き合ってくれるだろうという仲間がいるからこそ、そういうところで不安に感じずにできるんだろうなと思います。

――先ほどのお話にもありましたように、このアルバムの物語を補完するライブが9月から始まりますが、どんな内容になりますか?

VALSHE 具体的なところは未知数なところも多いのですが、5都市でやらせていただくにあたってそれぞれの環境に合わせたよさを出していこうと思っています。ライブはこちらから提示するだけではなく、その場にいらっしゃる方と一緒に作っていくものです。去年のライブで「場を楽しむ」ということに味をしめたので、ツアーを通してどの会場でも場を楽しみたいなと思っています。福岡はすごく久々だし、仙台ははじめての会場です。しっかり生の歌を届ける形や、ロック感あふれるライブだったり、物語を連想させる様な演出が取り入れられるステージがあってもいい。「WONDERFUL CURVE」という大きな物語がありつつもそれにとらわれすぎずに、ライブという環境を最大限に楽しんで、みんなと作っていけたらなと思っています。

Interview & Text By日詰明嘉


●リリース情報
3rd FULL ALBUM
『WONDERFUL CURVE』
8月23日発売

【初回限定盤(CD+DVD+豪華フォトブック)】

品番:JBCZ-9057
価格:¥3,900+税

<DVD>
「WONDERFUL CURVE」MUSIC VIDEO
Making of 「WONDERFUL CURVE」

【Musing盤(CD+DVD+白皙描き下ろしイラストポスター仕様ブックレット)】

品番:JBCF-9009
価格:¥3,900+税

<DVD>
VALSHEの記憶!徹底解剖バラエティ

【通常盤(CD)】

品番:JBCZ-9058
価格:¥3,000+税

<CD>※全形態共通
1.エビングハウスの忘却曲
2.WONDERFUL CURVE
3.ツリーダイアグラム
4.shut out
5.MONTAGE
6.ガランド
7.embrace
8.DOPE
9.Chain Smoke
10.Show Me What You Got
11.CYCLE×CYCLONE
12.a light
13.コドモハザード
14.GREAT JOURNEY

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