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REPORT

2017.08.03

ファンに寄り添う歌声の源は、その笑顔。 “Machico Live Tour 2017 DAY’S melody:”東京公演レポート

ファンに寄り添う歌声の源は、その笑顔。 “Machico Live Tour 2017 DAY’S melody:”東京公演レポート

7月16日、渋谷クラブクアトロにて“Machico Live Tour 2017 DAY’S melody:”の東京公演が開催。今年5月にリリースしたメジャー1stアルバム『SOL』を引っさげて開催した本ツアーでは、アルバムの世界観の表現はもちろん、デビュー5周年を迎えた彼女のこれまで足跡の振り返りも両立。新旧のファンがともに楽しめるライブが作り上げられた。

開演時刻を迎えて場内が暗転すると、流れたのは目覚ましのアラーム音。続けて「寝坊しかけたMachicoが慌てて起きて、会場に向かう」という設定のボイス(※舞台裏からの生アナウンス)が流れ、「(ツアー)2日目、渋谷、行ってきまーす!」の声に続けてステージに登場。最新アルバム『SOL』の持つ“皆の1日に寄り添う”というコンセプトや、そのリード曲「OVER HEAT」に沿った演出だ。そして1曲目「ワイルドカード」のイントロが流れるなか、「渋谷、お待たせー!」とシャウトし場を一気に盛り上げる。
その彼女の表情は、笑顔全開。サビではセンターのお立ち台に足をかけて、拳を突き上げて高らかにパワフルに歌う。それに合わせて高まるフロアを見やって、またニコリ。ラスサビ「一緒に」で上手から下手、「せーので」で下手から上手へ指でフロアをさらって会場全体で“スタート”……したかと思ったら、いきなり繰り出されたのはキラーチューン「fantastic dreamer」。青空のようなブルーのライトとともに歌い始められた頭サビから、フロアへまっすぐ飛んでくる歌声がとにかく気持ちいい。加えてただ疾走するだけでなく、Dメロ前半では歌声の表情が深まり、後半ではコール部でフロアにマイクを向けて1曲をオーディエンスとともに作っていく。さらに間髪入れずに「拳の準備はできてますか!?」と煽ると、勢いそのままにタオル曲「ラブ★スト」へ。直前練習等はなく始まったのだが、ファンのタオルの動きはパーフェクト。Machicoの歌声や表情もさらに表現豊かなものとなり、落ちサビ等の決めどころは動きも歌声も両方ビシッとキメる。

さて、この日は前述のアルバム『SOL』を引っさげての全国ツアー2日目。「今日は昨日(名古屋公演・ツアー初日)を飛び越えるライブにしたいですよね!?」と呼びかけつつ、今回のツアータイトル“DAY’S melody:”に込められた意味を「日常のなかのいろんなシーンでみんなの心に寄り添えるような歌を届けられたらいいな、という気持ちを込めました」と説明。「今日のライブもみんなの心に残るような、寄り添えるようなものにできたら」と意気込みを語っていた。

それに続けて歌ったのは、その『SOL』のリード曲「OVER HEAT」。引き続き笑顔でありながらも、直前よりも優しさの増した歌声でこの曲を表現していく。それをもっとも強く感じられるのは、Aメロだっただろうか。彼女の歌唱全般に通ずることではあるのだが、押せ押せになるサビよりもメロ部分において、より表現力に深みが出る。それを今回のライブで最初に肌で感じたのがこの「OVER HEAT」で、伸びと細かいビブラートとが併存しつつ楽曲のメッセージを的確に伝えるその歌声は、“喉からCD音源”以上のものだったように思う。その表現が“演じる”域に達していたのが、「キミコンパス」。この日は特にラスサビでの「ねぇ、」の歌声の引き方が見事。直後の告白の一節に乗せた思い切った歌声といい対比が生まれ、告白直前に心臓バクバクな女の子の姿が見えてくるようだった。
ここでアッパー楽曲ゾーンは一区切り。温かなナンバー「勇気のつばさ」が歌われる。この曲では楽曲に合わせてさらに歌声も優しく丸みを帯びたものになり、さらに押し引きの幅が、特に引きに関して広くなっていた。彼女自身の表情と歌声とはとりわけ包み込むような優しさを持ち、それが曲の最後にはより膨らんだのか、その想いを胸に閉じ込めるかのように胸の前に手をきゅっと握っていた。

この完璧に楽曲の世界を生で表現するシンガーとしての姿と、ある種いいギャップが見えるのが、彼女のちょっとぽやっとした素を感じられるMCパート。アルバムのタイトルの持つ意味“太陽神”に繋げようと切り出した「外、暑かった?」とのトークからいつの間にか脱線してしまっていったり、その最中に衣装の解説も思い出したりと歌唱中とはまた違った一面を見せ、別アングルからオーディエンスの心を掴む。

さて、「勇気のつばさ」でできた穏やかな流れを引き継ぎ、ここからはMachico曰く“寄り添いゾーン”。スタンドマイクを前に、『SOL』のラスト曲「カーテン」を静かに歌い出す。1サビ前半のスーッとした美しい抜き方をはじめ、微笑みながら紡ぎ出される温かな歌声は夜明けの光射し込むレースのカーテンを連想させる。かと思えば今度はガラリとムードが変わり、オトナの恋を描いたナンバー「摩天楼グッバイ」。歌声もさることながら、振付でのスタンドマイクの活用法やサビ中盤で物憂げに振られるフロアへの視線が、よりセクシーさを演出する。また、「カーテン」でのそれとはまったく違う物憂げな歌声の抜き方は、2曲のギャップもあって鳥肌モノだった。

インストが流れるなか一旦降壇するMachico。そのインストのラストに合わせて花火が鳴ると、羽織を身にまとって再登場。赤ベースに白い花びら模様の散りばめられた番傘を手に、夏祭りを舞台にした片想いナンバー「紅花火」を、振付も交えつつ艶やかに表現していく。切なさの乗ったつややかさ、そしてその世界を伸びやかに歌う姿は、また彼女の新しい魅力が現出したものだった。また、落ちサビ前の間奏ではその番傘を置き、今度は扇子を手に。それを開き、また艶やかに舞っていた。そこから一気に激しい「key of the future」に。衣装やサウンドのシリアスさもあってか艶やかさも少々引き継ぎつつ、力いっぱいのロックチューンを歌唱するMachicoの姿には、自然とかっこよさも乗ってくる。ライブ中としては久々に聴かれた、この鋭く攻めくる尖った歌声も、またいい。
曲明け、ひとときの静寂の中Machicoが手にしたのは、カリンバと呼ばれるアフリカのハンドオルゴール。それを鳴らしながら彼女がぽつりぽつりと歌ったのは、「ココロメロディー」のサビだ。そうして世界を作ったところで改めて歌い始められたこの曲では、主人公として設定したロボットの少年の感情の波を繊細に表現していく。その切ないストーリーと、2サビ明けの間奏で微かな音で爪弾かれるカリンバの音色とのリンクは得も言われぬ切なさを与えるし、その少年の感情通りに楽曲を閉じる笑顔も、逆に辛い。そう感じさせるほど、楽曲の世界が場内を包みきっていた。

その「ココロメロディー」のように、楽曲の世界観をより感じられるものに――というのは今回のツアーでのMachicoの想い。特に『SOL』で穏やかな楽曲が増えたからこそ可能になった表現を、1曲ごとに明確にして届けていた。

そんな意図が語られたMCの終盤に、「ここからは騒ぎましょう!」と切り出すMachico。なぜなら次曲からは最終ブロック。景気づけにフロアとコールを交わして再びボルテージを高めたら、歌うのはラストブロックの1曲目にふさわしく新曲。ツアーにて初歌唱となった、PS4/PS Vita用ゲーム『この素晴らしい世界に祝福を!‐この欲深いゲームに審判を!‐』のOPテーマに起用された「Million Smile」だ。「fantastic dreamer」に近い疾走感もありつつもエレキギターが前に立つイントロは、『このすば』の世界をまた違った角度から表現。しかし同時にポジティブさは健在で、サビ前に一気に聴き手を高めるBメロ後半など、聴きどころも満載。そんなこの曲をMachicoが再び笑顔で歌えば、フロアにもあわせてSmileが広がる。
続く「星屑プリンス」では、イントロからMachicoがワイパーでフロアを先導し、曲に合わせてフロア上のミラーボールも回る踊れるナンバー。それに合わせて身体を揺らすファンの姿にうれしさがこみ上げたのか、彼女の表情にくしゃっとした笑顔が浮かぶ瞬間も、多々観られた。そのなかでも、歌声のキュートな表現にも一切手を抜かないMachico。星を描くサビの振付をはじめ、逆に観ているほうが一瞬気を抜くと、その愛らしさにやられてしまいそうなほどだった。そのまま今度は“流星のタンバリン”を手にすると、心からの笑顔に乗せて「マケズギライなThank you」を全力の歌声でこの曲を届けていく。その全力感は、続く「青春オーバードライブ」にも引き継がれる。シャウトになった頭サビの「メーター振り切ってこう」をラストスパート開始の合図にするかのように、全力で何の遠慮もなしにぶっ飛ばしていく。お立ち台に立って力強く歌ったDメロが、その象徴的な1シーンだっただろう。そこから続くラスサビ前の「オーバードライブ!」は、フロアからの大合唱となり、Machicoと一緒に加速。それを率いる彼女も力いっぱいこの曲を歌いきった……はずなのに、そのまま「TOMORROW」もシャウトから引っ張り、笑顔で力強く歌い出す。気づけば本編ラスト曲。汗だくではあるものの、ぴょんぴょん跳ねたりとパフォーマンスには疲れをおくびにも出さず、歌声からもまったくバテが感じられない。間奏も笑顔でダンスを決めて、最後まで笑顔でフロアと視線を交わすその姿に、彼女のプロフェッショナルさ加減を強く感じさせられのだった。

すかさず起こったアンコールの声に呼ばれて、暗転の中ステージに戻りお立ち台に立ったMachico。そこに流れたイントロに、フロアは一気に燃え上がる。それは、「ハナマル☆センセイション」のイントロ。再び笑顔をぱあっと咲かせ、ともすれば少々ファニーでさえあるような歌声でフロアを沸かせにかかる。しかし、とんでもない早口の待つこの曲のサビで表情をころころ変えられる点は、CD収録から2年あまりでの彼女の成長が計れるひとつの物差しではなかっただろうか。

歌い終わると、Machicoから改めて今回のツアーに向かう姿勢を語り始める。今回はセットリストをはじめ、グッズ制作にもアイデア提案の形で参加。そこには「デビュー5周年を迎えたので、5年間を感じてもらえるライブにしたい」との想いが込められていた。そこで「本編は『SOL』曲を中心にアルバムの世界観を表現して、アンコールで5年間を届けられたら」との意図のもとセットリストを構築。そのなかで「改めて、5年間を振り返ることの大事さを感じた」彼女は、続けて「やりたいことを自分の言葉で声に出して伝えられるようになった」ことを5年間での成長のひとつとして挙げていた。そして「やっぱりデビュー当時の自分を忘れたくない」と続け、「『Machicoのライブに来て楽しかった』って思ってもらえるよう、すべての始まりを皆さんにお届けしたいと思います!」と語ってから歌われたのは、デビュー曲「Magical Happy Show!」。幸せそうに笑顔で歌い始めるMachicoのもとには、フロアからバッチリ大きなコールが返ってくる。それは、彼女を深く愛し続けている人の多さを改めて感じさせるもの。それを受け止めつつ彼女は、すべての始点であるこの曲を、笑顔でかわいげ全開で歌いきる。

歌唱後、ライブタイトルにも結びつくように今に至るまでの“足跡”を語り始めるMachico。そのなかでは、昔抱えていた自らの歯がゆさやステージに立てないことへのもどかしさなどの悩みも素直に吐露。そのなかで少々声が詰まりかけるも「泣かないんだよぉ♪」とわざとおどけて、笑顔のステージをまっとうしようとする。そしてそんな悩みのなか、彼女は様々なことと関わっていく間に「自分ができることは限られてるし、自分が『うらやましい』ってほかの子を見ているように、もしかしたら私もほかの子からそう見られてるかもしれない」という想いにたどり着く。そして最後には、そこから生じた「もっと速く大きくなって、『Machicoを好きでよかったな』と思ってもらえる人になれたら」という決意を掲げていた。

そして5年で感じた葛藤とそれでも前に進みたいという気持ち、さらには感謝を込めて最後に歌われたのが、自身の作詞曲「花音」。バラード曲らしくしっとりと歌いだしつつも、そのボーカルの根底には力強さが。この瞬間抱えている想いをすべて乗せた、この瞬間にしか聴けない強さと深みを併せ持ったボーカルが、心にビンビン響く。アッパーでない曲で「出し切る」とは、こういうことだ――それを理屈でなく、感覚としてストレートに刻み込んだ1曲となった。
そして、パッと明るい表情に戻った彼女は、会場全員で恒例の挨拶「サラバダ!」を唱和。上手から下手まで、前からうしろまですべてのオーディエンスに向けて手を振りながら、ステージをあとにしていったのだった。

最後に「花音」で見せた、強く大きな想いを荒い形でなくひとつの塊としてしっかり届けられる点は、ほかでもない彼女の強力な武器のひとつ。改めて、もっと先へと進んでほしいと心から思わさせられた。加えてその「花音」の後に語った「私は笑っていることがいちばん幸せだと思っているので」との言葉、それはきっと、場内を埋め尽くしたファンも同じく思っていることだろう。
故郷・広島も含めたツアーも無事完走し、いよいよ迎えるはアニサマでのステージ。一人でも多くの人に彼女の生歌の魅力に気づいてほしいところだが、彼女の力があれば、それはきっと現実のものとなるはず――そんな渇望と期待を満タンに詰め込んでくれた濃密で質の高いライブ。それが、この日Machicoが私たちに見せてくれたものだった。

Text by 須永兼次

“Machico Live Tour 2017 DAY’S melody:”東京公演
2017.07.16@渋谷クラブクアトロ
【SET LIST】
M1.ワイルドカード
M2.fantastic dreamer
M3.ラブ★スト
M4.OVER HEAT
M5.キミコンパス
M6.勇気のつばさ
M7.カーテン
M8.摩天楼グッバイ
M9.紅花火
M10.key of the future
M11.ココロメロディー
M12.Million Smile
M13.星屑プリンス
M14.マケズギライなThank you
M15.青春オーバードライブ
M16.TOMORROW

EN1.ハナマル☆センセイション
EN2.Magical Happy Show!
EN3.花音


●リリース情報
『SOL』Machico
発売中

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:COZX-1324~5
価格:¥4,000+税

【通常盤】
品番:COCX-39951
価格:¥3,000+税

<CD> ※共通
1. ワイルドカード
2. OVER HEAT
3. fantastic dreamer
4. 紅花火
5. キミコンパス
6. マケズギライなThank you
7. 摩天楼グッバイ
8. 勇気のつばさ
9. ココロメロディー
10. ラブ★スト
11. TOMORROW
12. カーテン

<Blu-ray>
1. OVER HEAT MV
2. OVER HEAT メイキング映像
3. fantastic dreamer MV
4. 勇気のつばさ MV
5. TOMORROW MV

『この素晴らしい世界に祝福を!‐この欲深いゲームに審判を!‐』主題歌シングル
「Million Smile/101匹目の羊」
歌:Machico/アクア(CV:雨宮天)、めぐみん(CV:高橋李依)、ダクネス(CV:茅野愛衣)
8月23日発売

品番:COCC-17320
価格:¥1,500+税

<CD>
1. Million Smile/歌:Machico
2. 101匹目の羊/歌:アクア(CV:雨宮天)、めぐみん(CV:高橋李依)、ダクネス(CV:茅野愛衣)
3. 101匹目の羊 -アクア ver.-/歌:アクア(CV:雨宮天)
4. 101匹目の羊 -めぐみん ver.-/歌:めぐみん(CV:高橋李依)
5. 101匹目の羊 -ダクネス ver.-/歌:ダクネス(CV:茅野愛衣)
6. Million Smile(off vocal ver.)
7. 101匹目の羊(off vocal ver.)

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