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INTERVIEW

2017.05.19

劇場版アニメ『BLAME!』公開記念 霧亥役・櫻井孝宏&捨造役・宮野真守スペシャル対談!

劇場版アニメ『BLAME!』公開記念 霧亥役・櫻井孝宏&捨造役・宮野真守スペシャル対談!

『シドニアの騎士』で知られる弐瓶 勉が20年前に連載を開始し、6年半をかけて完結させた伝説のハードSFコミックの『BLAME!』がついにCGアニメとして完成し、2週間限定で劇場公開される。作品の舞台は「違法居住者」としてセーフガードと呼ばれる存在に人類が駆除・抹殺される暗黒の未来。彼らは小さな集落を作り細々と暮らしていた。危機に陥る人々の前にそこに謎めいた探索者・霧亥(キリィ)がやってくるところから物語は動き出す……。そうした世界観の中、主人公である霧亥を演じた櫻井孝宏と、集落の若者のリーダー格である捨造(すてぞう)を演じた宮野真守に、キャラクターの人物像とプレスコで行なわれた収録の模様を聞いた。役者が役者に惚れ込むエピソードが数多く語られた必見の内容だ。

役者の作る最高の“間”を活かし映像化

――まず、おふたりは『BLAME!』という作品対してはどのような印象を抱きましたか?

櫻井孝宏 弐瓶先生の世界観が色濃く、かつ日本人の作り上げてきたSFへのこだわりや緻密さも余すところなくていねいに作られているという印象でした。ハードSFですが、とてもストレートな人間ドラマがあって、人間の息遣いやぬくもりを強く感じました。それでいて、冷たい感触は正にSFならではの手触りで、映画の面白さがたくさん詰め込まれている作品だと思いました。

宮野真守 僕はオーディションのお話をいただいた際にこの作品を知り、世界観やオリジナリティあふれる言葉遣いの魅力をすごく感じました。現代とは違うバトルが繰り広げられるなか、この集落の人々の口調は日本的。そういう部分のバランスもすごく面白い作品で興味を惹かれました。

――それぞれ演じられるにあたり、キャラクターの人物像や魅力はどのように感じられましたか?

櫻井 霧亥はやっぱり謎めいた存在。唐突に現れてめちゃくちゃ強くて、苦しんでいる人々に食料を気前よく与えたりするんだけど、とてつもなく怪しいという(笑)、絶妙なブレンドです。意思疎通に難点がありますが、それでも通じ合えるような何かを感じさせる。づる(集落の少女)が許しているから、みんなは安心しているけど、捨造は集落の若者を率いる立場もあって、警戒を解かなかったりする。でもストーリーが進んでいくにしたがって、登場人物同士の交流が見えてきます。はじめはネット端末遺伝子を探しているという一点張りの彼でしたが、やがてそこにいる人達との関係性を感じさせる行動を取るのには、心惹かれるものがあったからではないかと思います。

宮野 SFの世界観での独特な表現や設定はあるんですけど、捨造は集落の常識で生まれ育った若者という立場なので、起こることについて素直に反応していきました。なんとか生きていかなきゃいけない、でもいつまで生きていられるのかわからないという状況が、生まれたときから当たり前のように続いている。仲間も減っていくなか、捨造は若い衆のなかではリーダー的な存在で、意中の女の子に対して思いを寄せるような描写もあったりします。そこに、状況を打開する希望なのか、それとも、そうではないかもしれない異分子である霧亥が入ってきます。それに警戒しつつ、でも生きていくためにちゃんと何が必要かを判断する必要がある。そういった捨造の人間らしい素直な行動原理みたいなものに身を任せ演じていきました。

――霧亥はセリフがあまり多くはないキャラクターですが、セリフ量の多寡によって演じやすさは変わってきますか?

櫻井 セリフの多い・少ないはあまり関係ないですね。多いなら多いなりのプレッシャーがありますし、少ないなら少ないなりの難しさがあります。霧亥はたしかに口数は少ないのですが、それでも視線や背中で何か感じさせたりします。つまり、喋っていないところも喋っているような。喋っていないカットこそ、何か意味があるんじゃないか、伝えたいものがあるのではなかろうかと思わせるような、そういう人物だと思っていました。収録をしていくなかで、よりセリフがシェイプされ口数が少なくなっていったので、そういうキャラクターなんだなと思いながら臨んでいました。このキャラがベラベラと口数多く喋っても、ちょっと……ね(笑)。やっぱりその世界観とキャラクター性って合致しているものなので。

宮野 口数が少ない役は、いざ喋ったときに自分の気持ちが埋まっていないと説得力が出ないんですよ。オフの部分を役者がどれだけ考えていられるかどうかで、出てくる言葉の説得力がまったく違います。セリフが多かろうが少なかろうが、この世界にずっと存在していることには変わらないので、それをいかに集中していって、いざ自分のセリフのときに存在感を出していくというのは、櫻井さんだからこそできる技だなと思いながら見させていただきました。

――プレスコというところでより細かい芝居が求められ、役者側が作り込むこともできるかと思います。収録現場でお芝居されていくなかで、どのようなやり取りがありましたか?

宮野 監督陣は僕ら役者たちが作り出す“間”をできるだけ採用しようとしてくださいました。その“間”も含め、キャラクターの心情だったり、その人の生きているスピード感だったりすると思うし、それを感じながら僕らはお芝居をしていたんだろうなという感覚はあります。あるシーンで、おやっさん(CV:山路和弘)と捨造がじりじり下がりながら、おやっさんが捨造に命令し、それに対して捨造が「……へい」と答える場面があるんです。それが僕らのお芝居の“間”だったんですよね。すぐに、「へい」というのではない、それは必然的な“間”だったんです。監督もそのまま使って映像にして下さいました。

櫻井 セーフガードがやってきてピンチの状況。でも彼らは熟練の電気漁師ですから、打開しようと分析する冷静さを持っています。おやっさんの「油断するんじゃねぇぞ」という問いに対して、捨造は警戒心を一切解かず、その空気感のなか、「……へい」と答える。その“間”がスゴく良いんです。単純に言うとかっこよかったです!意識は前後左右に向いているという様子がすごく伝わってくるふたりのやり取り。僕は作中でも1,2を争うくらい好きなシーンでした。あとで映像をいただいたときに、そこだけ何度も繰り返して見ちゃいました。メチャかっこいいな、この「へい」は、と。アニメ史に残るベスト「へい」だった(笑)。

宮野 ベスト「へい」!(笑)。2位は何なんですか!?(笑)。

櫻井 (笑)。あと、お芝居をするうえでは、セリフだけでなくト書きも大事だったんです。例えば、逃げるという描写があったとしてもどれくらいの距離を走るのか。10秒くらい走って止まって振り向くという作業が必要な場合、それをみんなで組立てていくんですよね。そうでないとバラバラになってしまいますから。ときには瀬下監督から、「もっと慌ててください」とか、「ピンチだと思ってください」という細かなレクチャーが入ったりします。そのやり取りを見ているのが僕は好きでした。捨造って、リーダーっぽいキャラクターですから、宮野くんがイニシアチブを取りながら芝居を作っていくシーンもあったりして、ピタッと合うときは見ていてすごく気持ちいいんですよ。霧亥はスタンドアローンというか、他者とは交わらないキャラクターなので、僕は収録の様子を客観的に楽しんでいましたね。僕らはポリゴン・ピクチュアズさんの作品は何度か(櫻井は『シドニアの騎士』・『亜人』に、宮野は『亜人』に)出演させていただいているので、やっぱり勝手が多少わかっているんですよ。なので、そこは初参加の人たちにも伝えていって。

宮野 僕らがちゃんと伝えながらやっていたという覚えはありました。とくにものすごいSF超大作なので、距離感ひとつとっても役者陣が共通認識できるように、「どういう感じですか?」と、僕らが積極的に監督に聞くことによって、この作り方にはじめて参加する方にも、「そうやって認識していくんだ」と伝えることができたと思います。

櫻井 10m走って止まって、というのをその場でセッションして決めていくといった場面でも、宮野くんがリードして場作りをしていました。

宮野 基本はセリフが被らないように作るんですが、「ここは被っていいですか?」と提案をしてみたりとか。そうすることでより臨場感が出るお芝居もありますので、こちちからいろいろと提案したことがありました。

――完成した映像をご覧になっていかがでしたか?

櫻井 ポリゴン・ピクチュアズさんなら絶対に素晴らしいものを作ってくださると思っていたのですが、今回はその真骨頂ともいえるスゴい映像だなと思いました。人間が排除されようとしているなか、細々と隠れ住むような世界に霧亥という人間が何千階層も下からやってくるという、追いつけないほどのスケール感だなと思いました。

宮野 『亜人』では会話劇のベクトルも強かったので、キャラクターとの距離感など想像しうる部分が多かった中でのプレスコだったのですが、今回はSF作品ということでセリフもそれほど多くなく、行間を楽しむという感じでしたので、どういう映像になるのかすごく興味のあるところでした。実際に見させてもらったときには、櫻井さんがおっしゃったスケール感とスピード感に圧倒されてしまいました。瀬下監督たちが作る世界観の真骨頂。CGでどれだけ動かしまくるかの妙がものすごく出ていた気がして、すごくスリリングに冒頭が始まるのでワクワクしながら見ていました。それと、「声優さんってスゴいな……!」と。

(一同爆笑)

宮野 (笑)。あの臨場感、ものスゴいんですよ!まるでプレスコのときに完成映像が見えていたかのように、ちゃんとあの世界観の中で生きていて、セリフに何の違和感もないくらいのスピード感、スリリングさに圧倒されました。「俺らスゴいわ!」って、改めて感動しました(笑)。

――最後に、これからこの映画をご覧になる皆様にメッセージをお願いします。

宮野 僕はこの映画『BLAME!』という作品に触れることができて、本当に良かったと思いました。独特の世界観で、最初に資料をいただいたときは「ちょっと難しいのかな」と思ってしまったのですが、むしろ見やすかったんです。この世界観での役割分担といったものが初見でもすごく入ってきますし、その真ん中にスーパーヒーローがいてくれるので、そのスピード感やスリリングさ、かっこいい映像のド迫力アクションに引き込まれながら、あっという間に見られる作品だなと思いました。ぜひ皆さんにも楽しんでいただけたらと思います。

櫻井 SFって、ちょっと敷居が高いように思われている方がいるかもしれませんが、宮野くんが言ったようにお膳立てしてくれているんですよね。実は捉えやすくて見やすかったりするんです。映画館に行って身を任せてしまえば内容がわからないなんてことはまったくないですし、お話自体はとてもシンプルなんですよね。「生き延びろ」というキャッチコピーがありますが、そういうテーマって、なかなか自分の生活に置き換えづらいかもしれないけど、見る側に自分に向けて変換してもらえるところだと思うんですね。2週間限定というのがもったいないクオリティの作品なので、ぜひとも皆さん劇場の方に足を運んで下さい。そしてドルビーアトモスの映画音響をじっくり楽しんでもらえればと思います。

Photography By 編集部 Interview&Text By 日詰明嘉


●作品情報
劇場アニメ『BLAME!』
5月20日より2週間限定で全国公開

【キャスト】
霧亥::櫻井孝宏
シボ:花澤香菜
づる:雨宮天
おやっさん:山路和弘
捨造:宮野真守
タエ:洲崎綾
フサタ:島﨑信長
アツジ:梶裕貴
統治局:豊崎愛生
サナカン:早見沙織

【スタッフ】
原作:弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監修:弐瓶勉
監督:瀬下寛之
副監督/CGスーパーバイザー:吉平”Tady”直弘
脚本:村井さだゆき
プロダクションデザイナー:田中直哉
キャラクターデザイナー:森山佑樹
ディレクター・オブ・フォトグラフィー:片塰満則
美術監督:滝口比呂志
色彩設計:野地弘納
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
主題歌:angela「Calling you」
音楽制作:キングレコード
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:クロックワークス 製作:東亜重工動画制作局

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

関連リンク

劇場アニメ『BLAME!』公式サイト

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