1st Album『eYe’s』発売記念~MYTH & ROID ”虹色の目の化石”をめぐる物語~第5回

それまでも前期EDテーマや後期OPテーマで『Re:ゼロ』という世界観との融合を見せてきたMYTH&ROIDだったが、『Re:ゼロから始める異世界生活』14話での「theater D」も見事にその役目を果たし、絶望と恐怖を抱きながら歩みを進めるナツキ・スバルの心中を見事に表現していた。1stアルバムリリース記念インタビュー連載の第5回は、挿入歌が劇伴としての側面を持つほどに作品と同期した証明作品、「theater D」について聞く。

――『Re:ゼロ』では前期EDテーマと後期OPテーマのほかに挿入歌も2曲手がけていました。

Tom-H@ck そうですね。前期EDテーマの「STYX HELIX」がかなり評判になりましたし、『Re:ゼロ』の世界観にMYTH&ROIDの楽曲が合うと監督さんにも思ってもらえたらしくて。あとは、音楽プロデューサーのKADOKAWA若林さんからの信頼度が上がったというところもあったと思います。それで「挿入歌も2曲くらい」という話が出てきました。

――今回はそのうちの1曲、「theater D」についてどのようなコンセプトで作られたのかお聞きしたいのですが。

Tom-H@ck 前に、「Crazy Scary Holy Fantasy」(「劇場版総集編 オーバーロード 不死者の王」テーマソング)がミュージカルっぽい感じというお話をしましたけど、この曲も近いところがあって、『Re:ゼロ』を劇場に見立てて作ったというところがありました。だからこそタイトルも「theater」なんですけど。『Re:ゼロ』の狂気的な部分や強い感情というものも第三者である観客から見たらどうなるか……という感じですね。不穏な雰囲気を持つ楽曲、というところに落とし込んだ感覚はありました。

――「theater D」は、MYTH&ROIDが楽曲のコンセプトとしている「感情の最果て」で言うと何の最果てですか?

Tom-H@ck 「絶望」です。だから歌詞は、「絶望」という映画を客観的に表現した形になっています。

――「絶望」というのは、『Re:ゼロ』の14話でも明確に示されていましたね。

Tom-H@ck でも、『Re:ゼロ』の後半はかなり絶望に染まっているという話は、「STYX HELIX」に取り掛かっているときから色々な人から聞いていました。「絶望の雰囲気が漂っているよ」って。そのあとでシナリオを見させてもらったら、「確かにこれはもう完全に絶望だ」って思いましたね。しかも、今までMYTH&ROIDが表現したいものの中に「絶望」というのはなかったので、ピッタリハマったというところもありました。ただ、単純に絶望を表現しても面白くないので物語調にしてあるんです。

――物語調にするというアイデアはTom-H@ckさんからですか?

Tom-H@ck いや、これは完全にhotaruのアイデアです。hotaruは尋常じゃない量の書物を日々熟読していて、小説っぽい歌詞のほうが得意なんですよね。むしろシンガーソングライターが書くような歌詞は苦手かな。元々、映画の翻訳家を目指していたという、ちょっと特殊な経歴の持ち主でもあるからか、何かを彩って鮮やかに演出するのが好きなんですよ。そこからの流れでしたね。それに狂気的な部分はすでに「L.L.L.」で狂気的な愛として表現していたので、それとは重ならないようにプラスアルファで面白いアイデアを付け加えたいよね、というところでhotaruが考えてくれました。

――hotaruさんによって物語的な展開が盛り込まれましたが、それによって楽曲制作で影響を受けた部分はありましたか?

Tom-H@ck とてもありますよ。(MYTH&ROID楽曲制作の)流れとしては、メロディーが出来上がった後に歌詞をつけて、最終的なアレンジに入るんですよ。歌詞が来た時点でアレンジをするので、今まででも歌詞から影響を受けたことは結構ありました。例えばですが、過去の作品で、『けいおん!』でも“チューニングして”みたいな歌詞があったら本当にチューニングの音を入れるとか、そういうことを結構やるんです。今回の「theater D」でも、「絶望」っていうことならば絶望を感じさせよう、と深い世界観に繋がるSEのような音を入れているんですよ。歌詞から影響を受ける部分というのは毎回毎回どこかでありますね。

――それまでの楽曲と「theater D」が異なる点としては、どんなところがありますか?

Tom-H@ck そうですね。他の楽曲とかぶらないところで言うならば、あまり使いたくはない「ワーミー」ってやつを使っています。

――どうして使いたくないんですか?

Tom-H@ck いや、なんか「当たり前におもしろく」なるんですよね。うまく言えないですけど。外国の人がワーミーを使うと、多分足の力なのか、ニュアンスが「ギュイーン!」みたいになるんですけど、日本人が使うとおもちゃのようになってしまうというか、なんか違うんですよ。僕の中では「美しくない」という感覚があるんです。「theater D」の特徴として、もっとも大きな要素は何か?というと実はEDM、っていうところがありますね。ただ、鳴ってるドラムをコンプレッサで流して、ドン、ドン、ドン、って。ドンとドンの間の休符でシンセの音を入れています。(サイドチェイン)だから、Aメロなんかではドン、ウィン、ドン、ウィンっていう感じがずっと続いているんですね。さらに、イントロで鳴っている音もバイオリンをひずませています。同じメロディーをシンセでレイヤーとして重ねているのでワールドミュージックっぽい感じのロックになっているし、そこにEDMを重ねるってあまりないことだし。そういう意味では特殊な曲だとは思いますね。

――「絶望」というキーワードを楽曲で表現した部分としてはどんなところがありますか?

Tom-H@ck シナリオを拝見させてもらったとき、鼓動的なドラム、ドンドンドンドンっていうね、ある程度のスピードがあるリズムじゃないと、とは思ったんですよ。(劇中では)死んでいるレムを発見した瞬間に流れる曲だったので、それをテンポの遅いリズムでやったら、良い意味での絶望の演出にはならない。しかも、かなり低い音で鳴っているリズムがほしいと思いました。それで「あ、じゃあエレクトロキック的要素かな?」っていうところに行き着いたというのもありましたね。だから、シナリオを読ませてもらったから(生まれた)、というところもあったし、その意味では劇伴みたいな立ち位置の曲だと言えるかもしれないですね。全然キャッチーなメロディーじゃないし。

――曲の使われ方も非常に良かったですよね。たしかに「劇伴」のようでした。

Tom-H@ck 本当にそうですよね。元々僕が、劇伴大好き人間というのもあって、「theater D」も、EDで流れた「STYX HELIX」も、あの世界観で流れたら劇伴的な効果を発揮する音楽、というところを意識していたのは事実ですね。ただ、ヒットコンテンツが出てくるときっていうのは特別なところがあって。そのコンテンツの中にものすごい突風が吹いているから、どんな曲を作っても突風に逆らえない、みたいなのがあるんですよ。ある意味、青色の風が吹いているから全部青色になっちゃう、ってだけの話でもあるんですよね。

――意識はしていたけれども、作り手として『Re:ゼロ』に添わせるようには作っていなかったという感覚ですか?

Tom-H@ck 多分、自分で感じているほども狙ってはいなかったと思いますよ。『Re:ゼロ』って、秒速何十メートルみたいなところまで突風がどんどんと強くなっていく、みたいなのが演出家や監督の手によってもたらされていた作品で。そういうのもあってか、『Re:ゼロ』は今までのアニメとはちょっと違うEDやOPが流れるようなイメージはありました。ある種、特殊なアニメでしたよね、『Re:ゼロ』って。

Interview&Text By 清水耕司 (セブンデイズウォー)
Photography By 山本マオ


●リリース情報
1st Album
『eYe’s』
4月26日発売

【初回限定盤(CD+BD)】

品番:ZMCZ-11076
価格:¥4,000+税

【通常盤(CD)】

品番:ZMCZ-11077
価格:¥3,000+税

<CD>※曲順未定
・「L.L.L.」(TVアニメ『オーバーロード』EDテーマ)
・「ANGER/ANGER」(TVアニメ『ブブキ・ブランキ』EDテーマ)
・「STYX HELIX」(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界⽣活』前期EDテーマ)
・「Paradisus-Paradoxum」(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界⽣活』後期OPテーマ)
・「JINGO JUNGLE (リミックス)」(TVアニメ『幼女戦記』OPテーマ)
・「Crazy Scary Holy Fantasy」(『劇場版総集編 オーバーロード 不死者の王』テーマ)
・「TRAGEDY:ETERNITY 」
ほか、新曲含む全14曲収録予定。

<Blu-ray>
1.「L.L.L.」Music Clip
2.「ANGER/ANGER」Music Clip
3.「STYX HELIX」Music Clip
4.「Paradisus-Paradoxum」Music Clip
5.「JINGO JUNGLE」Music Clip
6.「TRAGEDY:ETERNITY」(新曲) Music Clip

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