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2017.03.08

1st Album『eYe’s』発売記念 ~MYTH & ROID ”虹色の目の化石”をめぐる物語~ 第3回

1st Album『eYe’s』発売記念 ~MYTH & ROID ”虹色の目の化石”をめぐる物語~ 第3回

『Re:ゼロから始める異世界生活』との出会いはMYTH & ROIDのヒストリーにおいてターニングポイントのひとつである。

作品に4曲の楽曲提供を行い、かつEDテーマの「STYX HELIX」が視聴者から高い評価を受けたという外的側面と共に、Tom-H@ckにとってそれまでの楽曲制作と異なる面があったという内的な面でも重要な位置にある。1stアルバム『eYe’s』収録に際して、記念連載インタビューの第3回となる今回はあらためてこの佳作をTom-H@ckが振り返る。

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――「STYX HELIX」は、MYTH & ROIDにとって代表曲のひとつとなりました。どのように誕生した楽曲だったのですか?

Tom-H@ck 「STYX HELIX」は、感情の最果てで言うと「ノスタルジー」だったんですよ。ただ、ノスタルジーって切なさがあってもどこかポジティブなイメージのある単語ではあるんですけど、MYTH & ROIDのノスタルジーはそうではない。MYTH & ROIDの楽曲はどれもそうなんですけど、何かを欲するけれどもその何かを得るためには代償が必要であるがため出口の見つからないループに陥っている、というところを表現しているんです。では、なぜノスタルジーだったかというと、そもそもは『Re:ゼロ』が始まる前、この曲は絶対にヒットさせたいということをKADOKAWAの若林(豪)プロデューサーが熱心に語っていたので、念入りに考えないといけないとは思っていたんです。それでhotaruと「なんの最果てにしようね?」と話し合ってはいたんですよ。(「STYX-」の)直前の「ANGER/ANGER」(TVアニメ『ブブキ・ブランキ』EDテーマ)は、大人に対して子供が「なんて大人は汚いんだ」「この嘘吐きども」「燃やしてやる」という「怒りの最果て」の曲で、この世にはびこる社会悪というか、弱者が強者に勝てない怒りを表現していたんですけど、それはそれで僕が表現したかった世界ではあったんですよ。でも、『Re:ゼロ』というコンテンツを考えると、「ANGER/ANGER」のような狂気的なものを主題歌にあてがってヒットを狙うというのは難しかったんです。しかも、「L.L.L.」から強い曲を続けてきて、自分としては先が狭まっていく感覚もありました。この路線でいったら最後にはもう扉がなくなってしまう、みたいなイメージが頭に浮かんでいたので、「今、いろいろな楽曲が世に出る中で何を出すのがいいんだろう」ということはずっと考えていました。ただ、「ノスタルジーがいいかもな」というのは考えて出てきたわけではなく、感覚に助けられてのことだったんですよ。

――というと?

Tom-H@ck 実は「STYX HELIX」のイントロって最初、ピアノから始まるのではなく、リバースサウンドの後にサビが急に来る形だったんですよ。でも、楽曲を完成させるためにアレンジもFixさせようというトラックダウンにいたって、「ヒットさせるには何かが足りない」「面白いことをやりたい」、でも「思いつかなくて気持ち悪い」という状態が1週間くらい続いていたんですね。そのときに何気なくピアノを弾いたんですよ。ものすごいリバーブかけて。その音色を鳴らした瞬間、「あ、ノスタルジーってめっちゃいいじゃん」と思ったんですよね。その音をイントロに使っているんです。あのイントロを聴いた瞬間にみんな、もっていかれるようなノスタルジー感を感じたとは思うんですけど。

――「STYX HELIX」のサビって売れるサビだと思います。最高にキャッチーで。

Tom-H@ck ですよね。

――でも、このサビならいけるとはならなかった。まだ足りないと思ったということなんですね。

Tom-H@ck いけるんですよ。いけるんですけど、それをやったらブランド力が下がるというか、「面白くない」んですよ。「みんなやってるよ、このメロディー」みたいな。5度で跳んでるメロディーを現代的にやっているんですけど、コード進行は超定番で、「わかる人が聴けば、全然つまんねえ、ってなるな」という思いがあったのでそこに付け加えをしたかった。それが「ノスタルジ-」だったんです。

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――ヒットさせるというところと、『Re:ゼロ』らしさはどのように融合させていきましたか?

Tom-H@ck 『Re:ゼロ』のお話をいただいたとき、曲として表現するにはひとつしかないと思ったんですよ。それは「神」。神秘性ですね。神秘的ですごく深い世界観を見せたら、そこに超キャッチーなメロディをつけたら、間違いなくヒットする、そういう自信がありました。では、どうやって「神秘」を表現したのかというと、コーラスみたいに入っているアレ。

――言葉になっていないアレですね。

Tom-H@ck 歌よりも上に入っているアレの方が音が大きいんですよ、実は。それって普通の人ならやらないことで、「STYX HELIX」がiTunes Storeチャートで国内総合1位になったとき、行くところ行くところで「あんな響き、聴いたことないです」ってよく言っていただいたんですけど、あの音はまさにそれを狙っていました。あれは、ドと5番目の音にあたるソが鳴っているんですよ。ソの上でドが鳴ってて、ドの次にレが鳴っています。この、レが鳴っているというのは音楽理論的としては基本的にNGで、みんながきれいだと感じるのは3度の音なんですよ。

――ハモリに代表されるような。

Tom-H@ck でも、2度をぶつけてしかもトップ・ノート(いちばん高い音)に持ってくるというのは、普通ならやりたくないことなんですよ。でも、その横の流れをクラシック理論とか、あとはいわゆるブルガリアン・ボイスの理論で美しく見せてやることで、新しく響く上に気持ちいいというハーモニーというものを作りました。それが「STYX HELIX」。で、それはどこにつながっているかというと、先ほど言った神秘的な響きを生み出せるんですね。コード理論でいうとアドナインス(コード)。ドミソではなくてドレソ、3度の音を全部とって2度で鳴らしていて、ずっとアドナインス。コード変わってもアドナインス、アドナインス、アドナインスで、それに対して上にきれいにハーモニーが乗っているという作りでした。

――苦労の末あってヒットさせるという目標も達しました。

Tom-H@ck たしか4曲くらい作ったんですよね。だから、結構作り直してはいるんですよ。その4曲目が「STYX HELIX」で、別の1曲は今度のアルバムに入ります。あと、「STYX HELIX」で面白かったのが、若林プロデューサーが全く同じことを考えていたんです。さっき話したように、「このまま強い感じで展開していったら、どんなに派生してもMYTH & ROIDは詰まってしまう」「やりたいことはわかるけど『Re:ゼロ』という大チャンスが舞い込んだ今、ここで今までと全く違う顔を見せられたらいろいろな楽曲ができるアーティストということでビジネスとして最高だ」って。そこは僕もプロデューサーとして同じ意見でした。若林さんとは打ち合わせしながら話した内容がかなり一致していて、それが楽曲の落としどころになっているところもあるんですよね。そのひとつとして、2000年代初頭のJ-Pop感というのもありました。

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――それは楽曲の表面部分にも出てきているんですか?

Tom-H@ck 音を聴いてわかる人はわかるんですけど、「L.L.L.」や「ANGER/ANGER」にはなかった、90年代後半から2000年代初頭に掛けてポップスに多様されたエレクトロなドラムとか、共通点は色々あると思いますよ。

――それがヒットの法則ということでしょうか?リリース当時、それまでのMYTH & ROIDっぽくないとは感じていたんですが。

Tom-H@ck ですね。当時僕も自問自答しました。もうTDも終わって完成していたんですけど、自分でも何度も聴いていたんですよね。ヒットするという自信はあったけど、俺とコンセプトや歌詞を担当しているhotaruで作り上げたMYTH & ROIDというアーティストで、世の中に対してつっぱっている音楽をやろうとしていたのに、余りにも大衆向けに向けて作った曲をリリースしていいものか、と。信念曲げるじゃないですけどね。だから、気分転換に散歩か何かに出かけようとしたとき、エスカレーターで我慢できなくなっちゃってhotaruに電話しました。「アレ、どう思う?」って。「昨日TDが終わったけど、俺たちのやりたかったことは新しい世界を切り開くことじゃなかったのか」と。でも、「ヒットすると思うよ」ってふたりで納得して。「まぁそうだよな、それも大事なんだよな」みたいな(笑)。

――そこで終わるとMYTH & ROIDが信念曲げた曲というまとめになりますよ(笑)。

Tom-H@ck いやいや。大衆性と芸術性、そして世の中に発信していきたいこと、そのバランスがプロデュースではいちばん大事なんです。MYTH & ROIDとしての新たな可能性というものを示す意図はあったので。

――先ほどお話にも出ましたが、作品によって変幻自在に、ただし核は残す、というMYTH & ROIDのコンセプトがある意味色濃く表れた作品かもしれないですね。

Tom-H@ck そうですね。そこはあると思います。楽曲の作りというところではMYTH & ROIDの特徴を十分に感じられると思うので。

Interview&Text By 清水耕司(セブンデイズウォー)
Photography By 山本マオ


●リリース情報
1st Album
『eYe’s』
4月26日発売

【初回限定盤(CD+BD)】
品番:ZMCZ-11076
価格:¥4,000+税

【通常盤(CD)】
品番:ZMCZ-11077
価格:¥3,000+税

<CD>※曲順未定
・「L.L.L.」(TVアニメ『オーバーロード』EDテーマ)
・「ANGER/ANGER」(TVアニメ『ブブキ・ブランキ』EDテーマ)
・「STYX HELIX」(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界⽣活』前期EDテーマ)
・「Paradisus-Paradoxum」(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界⽣活』後期OPテーマ)
・「JINGO JUNGLE (リミックス)」(TVアニメ『幼女戦記』OPテーマ)
・「Crazy Scary Holy Fantasy」(『劇場版総集編 オーバーロード 不死者の王』テーマ)
ほか、新曲含む全14曲収録予定。

<Blu-ray>
1.「L.L.L.」Music Clip
2.「ANGER/ANGER」Music Clip
3.「STYX HELIX」Music Clip
4.「Paradisus-Paradoxum」Music Clip
5.「JINGO JUNGLE」Music Clip
6.「タイトル未定」(新曲) Music Clip

 

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