1月22日、恵比寿ザ・ガーデンホールにて牧野由依が“YUI MAKINO LIVE―Thanx Beginning♪―”を開催。バンドを従えての弾き語りはもちろん、バックダンサーを従えての本格的なダンスなども交えた、タイトル通り感謝と始まりを感じさせる一夜となった。
弾き語りも交えつつ、やっぱり今日は“ライブ”です!
暗転したステージ上を入場してきた牧野は、「ウイークエンド・ランデヴー」からライブをスタート。ステージ中央のスタンドマイクを活かしつつ、ときにはそこからマイクを外して動きながら歌唱。オシャレな楽曲に独特の甘い歌声が溶け合う。さらに歌詞になぞらえて、客席上空のミラーボールを一瞬だけ満月扱いして指さすなど、曲の世界をボーカル以外でも表現。楽曲に合わせた表情・身振りで“らしさ”を出していた。続く「Merry-go-round」では、曲明けに手にしたピアニカでイントロの旋律部を自ら奏でる。しかも最後の一音ギリギリまで演奏したうえで、見事に音ブレなく歌い出していた。そこには苦しさもまったく見えず、ウェディングソングらしい幸せそうな表情で、こちらも甘めの歌声で披露。そしてそのかわいらしさと可憐さが、箇所箇所でメリハリをつけて届けられたのが「星に願うなら」。その歌声の具合は、ポップなサウンドに反して切ない歌詞を持つこの曲にピッタリのものだった。
MCではこの日の衣装を「(素早く動くと)キンギョの尻尾みたいじゃない?」と紹介して観客を笑わせるが、それを「動くときれいなので、ステージを広く使えるように私自身動いて、皆さんの近くで歌っていきたいです」と、このライブへの意気込みに繋げる。そしてこの日の快晴に、続いて自身の晴れ女っぷりについて触れると「春も待ち遠しいなぁ……」と次の曲を匂わせる。そして用意されたピアノのもとに座り、紹介したのは「三月物語」だ。
ここから2曲は、バンドとともにピアノを弾き語りながらの披露。イントロの演奏オンリーの部分は真剣な表情を見せながらも、歌い始めた瞬間に先ほど同様に楽曲の想いが表情にそのまま表れる。加えて見せ場の落ちサビ前間奏部分のプレイも、胸躍らせるさすがのものであった。しかし「What A Beautiful World」ではしっとりとした表情を見せ、ピアニスト・弾き語りアーティストとしての魅力をともに届けていく。なかでもその唯一無二さをもっとも感じられたのは、ラスサビでの彼女の歌声の流れ。なだらかに、加速度的にその歌声がクレッシェンドされていき、最後には想いが全開になるさまは前半のハイライトであった。
ピアノを離れた牧野が、次に歌いだしたのは「ウンディーネ」。どこか神々しいような、パワーで歌い上げる系統とは違う部類のディーバ感を持つ透き通る歌声を、ホールに吹き抜けさせていく。少女性と女神感を兼ね備えた、彼女ならではの歌声の魅力あふれる1曲だった。
曲が終わると彼女は、今度は今回のライブタイトルに込めた想いを、「最近イベントなどで『はじめましての方が多いな』という印象があったので、“牧野由依”をお披露目できる場所があればと思って、“Beginning”をつけました。“Thanx”はずっと応援してくださった方への感謝。入り口はそれぞれですけど、いろんな表情をお見せできればと思って、今回のタイトルをつけました」と説明。そして「今日は『ライブ』と言うことにこだわったので、衝撃を目の当たりにするかも?」と、さらに期待高まる言葉も。クラシカルな構成では“コンサート”と形容する彼女が、この日は“ライブ”とタイトルに冠した意味は、ここから徐々に明らかになっていく。
続いては「不思議な感じの曲が詰まったブロック」と彼女が紹介した楽曲ゾーンへ。「ソルフェージュ」では凛とした表情で歌声を紡ぐが、世界は浮遊感を伴いつつ若干光を失いかける。そこに再び光を与えるような「太陽を巡って」が続く。サビの帰結部以外はウィスパー気味の歌声で通して、直前から続く浮遊感は維持。そして「secret melody」で世界は完全に明るさを取り戻し、エレクトロサウンドで楽曲自体も地に足をつける。自然にその身振りも大きくなり、表情も笑顔に戻ったところで、近年のキラーチューン「囁きは“Crescendo”」へ。この日のためにアレンジが加えられたこの曲ではさらに明るさを増し、陽射しが降り注ぐようなイメージを与えるサウンドや歌声に、この日はダンスも追加。それでも歌声にブレはなく、近年声優として参加している「アイドルマスター シンデレラガールズ」(佐久間まゆ役)や「プリパラ」(黒須あろま役)等のアイドルアニメコンテンツのライブステージで培った経験が糧になっているように感じさせられた。また、間奏ではそれまでの軽やかさから一転、しなやかな動きを魅せる部分も実に多く、ここまでのライブの雰囲気から最初は立つことをためらっていた観客も、最後には牧野に引き上げられる形で立ち上がってクラップでこの曲を盛り上げていた。
曲明け、「ここからゆったりではなくなっていく」との予告し「この1曲だけは付き合っていただいていいですか!?」と巧みな話術で観客をノセて突入した「88秒フライト」は、引き続きフリ付きの楽曲。立ち上がった観客のクラップに盛り立てられながら、終始笑顔でかわいさ強めに振ったボーカルで歌っていく彼女。客席の光景にも、やはりご満悦な様子だ。曲明けには観客へ「ありがとうございました!」と礼も忘れず、牧野は一旦降壇。入れ替わりにダンサーが登場してダンスタイムへと突入する。
どの入口のファンにも、大事に向き合う姿勢際立つライブ後半
ここからが牧野由依新境地の見せ所。衣装チェンジ後に再登場した彼女は、そのままダンサーを従えてEDM調にアレンジが施された「CESTREE」を披露。歌声を極限までウィスパーに振りながらも、腰や腕の動きをダンサーと連動させたりと、磨き上げられたパフォーマンスを披露していく。続けてロックアレンジで披露された「Brand-new Sky」もダンスつき。サビ頭、メロディラインだけでも不思議な上がり方をしていく部分のフリがスピーディーで超難度。にも関わらず、その歌声には一切の妥協がない。この曲も間奏のダンスタイムに見せ場を持ってくるなど、元音源からは想像できないほどの攻め曲へと変貌していた。
このダンスパートを突き詰めたのは、先ほど彼女が語った“Beginning”とも関係がある。「最近出演の増えたアイドルものの作品から知ってくださった方には、私が踊る姿って“普通”なんじゃないかな?」と、今までやっていなかったことを「“普通”を具現化する」という挑戦の意味合いを込めて織り込んだとのこと。年末から準備を重ねたこのパートをひとまず終え、振り付けの先生やダンサーふたりに改めて感謝を語っていた。
バンドメンバーの紹介を経て、再び再び牧野がピアニカを手にすれば、「グッバイ・マイ・フレンド」からライブ再開。ミドルナンバーを楽しげに展開していく牧野、この曲もクラップで盛り上がっていく。そして「the never ending rainbows」はウィスパーメインのメロを始めとし、サビで歌声が引っ張る形で楽曲世界が明るく開けていく。彼女の表情も、幸せそうな笑顔に満ち溢れ、サビでは虹色のサーチライトが客席をぐるりと照らしていく。続く「ふわふわ♪」で再びダンサーが登場し、この日のためにエレクトロサウンドにロックなテイストを足したアレンジで披露。イントロから「盛り上がっていっちゃってください!」と会場を先導し、サビでは恒例となった手を使ったフリで観客と一体となる。その盛り上がりに、曲中またも「ありがとー!」の言葉も飛び出す。ただそんななか、落ちサビに不意に甘くて胸をキュンとさせるような歌声を織り込んでくるのは、やっぱりズルい。
さて、ライブ本編もあと2曲。再びとろけそうな歌声が映える「まわる まわる」で柔らかく暖かな世界を作り上げる。サビに向けて感情を高めて、観客との旅の準備を完了させたら、「ワールドツアー」で一緒に出発。「みんなホントにありがとー!」の声に続けて、最後まで笑顔でステージに立ち続ける牧野。サビの「Hello!」のコールもバッチリで、会場はどこか暖かな盛り上がりに包まれていった。
そこから1~2分ほどのクラップアンコールを経て、牧野が再登場。「私について」からアンコールをスタートさせる。イントロのリードを再びピアニカで奏でると、曲前にMCで語った「節目になると歌いたくなる」という想いピッタリの歌詞を、透き通るような声で表現していく。この日の歌声に、それに加えて晴れやかさとまっすぐさがより際立っていたように感じられたのは、彼女の目線の先に明るい未来が見据えられていたからだろうか。
曲明け、改めてこの日詰め込んだたくさんのチャレンジを振り返った彼女は、「そのチャレンジは、たくさんの方に支えていただいてできている、ということを忘れずに頑張りたいです」とここから始まる1年についての決意を述べる。そこで、4月から放送されるTVアニメ『サクラダリセット』に村瀬陽香役で出演し、OPテーマを担当することを発表!喜ぶファンを目にし、牧野もやはりうれしそうな様子。しかも今回は楽曲のピアノも自らが演奏する力の入りようなうえ、「ぜひ歌詞カードも見ながら聴いてほしい」とすべての面に自信満々の様子。そんな彼女が、「ありがとうの気持ちを込めて」、そのOPテーマ「Reset」を世界初披露!シリアスめでデジタルテイストなこの曲、彼女の少女性の強い歌声が儚く引き立って聴こえる印象を与え、また胸をきゅっと締めつける。牧野の気合いの入り方も相当なように感じられ、落ちサビでの気持ちの入り方は、ラストにして今日イチを更新していたようにも思えた。これが映像とどう合わさるのか。そして彼女が見てほしいと語った歌詞はどのようなものなのか。早くも発売が待ち遠しくなってしまった。
歌い終わった彼女は、再度スタッフやファンへ礼を告げ、この日のライブを総括する。「昨年3月の“30 Selection”が大変だったので、正直な話『今回は楽しようぜ!』って話してたんです。で、楽をするつもりだったライブが、今回のライブです(笑)」と笑わせつつも、「その分、今日はとっても楽しいステージになりました!」としっかりまとめる。そして「これからも新しいことに果敢に挑戦していきたいと思っております。それが“牧野由依”というカテゴリーの職業なんだな、と思って、一つひとつ磨いてまいります!」と結び、ステージをあとにした。
デビューから10年を経て、今なおあらたな一面を見せ続ける牧野由依。まさかここまでダンサブルに数々の楽曲をアップデートしてくるとは、意外だった。ただ逆に、彼女が語った“入り口の違う”新しいファンにとっては、この日ピアノを弾き語る彼女の姿が新鮮に映ったはず。多面的な魅力を持つ彼女だからこそ、彼女を観るたびにワクワクさせられるのだろう。そんな彼女が挑戦する新しいことは、今度は何になるのだろうか? やっぱり未だに、“牧野由依”へのワクワクは止まらない。
Text by 須永兼次
“YUI MAKINO LIVE―Thanx Beginning♪―”
2017.01.22@恵比寿ザ・ガーデンホール
【SET LIST】
M1. ウイークエンド・ランデヴー
M2.Merry-go-round
M3.星に願うなら
M4.三月物語
M5.What A Beautiful World
M6.ウンディーネ
M7.ソルフェージュ
M8.太陽を巡って
M9.secret melody
M10.囁きは“Crescendo”
M11.88秒フライト
M12.CESTREE
M13.Brand-new Sky
M14.グッバイ・マイ・フレンド
M15.the never ending rainbows
M16.ふわふわ♪
M17.まわる まわる
M18.ワールドツアー
EN1.私について
EN2.Reset(新曲)
●リリース情報
牧野由依ニューシングル
TVアニメ『サクラダリセット』OPテーマ
「Reset」
2017年初夏リリース予定
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