3rdミニ・アルバム『ジツロク・クモノイト』リリース記念スペシャルインタビュー

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『storyteller』、『storyteller ~the Age Limits~』に続くVALSHEのミニ・アルバム第3弾『ジツロク・クモノイト』。今回、彼女がモチーフとして選んだのは近現代日本文学だった。タイトルトラックは芥川龍之介「蜘蛛の糸」をもとに苛烈な詞が紡がれたスピードチューン。そこから仄暗さと音楽的豊かさを備えた楽曲がコンセプチュアルに紡がれていくこの作品。これは新たな挑戦と思いきや、実はVALSHEのこれまでの道筋が示されていたのだった。制作の着想からこだわりぬいた映像制作まで、本作の全貌を追った。

日本近現代文学から作り上げた5つの世界観

――この度、日本の近現代文学5編をモチーフにするという着想はどのようにして生まれたのでしょうか?

VALSHE 企画の大元の話から説明しますと、歌ではなく声優としてのレッスンの課題で芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を朗読したのがきっかけでした。そのようすをふとした時にサウンドプロデューサーのminatoに話したら、彼も「蜘蛛の糸」が好きで、「これを現代に置き換えた形で曲を作ってみよう」と盛り上がり、日本の近現代文学から選んだ曲でコンセプチュアルに作ってみようという話になりました。

――「蜘蛛の糸」以外の作品はどのように選ばれたのでしょうか?

VALSHE もともと本を読むことは好きだったのですが、日本の近現代文学にはこれまであまり触れたことがなく、「蜘蛛の糸」、「注文の多い料理店」以外は自分自身の興味を惹く作品かつタイトルを聴いて視聴者の方がピンとくるだろう作品を探し、そこから実際に本を読んで惹かれた作品をモチーフに歌詞を書いていったという形ですね。

――「蜘蛛の糸」をモチーフにした「ジツロク・クモノイト」の歌詞はずいぶん感情を露わにしているように読めましたが、これにはどんな意図があったのでしょうか?

VALSHE 歌詞の言葉尻は荒々しいのですが、これまでVALSHEがコンセプトとして掲げてきたものとさほど相違はないんです。これまでであれば、この内容について比喩表現を使っていたのですが、今回は言葉を濁していません。実は初稿はもうちょっと言葉尻が柔らかだったのですが、それだと中途半端な感じがして、コンセプトミニアルバムと明言しているからには、とことんやってみようという相談をして、最終的にこの歌詞になりました。二人の意志がギュッと詰まった歌詞だと思います。ここまで突き抜けたら気持ちいいですね。楽曲はBPMが200くらいで、5年目にして最速を塗り替えました(笑)。爽快な気持ちで歌わせていただきました。

――タイトルトラックがそうしたスピードチューンである一方、「破戒の枝」には歌謡曲のテイストがあったり、「人間失覚」ではラテンの風合いがあったりと、このミニアルバムは音楽性の幅が広いですね。

VALSHE 近現代文学から着想を得ているので、全体を通すと歌謡曲風に寄った作品もあれば、敢えてそこから崩してみるという試みもしています。その意味では今回ならではで、結果的にバラエティに富んだ作品になったと思います。過去の作品の中でも歌謡曲風だったりラテン風が採り入れられている楽曲はあるのですが、ミニアルバムのなかで繋がりをもって構成されるのは初めてになるので、すごく新鮮な気持ちで作ることができました。

――VALSHEさんのルーツのひとつには歌謡曲もありましたね。

VALSHE はい。歌謡曲はたくさんあるジャンルの中でとても大好きなジャンルです。人によっていろいろな解釈があると思うのですが、自分の場合だと小さいころに母親が歌っていたり、車の中でかかっていた曲ですね。なかでも村下孝蔵さんが特に好きでした。最近は五輪真弓さんにハマっています。

――それはまたどうして?

VALSHE 先日、プライベートでカラオケに行った時にイラストレーターの白皙さんと、知っている中で一番古い歌を歌おうということになったのですが、自分の方が意外と古い歌を知らないことが分かりそれが悔しかったんです(笑)。それでもっと遡らねばと思い、母親に教えてもらった中で一番気に入ったのが五輪真弓さんだったというわけなんです。

――作詞をされた作品についてはどんな感想を抱きましたか?

VALSHE 「人間失格」は読んでいて気持ち悪くなりました(笑)。大きく3つに分かれて展開されていて、幼少期の心情描写は共感できるところが多いのですが、学生時代〜大人となるにつれて、どんどん共有するスペースが狭くなっていく。そういうところに本当に一人の人生を読んでいるという気持ちになりました。海外の作品にはあまり抱かない感覚でしたね。

――「破戒」についてはいかがでしたか?

VALSHE 「破戒」については、5曲の中で最も苦労した作品で、読んでいてすごく辛いことだらけでした(苦笑)。本当に救いようのない歌詞なんですよね。これまでは自分の体験や心情を歌詞に落とす際に、最後の一行で救ってあげることがままあったのですが、今回は、既存の作品を下地に歌詞を書くということで、安易にそれができなかったんです。自分が思い描いたのはいわゆる幸福感のあるような結末ではなく、後味の悪いものになるのではないかと思いながらも、それが今回のコンセプトでもあるということで、非常に悩んだ作品になりました。

――「暗い夜の行き路」では作曲をされていますね。

VALSHE 前回すごく明るい曲を作ったので、一度暗い歌を作ってみたいと前から思っていたんです。3ヶ月間忘れずにいたサビがあり、それをまずデモの形にしました。そしてminatoには「救いようのない暗い世界観のバラードを作る」と伝え、そして彼が「暗夜行路」をモチーフとして選び作詞を進めていきました。イントロがピアノ一本で始まり、アウトロもピアノで終わるという滑らかな形なのですが、そこに歌詞が乗りアレンジが入ることによって、自分の理想以上の陰鬱さを持った楽曲になり、とても満足のいく出来になりました。

――初回仕様に付くミュージックビデオも「蜘蛛の糸」をモチーフにした作りになっています。こちらの撮影のようすはいかがでしたか?

VALSHE ひとことでいうと過酷で、体力勝負の現場でした。命綱をつけて20mくらいの高さをハシゴで登るという撮影を繰り返したのですが、下から登ってくる役者さんも本気でぶつかってきてくれて、こちらも必死で蹴落とさないと落ちそうになるんです。だから自分の表情の必死さは芝居がかっていない本気のそれです(笑)。この撮影は極力CGを使わず生々しい物を作りたかったので、アクトを含めて他の人には任せたくなくて、周りのスタッフさんはとても心配してくれたんですけど、全力でサポートしてくれたので、最後までやりきることができました。

――そういう苦労までしてもリアルな撮影にこだわったのは?

VALSHE それは大元のストーリーを自分が作っているからです。自分の中から湧き上がってくるものを視覚的に見せたいからMVを作っているので、代役ではそれが自分のものにはならなくなってしまうんです。だから毎回テーマが変わっていても根本は単純で、それが好きだからなんです。

――Musing盤の方には絵画短編集が付くそうですね。

VALSHE はい。こちらは深く作品を知りたいと思ってくれる方が手に取る作品ということで、文学作品をコンセプトにしているということもあり、本の装丁のような形になっています。内容としてはアナザーストーリーのような位置づけになっていて、けっこうな分量の章もあります。白皙のイラストも今までの中で一番大きなサイズになっていて、非常に読み応えがあると思います。あとは新しい試みとして楽曲解説を掲載しています。他にも「5周年に向けてのメッセージ」として、自分に深く携わっているいろんな方が書いてくれました。

――VALSHEさんからのメッセージは?

VALSHE あとがきとして全然関係ないことを一言書いています(笑)。自分からのきちんとしたメッセージについては……5周年のそのときまで取っておきますね(笑)。

Interview&Text By 日詰明嘉


●リリース情報
3rd Mini Album
『ジツロク・クモノイト』
6月24日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
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品番:JBCZ-9014
価格:¥2,800+税
<DVD>
1.「ジツロク・クモノイト」MUSIC VIDEO
2. Making of「ジツロク・クモノイト」

【Musing盤(CD+ 絵画短編集(イラスト + ショートストーリー)※A4 サイズ)】
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品番:JBCF-9004
価格:¥5,000+税
<絵画短編集内容>
1.5つの楽曲に基づいたストーリーを VALSHE が作成!
2. 白皙のイラストがストーリーを演出!
3. 楽曲解説
4. デビュー 5 周年に向けてのメッセージ

【通常盤(CD)】
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品番:JBCZ-9015
価格:¥2,000+税

<CD>
1.ジツロク・クモノイト
lyrics by ViCTiM music by minato arrangement by Mayuko Maruyama
(芥川龍之介「蜘蛛の糸」)
2.破戒の枝
lyrics by VALSHE music by Yoshifumi Kouchi arrangement by G’n-
(島崎藤村「破戒」)
3.人間失覚
lyrics by VALSHE music by minato arrangement by Ryo Hayashi & minato
(太宰治「人間失格」)
4.MANY ORDER
lyrics by VALSHE music by minato arrangement by Toshinari Ohnishi
(宮沢賢治「注文の多い料理店」)
5.暗い夜の行き路
lyrics by minato music by VALSHE arrangement by Mayuko Maruyama
(志賀直哉「暗夜行路」)

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