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REPORT

2015.04.05

その眼差しは次のステージへ。新鋭も鮮烈な印象を残した「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2nd LIVE ENJOY H@RMONY」初日レポート

 

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 『アイドルマスター ミリオンライブ!』のライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2ndlLIVE ENJOY H@RMONY」初日が4月4日、千葉・幕張メッセで行なわれた。

 

アイドルマスター ミリオンライブ!』のライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2ndlLIVE ENJOY H@RMONY」初日が4月4日、千葉・幕張メッセで行なわれ、山崎はるか(春日未来役)、田所あずさ(最上静香役)、Machico(伊吹翼役)、麻倉もも(箱崎星梨花役)、雨宮天(北沢志保役)、伊藤美来(七尾百合子役)、夏川椎菜(望月杏奈役)、藤井ゆきよ(所恵美役)、渡部優衣(横山奈緒役)、木戸衣吹(矢吹可奈役)、小岩井ことり(天空橋朋花役)、駒形友梨(高山紗代子役)、近藤唯(篠宮可憐役)、戸田めぐみ(舞浜歩役)、山口立花子(百瀬莉緒役)が登場した。

会場は大階段とスクリーン、華やかなカーテンをあしらったメインステージと、会場最後方のサブステージのツーステージ構成。アイマス…に限らず通常のライブでは花道でステージ間をつなぐことが多いが、今回はそれぞれが独立したステージ。では移動はどうするのかと言えば、アリーナ内のフロアの様々なルートを通るトロッコで歌いながら移動する大胆な構成だ。トロッコの活用は昨年の「アイドルマスター9周年ライブ」名古屋会場でも見られたが、花道をなくすことでステージ構成の自由度が飛躍的に向上する逆転の発想には脱帽するしかない。

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ライブは全員での「Thank You!」からスタート。ファーストCDシリーズ「LIVE THE@TER PERFORMANCE」とセカンドCDシリーズ「LIVE THE@TER HARMONY」のソロ曲とユニット曲を次々と歌い継いでいった。組み合わせの自由度が高い構成だったこともあるので、今回は各メンバーそれぞれのステージ全体を通しての印象を書いていきたい。

今回ソロのトップバッターを務めたのは横山奈緒役の渡部優衣。「セカンドライブ、はじまりやでー! 今日はめーっちゃ盛り上がっていきましょう!」と関西の劇場でライブビューイングを見ているプロデューサーたちも意識しながら、「ハッピー☆ラッキー☆ジェットマシーン」で切り込んでいった。スタイルのいい長身から元気いっぱいに繰り出す動きの良さが魅力の渡部だが、今回のステージではキレキレのダンサーたちと一緒のパフォーマンスを見せたことで、より動きが大きく見え、遠くまでエネルギーが届く。「合言葉はスタートアップ!」では藤井と共にまさかの765プロの先輩組ユニットの曲をカバーしたが、トロッコの上から客席を煽る時にリズムに合わせて片足を後ろにぴょこん、ぴょこんと蹴りあげていたのがまさにエネルギーがあふれている感じだった。コメントでも感謝の気持ちと楽しさがあふれてわやくちゃになっていた渡部だが、「『ミリオンライブ!』本当に最高だね!」の叫びに全ての気持ちが現れていた。

 

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後方ステージから登場したのは、「夢色トレイン」の箱崎星梨花役、もちょこと麻倉もも。夢色トレインの車掌に扮した麻倉の後ろに続くトロッコでは、ダンサーたちが乗客としてくつろいでいる。こんな光景見たこと無い! 客席のすぐ近くまで行くトロッコに、麻倉も「近くて、いっぱい顔があって!」と感激だ。ステージにトロッコ列車が到着すると、ダンサーたちもダンサーとしての仕事を開始。オーケストラの指揮をとるようなキュートな振付も、乗客ダンサーズが一緒になると優雅な群舞のように見えるから不思議だ。だが、今回のステージで一番驚かされたのは田所、雨宮と共に歌う「Shooting Stars」だった。田所と雨宮といえば、青属性を代表するような存在。そしてまさにそのカラーにぴったりの「Shooting Stars」という楽曲の中で、麻倉の表情は別人のように凛として、りりしく。少し困り眉で客席を見つめる瞳は温度が低く、(作中で青色を担う)ダンス属性の二人と並んでも全く違和感も遜色もない。「Marionetteは眠らない」もまたクールな楽曲だが、地声の甘やかさを活かした歌唱は共演のMachicoたちとのバランスに合わせてきっちりチューンされている。1stライブの時に、共演者が「もちょがやると簡単そうに見える」と評したことがあるが、難易度の高い楽曲でも無邪気な態度のままさらりとこなし、曲調に寄り添いながらも麻倉ももという存在感はしっかりとある。彼女の天真爛漫な言動に目が行きがちだが、我々は彼女の天賦の才の底をまだ見ていないのかもしれない。歌い終えた麻倉は山崎や藤井にもてもてで、今日もかわいかった。

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ソロでは「Happy Darling」を披露した望月杏奈役の夏川椎菜。歌いこんでいる楽曲だけあって、客席のコールやレスポンスとのキャッチボールはナンバーワンかもしれない。「だーいすきだよー!」「ありがとー!」と客席に呼びかける夏川は本当に幸せそうだ。今日特に印象に残ったのは「Sentimental Venus」で渡部、戸田と組んだ夏川のボーカルだ。「LTP05」の「Sentimental Venus」といえば伊織の存在感が大きく、昨年2月のさいたまスーパーアリーナでは釘宮の歌声の圧倒的な華やかさが印象に残った。今回の「Sentimental Venus」の芯になるキュートさを担っていたのが夏川で、杏奈の一番かわいい部分に寄せたボーカルをキープしながら歌っていた。これに渡部優衣の天性の声質が重なることで、まったく違うアプローチから原曲のニュアンスに近づいていたのが非常に面白かった。最後の挨拶で客席に「応援ください!」と締めるつもりが普通に締めてしまい、周りにフォローされて無事「応援ください!」「応援するよ!」をやり直していたくだりは、しっかりしているようで年齢相応でほっこりさせられた。

所恵美役藤井ゆきよのビジュアル面での魅力がこれでもか! と感じられたのが、渡部共に歌った「合言葉はスタートアップ!」だった。スラリとした長身モデル体型の渡部が、藤井と組むことが決まって最初にLINEで送ったのが「やせるわ」の一言だった(そうしないと釣り合いが取れないくらい藤井のスタイルがいいという意味)というから、この2人の組み合わせは強烈だ。そんな藤井が「ゆいとんとコンビ組んでみたかったの!」とほんわりしたトーンで語ったり、麻倉ももにめろめろになったりしているギャップがとてもいい。ソロの「アフタースクールパーリータイム」ではダンサーたちと一緒にふざけあっているようなニュアンスの絡みが多く、そのあたりからも人柄がなんとなく伺える。早口ラップを交えたパーティ感あふれるステージの中で、歌詞に合わせて困り顔を見せた後に咲かせた笑顔は最高にキュートだった。藤井は最後の挨拶でも「今日はいないメンバーの気持ちも背負ってのライブでした。みんなキラキラして素敵だったね!」と、自分以上に周りのことを話しているのが印象的だった。

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ここまではハイテンポに進んだ「第一ブロック」の印象を中心に書いたが、「第二ブロック」はニューフェースが登場し、メインステージでじっくりとステージを見せる構成だ。その中で最初に登場したのが、天空橋朋花を演じる小岩井ことりだ。天空橋朋花と言えばファンを子豚ちゃんと呼ぶ柔らかくも強烈なお嬢様で、熱心なファンは「天空騎士団」と呼ばれるという個性の強いキャラクターだ。『ミリオンライブ!』のライブには初参戦となる小岩井は、演じるキャラクターから想像していた以上のパフォーマンスで、ワンステージで消えない爪痕を残してみせた。イントロ中に小岩井が「一つ、心に信仰を忘れないこと。二つ、労働を惜しまないこと。三つ、精神を鍛えること…」と唱えたのは、天空騎士団の七つの誓い。後半になるにつれ客席が次々と唱和に加わることで、早くも独特の世界が作り出される。歌い始めた小岩井は、時折ムチを振るうようなアクションを見せる。暗めの照明の中何かが閃いているが、別のタイミングでは手には何も持っていない。これは…と思ったら、なんと彼女はつややかな黒髪(膝下まであるという)を後ろで編みこんだものを、鞭っぽくふるっていたのだった。ZAQが手がけた重なりあう叫びのような歌詞と退廃的な映像がリンクし、「子豚ちゃん」「騎士団」と化した客席さえも演出の内。この演出は大会場でなければ生きないはずだ。そして、そんな支配者の楽曲を歌い上げた小岩井がMCで素に戻ったあと、ミリオンのステージに本当に立ちたかったこと、そしてアイマスが大好きで、アイマスという作品に支えられたこともあったことを切々と語り、「Maria Trap歌いたかったの。今日最高のプロデューサーさんたちの前で歌えて朋花も私もとっても幸せです」と告げる姿は深く心に残った。

百瀬莉緒役の山口立花子の今日のテーマは「莉緒姉のセクシーさ」とのこと。今まで山口といえば「ちくわの人」というイメージが強かったが、ゆったりしたテンポで「Be My Boy」を歌い、どこか切なげな表情で手を差し伸べる様子にはお姉さん感があり、たしかに大人の魅力を感じた。歌っている山口自身からは緊張の色も濃く感じられたが、「君のことが好きだよ」のキーフレーズを歌い終えると安心したような微笑みを浮かべていた。同じ事務所の渡部優衣は、ステージ裏で母親のような気持ちで泣いていたという。山口が「プロデューサー君たち、お姉さんの魅力に誘惑されちゃったかな?」と問いかけると、客席は唸るような「うおー!」の声で答えていた。山口は「Blue Symphony」では雨宮、藤井と共に登場。後方ステージで黒髪ロングの美女3人がトライアングルに並ぶ立ち姿にははっとさせられる華やかさがあった。

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舞浜歩役の戸田めぐみは、先月の「LTH」イベントでライブ初披露したばかりの「ユニゾン☆ビート」を熱唱。400人気規模のLTHイベントから、一番最短で大会場で同じ曲を歌ったのは彼女かもしれない。大階段で8人のダンサーをフルメンバーで従え、米国イメージの? 派手な映像をバックに歌い踊る姿はまさにアメリカン。「まだまだ行くから、ついてきてくれよな!」と客席を煽りながら、アップテンポな中に時に元気いっぱいに、時に囁くようにメリハリをつけながら会場を盛り上げていた。そんな戸田が演じる舞浜歩のカラッとしたかっこよさは、「Sentimental Venus」で夏川と渡部のふたりのファニーボイスと組むことでより際立っていた。最後の挨拶で涙を懸命にこらえていた戸田は、最後は歩の声を借りて「3周年目も4周年目も、舞浜歩と歩んでいきますので、“みんなー! サポートよろしくな!”」と締めくくっていた。

『ミリオンライブ!』の「赤」のセンター、太陽が春日未来を演じる山崎はるかだとすれば、そこに並び立つ大樹のような存在が矢吹可奈役の木戸衣吹かもしれない。ソロで「おまじない」を歌う木戸はびっくりしたように瞳をまんまるに見開きながらまっすぐ客席を見据えて熱唱。客席と一緒になって音符とたわむれる姿からは、「オリジナル声になって」からまた進化した可奈の気配を感じる。もはや山崎の持ち歌のようにすら思える「PRETTY DREAMER」で同等以上の熱量を放つのは木戸ならではだろう。だが、そんな彼女の印象が強かったのは、ラストの挨拶だ。挨拶の中でメンバーの感情の高まりが伝わり、徐々に涙色が強くなる挨拶の中で、第一声で「皆さん今日は楽しかったですか!」と笑顔で問いかけた木戸。笑おう、明るく行こう、大好きだ! という、彼女が意識して出したプラスの感情が、その後のMCの流れをガラリと変えたように思えた。戸田と歌った「Birth of Color」のラスト、「後ろのほうまで見えてるよー!」と、劇場版の天海春香の台詞をなぞった木戸の姿は、可奈の憧れの「春香ちゃん」に負けないぐらい輝いていた。

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そして今日のニューフェースの中で、もう一人の大きな発見と言えたのが高山紗代子役の駒形友梨かもしれない。ソロでは「君想いBirthday」を歌い上げた駒形のボーカルは、伸びやかに歌い上げるフレーズでちょっと声が裏返りかけるあたりの周りになんとも言えない艶がある。だがアイドルを描く作品である『ミリオンライブ!』という作品において、駒形の一番の特色はその佇まい、かもしれない。正統派のアイドルらしい「君想いBirthday」を表情豊かに歌い上げる姿には、他の誰にもない独特の空気があった。後半「星屑のシンフォニア」を小岩井と歌う姿を見てその空気の正体がなんとなくわかった。客席を煽り歓声に応え、楽しそうにしているのだが、小さく小首をゆらすような仕草にもなんとなく品がある。一言で言えば、アイドルとしての佇まいが昭和っぽいのである。『うたばん』でも『ミュージックステーション』でもなく『ザ・ベストテン』が似合う感じというのだろうか。「最初に出演のお話を頂いて、嬉しかったけど本当に不安で、ダンスが苦手なのでみんなの足を引っ張っちゃいけないと…」と語る駒形だったが、この空気感だけは幾ら練習しても得難い個性だと思う。「みんなの応援と高山紗代子のおかげで強くなれた気がします」という言葉も印象的だった。

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第2ブロックのラストは篠宮可憐役のである近藤唯の「夕風のメロディー」。スクリーンの優しい色合いのイメージも相まって、まるで古い絵本の世界を読み聞かせているようだ。ダンスはゆったりとして雄大な動きで、両脇でバレエを踊る人形のような風情のダンサーたちがそれを引き立てる。誠実に、心をこめて歌い上げる姿が印象的で、フォークロアなテイストの間奏でゆったりとした舞を見せた後、両手にマイクを持って歌う近藤の姿は何かを祈るようだった。歌い終えた近藤に仲間たちが「舞台袖で祈りながら見ていた」と話していたのが、ステージと一緒に戦っている感じがした。ステージ前には「普段人の目もまともに見れない私ですが、皆さんに私を見てくださいと言えるように強い気持ちで頑張ります」と語っていた近藤は今日は泣かないと言葉にした時にはもう泣いている感じで、応援せずにはいられない雰囲気。それだけに「STANDING ALONE」で山口と重なりあい融け合うユニゾンを響かせた近藤が可憐として「私今、楽しく歌えてます!」と叫んだことには何か救われたような気がした。

伊吹翼役のMachicoは、今日の新衣装ではミリオン初のへそ出し。MCでメンバーが彼女のおなかに群がっていたのが微笑ましい。ソロの「恋のLesson初級編」ではダンサーたちと共にポンポンを持ったチアステイルで登場。満面の笑顔でツバっティーのキュートさを振りまいた。多数のダンサーと歌う大会場ならではのプレミアムとしては、間奏でダンサーたちと肩を組んでのラインダンス風の演出や、ダンサーがポンポンを並べて扇型の背景を形作るような演出があって楽しい。Machicoのステージからはツバッティーらしさを出したい、もっとツバッティーを魅力的に見せたい! という意志が感じられつつも、本人が楽しんでやっている感じが伝わってくる。そして大会場ライブでこそ際立つのが、「Marionetteは眠らない」などトリオ以上でのユニット楽曲における彼女の存在感だ。確かなボーカル力を備えた天性のハニーボイスはMachico無双と言えるほど楽曲に華やかな色合いを加える。それだけに扱い方が問われるとも言えるが、「Growing Storm!」でぴったりと4人のピースのひとつとして収まっているのをみると「乙女ストーム」はバランスの良いユニットなのだなと思う。

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春日未来役の山崎はるかは初日、「素敵なキセキ」を歌った。『ミリオンライブ!』はアイマスの中で若いコンテンツではあるが、最初の一年に行なわれた「LTP」イベントを先頭に立って引っ張り続けた山崎は数多くのステージを重ねており、いつしか「素敵なキセキ」はアイマスの中でも最も多く歌われたソロ曲のひとつになっていた。それだけに、歌い込み練り上げられた「素敵なキセキ」と同じ以上のクオリティを新曲のライブでなかなか出せないことに悩みもあったようだ。キャラクターをまとってステージに立つ山崎がどんどん“春日未来”に近づくほどに、それを支えている山崎の生真面目さや、考え悩みぬいている姿が浮かんで少し切なくなる。だが、ステージの魔法がかかっている間、「幕張、みんなで行くよー!」と全力で叫び、全力で楽しむ姿も間違いなく彼女自身。春日未来と一緒ならどんどん前向きに輝けるというステージの有り様はアイマスならではだろう。二日間を通した物語として、翌日ソロでどの曲を歌い、どんな表情を見せるかが一番気になるのは彼女かもしれない。

個人的にだが、七尾百合子役の伊藤美来が「透明なプロローグ」を歌っているのが面白い、とよく話す。伊藤は声優ユニットStylipSのメンバーとしても活動しており、劇場版『アイドルマスター』で振付やモーションを担当している先輩・能登有沙が愛あるレッスンで叩き込んだダンスの能力は折り紙つきだ。「透明なプロローグ」は間奏以外はダンスも控えめで、まっすぐにボーカルの表現力で勝負する楽曲。なんでも踊れるであろう彼女にボーカル勝負をさせる面白さ。しかし経験を重ねて成長する姿こそが尊いという視点で見た場合、敢えてこの曲を用意した仕掛けが徐々に花開いてきたような気がする。それは伊藤の歌いながらの優しく楽しそうな笑顔であったり、光の海の向こう側を見つめる眼差しの透明感であったり。その違いはわずかかもしれないが、何か惹きつけられる雰囲気が確かに出てきたように思える。田所、小岩井と共に歌った「Helloコンチェルト」は、トロッコに乗って会場全体を回る楽しさあふれるものだったが、伊藤といえば思い出されるのが昨年の1stライブで、体調不良で出演時間が限られた田所に代わって急遽出演したこと。その二人が同じライブで一緒に楽しそうに歌っている姿はとてもいい光景だった。

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前ステージの伊藤のアップからスクリーンが女性の横顔のイラストに変化すると、それは北沢志保の物語を描いたセピア色の絵本の表紙。ソロのラストから数えて2曲目は、北沢志保役の雨宮天の「絵本」だ。彼女のステージは、歌がいいとか、ちょっとした表情や佇まいの雰囲気といった、個々の要素だけでは語れないように思う。それら全体、雨宮天という存在から放たれる空気そのものが空間の色を塗りかえるというのだろうか。幕張イベントホールの広大な会場を、歌声とパフォーマンスで白のサイリウムに染め上げていく姿からは、アイマスで受け継がれてきた青の系譜を感じる。そんな彼女の魅力が十全以上に感じられたユニット曲が「Shooting Stars」で、空間の色を変えるほどの雨宮の存在感と、全く遜色のない光を放つ田所と麻倉が「クレシェンドブルー」というひとつのユニットとして同じ時代のステージに立っている。そのことに「おい……見てるか矢沢」と呟いた『スラムダンク』の安西先生のような気持ちになるのだった。MCで曲調のポーズの違いを実演して見せる雨宮の姿を見ていると、『ミリオンライブ!』のメンバーとより馴染んできたのかな、という印象を受けた。

伊藤、雨宮と続いた青のリレーを受けて、ソロのトリを務めたのは最上静香役の田所あずさの「Catch my dream」。ライブ冒頭の挨拶で、田所は「こうやって普通にステージに立てることが嬉しいです!」と、1stライブの初日に出られなかったこと、2日目も体調不良を抱えながらの出演だったことを踏まえて笑顔で語った。普通にステージに立って、全力で歌う。そのことがどれだけ貴重で嬉しいことか、「Catch my dream」を歌う田所の表情から伝わってきた気がする。そして「田所あずさの普通で、全力のステージ」から改めて感じる、圧倒的な練習量に裏打ちされたボーカル力。全てを歌声に込めた一点突破で聴く者の胸を貫く歌唱は彼女のオリジナルなものだ。ファーストライブから続く流れの中で、昨年末のミリラジ公録が「ぴょんころもち」の絆の続きだったとすれば、セカンドライブという場を笑顔で走りきったことで、田所あずさと最上静香の個人の物語はようやくひとつのピリオドを打てたように思う。ライブ本編を終えた田所は、「プロデューサーの皆さんの笑顔を見たら、緊張が吹き飛んで、ここが私の場所なんだと思いました。ありがとう!」と感謝の気持ちを伝えていた。

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最後に、全体曲について。代表曲の「Thank you!」に始まり「Thank You!」で締めくくったライブだが、今回より印象に残ったのは「Welcome!!」と「THE IDOLM@STER」だった。「Welcome!!」の台詞を歌い継いでいくパートはステージを重ねるたびに味わいを増している気がするが、幾つものステージと長い時間を経て自分たちの幕張のステージに辿り着いた山崎の「ここまで来れたよ!」と、田所が次のステージに続く「Catch my dream」の歌詞にも通じる「まだまだこれから!」のフレーズを担当していることが、この日は特別な意味合いを持って聞こえた。そしてライブの折り返しで、全員が一列に並んだトロッコの上で歌った「THE IDOLM@STER 」は、アイマスの10年という流れの中につながる存在として『ミリオンライブ!』が存在していることを改めて感じさせてくれたのだった。

演出チームの「こ、ころすきか!」と思うほどの畳み掛けるような構成と、今の『ミリオンライブ!』の全てを見せる気迫を感じる高密度のセットリスト。これから迎える2日目のステージが、今から楽しみでならない。

Text&Photography by 中里キリ

THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2ndlLIVE ENJOY H@RMONY 初日
0404幕張メッセイベントホール 
セットリスト

M01:Thank You!(MILLIONSTARS)
M02:Growing Storm! 山崎、Machico、夏川、伊藤(乙女ストーム!4人)
M03:ハッピー☆ラッキー☆ジェットマシーン(渡部)
M04:夢色トレイン(麻倉)
M05:Happy Darling(夏川)
M06:合言葉はスタートアップ!(藤井、渡部(レジェンドデイズカバー))
M07:Shooting Stars(田所、麻倉、雨宮(クレシェンドブルー3人))
M08:Maria Trap(小岩井) 
M09:Be My Boy(山口)
M10:ユニゾン☆ビート(戸田)
M11:おまじない(木戸)
M12:君想いBirthday(駒形)
M13:夕風のメロディー(近藤)
M14:THE IDOLM@STER(MILLIONSTARS)
M15:PRETTY DREAMER(山崎、木戸、駒形) 
M16:Sentimental Venus(夏川、渡部、戸田)
M17:Helloコンチェルト(田所、伊藤、小岩井)
M18:Marionetteは眠らない(Machico、麻倉、近藤)
M19:Blue Symphony(雨宮、藤井、山口)
M20:恋のLesson初級編 (Machico)
M21:アフタースクールパーリータイム(藤井)
M22:素敵なキセキ(山崎)
M23:STANDING ALIVE (近藤、山口(ARRIVE2人))
M24:星屑のシンフォニア(小岩井、駒形(ミルキーウェイ2人))
M25:Birth of Color(木戸、戸田(BIRTH2人))
M26:透明なプロローグ(伊藤)
M27:絵本(雨宮)
M28:Catch my dream(田所)
M29:Welcome!!(MILLIONSTARS)

EN1:Thank You!(MILLIONSTARS)

 

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