リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2026.09.05

待望のシリーズ最新作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の主題歌であり、FictionJunctionの最新シングル「彼方」がリリース!楽曲についてはもちろん、劇伴作家としても長年にわたって関わってきた『まどか☆マギカ』について梶浦由記がたっぷり語ってくれた

待望のシリーズ最新作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の主題歌であり、FictionJunctionの最新シングル「彼方」がリリース!楽曲についてはもちろん、劇伴作家としても長年にわたって関わってきた『まどか☆マギカ』について梶浦由記がたっぷり語ってくれた

『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズ全作品(TV・映画)で劇伴音楽とED主題歌を担当してきた梶浦由記。最新作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』では音楽に加えて主題歌も担当し、作詞曲・編曲、FictionJunction(参加ボーカリスト/EMIKO、LINO LEIA、YURIKO KAIDA)として「彼方」を作り上げた。あるアニメ作品の単なるエンディング主題歌ではなく、2011年1月の放送開始から15年をかけた大きなプロジェクトで聴くことのできる今作について、シングル「彼方」のカップリング曲でアプリゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』のテーマソングでもある「lighthouse」(FictionJunction feat. LINO LEIA)の話も交えながら、梶浦由記が見出した『まどか☆マギカ』の魅力についても迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司

シンプルな心情を理解できる彼女たちだからこそ愛せた

――『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』(以下『ワルプルギスの廻天』)は2021年に制作発表され、当初の公開予定である2024年冬から延期しての今夏公開となりました。主題歌の「彼方」は劇伴音楽と同タイミングでの制作だったのでしょうか?

梶浦由記 劇伴のお話をいただく際、「主題歌も梶浦さんの曲にしたい」と言っていただきました。なのでありがたくお受けして、劇伴と同じタイミングで作りました。ミックスとかは劇伴より少し先に「彼方」を終わらせましたけど。当初、今年の2月公開予定ということでしたので、レコーディングは昨年よりスタートしていたのですが、延長を待って音楽のほうも最終的に2月には(主題歌と劇伴の)両方を作り終わっていましたね。

――楽曲制作のためにもらった資料や、そのタイミングについても教えてもらえますか?また、“Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~”の千秋楽で、劇伴はフィルムスコアリングだったとお話しされていましたが。

梶浦 脚本自体は結構前からありましたけど、去年、劇伴を作る時に改めて本も絵コンテも正式なものをいただき、それからフィルムスコアリングということで大事な箇所に完成絵が入っているコンテ撮もいただきました。その後、音響監督の鶴岡(陽太)さんから(音楽をつける箇所や作る音楽について説明した)メニュー出しが届き、絵とつけ合わせながら見て、なんとなくプランを立ててから打ち合わせをさせていただきました。悩むところは監督と鶴岡さんにお伺いを立てて。その後、ダメ出しありきで1回出してみたら全部が通ったんです。

――主題歌に関するオーダーというのは?

梶浦 本当に何もオーダーはなく、お任せいただいたと思います。その後悩んだあげく祝福の歌にしたいな、と思い、実際に作ってから「この曲を最後にかけてもいいですか」とお聞きしたんです。そうしたら新房昭之総監督が「スケール感のある曲で、映画が終わった時の雰囲気がすごく好きなのでいいですよ」というようなことをおっしゃってくださって。良かったです。

――新房総監督に直接お伺いを立てたんですね。

梶浦 人づてですが、監督やスタッフの皆様に聴いていただきました。

――“最後に”かかる“祝福の歌”ということですが主題歌の立ち位置についても最初から定まっていましたか?

梶浦 本当に悩みました。TVシリーズは、中学生の日常の中にちょっと落とし穴があるような身近なところから始まり、だんだんと落とし穴がメインになっていき、映画の最後では悪魔的なところまで行き着きますよね。スケールも宇宙的にまで拡大するので然るべくして内容が難解になって行く。それはもう仕方ないというか。特にこの『ワルプルギスの廻天』は「どう解釈するかはあなたの自由」「10人観たら10人ともラストシーンの印象が違う」という作品なので最初に脚本を拝読した時、このラストシーンのあとにどんな曲を流したらいいのか頭を抱えました。でもそこは『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』の時と同じく、映画を観終わったあとの感情の総括のような、映画の結論のようなものを主題歌に盛り込むことは諦めよう、と思いました。観た方が正しく迷っているところになんらかの結論を押し付けるのは相応しくないと思ったんです。今回の劇版は、特に後半部分は、あまり物語に対する自分の解釈を確定せずに音楽をつけようと作っています。自分勝手な解釈をしすぎた結果、音楽が偏ったりtoo muchになってしまうのがいやだったんです。謎は謎のまま、みんながどう捉えるかわからないところはわからないままに音楽を作りたかった。妙に誰かに肩入れしてしまった音楽になるのも嫌ですしね。最後に流れる主題歌も、その延長で考えました。

――なので“祝福の歌”に。

梶浦 この作品が今後どう続くにせよ、(鹿目)まどかや(暁美)ほむらたちが悩み惑った挙句辿り着いたここは祝福すべきところなんじゃないか、とも思ったんですよね。ファンの方々も長く『まどか☆マギカ』という作品を愛してきた末にここまで辿り着いた。ならば、物語のエンディングの中で「彼方」という曲を聴きながら、「『まどか☆マギカ』という作品と出会えて良かった」「彼女たちが幸せでいてほしい」と思ってもらえたら、どんなにいいだろう、と思ったんです。だから、彼女たちの未来に対する祝福、そして作品に出会って一緒にここまで辿り着いたみんなへの祝福も込めたかった。そういう曲ですね。

――解釈を与えないということでしたが、「彼方」を聴いて勝手に「ハッピーエンド」を予想してしまいました。

梶浦 そうですね、何がハッピーエンドかは人それぞれですが、でも彼女たちが、頑張って悩んでここまで辿り着いたことは不幸なことでは絶対にないと思うし、そして私の「彼女たちが進む未来が幸せでありますように」と祈る気持ちは入っちゃっているかなあと思います。何より観終わった方にも彼女たちの未来を、清々しい気持ちで見送ってほしかった。その意味では私のわがままが入っているかもしれないです。

――梶浦さんが『まどか☆マギカ』という物語を愛した理由というのはご自身ではどのように感じていますか?

梶浦 この物語って映像は本当に独特で素晴らしく、世界観やお話も一筋縄ではいきませんが、初めて脚本を拝読した時に一番素敵だなと思ったのは、すごく普通の子ばかりなので、彼女たちの行動原理や気持ちについてはシンプルで、とてもよく理解できたんですよ。だから、たとえ世界観を理解できなくても彼女たちのことはわかる。1人1人に思い入れができる。彼女たちを「人」として書いているというところが脚本の一番の魅力じゃないかと思っています。この世界観を深掘りすることを心から楽しんでいるファンもたくさんいらっしゃるけれど、「円環の理」はなんだかよく解らないけどほむらちゃんは可哀想、ってファンもいると思うんです。それで良くて、だからここまで多くの方に支えられたんだと思う。だからみんなが彼女たちを好きになれたし、私も彼女たちを愛せたんだと思います。自分が『まどか☆マギカ』を観ている立ち位置って、なんとなく5人の少女の応援団みたいな感じで。「頑張れ」って。何でもいいから幸せになってほしいという思いに近いと思います。

――おっしゃるるように『まどか☆マギカ』の物語は少女性が重要で、主人公たちが男の子だったらまったく違う展開になりますよね。逆に言えば、男性にはまどかたちの心情や行動理念に同調できない感覚があります。

梶浦 そうですね。でも本当にティピカルというか、理想化されたシンプリシティみたいなもので、人間臭くドロドロに書かれたらそれはそれで嫌じゃないですか?物語として良く出来た少女たちであって、やっぱりシンプルに脚本が素晴らしいんだなあ、と思っています。

――梶浦さんの作り出す音楽もすごく女性らしいですよね、コケティッシュなところとか。なので今おっしゃったような『まどか☆マギカ』の世界観や物語とすごく合うと思っているんですが……。

梶浦 正直相性はいいと思います。

――ご自身で作っていてもそう思う?

梶浦 思います。すごく気持ちがいいですね。

――「気持ちいい」というのは?

梶浦 なんといっても『まどか☆マギカ』ってきれいなんですよ。劇団イヌカレーさんが『まどか☆マギカ』のために描き出すグロテスクさはすべて美しいじゃないですか?怖いけれど汚くはないですよね。すごくコケティッシュで美しい。今回の映画でもダークサイドっぽいところが全部美しいので、変わった音や怖い音が必要な時があっても汚い音はいらないんです。怖いけどダーティーではないですし、しかも一癖あるのでこの世界の音楽を書くのは毎回楽しいですね。バトルもとても演劇的で、ミュージカルっぽくて、ダンスやバレエの要素が必要とされるところもすごく好きです。今回の映画でもミュージカル的な演出が多いですし、自分が好きな音楽を好きなようにつけて、ぴったりはまるありがたさや楽しさがあって、いつもウキウキしながら作っています。

ちょっと荒々しく乱暴なくらいの歌だから成立する

――LINO LEIAさん、EMIKOさん、YURIKO KAIDAさんを擁した歌唱面についても教えてください。

梶浦 「彼方」はLEIAさんとEMIKOさんの完全なるデュエットですね。KAIDAさんはというと、彼女の声は私の曲には必須で(笑)。なので今回も高いところでコーラスをきれいに響かせてもらっています。LEIAさんはピュアで透き通った声なので『まどか☆マギカ』の世界との相性がすごくいいんですね。だから「彼方」を彼女主体で歌ってもらおうということは決めていました。「lighthouse」とセットで歌っていただくと考えていたところはあります。EMIKOさんは、ハスキーで低めの声ではあるんですけどミドルの音域がすごくきれいで、かつちょっとしたワイルドさがあるんですよ。そこが少女っぽいので2人がいいと思いました。

――EMIKOさんはゲストボーカルとして“Yuki Kajiura LIVE”(以下“YKLIVE”)のvol.#21にも参加されていましたが、「彼方」を見込んでの参加だったのでしょうか?

梶浦 いや、ゲストボーカルは単純にお互いにとってのお試し期間で。彼女は個人の活動もやられているので「一度やってみませんか」とお声がけしたんです。それで一緒にやってみたらすごく楽しかったですし、彼女も続けたいと言ってくれました。きっと楽しんでくれたんだと思うんです。「じゃあ」ということで今年から拘束することにしました(笑)。

――では、「彼方」を想定していたわけではなく?

梶浦 全然そんなことはないです。彼女の声はすごく魅力的で、今後の“YKLIVE”やFictionJunctionに欲しい声だったんですね。若々しくて。

――若々しいですよね。“YKLIVE”で聴いていても「人間的」というか。上手く言えないですが。

梶浦 いや、すごく的確です。人間的です。何と言うか、いきものですよね。生命力のかたまり。

――そこがワイルドさに繋がっているわけですね。

梶浦 もし冒頭の“さようなら”をとても大人っぽくテクニカルに歌ってしまったら、それでも曲は十分に成立するんですけれど何と言うか、少し上から見下ろす俯瞰的な始まりになってしまうと思うんです。でもあの歌い出しはただ明るく、内省的にならず、ちょっとだけ乱暴なくらいがいいんです。こんなことを言ったらEMIKOさんに怒られますけど、彼女の歌はとても上手くて魅力的だけれどまだ少し迷っていて不完全なところもあって、多分EMIKOさんの“さようなら”はどこかしら荒削りだからこそグッとくるんですよね。あどけない感じになるんです。もっと何度も歌ってもらって大人っぽい“さようなら”に仕上げることもできたんです。そうお願いすれば彼女はそういうほうへ持っていってくれたとは思うんですけれど、こなれた感じで、静かにディープに始まってしまうと、「彼方」はまた少し違った曲になってしまうんです。だから録った歌もこなれすぎていないバージョンを選びました。今、“YKLIVE”で歌っているのでまた毎日どんどん変わってきています。やっぱり歌って本当に難しくて、そして本当に面白いですね。そういうことを考えながら録っていました。

――聴いていてもあの冒頭部分は楽曲の根幹部分と思わせる感覚がありました。聴かせどころという雰囲気で。

梶浦 そうなんですよ、あそこで「うわっ」と思ってもらわないといけない。でも、すごく上手く歌ってしまうとふわっと受け入れられてしまうというか。少し荒々しく歌ってもらったことでグッとくるんですよね。「さようなら」を言い慣れていない感じみたいなものがあると思います。

――達観した“さようなら”ではなく、同級生からの“さようなら”というか同じ目線のような?

梶浦 まさにそういった感じです。それこそおっしゃっていた通り「人間」ですよね。私はすごくあのテイクが気に入っています。彼女は対応力があるので深く歌ってもらおうと思ったらいくらでもやってくれたと思いますけど、でも自由にパーンと歌っちゃった感じの“さようなら”がすごく良かった。「今のいいっ!」「オッケー」という感じでしたね。面白いですけど、EMKIKOちゃんがいないライブでKAORIさんに歌ってもらったらまたすごく完成された「彼方」になるんです。彼女は本当に日本語が上手いんですよね。勘もいいし、“音楽する”んですよ、すごく。「ここに一言だけコーラスを入れて」とお願いすると、タイミングや言葉の使い方といった部分で本当に完璧。音楽が上手い。だから「彼方」もすごくかっこよくて美しい “さようなら”になるんですよ。EMIKOちゃんが歌うよりもっと覚悟ができた人の「さようなら」になる。また違う「彼方」という歌になるんです。ホント、歌って面白いですよね。

――楽器面や譜面上で意識した点があれば教えていただけますか?

梶浦 サウンドなどによって無論ケースバイケースではありますが、私は「シンプルでいい曲」というのが一番だと思っていて。私にとっては音数が少なくて良いメロディというのが理想なんです。「彼方」は歌のメロディがこれ以上ないほどシンプルで、我ながらすごくいい曲が書けたと思っています。とても好きなサビが思いついたと思えました。でもそれはきっと、『まどか☆マギカ』の映画を清々しく終わらせたいという気持ちが作らせたと思いますし、だからこの映画と今出会えたことに心から感謝しています。躊躇することなくアレンジしようと弦を歌わせまくったので、弦が歌メロと常に一緒にいるような曲になりました。構成も、コーラスとメロディの掛け合いも、悩まず一直線に曲を仕上げた感覚が残っています。書いている途中の記憶も楽しさと喜びに満ちた、書けたことが嬉しいと今もずっと思っている、そんな曲です。

――ストリングスを効かせたかった理由というのは?

梶浦 好きなんですね(笑)。歌のメロディと大きな弦の旋律が絡み合うのが。そしてこの曲は、広く壮大にしたかったんです。光り輝く「彼方」にしたかった。霧の向こうにぼんやりと見える「彼方」ではなく、暗いところから見る眩しい朝日のような「彼方」にしたかったんです。映画の最後を見送る華々しさが欲しかった。シンプルなメロディと一緒に、キラキラと歌い上げてくれる弦が欲しかったんです。でも弦と歌が競い合うような曲は私の曲にはとっても多いんですけどね。まあ、やっぱり、好きなんですね(笑)。

――曲を聴いている時に「光り射す方へ」という言葉が浮かびました。

梶浦 そう思っていただけると嬉しいです。「キラキラしてくれ!」という想いでしたので。だから(完全生産限定盤のLPサイズ描き下ろし特殊ジャケットを見ながら)このイラストはすごく嬉しかったですね。“まさに”という感じでした。

――歌詞についてはどのような想いで書かれましたか?

梶浦 歌詞は難しかったです。でも完成は案外早くて。冒頭の“さようなら”はメロディと一緒に出て来ました。それをそのまま使いました。サビの“この世界をあと一度だけただ信じてみようかな”もメロディと一緒に出て来たのをそのまま残しました。きっと私はこういうことを歌にしたいんだな、とそこを起点に紡いていった気がします。“さようなら”、は誰が誰にという具体的なことはありませんし、逆に聴いてくださった方に聞こえたままにお任せしたいと思います。自分でもどうしてこの言葉が出て来たんだろうとは思いますけれど、物語がこの先も続いていくにせよ続かないにせよ、今の形のままではいられないことははっきりしているので。物語は必ず次のフェーズに進むとして、これまでの『まどか☆マギカ』にさようなら、ということでもあるのかと思います。ただ、「貴方」が誰で「私」が誰というのも、もうすべてご覧になった方、聴いてくださった方に響いたままにお任せしたいと思っています。感じてくださったこと、すべてが正解ですから。

次のページ:『まどか☆マギカ』は音楽に一癖加えがいのある作品

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP