INTERVIEW
2026.09.05
――カップリング曲には、ゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』の主題歌「lighthouse」が収録されます。こちらはどのような点を意識されて制作した曲ですか?
梶浦 ゲーム内に「灯台劇場」が出てくることから「lighthouse」というタイトルをつけたり、出てくる少女が「ナマエ」ちゃんなので「名前を呼んで」という歌詞から始めたり、そういうところもありましたけど、ゲームの主題歌は色々なシーンで流れるのでそれに対応できる明るさは意識していました。ゲーム内容が、『まどか☆マギカ』のシナリオを1つ1つ振り返るようなところがあったので『まどか☆マギカ』らしく切ない要素も入れてはいるんですけど、でもやっぱり明るい曲ですね。
――バトルでも流れるので盛り上がる部分もありますし、ライブ映えする曲でもありますね。
梶浦 そうですね、きちんとした盛り上がりを作っていて「私にしては頑張ったぞ」と思います(笑)。でもキラキラ感と切なさの塩梅がゲームに合っている曲だとは思います。“YKLIVE”でもすごくキラキラしていて、この曲があって良かったと思いました。案外ライブで無理してはしゃぐ曲でもないので、演奏していても気持ちが晴れますね。FictionJunctionの曲は速くても気持ちが晴れるようなテンポではなかったり、悲しかったり暗かったりというテンポの曲が多いんですけど。
――爽快感がある曲ですよね。
梶浦 はい。『まどか☆マギカ』の曲なのにどちらもこんなに爽快感ある曲になるとは(笑)。
――「彼方」はサビが気に入っていて、シンプルにいい曲と仰いましたが、「lighthouse」の一番好きなところというと?
梶浦 どこが好きかと言われるとなかなか難しいのですが、自分の曲をライブなどで演奏していると案外大サビで気持ちがぐっと盛り上がることが多いんですよね。「lighthouse」もLINO LEIAちゃんのサビはもちろんですが、大サビでKAORIちゃんが歌い出すところ、好きですね。ライブでも「いいわ、KAORI」と思いながら(笑)いつも聴いています。
――レコーディングで厳しく鍛えられた成果でしょうか?
梶浦 そんなに厳しくはないですよ。基本的に私は褒めるので。歌い手さんって褒めたほうがいい歌をうたってくれるよね、という経験則です。ただ、絶対に気をつけているのは嘘をつかないことで、おべっかみたいな褒め方をしてもすぐバレちゃうんですよ。歌い手さんたち、みんな自分のことしっかりわかっていらっしゃいますから。だから本当に素敵なところだけ、めっちゃ褒めます。褒めつつ、「その方向性がすごく好きなので今度は迷いを捨てて清書してみようか、もう1回」とか。
――レコーディングは梶浦さんのプランにどう応えるかの作業ですね。
梶浦 そうですね、私だけの「正解」なんです。でも、FictionJunctionの歌い手さんの中でも、KAORIちゃんやJoelleさん、それにKAIDAさんはもう本当に歌ってもらって長く、私の望むところにも慣れているので、譜面と仮歌入り音源を渡すだけで「こうですよね」と出来上がったものをレコーディングに持って来てくれるんです。なのでスタートがゼロではなく100からなので一発OKか、「これもいいけどこっちの方向性も試させて」という流れになるのですごく早いですね。LINO LEIAさんもピッチも確かだし音楽的な理解も早いし、EMIKOさんはゴスペルを小さい頃からやっていたのでロングトーンもパワフルですし。今の若い人はロングトーンがあまり得意ではないなかで稀有な人材ですね。
――今の人はロングトーンを歌う機会があまりなさそうですね。
梶浦 できないからダメということではなくて、単にあまり必要とされないんですよね。私の現場はロングトーンだらけなので慣れていないと大変かなと思います。逆に今は、ピッチは本当に確かな方が多くて、こんなに音が跳んでいるのにめちゃめちゃ上手い、みたいなことはあるんですけど。
――改めて。『まどか☆マギカ』の音楽や主題歌を担当してきたなかで思うところについて教えてもらえますか?
梶浦 いや、なかなかここまで好き勝手にさせてもらえることはないです。作品の中において、当たり前ですが本来劇伴は自己主張する場所ではないんです。そんななか『まどか☆マギカ』は、音楽にも当然のようにある程度の、場所によってはかなり強めの自己主張を求められる作品なので。シンプルに楽しかったですね。
――「好き勝手」ということですが、メニュー出しと異なる曲を提出したことはあるんでしょうか?「寂しい曲」を求められたのに「明るい曲」とか。
梶浦 それはないですね。サウンドトラックという仕事は半分くらい演出みたいなもので、脚本とメニューから場に求められているものを読み解く力がないとできないと思います。だから、寂しい曲が求められているところに寂しくない曲をはめるということはよっぽどのことがない限りやらないですね。ただ『まどか☆マギカ』は、寂しさの中に怖さを入れるといった、一癖つけることが求められることが多いのですごく楽しかったです。バトルシーンでも民族色を入れたり怖いボイスを使ったり、そういうことができる作品は多くないので。一癖ある音楽を書けるというか、一癖加えがいのある作品というのは面白いですね。
――音楽に負けない厚みのあるところが一癖を許容できるんでしょうね。
梶浦 だって劇団イヌカレーさんの絵って音楽負けしないどころか、むしろ音楽を作るインスピレーションに溢れていますから、だからこそ無難な音楽をはめたらつまらないですし。そういう度量のある作品だと思います。
――“YKLIVE”にとっても相性がいいですね。サウンドトラック曲でもライブ映えしたり聴き応えがあったりするので。
梶浦 そうですね、ありがたいことに。
――話題に上がったので梶浦さんにとっての“YKLIVE”についてもぜひ教えていただけますか?
梶浦 好きなミュージシャンや好きな歌い手さんを呼んで自分の曲を演奏してもらえるなんてシンプルに最高すぎないですか?おまけにお金を払って聴きに来てくださるなんて、「こんなに美味しい思いをしていいんだろうか?」といつも思っています。全部自分の曲なのでどんなアレンジをしようが何の気兼ねもいらないですし。一人で音楽を作る幸せもありますけど、素晴らしいミュージシャンが演奏してくれて、聴いている人たちが楽しそうなんて、こんな幸せだらけの空間、どんなに探したって他にはないと思います。だからやっぱり続けたいですね。今まで生きてきた中での幸せベストテンを決めるとしたら確実に6個までは音楽だと思うんですけど、その中でもライブは結構占めていると思いますし。
――それは残り4個が気になりますね。
梶浦 それはちょっと秘密です(笑)。だから、今のベストテンを押しのけて上位に入る「幸せ」もきっと音楽から生まれる可能性が高いでしょうし、自分がもっと幸せになるためにも音楽はやめられないですね。
――作曲活動も楽しいというお話でしたが、作った楽曲に対する反応をダイレクトに見られるのも幸せですよね。理想の音楽生活に思えます。
梶浦 確かに理想ではあるんですけど、ライブをやっている時は曲を作れないし、曲を作る量を増やすとライブはできないし、その兼ね合いが一番困りますね。昔ほど無理が効くわけでもないので、両方を少しずつ減らしていくしかないとも思うんですよね。
――梶浦さんの音楽を受け取る総量としては、活動量が多少減っても長く続けていただくのが一番だと思うので、ぜひ健康には気をつけていただいて。
梶浦 そのうち仕事が来なくなるとは思うので、それまでは続けようかとは思っています。
――いや、それはないですよ。
梶浦 いや、昔から思っているんですよ。人気商売ですし、流行り廃りはあるので。私の音楽はどちらかというと古臭いですし、今風の音楽は若い人が作ったほうがかっこいいに決まっているので、そんなに今風のものをやるつもりもなく、相変わらず自分の好きなことをやっていくだろうから、当然受け入れられなくなる時も来るだろうな、とは。だから仕事が来る今の間に、1つ1つありがたくお受けしてやり切るつもりでいます、はい。素晴らしいミュージシャンたちをこき使いながら(笑)。
――ありえないと思いますが、仕事を頼まれなくなった時の過ごし方というのは?
梶浦 その時のために、数年前、自宅にスタジオを作ったんです。昔は、自宅にレコーディングできるスタジオがあると家から出なくなるので作るのは嫌だったんです。でも「お金を払うから音楽を作ってください」と言われなくなったとしても、ささやかでも生楽器を録音できる環境があれば、自分で音楽が作りやすいですからね。その時が来たらねちねちと自主録音で作ります。
――まさかの、梶浦さんがコミケで自主制作CD販売、という日も見られる可能性が(笑)。でも作り続けるということなら、いつか音楽配信サイトにアップされる日を楽しみに待ちます。
梶浦 もしかしたらいつか。でも、今以上に(曲を作るのに)時間はかかるでしょうね(笑)。あと実は、ネットゲームに1日23時間くらいダイブするというのも捨てがたい夢なんですけど(笑)。
●リリース情報
「彼方」
発売中
【初回生産限定盤/アニメ盤(CD)】

品番:VVCL-2985
価格:¥3,000(税込)
LP サイズアニメ描き下ろし特殊ジャケット
【通常盤(CD)】

品番:VVCL-2988
価格:¥1,600(税込)
01. 彼方
(『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』主題歌)
作詞・作曲・編曲:梶浦由記
Vocal:EMIKO、LINO LEIA、YURIKO KAIDA
02. lighthouse
(ゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』主題歌)
作詞・作曲・編曲:梶浦由記
feat. LINO LEIA、Vocal:KAORI、YURIKO KAIDA、EMIKO
●作品情報
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』
公開中

【スタッフ】
原作:Magica Quartet
総監督:新房昭之
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクター原案:蒼樹うめ
監督:宮本幸裕
キャラクターデザイン/総作画監督:谷口淳一郎
総作画監督:山村洋貴
異空間設計:劇団イヌカレー(泥犬)
絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン:古川知宏
ビジュアル・コンセプトデザイン:川田和樹
色彩設計:日比野仁
美術:内藤 健、草森秀一
美術設定:大原盛仁
撮影監督:会津孝幸
編集:松原理恵
音楽:梶浦由記
音響監督:鶴岡陽太
アニメーション制作:シャフト
配給:ANIMEC
【キャスト】
鹿目まどか:悠木 碧
暁美ほむら:斎藤千和
美樹さやか:喜多村英梨
佐倉杏子:野中 藍
巴マミ:水橋かおり
百江なぎさ:阿澄佳奈
紫丁香:若山詩音
セルマ・テレーゼ:黒沢ともよ
キュゥべえ:加藤英美里
FictionJunction 公式サイト
https://fictionjunction.com/
梶浦由記 公式X
https://x.com/Fion0806
梶浦由記 公式スタッフX
https://x.com/YKajiura_staff
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉 公式サイト
https://www.madoka-magica.com/wr/
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉 公式X
https://x.com/madoka_magica
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